「好きな作家は?」と尋ねられると、一人だけ挙げるのはとてもむずかしいです。でも、その10人の一人に入れたいのが、アメリカの作家トマス・ウルフ(Thomas Wolfe, 1900-38)です。
ウルフは、ウィリアム・フォークナー(William Faulkner, 1897-1962)やF・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott. Fitzgerald, 1896-1940)と同時期に活躍した作家です。
南部ノースカロライナ州アッシュビル生まれのウルフは、自身を投影したと思われる人物を主人公にした4本の長篇と、数多くの短篇を残しました。
今日のGetUpEnglishは、このトマス・ウルフの最初の作品Look Homeward, Angel(1929)および、2000年に発表されたその無削除版O Lostから、印象的な文章を紹介してみます。
◯Practical Example
But in the city of myself, upon the continent of my soul, I shall find the forgotten language, the lost world, a door when I may enter, and music strange as any ever sounded, I shall haunt you, ghost…(Look Homeward, Angel, 1929)
しかし、自分という町のなかで、自分の魂の大陸で、わたしは忘れられていたことばを、失われた世界を、そして自分が入るかもしれない入り口を見つける。そこでは聞いたこともない奇妙な音楽が流れているだろう。幽霊よ、わたしはおまえに取り付いてやる……
ウルフのこうした詩的で、感情をそのまま吐露するような文章にいつも惹かれます。
●Extra Point
Look Homeward, Angelは、当初はO Lostというタイトルで発売される予定でした。以下の一節には、その表現がずばり出てきます。
◎Extra Example
Why has the web been woven? Why do we die so many deaths? How came I here beside the sea? O lost, O far and lonely, where?(Look Homeward, Angel, 1929)
なぜ蜘蛛の巣は編まれたのか? なぜわれらはそんなに何度も死ぬのか? なぜわたしは海の近くのこの場所にいるのか? おお、ロスト! わたしはどこにいるのだ? おお、こんなに遠くまで来てしまって、そしてたった一人ぼっちだ。ここはどこだ?
10月3日は、トマス・ウルフの111回目の誕生日にあたります。