明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



画狂老人葛飾北斎といって浮んだのが蛸に絡まれた北斎だった。通常と違い、最初に大ネタの変格的作品を作ってしまった。あれ以上のアイデアは私にはない。そこでここからは描き損じだらけの画室の北斎をリアルに制作してみたい。撮影場所はすでに決まっている。墨田の北斎美術館に画室を再現した実物大の模型があるが、180センチの大男感が出ていないし、肝腎の顔が伏せていて良く判らない。どこの誰か不明なただリアルな老人である。 画室の北斎は、昼間であれば窓の外、遠くに富士山が見えるのも良いだろう。夜であれば行灯の光で何かをスケッチさせるのも良い。例えば女の脚が覗いているところを見ると、どうやら裸の女を観察し写生しているようである。北斎は刑死人の首を持ち帰ってスケッチしたと伝わっているから、ザンバラ髪の獄門首を置くのも面白いかもしれない。父が学生の頃、友人の下宿に遊びに行ったら日大の医学生がいて、鞄に人の腕が入っていた、と子供の頃訊いた事がある。作り話をでっち上げて子供を喜ばせるようなサービス心が絶無の父であったから、おそらく本当のことであろう。生首の場合、粘土で作れば話は早いが、乱歩の『白昼夢』を手掛けた時、ケースに収められた首は人を使い、それを人形の乱歩が覗き込んでいる所を作った。そこで酔っぱらっては怪我をする、近所の酔っぱらいに獄門首役をやらせるのも一興かもしれない。年寄りの癖に辛い物が幼稚園児並みに苦手だから、唐辛子を騙して食わせて、悶え苦しんでいるところを撮れば自動的に無念の形相の獄門首になるだろう。ただしグロテスクさで見る人を辟易とさせるのが本意ではない。可笑し味の演出が目的の人選であることはいうまでもない。

平井憲太郎×山前譲トークショーは8月25日(土)となりました。お申し込みは下記まで。
石塚公昭幻想写真展-生き続ける作家たち- 2018年7月25日(水)~9月2日(日)(火休)

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『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載9回『牡丹灯籠 木場のお露』

展評銀座青木画廊『ピクトリアリズムⅢ』

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