私の作品は写真撮影が主の場合は、例えば手塚治虫がジェットエンジンの翼をつけて飛んでいる、などという物を作ったりするが、ほとんどがただ突っ立って無表情である。それは黒人のジャズシリーズを制作していた当時、“何かをしている”より何もさせない方が、観ている側のその時の気分によって様々に見えて来ると思ったからである。それは後にそれを被写体とするようになり、撮影現場の状況照明の状態によって違って写る、というメリットが生まれた。 制作中の小津安二郎はローアングルで演出中、という設定で、めずらしく座り込んでいる。小津に関してはこれだけはやってみたかった。いつもと勝手が違うので、ワイシャツ姿にするかスーツ姿にするのか、前回と同様カーデイガンにするのか、まだ決まらない。私の場合、頭部以外は、よほど独特の格好の人物でない限り写真資料を参考にすることはまずない。よって有名なローアングルの小津、といっても、写真に残されている小津とかぶることはない。それらは撮影した写真家のものである。 例外といえば、例のフリーペーパーで『坂本龍馬と大手町を歩く』という、恐れていた侍を現在の風景に、というお題に、例の腕組みスタイルで江戸城は大手門に立たせ、外国人カップルやはとバスツアーなど江戸城に出入りさせ、龍馬に『よけいなことをしてしまった?』みたいに反省させてやれ、と。トンチでも効かせないと私の腕力ではとてもとてもなお題であった。
開廊55周年記念「眼展2016Part1〜妄想キャバレー〜」銀座青木画廊
2016.11/05(土)~2016.11/18(金)アートスケープ 展評『深川の人形作家 石塚公昭の世界』
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