いけない、と思いながら、どうしても悪癖が出る。頭部が完成すると、そこから身体部分を制作するのは楽しいのだが、その快感を増幅させるために、その手前でぐずぐずして自分を焦らしてしまうのである。頭部の仕上げなど後でも良いのに、ことさら手を加えてみたり、某店を一斉に出禁になった常連の“落ち武者会”にその頭部を持参してみたり。これは身体制作前の20代の頃からの習慣なのだが、これも頭部を持ち歩き、家に帰れば制作が待っているのだ、と何を飲んでも楽しく美味しいという悪癖というより奇癖に近い。実に困ったものである。ポケットに入れて持ち歩いて壊しはしないのか、と心配されるが、ぶつけたところでちょっと凹む程度で仕上げ前ならどうということはない。制作中の人物はすでに3パターンもの画が浮んでいて、1カ所は、ロケ先の了解もすでに得た。そのついでに企画が1つ浮び、近々打ち合せをすることにもなった。御馳走を前に、すでに口中は唾液で溢れかえっている。ここからは一挙に行きたい。 私は二日酔いをしないことと、モニターを一日中見つめていても疲れない体質、というのは実に幸運といえるだろう。だからといって寝床に本を敷いて、寝心地を悪くして睡眠時間を削る、というのはさすがにもう止めるべきである。そもそもそんなことをせずとも歳のせいで夜中に何度もトイレに起きる。家ではアルコールはすべて生で飲むが、よって外でも最近はなんとかハイや、なんとか割りはできるだけ避けている。 幼少期からお馴染みの、好きなことに没頭している時に湧き出る快感物質が過ぎて、涎を垂らしながらショック死、そんな死に方はできないものであろうか。
2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』より
※ 月刊ヘアモード12月号 no・693
不気味の谷へようこそ第9回 脳内イメージを表す人形写真
※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」
HP
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