創作行為に限ったことであるが、性能の悪い頭より、中から湧き出るものを優先することに決めている。私の場合、頭を使って企み計画し、励んだことははずしがちである。それより理由など判らずとも、やらずにおれないことに殉じる。その方が結果が良い。 91年に松涛美術館の『野島康三展』の図録に衝撃を受け、神田の古書街に通い、大正時代を中心にした文献を入手し、結果、ブロムオイルでなく、その一歩前のオイルプリントを手がけることにした。理由は現在の印画紙は硬膜処理がなされ、使えないと思い込んでいたからである。 素人が独学でやるので、重クロム酸アンモニウムを平気で素手で触り、まっ黄色に染めながらやっていた。人形制作を放っておかしなことをやっている、と周囲は止めたが、私自身発表するつもりなどなく、ただやりたいだけなので、画が出たら止めるつもりでいて、実際即止めた。こんなことをしていてはいけない、とハラハラしていたのは私自身だったからである。 それがいつの間にか写真展をやるようになり、だったらいっそ、あのオイルプリントだろう、ということになった。“このためにやっていたのか”以来、中から沸いてくるものに逆らうことはない。
『モダン藝術写真展』9月15日(月)~10月7日(火)
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※世田谷文学館にて展示中10月5日まで
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