11月2日、水曜、晴れ。
今日も天気がいいので洗濯、外で猫トイレ掃除。
淡いピンクのサルビア、赤いゼラニウム、
明るい緑が織り成す眺めはモネの絵みたいで、
ソファに座ってお茶を飲みながらボーッと庭を眺めていると、
猫たちが駆け回って部屋を横切る。
朝っぱらからビーとモンチが鬼ごっこ。
ビーがモンチを追いかけて部屋を横切ったかと思うと、
今度はモンチがビーを追いかけて部屋を横切る。
トムとジェリーというか、アラレちゃんとガッちゃんというか…で、楽しそう。
殿は仲間に入れず、タワーの柱で爪をといでいる。
2匹がドドドドドと倉庫部屋に入っていったのでそっと覗くと、
ビーは私を見てモンチの相手をやめてしまう。
ミニバラを買ってから、ミニバラの世話をしたり、
バラについて調べたりするうちに、すっかりバラの虜になった。
何でもあるがまま、自然のままが一番好きで、
花は野の花が一番かわいいと思っていたので、
人の手で交配を繰り返されて作られたバラにはずっと興味もなかったのに。
調べていくうちに、アリやな…と思い始めた。
美しいものに魅了されることに、理由も理屈もない。
秋の花といえば菊だけど、どうも菊とは相性が悪くて、
ふつうに世話をしていても、
どうしても大好きな夏の花たちほど好きになれなくて、
菊の方でも今一つ咲いてくれない(菊といってもコスモス系やアスター系)。
しっとり落ち着いた花色が、まだ私には早いのか。
そこでミニバラと出会い、バラについて調べるうちに、
夏の花が終わりかけて寂しかった気分が、
まさにバラ色なって心奪われた。
最初はモダンで洗練された高芯剣弁咲きのハイブリットローズが好み、
と思ってたけど、いろいろ知るうちに、
丸っこいカップ咲きのポリアンサローズもかわいいし、
一重の平咲きのバラもかわいいな…、
ととめどなくバラが欲しくなってしまった。
大苗を二つ買ったけど、大苗は花も葉もない30センチ弱の幹だけで、
来年の春まで花が見られない。
気が遠くなる話で、バラへの想いはつのるばかり。
ここはひとつ、開花苗を買って、
バラの花のある生活をスタートさせないと、バラへの撞着は収まらない。
で仕事帰りに植木屋へ。
いろいろ見て、落ち着きと華やかさを併せ持つ濃いピンク色、
カップから平咲きへと移り咲く花形、甘い香り、
どれをとっても1苗で私を満足させてくれそうなバラ、エスカペードを見つけた。
通りかかった店員に「このバラは初心者でも大丈夫ですか?」ときくと
「バラはよく初心者とか経験者みたいないいかたしますけど、
どんなバラでも虫はつきますし、病気にもなりますし…」。
そりゃそうだけど、葉に耐病性があるとか、暑さに強いとか、
花持ちがいいとか、枝がよく伸びるとか、
バラにも個性があることを勉強してきたのに…。
まぁ、いいけど。背中を押して欲しかっただけだから。
で、その苗を購入(3700円)。
樹高70センチくらいで蕾もいっぱいついている。
紙で包んだ苗を抱えて駐輪場まで歩いていたら、
若い女性に声をかけられた。「あの、」「はい?」
色白の、晴れやかな顔をした女の子。
「失礼かと思いますが、虹色のすごくきれいなオーラが出てるので…」。
オーラ? 不意に目に見えないものの話をされて
「怖」と思って「あ、ありがとうございます」とだけいって立ち去ったけれど、
虹色のオーラはバラから出てるのかもしれない、と思った。
でも、この前の土曜から、なんとなくだけど、
それまでなかった幸せな気分が、心と身体に湧いてる感じがする。
穴だらけだった心の穴が埋まって、そこから温かみが沸いてきてる感じ。
土曜日は部屋を片付けるような気持ちだったけど、
その後では、片付いた部屋の暖炉に火がついた感じ。
そんな中、お気に入りのバラと出会って持ち歩いてるんだから、
虹色のオーラが出てても不思議じゃないと思って、
その女の子ともっと話してみればよかった、と思った。
私も、オーラの色まではわからないけど、
人のオーラを感じることはよくあるから、
オーラについて聞いてみたかった。
自転車のカゴにバラを乗せて、上の方の包装は外して、
花を風に揺らしながら帰宅。
この移動中にバラの棘で手の甲をひっかいて、
猫にじゃれられたときと同じに、ちょっと痛くて、細い傷跡になった。
家に帰るとゴミ箱が倒されて荒され、
さらにカリカリの袋が破かれ、
ビーコが寝室から出てこないので、ビーと殿を怒鳴りつけた。
バラと猫、この世の美しさの極みの競演を楽しみにしてたのに、
ビーと殿は部屋に引きこもってしまった。
モンチはビーと殿と一緒にちょっと逃げたけど、
すぐにきびすを返して私のところに来て、
バラの鉢をクンクンして、葉っぱをペッと噛み千切った。
バラには農薬がついてそうなので、すぐにバラは外に出した。
ビーと殿と目を合わさずに怒ったフリを続ける。
ゴミ箱をひっくり返すのはやめて欲しいから。
晩ご飯に、無印のレッドカレーの素を使ってチキンのタイカレーを作り、
デス妻見ながら食べる。
食べてる途中で殿が膝に上がり、
怒っていたことを忘れて膝に乗せたままにしていたら、
ビーも来て膝の周りをうろうろした。
私が「怒って無視」をすると、
いつもビーはすぐ後で、謝ってるみたいに控えめに甘えに来る。
殿を膝に乗せてカレーを食べていたら、
テーブルからリモコンか何かが落ちて殿はビックリし、
飛び上がってテーブルに乗ってカレーの皿をひっくり返した。
あーあ、やっちゃった。カレーをこぼしてさらにビックリした殿は、顔を洗い始めた。
激辛カレーなので、殿の足につかなくてよかった。
日付が変わる頃、Cが深夜のお茶会に誘いに来た。用賀のカフェへ。
Cは「オヤジ星に3日間行ってた」といってお疲れ気味。
「欲しがりません、勝つまでは」の世代の人と、わかりあえるわけがない。
欲しがっちゃいけない理由もないし、それ以前に勝つ負けるの概念がないし。
オヤジ星で腐ったオヤジを見て、
同僚に「それが世の中だよ」といわれてショックだったらしい。
ずっと社会に出てればよくあることで、
私なんかはもう慣れちゃってるようなこと。
「いろいろ考えてたことを相談しようと思ってたけど、
アンタの顔みたら聞くまでもないって思った、なんかもうわかった」
「え? なんでもいいなよ、真面目に考えるよ」「ううん、もう平気」
寒いのをガマンしてテラスでお茶を1杯飲んでから店内に移動し、
お茶をもう一杯。お疲れ気味とはいえ、トークが弾んでめっちゃ笑う。
何しゃべったか覚えてないけど。
バナナのケーキが硬くて微妙で、それだけでもめっちゃ笑った。
うちに戻って一服。
ビーコたんがいい感じでテーブルの上に巨体を横たえてごろごろしていた。
ビデオでオーラの泉。美輪さんの一言、
「仕事も結婚も、すべてうまくいくってことはないのよ。
すべてがうまくいったら、命を落とすの」。
虹色のオーラなんか出してたら命を落とすんじゃないかと、
これまで刹那的な幸せしか知らなかった私はひやひやした。
タイカレーは大層美味しくできたのに、ダー帰らず。
すべてうまくいってるわけじゃない。
ダーは忙しすぎるし、私はなぜかいつもお金ないし。