何番になったのかな、忘れてしまった。それほど、このテーマはご無沙汰していることになる。その間、日本酒を買わなかったわけでも、飲まなかったわけでもない。月一で日本橋高島屋には行って、Nさんとおしゃべりしながら、何本か買ってきているし、天功は毎月とっているし、と酒に縁がなくなったわけではない。ただ書くのを忘れてしまっていただけである。
9月だ、春に火入れされ、夏をゆっくり眠ってすごした酒が、二度目の火入れをされずに出されるのが「ひやおろし」という。なんでもむかし、木桶から、冷のまま移されたのが、ひやおろしの語源だそうだ。夏を経てぐっと熟成した酒ということになる。一般的に醸造された酒は春に一回目の火入れをする。これは酒の品質を一定にするためである。火入れをすると熟成が止まってしまうような錯覚があるがそんなことはない。そして涼しくなった秋に、2度目の火入れを行い瓶詰めする。通常の二度目の火入れをしないのが「ひやおろし」ということになる。
今月のお酒は酔仙、岩手のお酒である。純米吟醸の「ひやおろし」はまだ若い感じ。これを1年半寝かせた「煌琳」はまろやか。で、いろいろ試飲して「煌琳」と試しに冷蔵庫に入れておこうと「ひやおろし」も買ってきた。寝かしておいたら、変身してくれるかな?
酒米は岩手産の吟ぎんが100%
蔵の人の話だと、「何年も東京に出てきたことはなかった。でも来ませんかと招かれたので、数年ぶりにやってきた」と。「出てくればいいことがありますよ。ふりの客でも、蔵の人と仲良くなって、お得意さんになることもありますからね」
八潮を指差しながら、「ここの常務さんとはすっかり仲良しになって、あれ持ってきて、なんてわめいていますよ。でもどちらかというと、東北のお酒は好きですね。岩手はあさ開の旭扇が好きですよ」なんて話をした。そうそう、ご贔屓になるには味はもちろんだが、蔵元の接客態度も大いに影響する。もっとも、高島屋の場合、地方の蔵元のお兄さんは場馴れしていないから、もたもたしているが、そこはNさんの接客態度のよさと酒についての豊富な知識がカバーしている。