連休中は放りっぱなしになっていた河童をできるだけ仕上げたい。まずマテ貝にしがみついた河童を作ることにする。タイトルは『貝の穴に河童の居る事』である。マテ貝はそれほどポピュラーとはいえない。そこでマテ貝だけのカットを制作するつもりであったが、それを差し挟むスペースがない。そこで人間に見つかりそうになった河童が逃げ込んだ貝の穴には、マテ貝がいた。つまりマテ貝を足すことにした。鏡花は穴の中にマテ貝がいたとは書いていないが、留守だった、とも書いていないのでまあ、いいであろう。穴をのぞく娘の目とマテ貝にしがみついて、それを見上げる河童。娘の瞳にみとれ、次の瞬間ケガをする大事なシーンである。私が作らなければ誰が作る、という奇妙なシーンである。 それにしてもこう書いていると鏡花作品のビジュアル化というのは、つくづく野暮な行為という気がしてくるが、読んでも状況がさっぱり見えないという人もいるから良しとしておこう。 某文庫用装丁のレイアウトが送られてくる。帯のことがあり、若干手前のロシアの文豪を拡大することになったが、私の想い通りになった。“やっぱりここに在った”。何度か書いているが、子供の頃、頭の中で思ったことはどこへ行ってしまうんだろうと本気で悩んだものである。それでいて、問いただしても気の利いた答えを返してくれそうな大人はいない、ということだけは判る子供はつらい。結局頭に浮かんだものを取り出し確認することが、私の創作行為の原点であろう。 マテ貝にしがみついた河童は画面上小さいので、小さな河童で十分である。といっても十数センチのパイプを2つ割りにしたような二枚貝である。直接乗せるには小さすぎるので大きく作って合成することにした。そこで目に入ったのが一升瓶である。数センチ焼酎が残っていたが、瓶の曲面をマテ貝に見立てれば丁度よさそうである。 ひとしきり作ったところで、明日が資源ゴミの日だと気がついた。面倒だ。河童が必死でしがみついている一升瓶をラッパ飲み。本日も独身者の部屋は、ノックしないで開けないほうが良いというお話であった。
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