マーガレット 詩 By 翔
季節を隔てる レインシーズン
冬のような冷徹さは無く 夏の様に情熱的でもない
そんな空を僕は見上げる
雨の滴が瞳に落ちると 一瞬だけ感じられるその冷たさは 曇り空に歪みを創りつつ
体の四方へ分散していき やがて手の指先から大気となって放たれ
足の指先から大地に染みこむ
懐かしいような 寂しいような いつかの自分がそこに居て
後どれくらいこの季節を迎えれば僕は あの香りから解放されるのだろうか
浜昼顔が咲き乱れる季節にストーリーは始まり 紫陽花が咲く前に
僕の前から失われた光。
写真嫌いの僕の腕を 強引に絡めて撮られた一枚の写真は そのまぶしさ故 に 引き出しの奥にしまわれたまま
始まりがあれば、終わりがある 永遠は無く しかしながら
記憶は消して消えること無く 又色あせることは無い
そう思うことが多くなった
路面のあちらこちらに有る 無数の鏡達は 雨粒が落ちる度に揺れ
その紋様は物理の理論通りに 正確に広がって 鏡面の角まで来ると折り返し
元来たところに戻ろうとする あたかも僕の心を見透かすように
青き16才の夏も これから迎える夏も 違うようでいて
何ら変ることの無い自分がそこに居て それは現実であり 夢のよう
レインシーズン 中途半端であって しかしながらそれが無くては
季節はシフトしないのだ
パラパラという雨音はとても単純で しかしながら滴はその砕け散る対象物により
美しいメロディを奏でる それはあの歌声のように
タンポポの花達が雨の中で凜とした姿を咲かせ その横を濡れて歩く僕
雨粒と戯れ 嬉しそうに弾んでいた緑の葉達が僕に気付くと そっと囁いてくれれた
「僕たちの上に虹がかかり あの草原がマーガレットに覆われたら
夏が始まるよ」と
*浜昼顔の素晴らしい写真は、ここからお借りしました。