橋下新大阪府知事のジレンマ/小学校運動場全面芝生化か人件費削減か

2008-01-30 06:51:54 | Weblog

 「建設事業の場合は資産が残る」(橋下)は事実か

 大阪府07年度当初予算は次の通りだそうだ。
  【歳出】
 一般施策経費/1兆2130億円
    その他/4700億円
  建設事業費/2870億円
  義務的経費/1兆2855億円(うち人件費9266億円
    計3兆2555億円
  【歳入】
    その他/4953億円
貸付金元利収入/6415億円
     府債/2293億円
  国庫支出金/2415億円
  地方交付税/1750億円
     府税/1兆4694億円
    計3兆2555億円
 (08.01.28/asahi.com≪橋下氏「府債発行認めない」 人件費カットの可能性も≫)から。

 次に≪橋下インタビュー・一問一答≫(asahi.com/2008年01月28日)

 <大阪府知事選で当選した橋下徹氏のインタビューの要旨は次の通り。(聞き手・渡辺雅隆社会エディター)

――「赤字隠し」のための府債の借り換えは今後どうするか。
 基本は認めない。
――借り換えを認めないと毎年900億~500億円の歳出削減が必要になり、
  職員の人件費も聖域ではなくなる。
  聖域はない。一つ一つの事業を見直すことは当たり前だが、基本は府債
  の発行は認めない。借り換えも58%までしか認めない。収入の範囲でや
  ってくれと。足りなければ人件費を削ってもらうしかない
――私学助成も削減の対象になるのか。
  聖域はない。府債が2300億円、借り換えを認めないと年間500億~600億
  円、合わせて3千億円をどうするか。自分らの後始末だから頭を使って
  くれと。
――建設事業のための府債も認めないのか
  建設事業の場合は資産が残るので、本当に必要ならやむを得ずや
  るだろう。ただ、基本的には認めない。府債発行と借り換えを安易に認め
  ない形で予算編成をやってもらう。知恵を出すのは職員の使命。政治的な
  圧力を無視して思う通りに予算を組んでもらいたい。
――08年度予算にマニフェストの施策は反映させるのか。
  2月議会では、どれも入らないと思う。
――歳出削減でマニフェストに掲げたことができなくなる。
  最悪でも職員の人件費を削ればできる。僕はそれで選挙を通ってきた
  。絶対に予算に入れる。
――副知事人事で外部登用は考えているか。
  人事はまったくの白紙。まずは現職の副知事と話がしたい。
――大阪市との連携は。
  それが一番重要だ。これまでは互いにメンツにこだわって連携がとれなかっ
  た。僕は府民のためなら大阪市長に土下座してでもお願いしたい。>・・・ 

 5兆円も残高を抱える府債の新規発行は認めない、収入の範囲内で予算を組む、不足分は人件費を削ると言っている。

 その一方で、建設事業の府債は必要ならやむ得ず発行する、府債発行と借り換えを安易に認めない形で予算編成をやると言っている。

 いわば「安易には認めない」が「必要ならやむを得ず」認めると一方で柔軟性を早くも示している。当然柔軟性を自民党政治家や官僚みたいに打ち出の小槌とするのか、伝家の宝刀とするのか、その辺がカギとなってくる。

 全職員の人件費9266億円。警察官も教師の給与も含んでいるという。人件費削減の内に人員カットによる削減も入っているだろうが、日本の公務員の生産性が欧米に比して低いのは責任感に欠けることが原因であろう。裏ガネをつくって飲み食いに使う。仕事中にインターネットで馬券や車券を買ったり、結果をインターネットニュースで調べたりする。そういったことにエネルギーを注いでばかりいれば、当然仕事の効率は落ちる。逆に責任感を持って仕事に励んでいれば、裏ガネづくりやその他のことに精を出す暇など出てこないはずである。
 
 各事業ごとに少人数のチームをつくり、事業に向けたアイデアを出させる。それ以外の事務作業はパートとかの職員に任せることで人員を絞っていく。3分の1程度は減らせるのではないか。

 橋下徹が「建設事業のための府債も認めないのか」と問われて、「建設事業の場合は資産が残るので、本当に必要ならやむを得ずやるだろう」と答えたのは、頭に小学校の運動場芝生化を公約として掲げたことがあったからなのだろうか。それが公約の芝生化を果たすために生じるかもしれない「やむを得ず」なのか、芝生化の公約を実現することによってはみ出すことになるかもしれない他の建設事案を考えた「止むを得ず」なのか、当然優先順位ということは起きるのだから、どちらなのだろうか。

 簡単に芝生化といっても、大掛かりな工事となるから、当然造成の予算は生半可では済まなくなって、優先順位を下げさせられる建設事案も発生するに違いない。水はけの悪い運動場だと雨が降った後芝生の根に水分がいつまでもたまって根腐れを起こし芝生が枯れてしまうから、水はけをよくするために上半分に無数の小さな穴が開いていて、そこから地中の水分を引き寄せて外に流す有孔塩ビ管を要所要所に埋め込み、その周りを土で孔が塞がらないように微細な小石で30センチほどの厚さで管を巻かなければならない。小豆大の小石ばかりをわざわざ篩いにかけて集めたものだから、安くは上がらない。

 また場合によっては有孔管を埋め込むだけでは水はけがよくならない運動場の場合は土自体を4~50センチの深さ程度まで掘り起こして芝生の生育に適した土に入れ替えるといった大掛かりなこともしなければならない。そうせずに済んだとしても芝生を植える前に表面の土を機械でほぐし、肥料を満遍なく散布し根付きをよくする工事は必要不可欠の工程で、運動場全体となると、それだけでも相当な工事となる。

 また植えれば植えた後で日照りのときの水撒きや定期的な草刈、雑草抜き(芝生よりも雑草の方が勢いがいいから、放っておくと芝生が生えているのか雑草が生えているのか分からなくなる)といった手入れも相当に費用がかかる。費用が高くつけば、限られた建設予算が窮屈になって、いやでも他の建設事業にしわ寄せが及ぶ。

 当然他の建設案件に利害を持つ建設会社やナマコン会社、セメント会社等の後押しを受けた議員や職員と計画の激しい奪い合いが起きる。他の建設事案に犠牲を求めて、自分の「運動場芝生化」のみを通すことができるだろうか。両立させれば、予算が規定以上に膨らむ可能性も生じる。

 それを避けるために歳出削減が難しくなったなら、「最悪でも職員の人件費を削れば(歳出削減は)できる」と言っていた通りに職員に犠牲を求めるとしたら、自分が公約とした運動場全面芝生化は何ら犠牲に供しないままで済まなくなるだろう。これまで子供たちは土の運動場を走り回っていたのだから、運動場芝生化が必要不可決の課題とは言えず、そうである以上、他の予算に犠牲を求めた場合、自分の公約につける予算の場合も犠牲を受け入れないとしたら、バランス上都合が悪くなるに違いない。

 悩ましいばかりのジレンマが続くことになるだろう。

 橋下徹は上記「一問一答」の中で口にした時点で間違っていることを一つ言っている。「建設事業の場合は資産が残る」と言っているが、厚生省・厚労省と所管した年金被保険者、年金受給者向けの保養施設として年金保険料を1953億円も投じて日本各地に13ヶ所も建設した「グリーンピア」はすべて廃止され、売却額は僅か48億円、当初目的の「資産」の形をすべて失っている。このような場合、「資産が残る」とは言えないのではないか。

 旧郵政省が建設した「かんぽの宿」も赤字で売却した施設は残らない「資産」と化した。

 道路や橋にしても、そんじょそこらにない立派な構造物に仕立てたとしても、1日に数台しか車が通らないような道路・橋であったなら、もはや「資産」とは言えない。それを「資産」だと言うなら、利用価値や地域発展といった実質を無視し、外形のみに価値を置くハコモノ思想に侵されているからだろう。

 いや、「建設事業の場合は資産が残る」と言って何ら疑問を感じなかった時点で、人間がハコモノ思想で出来上がっていることを証明したのではないだろうか。

 しかし「建設事業の場合は資産が残る」は公共事業建設推進派にとって、建設正当化の口実にはなる。

 自民党や公明党の国家議員は「地方はまだ道路を必要としている」とか、「必要な道路は造らなければならない」と「必要な道路」をキーワードとして道路財源を死守しようと血眼になっているが、今後、死守の正当化に「建設事業の場合は資産が残る」と言い出すかもしれない。それが橋下の残した唯一の功績にならなければいいが。

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