麻生の国民を愚弄する「最初からこだわっていない」厚労省分割

2009-05-31 00:15:52 | Weblog

 安心社会とは「働くことが報われる公正で活力ある社会」と定義づけられているという。

 我が日本の総理大臣麻生太郎は5月19日の経済財政諮問会議で、「働くことが報われる公正で活力ある安心社会」構築を念頭にカラッポな頭で「国民の安心とか安全の立場に立ってどういったような形がいいか、内閣府の中にある少子化という問題もありますんで、そういったもの含めて全部突っ込みで基本は国民の安心安全の立場に立って再編を検討したらどうですか、という話をし」、厚労省の「国民生活省と社会保障省」に分割・再編を指示した。

 これは5月28日のぶら下がり記者会見で話した言葉を利用した文章だが、厚労省の「国民生活省と社会保障省」に分割・再編を指示したことはないと言っている。

 ぶら下がりでの遣り取りを「毎日jp」から関する部分のみを参考引用。
 

《首相VS記者団 厚労省分割案「最初からこだわってない」 5月28日午後5時56分~》毎日jp /2009年5月28日)

 ◇厚生労働省の分割再編問題

 Q:次に厚生労働省の分割・再編をめぐっておうかがいします。河村官房長官は、総理は厚生労働省の分割・再編にこだわっているわけでないと述べておりますが、総理はどのようにお考えなんでしょうか。

 A:あの最初からこだわってないと思いますんで、最初からこだわったような話を作られると困るんで、一番最初から国民の安心安全というものを考えた時にはどういったものがいいのかというのを考えた時に、少子化の問題含めて今の厚生省、労働省、いろいろ問題がありますけれども、ここのところをもう一回、国民の安心安全の側に立って、一回精査してみたらどうだ、これ確か読売新聞でなかったかな、あれは。渡辺さんが最初に言われたせりふだったと思います、私の記憶では。それを元にしてスタートをさせておりますんで、あのー、何となく分割の話ばっかりしているNHKはおかしいと思いますね。

 Q:総理、テレビ朝日ですが、総理、「安心社会実現会議」の中でその国民生活省と社会保障省を例示されておっしゃってましたけど、それにはまったくこだわらないと?

 A:ああ全然こだわりませんよ。ああいうところは自由な論議をした途端にそれをあたかも既成事実のごとく作られるような話をするのはやめたほうがいいですよ。

 Q:その後その、諮問会議で、与謝野さんが諮問会議後のぶらさがりで「総理から指示があった」と。

 A:指示をした内容は、国民の安心とか安全の立場に立ってどういったような形がいいか、内閣府の中にある少子化という問題もありますんで、そういったもの含めて全部突っ込みで基本は国民の安心安全の立場に立って再編を検討したらどうですか、という話をした。ほとんど正確にそういうことを言ったと思いますね。

 Q:与謝野さんは具体的に「厚生労働省の分割と幼保の一元化とを指示された」と。その会見でおっしゃったんです。
 
 A:あのー、違うと思いますね、それは。幼保の一元化は、それは、その中の一つの話なんであって、こども園とか今いろいろやっているところですから、現実問題として。こども園て知ってます?

 Q:はい。

 A:近くにある?

 Q:いや。

 A:ないでしょ? ないんですよ。だから問題なんですよ。本当はなくちゃおかしいんだから。もっとできてなくちゃおかしいでしょ。どうしてできないんですかと、僕はそう思ってますよ。
 


 自民党政府は何年も前から引きずっていた問題を新たに「新待機児童ゼロ作戦」という仰々しい名前をつけて待機児童解消に向けて政策を展開しているが、満足に進めることもできていないのに、こども園が近くにないことを、「だから問題なんですよ」と言うのは人事の言い方であろうlいや、言える神経は麻生ならではの素晴らしさと言える。

 麻生は言葉では否定しているが、ぶら下がりから判断するに実際は「・・・全部突っ込みで」、「再編を検討したらどうですか、という話をした」中に、厚労省を、国民生活省と社会保障省に分割・再編する検討が入っていたことが窺える。

 そうでなければ、「そういったもの含めて全部突っ込みで」と言うことにはならない。特別養護老人ホームになかなか入れない低所得高齢者の問題。待機児童ならぬ、待機高齢者である。その延長にある無許可老人ホームの問題、高いカネを先に取っておいて倒産してしまう有料老人ホームの問題、あるいは経営難から最初に約束したサービスの基準を下げてしまう有料老人ホーム、生活保護受給者の増加と自殺者まで出している情け容赦のない過度な受給制限の問題、各種保険の支払い、記録の問題、輸血製剤からの肝炎問題、また他の省庁とも通じる所管法人問題、天下り問題等々――より多くの問題を抱えている厚労省抜きに「国民の安心安全の立場に立って再編を検討したらどうですか」とまさか「突っ込みで」指示はできないだろう。

 厚労省とは国民の福祉と生活を預かっているのである。それを抜きに「国民の安心とか安全の立場に立」つ。あるいは安心社会を語る。これ程の矛盾はないだろう。

 「突っ込み」とは「良否・大小などすべてひっくるめること」と『大辞林』(三省堂)に出ている。「突っ込みで」とは恐ろしい言葉を使ったものである。さすが麻生太郎。マンガの世界だと思っているのだろうか。公務員改革、組織改革、どのような改革も「ひっくるめ」て話すことができる問題でもないし、「ひっくるめ」て話ができる程簡単な事柄でもあるまい。

 例え「突っ込みで」「話した」ことだとしても、相手が「ハイ、分かりました」と返事したなら、「話」は“指示”となる。相手に「時期尚早ではないか」、「現在優先させなければならない事柄ではない、バカめ」などと言われて、麻生太郎が、「そうか、時期尚早か、優先事項ではないか」などと言って沙汰止みとなったなら、その話は“指示”とまではいかずに、「話」のまま終わる。

 今回は党に持ち帰った時点で反対されて引っ込めたと言うことなら、後者の「話」で終わるケースに当てはまることとなるが、自身のリーダーシップのなさが取り沙汰されることを恐れて、「こだわっていない」とすることで、徹底的に「指示」と受取られかねない影の跡形もない証拠隠滅を図る必要が生じたのではないのか。

 新聞・テレビは19日の経済財政諮問会議後の記者会見で与謝野財務・金融・経済財政担当大臣(三大臣分の給料を貰っているのだろうかと余計な心配をしてしまった)が話した「首相から厚労省の仕事の切り分け、すなわち組織の分割、幼保一元化は与謝野氏が案を出してくれという指示があった」(「msn産経」)を根拠に各閣僚や自民党内からの反対に遭って再編・分割を断念、その上「最初からこだわっていない」と表明したものだから、迷走だ、またぶれたとの批判を大合唱したのだが、打たれ強い麻生太郎はぶれ批判・迷走批判にもめげずに再編・分割指示を否定、ぶれていませんと相変わらず打たれ強いところをご披露に及んだ。

 そこへ鳩山邦夫前“死神”法務大臣、現総務相というツヨーイ味方が現れて、29日午前の記者会見で、「首相は厚労省を分割する方向で検討してくれと言ったことは一度もない。ぶれていない」(「msn産経」)と見事な援護射撃。

 次いで、「やや正確性に欠けていたかな、と思う。・・・・正確には首相は『考え方の整理をして下さい』と言われた」(「asahi.com」)と与謝野が19日の記者会見の自らの発言を軌道修正、これ以上確かなことはない最大級の蘇生カンフル剤を麻生の鼻に吹き込んだ。

 自分の言い間違いで、麻生は正しいと発言訂正したのである。腹の中で頭はカラッポだけどと言っていたかどうかは誰も窺い知ることはできない。

 ここでは麻生は経済財政諮問会議では厚労省分割・再編に関わる明確な指示は出していなかったとしよう。

 だが、である。麻生が「国民の安心とか安全の立場に立って」と言っているように今回の経済財政諮問会議は「安心社会実現」をテーマに開催している。当然、「安心社会実現」を阻害している制度上の問題、省庁の組織上の問題、あるいは運営面での問題を分析・把握して、改善点の必要な箇所を拾い出し、一つずつ改革していくというプロセスが必要となる。

 例え暗黙の了解であっても、このようなプロセスを踏む手順を取っていたなら、厚労省の分割・再編の指示を出していないということは、様々な点を分析・把握したが、制度面でも組織面でも運営上の事柄でも問題点は見つからなかった、実際にはそんなことないのだが、ということになる。

 最初の段階である分析・把握の時点で問題点を見い出していたなら、その改善を指示するはずだからである。だが、厚労省の分割・再編に向かうまでの問題点は何ら洗い出せなかった。だから、その点についての指示は何も出さなかった。

 と言うことなら、記者会見で述べる言葉は次のようにならなければならない。

 「現在のところ組織をいじるところまでは必要ないから、分割・再編といった指示は出していませんでした」

 それを「あの最初からこだわってないと思いますんで、最初からこだわったような話を作られると困るんで」と言っている。

 この言い方は問題点がないか分析・把握した結果、いくつかの、あるいは様々な問題点を見い出したが、たいしたことはない、再編・分割にまで拘ることはないということで、「あの最初からこだわってないと思いますんで、最初からこだわったような話を作られると困るんで」となったということでなければならない。

 麻生がもし厚労省の分轄・再編は必要なしと拘っていないとしたなら、現実にある厚労行政の様々な問題点を分轄・再編以外の方法で改革し、解決に導く方法を国民に説明する責任を負ったことになる。これこれこのようにして国民の安心・安全を守ります、安心社会をつくっていきますと。

 説明をする責任を果たさずに、「あの最初からこだわってないと思いますんで、最初からこだわったような話を作られると困るんで」で終わらせるとしたら、国民を愚弄することになる。麻生の「安心・安全」はただ口で言っているだけのことになる。

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