英語道(トラスト英語学院のブログ)

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不易流行であるべきセンター試験

2019年12月07日 | 2020年大学入試制度改革
本日(12月7日)の信濃毎日新聞朝刊の社説で、記述式問題導入延期について取り上げられました。以下に本文を引用します。

記述式見送りへ 政治主導 ひずみあらわに


文部科学省が進める大学入試の改革は、二つの軸をいずれも失うことになる。骨組みがぐらつく共通テストへの移行はいったん白紙に戻し、改革のあり方を根本から議論し直すべきだ。

英語の民間試験の活用を先送りしたのに続き、共通テストの国語と数学への記述式問題の導入を見送る方向で政府が調整に入った。年内に最終判断するという。

およそ50万人が受験する大がかりな試験で記述式の問題を課すことにもともと無理がある。見送りは遅きに失したと言わざるを得ない。大学や高校の現場から強い異論が出ていたにもかかわらず、実施ありきで突き進み、混乱を招いた政府の責任は重い。

延期でなく、導入自体を取りやめるのが筋だ。記述式問題を課す必要があるなら、各大学が個別の試験で出題すれば足りる。実際、多くの大学が既にそうしている。共通テストにあえて組み入れる理由がそもそもない。

採点に充てられる期間は20日ほどと短く、1万人規模の人手を確保しなくてはならない。大勢で手分けするほど採点にはぶれが生じる。入試としての公平、公正さが保てない恐れがある。

極力それを避けようと、試行テストの国語では、細かく解答の条件を付け、書き出しや文末の表現まで指定した。これで、思考力や表現力を見る記述式本来の目的が果たせるとは思えない。条件に当てはめて書くのでは、主体的に考える力や表現力はむしろ損なわれるという指摘も出ている。

採点業務は、通信教育大手ベネッセコーポレーションのグループ会社が請け負った。ベネッセは一方で模擬試験や対策講座も手がける。そのことも、入試の公正さへの疑義を生じさせている。

入試改革は、官邸直属の教育再生実行会議が2013年に出した提言を土台に検討が本格化した。複数回受験など大幅な制度の変更を当面見送り、柱に据えたのが記述式と英語の民間試験だった。

現行のセンター試験をなぜ変える必要があるのか、具体的に検証されたとは言いがたく、大学や高校で議論の積み上げがあったわけでもない。移行の初年を21年とした根拠もはっきりしない。

現場を置き去りにして政治主導で無理押ししてきたひずみがあらわになっている。入試のあり方は本来、大学が主体となり、二次試験を含めて考えるべきものだ。政府が前面に出て手綱を引き、現場を振り回すようなやり方そのものを改めなければならない。(12月7日)
2020年度大学入試制度改革の問題点が、時系列で完結にまとめられていて、非常に分かりやすい社説です。信濃毎日新聞は大学入試制度改革について、その首尾一貫した批判的態度を貫き、社説やコラムで何度も取り上げてきました。教育現場で身を置く者として、とても心強く思います。これまでの社説やコラムはこちらにまとめてあります。

さて、これで大学入試制度改革は白紙に戻り、センター試験の英語の出題が変わっただけで、他は現行通りとなります。今回の社説にあるように、現行のセンター試験に問題がない限り、そのまま継続すべきです。前身の共通一次から40年以上の年月をかけて磨かれてきた日本の大学入試制度の根幹をなすセンター試験。いきなり大きな変化を取り入れてはその長所が損なわれます。これからも時代に合わせて少しずつ変えていく姿勢が大事なのではないでしょうか。そこには不易流行の精神が求められます。


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