昨日撮影したカットの制作。鏡花の描くような背景など現在どこにもない。ほとんどのカットを合成しているが、こんなことまでしたのに。しかし、その努力が見えてしまっては野暮というものである。たまたまこんな場所を見つけて撮影しました。という風にしなければならない。それでも役者として参加してくれた方々だけは、自分達が立っていたのはマンションの駐車場だったのに、と思う存分驚いて欲しいところである。 昨日の撮影は、河童に化かされ旅館に逃げ帰ってきた三人。いったい私たちはシャモジやスリコギを持ったまま街中を踊り歩いてしまい、いったいどうしたんだろう?というシーンである。演技の経験のない素人の方々に、私の思ったような演技をしてもらいたい場合、この場面は、あなたはこんな心持ちであり、などといってもやれる訳がない。それを要求するのは酷である。そこで人間の形を粘土で作り続けてきた私は粘土製の人間、というつもりで、演者が実は腹の中では別のことを考えていようと、そう見えるよう形だけを指示し、その結果、そうとしか見えないような撮影ができた。今回は見た目で選んだ素人の方々を演出しているのであるが、世界の蜷川幸雄も役者時代、子供の私が観ても下手糞でつまらない役者だったから、自分がやることとさせることは別である。
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