雨ニモマケズ Strong in the rain
宮沢賢治に関する評論や研究に贈られる、花巻市の「宮沢賢治賞」。第18回の今年は、作家で東京工業大世界文明センター長のロジャー・パルバースさん(64)(川崎市)が選ばれた。贈呈式では、「チョー気持ちいい」と会場を沸かせ、「『銀河鉄道の夜』は北半球から南半球に走っている。だから、賢治の魂は今ごろ、タスマニアの上空を飛んでいるはず」とユーモアたっぷりに受賞の喜びを表した。
約40年にわたる賢治の研究・翻訳が評価された。英国で昨年刊行した賢治の英訳詩集では、「雨ニモマケズ」を「Strong in the rain」と訳した。これまでの翻訳では、否定形で表現しているのがほとんだが、「この言葉には、人を救うために丈夫な体を持ちたいという賢治の祈りが込められている」と読み解いた。
同賞選考委員会の委員長を務める詩人の森三紗さんは「賢治の精神を深く理解して選んだ言葉で、今までだれも思いつかなかった斬新な表現」と絶賛する。
米ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校とハーバード大大学院でソビエト近代史を学び、ワルシャワやパリに留学。その後、帰国した米国はベトナム戦争のまっただ中。縁もゆかりもない日本にやってきたのも、「そんな米国が嫌いだった」(パルバースさん)からだ。 もちろん、日本語は片言も話せなかった。日本語の教本として知人から進められた賢治の作品を書店で探し、「一番短かった」という理由で「ざしき童子のはなし」を選んだ。それが「最も美しい日本語」と魅了された、賢治作品との初めての出会いだった。
「銀河鉄道の夜」をはじめ、多くの作品の英訳を手がけた。「日本語の意味を完全に理解、吸収した上で、改めて創作する。英語で読んだ読者が、日本人と同じように感じることができるか、作者の声が聞こえるか。自分自身が賢治にならないと書けない」。翻訳にあたっては、いつもそう心がける。 英訳を日本の若者にも読んでもらおうと「英語で読み解く賢治の世界」(岩波ジュニア新書)などの著作も重ねる。「賢治の作品を世界文学の財産として味わってほしい」からだ。 国籍のあるオーストラリアと行き来する生活。オーストラリアで芝居の演出をするほか、日本でも大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」で助監督を務め、今春公開された邦画「明日への遺言」では、脚本を担当した。大学教授として若者に向き合う姿も賢治と重なる。
今年は賢治の没後75年。「春と修羅」の序文にある「ひかりはたもち その電燈は失はれ」というフレーズが好きだという。「電燈つまり体はなくなっても、生命の光は残る。賢治という光をいつまでも保つのは、我々の責任」。そう心に刻んでいる。 (2008年10月6日 読売新聞)
「賢治の祈りを英語に」の記事が読売新聞の岩手版に掲載されたのですが、現在リンクが消えてしまっているようです。
復活しましたら、ご紹介します。
smooth(なめらかな)は、rough(粗い、ざらざらした)の反意語。
○Practical Example
“We had a very smooth beginning to the project.”
“I’m glad to hear it. Will the building be finished on time, then?”
「計画はすべて無難に立ち上げることができました」
「それを聞いてうれしい。では、建物は予定通りにできるね」
●Extra Point
「うまくおさめる、丸くおさめる」を英語で何と言うかとよくたずねられる。to smooth overを使えばいいと思う。
◎Extra Example
“I am having problems with my architect. The building is taking too long.”
“Let me talk to him. I think I can smooth things over.”
「建築家とトラブルになっている。建設に時間がかかりすぎる」
「では、ぼくからも話してみよう、うまくおさめることができると思う」