この物語はフィクションであって、事実に基づいた話ではありません。
再度お断りいたします。この物語はフィクションであって、事実に基づいた話ではありません。
ここに出てくる石原慎太郎とは日本国の東京都知事・石原慎太郎のことではなく、同姓同名、年齢もほぼ同じではあるが、まったくの別人の石原慎太郎です。都知事ではありませんが、知事を職業としています。目下のところ、知事が彼の権力欲を満たす最良の機会であり、最良の手段となっています。日本人が権威主義に侵されていることを利用して自分を偉い人間の位置に置き部下を頭ごなしに怒鳴ること、出張・会合を利用しての公費でのグルメ嗜好の飽満飽食にしても、海外出張に於ける同じく公費を惜しげもなく使ったホテル宿泊は1泊200万以上の超豪華ホテルの王侯貴族気分満喫等にしても、自分を偉い権力者気取りに浸るための大事な演出手段となっている。勿論部長・課長以下、ヒラまで含めて隋員も多い。一人や二人では殿様気分を味わえないから淋しいとおっしゃる。
名誉毀損裁判の発端はあるブログで、弟の人気俳優石原裕次郎が(これもかつて石原プロの社長であった石原裕次郎とは同姓同名の別人だが)映画で競演相手の女優と結婚すると言い出すや、弟を自分の部屋に呼びつけて、「在日の女なんかと結婚するのはお前の勝手だが、絶対に子供だけは作るなよ! この石原の家系が在日の血で穢されちゃかなわんからな!」と、在日であることを理由に反対した人種差別主義者だといったことを書かれて、それは事実ではない、自分は人種差別主義者ではない、名誉を毀損されたと訴え出たことによる。
原告席に70歳を越えて髪の毛がかなり白くなった石原知事。神経質そうに瞬きを繰返し、膝を小刻みに貧乏揺すりさせている。一時も止めることができない様子。被告席に訴えられたブログ作者の女性。真緑のショートカットの髪。トンボのサングラスをかけていて、顔の半分は隠れている。Fカップどころか、異常なまでに膨らんだ胸の谷間をほんのわずか剥き出しに覗かせて、髪の毛と同じ真緑のタイトなシャツと椅子に座っているために太股を大部分曝した、ほんの腰周りしか隠していない真っ赤なタイトスカートは若いは若いが、まったく以って年齢不詳の格好に見える。イアリングにしては大き過ぎる、耳に1辺が3センチもあろうかといった金ピカに光る四角形の薄い金属板を、穴を開けた1角を頂点にした形で吊るしている。
胸の大きさはいくらでも細工できるし、どぎついばかりに真緑の髪の毛も、カツラかもしれない。裁判に負けて世間に恥をさらすことを恐れる年齢不詳が目的の装いではなく、原告が差別対象としている〝女性〟を異形の形でことさら強調して原告小バカにしようとする目的の年齢不詳を装った可能性がある。
彼女には弁護士はつかない。彼女自身が特別弁護人となって自分を弁護することになっている。
傍聴席はマスコミ関係者が殆どを占めている。訴え出た告訴人が今は亡きかつての人気俳優の兄であり、知事をしていて、テレビの番組に頻繁に出演して世間に顔を知られているということだけではなく、差別発言を繰返してくれるお陰でマスコミには格好の食いつき材料となっている〝有名人〟である。傍聴人が多く出て混雑することが予想されたことから前以て傍聴券を配布することとなり、マスコミ各社は確実に傍聴できるよう、傍聴券を手に入れるためにアルバイトを雇って我先に並ばせることにした。
ところが、一旦雇った大学生から「2千円のアルバイト料では安すぎる。他のテレビ局では同じ並ぶだけで3千円払っている。バカらしいから降りる」とクレームがつき、仕方なく4千円に上げると、それが発端となって値上げ競争に突入、ついに1万円に撥ね上がった。ところが値上がりに応じて確実に手に入れなければならない強制が働いて、3日前から並ぶとか、4日前から並ぶといった競い合いが生じて、マスコミの方も競い合いを制するためにカネをそれ相応に奮発せざるを得なくなり、とうとう1日1万円の日当で、それも2週間前から並ばせることにしたマスコミもあるといった加熱ぶりが噂となって流れた程である。
一人の大学生が「一日1万円なら、1年前から並んでもいい」と言ったとか言わなかったとか。
傍聴席には外国のマスコミも陣取っていた。石原慎太郎知事がかつて「アメリカなんかクソ喰らえだ」と発言したことが海外のマスコミに取り上げられた関係からだ。世界中から裁判の行方が注目されている、名誉あることではないか。日本人の拉致の問題にしても、世界中から注目されているわけではないのだから。注目させるだけの政治的手腕が日本の政治家にはないだけの話ではあるが。
裁判長が裁判の開廷を告げると、特別弁護人がさっと手を上げて、「裁判長、裁判の順序として、最初に大根役者石原裕次郎の妻が・・・・」
声から判断すると、かなり若い女性のようでもある。
検事と原告の石原慎太郎が同時に立ち上がって、同時に手を上げ、同時に「裁判長っ、異議あり」と声を上げた。
裁判長「被告人は静粛に。許可のない行動と発言は控えてください。検事どうぞ」
検事「弁護人の今の発言は不穏当な発言であって、取消しを求めます」
裁判長「異議を認めます。弁護人は不穏当な発言は控えるように。ことによってかつての
国民的人気俳優石原裕次郎を大根役者などと」
特別弁護人立ち上がってから、身体を動かすと巨大が乳房がブラジャーに対して座り心地が悪くなるのか、それを直すみたいに胸を下から二度三度とことさららしく持ち上げる仕草をした。「裁判長、先ほどの私の言葉は故人を傷つけることを目的に発言したものではなく、単に評価した言葉に過ぎません。仕事上の能力に関して彼は無能力だとするのも評価であって、その人間を傷つける言葉とは限りません。なぜ大根役者なのか、その評価を聞いてから、発言内容が不穏当かどうか確認すべきだと思います」
検事「裁判長」と手を上げる。それを無視して、
裁判長「大根役者という発言が評価の言葉だとするなら、それが正当な評価かどうか確かめる必要がある。弁護人、続けてください」
弁護人「私は大根役者石原裕次郎がデビューした当時はこの世にまだ生まれていなくて、どんな衝撃を与えたのか情報でしか知りようがありませんが、しかし日本の映画が廃れてテレビに出ていた頃の大根役者――」
検事「裁判長、異議あり。日本の財産である俳優の故石原裕次郎氏の名前を口にするたびに大根役者と形容詞をつけるのは故人を傷つけるものです。弁護人に改めるよう注意してください」
裁判長「異議を認めます。特別弁護人は石原裕次郎と言うたびに大根役者と前置きするのはやめるように」
弁護人「正当な評価に基づく正当な名称だと信じています。最後まで説明を聞けば、必ず納得がいくと思います。最後まで大根役者たる所以を説明させてください」
裁判長、興味を持った顔で身を乗り出す。「いいでしょう。検事の異議を却下します」
弁護人「大根役者石原裕次郎には決まりきったスタイルしかなかった。ズボンのポケットに両手を突っ込んで足を開き気味にピンと張って歩き、鼻を持ち上げる具合にして両目の間の鼻筋の部分に横皺をつくり、それが唯一最大の格好付けだった。それしかなかった。どんな役をよろうと、石原裕次郎は決まりきったスタイルの石原裕次郎でしかなかった。アクターとしての演技はどこを探してもなかった。だから、厳密な意味でのアクターでもなかった。ここに私が石原裕次郎を大根役者とする理由があります。大根役者石原裕次郎と呼ぶ以外に、どんな呼び方があると言うのです?」
石原慎太郎「バカなっ。何言ってるんだ、この女は。頭の悪い女だ」
検事「異議あり。故人を傷つける不当な評価です。認めるわけにはいきません。高名な演技者・故石原裕次郎氏に対する名誉毀損です」
弁護人「名誉毀損で訴えますか?」
検事、帽子をかぶっていなのにさっと脱ぎ捨てる格好をしてから、「訴えてやる」と叫んだ。
裁判長「検事の異議を認めます。大根役者だという評価に一理を認めるが、非難合戦となったなら、裁判が前に進まないことになる。従って、検事の異議を認めます。石原裕次郎大根役者論はこの辺で打ち切りとします」
弁護人「石原裕次郎が如何に大根役者であったか気づかずに今以てファンとなっている日本人の気が知れないし、こういったこと自体が不公平なことですが、裁判長には一理あるとお認め頂いた。光栄に思います。いずれにしても故石原裕次郎の妻が在日であるかどうかの確認作業を行うべきだと思います」
検事「異議あり」
裁判長「異議は却下します。弁護人の申し立てを申し少し聞くべきでしょう。」
弁護人「もう少し聞くべきです。彼女が在日でなかったとしても、原告石原慎太郎知事が在日の女なんかと結婚するのはお前の勝手だが、絶対に子供だけは作るなよ! この石原の家系が在日の血でけがされちゃかなわんからな!と言わなかったと断定するわけにはいきませんが、例え聞いたとする証人が現れても、発言が生じた状況を考えると、兄と弟しかその場に存在しなかった可能性からして、間接的伝聞ということになりまず。間接的伝聞は、あれはウソつきだ言われればそれまでで、録音してあるとかの物的証拠がなければ証明困難となり、名誉毀損の罪を受け入れることにします。」
検事「異議あり。在日でなかったとしても、言わなかったと断定するわけにはいかないとは発言に矛盾がある。訂正させるべきです」
裁判長「弁護人、根拠あっての発言ですか」
弁護人「世の中のことを批判したり、周囲が常識としている慣習に反対を唱えたりすると、共産主義者でも朝鮮人でもないのに、あいつはアカじゃないのかとか、朝鮮人じゃないのかとか自分たちが劣る見なした存在と同等の位置に置く決めつけを行うことで言っていることは間違いだとする誤魔化しを行うことがあります。それと同じで石原知事にしても弟の結婚相手が自分が気に入らない女と言うだけで差別の対象としている在日を持ち出して、あんな朝鮮人みたいな女と結婚は許さないと決め付けた可能性も捨てきれません」
検事「異議あり。弁護人の言っていることはあくまでも憶測に過ぎません。根拠あっての発言ではありません」
石原慎太郎が立ち上がり、弁護人を指差して、「バカなこと言う女だ。どのような欲求不満があるか知らないが、いい加減なことを言う。俺がそんなこと言うか。バカな女だ」
弁護人、嬉しそうに手をパチパチと叩く。「始まった。自分に不都合なことを言われると、欲求不満からの発言だと不当に非正当化する。石原知事がそういった人間であることを今曝した。私はあくまでも人間行為の確率高い可能性から判断して発言したまでですが、石原慎太郎知事という個人に限っると、その可能性はもはや臨界状態の高さです」
裁判長「確かに世の中の例を見れば、弁護人の主張は可能性高いと言えるし、『欲求不満』発言からも被告に当てはめ可能となるが、確かに言ったとする証拠を示すことができない限り検事の異議を認めざるを得ない」
弁護人「可能性を認めて頂けただけで、十分です。故石原裕次郎の妻が在日であるかどうかの確認をお願いします」
石原慎太郎、腕を組み、怒りを含んだ顔を不機嫌そうにしてそっぽに向ける。
検事「裁判長、改めて異議を申し上げます。大根役者――、いや人気俳優だった故石原裕次郎氏の妻であり女優だった女性の出自を世間に曝すのは彼女のみならず、日本に住むすべての在日に対する差別を煽動しかねない危険を孕んでいるゆえに、確認作業に賛成することはできません。弁護人の主張には明らかに差別の対象にしようとする悪意さえ読み取れます」
裁判長「今の検事の主張に対して、弁護人に反論はありますか?」
弁護人「私の主張は石原裕次郎の妻の出自を世間に曝そうするものではなく、裁判の進行に必要とすることから求めたに過ぎません。例え在日であると証明されたからといって、差別を煽動することにも、あるいは差別の対象とすることにつながるとは思いません。例え彼女が在日であると世間に遍く知られることになったとしても、後から来た在日であったという事実が付け加えられるだけのことです。つまり先住在日の子孫であるすべての日本人の一員になった、我々の一員になったというだけのことで、そこからは差別は生じようがありません」
石原慎太郎、立ち上がって怒鳴る。目を神経質そうにパチパチ閉じたり開いたりして、「バカがっ。日本人全員が在日だと言うのか?我々は日本人なんだぞ。根拠は何だ、根拠を言え」
検事が広げた両手を下げる仕草で、抑えて、抑えてといったふうに宥めようとしている。
裁判長「原告は静かに。許された発言のみ行ってください。勝手な発言は許されません」
石原慎太郎、裁判長を睨みつけ、何か言いたげに口を開きかけるが、神経質そうに目を余計にパチパチさせるだけで、睨みにならない。チエッと舌打ちするような仕草を見せてから、乱暴に椅子に腰掛ける。
裁判長「弁護人の今の発言はどのような意図があるのですか」
弁護人「自然人類学者であった故埴原(はにはら)和郎氏は3世紀の弥生時代前期から奈良時代に至る7世紀までの1000年間に朝鮮半島から日本にやってきた渡来人の数を数十万から100万と推定しています。このことは大阪府吹田市の国立民族学博物館教授の小山修三氏がコンピューターを駆使した検証によって証明されているそうです。その検証によると、<縄文時代の約1千年間に数千人~30万人の間を浮動していた人口が弥生時代に約4,50万人の増加を見ていて、その最大原因は大陸からの民族大移入だとしています>(<>部分(「渡来人登場」から引用)
石原慎太郎「自分に都合がいい説を持ち出したに過ぎない。わが国に於ける人口増加を渡来人によるのではなく、稲作農耕の定着と共に起こった人口の急激な増加によると考える説もあるじゃないか。確定した説はない」
裁判長「許可を取らない発言は控えてください」そこで検事が代わって
検事「弁護人の推論を否定します。わが国に於ける人口増加を渡来人によると考えるのではなく、稲作農耕の定着と共に起こった人口の急激な増加によるとする説もあります。どちらが正しい説かは未だ確定してはいません」
裁判長「弁護人、検事はそう述べていますが」
弁護人「かの有名な小説家、全然有名じゃないか、手代木恕之という隠れ作家は自著『天皇は日本人だった』で、武力を持った渡来勢力が新参者の他処者が日本をいきなり支配するのは反発を招くからとの遠謀深慮から、その当時の日本では単に勢力のある一豪族に過ぎなかった天皇家を担ぎ上げて、その陰に隠れて天皇が日本を支配したような形を取らせることで日本を統一したとする、歴史推理でしょうが、説を述べています」
石原慎太郎「ハハハ、聞いたこともない小説家だ。直木賞・芥川賞を取らなければ、小説家とは言えない」
裁判長が手を上げて許可のない発言を制止しようとしたが、弁護人がすぐさま発言したので、手を降ろす。
弁護人「そのとき築いた権力の二重構造が日本の美しい歴史と伝統・文化となって引き継がれていったと書いています。日本の歴史を貫いて名目的権力者の地位にあった天皇家に対して、物部氏、蘇我氏、藤原氏、武士の時代に入って源、北条、足利、織田信長、豊臣秀吉、徳川といっ各時代時代の実質的実力者が政治権力者として権力を握る二重構造の権力図を描いてきた。そして明治と大正の時代は薩長、昭和戦前は軍部と、常に天皇家は名目的地位であり続けた」
石原「デタラメだ」
弁護人「弥生人は渡来系だとの説が定説化しつつあります。弥生遺跡である吉野ヶ里遺跡で発掘された人骨は解剖学的に渡来系だと証明されています。我々はそのような先住在日の子孫と考えても不思議はありません。当然俳優であった石原裕次郎の妻が在日であったとしても、日本に住むすべての在日に対する差別を煽動しかねない危険を孕んでいるとする検事の指摘は的を得た指摘とは言えません」
裁判長「弁護人の主張を受け入れ、妻が在日であるかどうかの検証に進むことにしますが、検事に異議がありますか?」
検事、原告席に近づき、石原慎太郎とヒソヒソ声で話し合う。
検事「仕方がありません」
裁判長「在日であるかどうかの事実は、兄であった原告が周知していることだから、原告本人に聞くのが一番早いと思うが――」
検事、再びヒソヒソ声で相談する。検事、怒鳴りつけられているらしく、卑屈にペコペコと頭を下げている。
検事「原告は妻が在日であると証言しました」
傍聴席からどよめきが起こる。それが収まってから、
裁判長「では、原告が弟を自分の部屋に呼びつけて、在日の女なんかと結婚するのはお前の勝手だが、絶対に子供だけは作るなよ! この石原の家系が在日の血で穢されちゃかなわんからな!といった可能性はあるということになる」
検事「本人は言ってないと否定しています」
裁判長「本人の否定をすべて事実とすると、警察も検事局も裁判所も無用の長物と化す。すべての法律もいらなくなる。農水省の松岡君の否定も事実としなければならなくなる」
石原原告、怒りに握り締めたこぶしが震えている。検事は諦めたように肩をすくめた。
裁判長「弁護人は何か意見がありますか?」
弁護人「録音等の物的証拠が期待不可能の状況では、まず原告が言ったことと言わなかったことを明らかにすべきだと思います。既に世間で言ったと明らかになっていることを実際に言ったかどうか訊ねて、言わなかったと証言したら、在日の女なんか云々を言わなかったとする否定は信用できないものとなります」
裁判長「検事は今の弁護人の主張に異議はありますか」
検事「ちょっと原告と相談させてください」
二人、何やら声を抑えて言い合いの様子。石原慎太郎は時折「バカなこと言うな」とか、「お前はバカかっ」と声を荒げる。検事は一生懸命に原告の怒りを静めるような仕草を続けている。裁判長に「早くするように」と催促されて、やっと検事は裁判長に顔を向ける。
検事「承知しました。原告石原慎太郎知事は言ったことは言ったと正直に申し上げることで言わなかったとすることと合わせて自らの証言の正しさを証明すると言うことです」
裁判長「では弁護人は原告尋問と言う形で直接原告に尋問を行ってください」
弁護人、原告席に近づき、石原慎太郎の目の前に巨大なバストを突き出すようにして下から持ち上げてブラジャーへの収まり具合を直した。どう見てもわざとらしくやったようにしか見えなかった。
弁護人「あなたは2001年10月の『少子社会と東京の未来の福祉会議』で、これは僕が言っているんじゃなくて、松井孝典(東大教授)が言っているんだけど、文明がもたらした最も悪しき有害なものはババアなんだそうだ。女性が生殖能力を失っても生きてるってのは、無駄で罪です、って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を産む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって・・・・。なるほどとは思うけど、政治家としては言えないわね、と発言しましたか」
石原慎太郎、目を神経質そうに盛んに瞬かせ、「言った。そうなってるんだろ」
弁護人「そのとき、男だったら、何歳まで生きる権利があると思っていましたか」
石原「そんなことまで思って発言したわけじゃない」
弁護人「知事の立場にありながら、男は何歳まで生きる権利があるとしないで、閉経した女に関してのみきんさん、ぎんさんの年まで生きるのは悪しき弊害だとするのは不公平になりませんか」
検事「異議あり。弁護人は言ったか言わなかったかを問うことだけを指示されたのであり、言った内容の是非を問うことまで指示されたわけではありません」
裁判長「聞きたい気持ちもあるが、検事の異議を認めます」
弁護人「あなたは中国人犯罪に関して、『こうした民族的DNAを表示するような犯罪が蔓延することでやがて日本社会全体の資質が変えられていく恐れが無しとはしまい』と新聞のエッセイに書きましたか」
石原「ああ書いた。書いたことは全部正直な気持だった。(検事が両手を挙げてストップをかけたが、無視して)今でも書いたことは全部正直な気持として残っている。そして、在日の女なんかと結婚云々とか、石原の家系が何とかは一言も言っておらん」
弁護人、裁判長の方に身体を向け、「この他にも原告の石原知事は三国人発言とか、三宅島火山爆発後、三宅村議員に対して、お前らバカかっとバカ呼ばわりする、相手の人格・人権を認めない独裁者もどきの差別、あるいは男女共同参画を否定するような女性差別発言等々からして、原告が人種差別感情・女性差別感情を抱えているのは誰の目にも明らかな事実です。そのことをまずお認めになって頂きたいと思います」
裁判長「まあ、事実と認めざるを得ない状況にあることだけはあると言えるが・・・」
弁護人「差別感情を抱えている人間に特有な症状ですが、原告にしてもこうも差別発言が続くと言うことは、差別に当たると気づかずに差別発言していることを証明して余りあります。無感覚に差別を行っている。人殺しを犯したあとも、相手の痛み、悔しさに無感覚な人間と同じで、始末に悪い無感覚と言えます。弟に対して『在日』発言を行ったとしても、差別発言だとは決して思っていないでしょうし、思うこともないと思われます。しかし弟の妻は後から来た在日であり、本人は先住在日の子孫であるかもしれないのに自分たちは特別な人種である日本人だと思い込む人種差別感情を始末に終えない持病のように抱えている。これらのことから状況証拠としては発言があったと仮定しても無理はないと思いますが、裁判の結果はどう出たとしても、この差別主義者を社会的及び政治的に受け入れるかどうかは別問題であって、そのことに対する評価は世間の判断に任せる以外ありません」