明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



三遊亭円朝より始めた、被写体から陰影を排除する手法は、たまたま陰影を描かない浮世絵、日本画から思い付いた物ではあったが、被写体から陰影を消して撮るなんてことは、写真家はしばしばやってきたことであり、たいした話ではないのだが、何故日本画調になったかというと、被写体が作り物であったからで、さらに偶然日本画調になるような、私の造形具合でもあった。元々小さな人形に実物の燭台やら配す訳だからそれぞれ大きさの調整が必要だし、陰影を出さないため一つ一つバラバラに撮影しないとならない。それぞれピントを全面に合わせるし、一発撮りは不可能である。昔常用していたようなレンズの味はかえって邪魔になり、道具であるカメラも何でも良く、私の作品を撮らないとああはならない、という。自分の中から生まれる物は自分に都合の良いような物になるようにできているらしい。 この私の大リーグボール3号に対し、只今展示しているのは1号と2号である。人形を手持ちで撮った1号、これは今は誰でもやっている。2号というのは、過去の人物を、面白くも可笑しくもない指定された地区に配さなければならない、という、追い詰められた状態で編み出した苦肉の策で、背景を決めてから、それに合わせて人物を造形するというもので、時に頓知力も必要とした。毎号25万部のプレッシャー付きであった。 私としては晩年は今までの作品をオイルプリント可することに費やし終わる、と考えていたので3号が生まれるとは思わなかったが、思い付いて約一年で発表に至ったのは何よりであった。オイルプリントは、再現するのにやたらと時間がかかったが、あれは改良こそしたものの、私が発明したわけではないので、そう都合よくはいかない。ワークショップに参加した人が、その日初めてプリントした作品を個展に出品し、売れているのを見て、私の役割も半分済んだと思った。

平井憲太郎×山前譲トークショーは8月25日(土)となりました。お申し込みは下記まで。
石塚公昭幻想写真展-生き続ける作家たち- 2018年7月25日(水)~9月2日(日)(火休)

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『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載9回『牡丹灯籠 木場のお露』


展評銀座青木画廊『ピクトリアリズムⅢ』


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