先日撮影したカット。全6カット仕上がる。踊りの師匠の瞬き、さすがに今回はパッチリと見開いていた。踊りの師匠は近所のカミさんK子さんだが、人間どもの撮影は、このカミさんが最初にハードルの高さを決めたといってよい。 河童は自分の腕を折られた腹いせに、三人が宿泊する旅館の部屋に、大魚イシナギを上から放りこんで欲しい、と異界の姫神様に願い出る。しかし異界も人手不足である、と断られてしまう。であるから実際は実現しなかったシーンだが、画として面白いので、最初に制作を決めていた。そこで、このあたりにデッカイ魚が落ちてくるから、といって一二の三!で驚いてもらったのだが、これが実に見事にやってくれ、笑いのうちに数カットで終わってしまった。それを横で見ていた主人役のMさんは、カミサんがそこまでやるなら、とこれもまた運動神経を発揮し、数カットで決めてくれた。 イシナギを運んでくる赤フンドシの漁師二人組は、Mさんの町内会の神輿担ぎの若者を紹介してもらった。その彼に、誰か調達してもらおうと思ったのだが、本人の顔が良いので、出てもらうことにした。Mさんは子供の頃から知っているという。撮影当日、『このMさんがこれだけのことをしてくれているのだ、君等もそれなりのことをしてくれなければ困るな』。とばかりにMさんの出演カットを見せ、それが効いたのかどうか、冒頭、物語中唯一河童と顔を合わせる人間として十分過ぎる結果を出してくれた。 結局人間の皆さんの想定外の演技に、全体のイメージの再考を迫られる、という嬉しい結果になった。河童の毛や甲羅に、今頃になって不満を感じ、作り変えることになってしまったのも、実は踊りの師匠が最初に決めたハードルの高さのせいである。というのが本当のところであろう。