明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



蕃茄山人氏のお誘いで、嵐山光三郎プロデュース『中村誠一X'MASジャズコンサート』へ出かける。麻布区民センター。『ジングルベル』からスタート。ファンキージャズの『シスターセイディ』では吉岡秀晃のピアノがやたらとカッコがよい。前回も思ったが、心なしかホレス・シルバーに顔が似ている。『イフユー・クッド・シーミー』中村さんのテナーによるバラードは、なんといってもである。さらに秀逸だったのは、中村さんと遠縁だという琴の萩岡松韻との共演。『松、竹、梅 セニョール・ブルース』松竹梅は江戸時代の曲だそうだが、それが再びホレス・シルバーへ。違和感まったくなく、しばし陶然となる。中村さんの教え子であろうか、女性の歌う『君の瞳に恋してる』。会場が歌にあわせて、事前に教わったフリをする。隅田川のこっち側だったら絶対にしない私なのだが。アメリカからの飛行機が大寒波とかで遅れ、何とか間に合った中村さんの娘のSARIさんは、学生時代に聴いたときからくらべて、格段に進歩しており驚く。最後は『津軽海峡冬景色』。選曲その他、事前に何度も打ち合わせしたことが、嵐山さんにより語られたが、実に濃厚なコンサートであった。タクシーに分乗し、新宿の2次会場へ。昨日、樋口一葉のコスプレをしたと書いたばかりの南伸坊さんの姿。私の前には、国立の大御所木彫、画家、関頑亭先生。おかげで愉快に話を伺えた。嵐山さんと中村さんにはアダージョ志ん生号。坂崎重盛さんには三島号を差し上げる。帰りに丸の内線に乗ろうとしたら、前を、未知の生物、オリバー君、アリ対猪木、ネッシー探検隊、『血と薔薇』『家畜人ヤプー』出版などの康芳夫。その横にはギャラリー美蕾樹をやっていた生越さん。3年ぶりであろうか、しばし懐かしく話した。康芳夫と生越さんでは、あまりにも違和感がなかったが、たまたま同時に乗っただけだったようである。
木場に着いて、すでに店を閉め、片付け中のT屋をノックしたのがいけなかった。気がついたら朝。旦那と交代に起きてきた奥さんの朝定食を食べて帰ったのは8時であった。私は勧められた酒を断わることができない。今度T屋にいったら、私がわんこ蕎麦のように、グラスを手で塞いだら、もう注がないこと、と決めてこよう。

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背景は現存する樋口一葉が通った質屋である。年の瀬に質屋ということもあり、あまり寂しくならないよう心がけた。用事を済ませて外へ出たら、先ほどより雪が降っていて、というところか。
一葉をつくることになれば、やや右を向いたバストアップの写真を参考にすることになるが、同じ写真を参考にしながら、両極の結果を示した作品がある。一つは鏑木清方の裁縫仕事の最中に、ふと小説に想いをはせたところを描いた作品である。これは肖像写真とならんで、一葉のイメージを決定していると思われる。なにしろ南伸坊氏まで、おなじ扮装をして写真に納まっているくらいである。清方は顔の角度をわずか右に振っており、さらに目も鼻も口も“創作”してしまっている。にもかかわらず、まさに一葉と思わせるところは、さすが鏑木清方というほかはない。 もう一点はご存知5千円札である。真偽のほどは判らないが、札の肖像には、偽造をしにくくするため、髭や皺のある老人が選ばれるのが通例で、よって一葉決定は難航した、と聞いたことがある。元になった原版はコントラストが高く、ディテールが飛んでしまっている。清方とは反対に、ディテールが無い物は無く、一切創作することなく責任の持てる部分だけを拾った結果が、凍りついたお面のような5千円札なのであろう。一葉は右顔面に自信があったか、残された写真ほとんど右を向いている。私の場合はというと、背景の都合で左を向かせただけで、さらに横を向かせたのは、誰も知らないからいいや、と思ったわけではなく、傘の向きの都合である。

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