西松民主逆風なら、地方選挙は「政権交代の試金石」と位置づけて戦うべき

2009-05-02 09:27:24 | Weblog

 4月12日投開票の秋田県知事選は民主党支持候補川口博が自公支持候補佐竹敬久に敗れ、3月末の千葉県知事選に続く民主党連敗となった。その主たる原因を西松建設違法献金事件で民主党小沢代表の公設秘書逮捕によって生じた民主党に対する逆風が挙げられている。

 西松事件をキッカケに世論調査でも麻生内閣支持率は盛り返しを見せたが、と言っても、不支持率が支持率の倍の60%前後止まりの盛り返しなのだから、麻生太郎の人間的スケールに合わせたとも言うべきほんの僅かながら危険水域を離れた程度の回復基調と言うべきだろうが、、「次の首相に誰がふさわしいか」でも小沢代表が保っていたリードをこれも僅かながら麻生太郎に再逆転を許す苦境に立たされていた中での千葉県知事選に続く秋田知事選の敗北であった。

 地方選の各候補者共、票離れを恐れて有権者の前で小沢代表と一緒に立って応援演説を受けることを忌避、到頭、街頭に並んで立つことはなかった。要するに誰もが西松逆風の選挙への影響にビクビクしていた。秋田知事選では川口博候補者は悪影響を憚って「民主党」の言葉すら口にしなかったという。

 そして開票の結果、多くの見立てとおりに危惧していたことが落選という形で現実に知らしめられることとなった。

 民主党支持者は西松建設の違法献金によって黒いカネにまみれ、支持を失っていたのだから、負けて当然の現実だと誰もが思ったに違いない。党代表自身が種を蒔いた逆風なのだから仕方のないことなのだと。

 逆に自公支持者は西松ショックがボディーブローのように効いてきて民主党の勢いを殺ぎつつあるのを実感し、敵失とは言え、その支持動向が世論調査どおりだとほくそ笑んだに違いない。麻生さんには敵失しか期待できないのだから、なり振り構わずに敵失に縋るしかないと「敵失の麻生」に祭り上げて、ポスターの麻生さんに拍手(かしわで)を打って頭を下げつつ、内心は有り難いことだと敵失そのものに拍手を打って頭を下げるといったこともしたに違いない。西松建設は神様だ、仏様だと。小沢さん、頼んまっせ、今後とも説明責任を果たさないでくれと。

 だが、4月30日の「msn産経」記事(≪【選挙 ウワサの真相】地方選の民主逆風はまぼろし…らしい≫2009年4月30日08:05)は題名どおりの表現で世間一般の「西松民主逆風」という見方に疑問を投げかけている。

 投票1週間前に報道各社が行った情勢調査では民主支持候補川口博は社民県連の支持と連合秋田推薦も加えて幅広い支持を集めていた自民支持候補佐竹敬久に最大20ポイントも離されていて、10万票以上離されても仕方のない情勢だったが、いざ蓋を開けてみると、佐竹「291,150票」対川口「234,340票」という、自民党側からしたら10万票差という期待を裏切る、民主党側からしたら落胆を和らげる5万7千票前後の票差で終わらせている。

 その原因を記事は私なりの言葉をつけ加えて記すと、報道各社の情勢調査が描き出すこととなった「川口不利」の構図が潜在的な非自民支持層に反自民の火をつけるキッカケとなったこと、そして民主党支持候補の川口陣営が西松ショックを恐れて民主党色を消し、無色透明で戦ったことが自民対民主の構図を曖昧にしてしまい、そのことが「政権交代か否か」の視線で選挙を見るようになっている有権者に自民党か民主党か、どちらを選択するか迫るべきを、そのメッセージを逆に弱めてしまったからではないかと見ている。

 この記事の分析が正しいかどうかが問題となるが、有権者が選挙を国政選挙のみならず、地方選挙も国政選挙の前哨戦と把えて「政権交代か否か」の視線で選挙を見るようになっていることには異論はないはずである。

 例え自公支持で政権交代に反対していたとしても、政権交代を防げるかどうかで見ているだろうから、「政権交代」が選挙のキーワードとなっていることに変わりはないはずである。

 地方選挙の投票行動が国政選挙に影響を与えないはずはなく、国政選挙に向けた有権者の意識にしても一般的には地方選挙に大勢として反映されるはずだから、今の有権者が国政選挙に関して「政権交代か否か」の視線で見ているとするなら、その視線は地方選挙にも反映されているはずだから、その相互的な作用を踏まえて西松ショックに関係なく、地方選挙も戦うべきではないだろうか。

 具体的には有権者が「政権交代」を選挙のキーワードとしていることを踏まえて、地方選であっても民主党は「自民対民主」の対決構図を全面に打ち出し、「民主党か自民党か」のメッセージを強く発して、有権者が持つ「政権交代」意識に外からも働きかける。この方法を麻生太郎のように好き勝手にブレを見せるのではなく、ブレることなく貫く。

 当然、「西松逆風」を恐れて民主党色を隠したなら、地方選に於いて「自民対民主」の対決構図を打ち出すことができないこととなって、有権者が期待している「政権交代か否か」の意識に入り込み、それを投票行動につなげていく手立てを失うことになる。

 そうなった場合、地方選で発揮することとなる有権者の意識・投票行動を国政選挙に向けて反復、あるいは増幅させていく相乗効果発動の機会をも失う。

 麻生首相は解散・総選挙に関して様々に言及しているが、本質的には決まり文句で彩っているに過ぎない。

 「しかるべき時期に野党との争点を明らかにして国民に信を問いたい。私が決める」

 「選挙の時期等々は最終的に私が決める」

 「選挙というものに関しましては、しかるべき時期に、きちんと、政策を立て、そして野党との違いを明確にしたうえで、選挙をやらねばならんのだと思っています」

 「解散というのは総理大臣の専権事項だ。しかるべき時期を見て私が解散を決めさせていただく」

 「争点を明らかにしたうえで国民に信を問うのが正しい。最終的にしかるべき時期に私が判断する」

 「これはもう、前から申し上げているとおり、今回こういったことになったから別の答えが出るだろうと期待されているのかも知れないが、政局よりは政策。同じ事を申し上げましたし、まずは景気対策という方向でこの半年、やらせてきていただいてきたと思います。解散については、しかるべき時期に判断をする、私が判断をすると申し上げてきていますので、どういう状況になるか、今の段階で申し上げる所ではありません」

 「解散権の話については、これもいつも答える通りなんであって、解散権についてはしかるべき時期に私の方で考えます。途中でやらなければならなくなったらやります。」

 「今、国民が政治に望んでいることは雇用対策と景気対策であろうと、私自身は考えている。総選挙については、しかるべき時期に野党との争点を明らかにして国民の信を問いたい。」・・・・
  
 要するに 「私が私が」と「私が」の言葉でしか総理大臣としての自身を前面に打ち出すことができないから、「私が」と言っているだけのことだが、麻生のこの「私が」に対抗して、民主党は西松隠しといった姑息な選挙戦術は取らずに、地方選のすべてを政権交代の試金石だと位置づけて、「政権交代か否か」で強気に押し通すべきではないだろうか。

 5月にさいたま市長選、6月に千葉市長選が行われもする。

 政権交代の試金石だと位置づけることによってこそ、有権者の今の日本の政治に向けた「政権交代」をキーワードとした視線・意識を強く刺激することができるだろうからである。

 参考引用――
 

 ≪【選挙 ウワサの真相】地方選の民主逆風はまぼろし…らしい≫ msn産経/2009年4月30日(木)08:05)

 今春の千葉、秋田両県知事選で、与党がホッと一息ついた。自民党系候補が連勝したからだ。麻生内閣の支持率も、低めとはいうものの回復傾向にあり、「麻生太郎首相の経済対策が評価されつつある」「反転攻勢の局面をようやく迎えた」という声が与党から聞こえてくる。だが、それは本当なのだろうか。2つの知事選の裏では、実は、いくつもの「誤算」が繰り広げられていた。
          ◇
 「かなり、票差は縮まったんじゃないのか」
 4月12日夜。秋田知事選の開票日。寺田学はテレビの前で驚きの表情を浮かべていた。

 寺田は民主党の秋田県連代表。自民、公明、社民各党が支持した佐竹敬久の当選と、自らが推す川口博の敗北は疑いない現実だったが、その票差が予想以上に縮まっていたからだ。

 驚きは当然だ。投票1週間前。報道各社が行った情勢調査では、川口は佐竹に最大20ポイントも離され、寺田は惨敗を直感させられていた。10万票以上離されても、しかたがない数字だ。

 様子が変わったのは、その情勢調査が報じられた直後だ。

 秋田市内の寺田事務所に「民主党は誰を応援しているのか」という不思議な問い合わせが相次いだ。

 後で知ったが、このころから「期日前投票」の数もジワジワと伸びた。何かが動きだしていた。

 「選挙戦術を間違えたかもしれない」。そんな声が出たのも、このころだ。

 小沢一郎代表の秘書逮捕で始まった西松建設の巨額献金事件は、民主党を直撃した「はず」だった。それを意識したであろう川口陣営は、民主党に「出入り禁止令」にも近い要請を繰り出した。

 川口の選挙出陣式。「寺田さんは、秘書も顔を出さないでほしい」。昨年秋から寺田が口説き続けてやっと出馬させた川口陣営から、寺田は拒否された。

 地元選出の民主党参院議員、松浦大悟も同じだ。

 川口の選挙カーに乗り込んだまではよかったが、「民主党とは名乗らないでください」とピシャリと言い渡された。

 開票日の夜。寺田がテレビをみていたのも川口の選挙事務所ではなかった。父である当時の秋田県知事、寺田典城の知事公舎に座らざるを得なかった。

 だが、テレビの開票速報では、差はそれほど広がっていなかった。最悪のシナリオの半分ほど、約5万7000票差だった。

 「川口猛追」の要因は何だったのか。寺田はこう分析している。

 「与党特有の組織型選挙を貫いた佐竹が当選しそうなことが分かり、潜在的な非自民支持層が川口に動いたのでないか。西松事件はほとんど影響なかった」

 寺田の分析に呼応するように、自民党のベテラン秋田県議も不思議なセリフを吐く。

 「川口が『民主党』と叫び始めていたら、危なかったかもしれない。川口が政党色を消して、無色透明ぶりを強調し続けてくれたから、助かったんだ」
          ◇
 自民党県議の多くが支援した森田健作が、民主、社民の推薦を受けた吉田平を大差で退けた千葉知事選(3月29日投開票)でも、後日談がある。

 知事選同日に開票された千葉県議補選(木更津市、改選数1)で、自民党の公認候補が惨敗していた。

 自民党にとって不気味なのは、これだけではなかった。

 同県東金市の市議選では、共産党候補が2位以下を突き放してトップで当選していた。

 4月9日夜。東京タワー近くの日本料理店に集まっていた自民党各派閥の事務総長たちは、この話題に熱中していた。

 一人が言った。

 「千葉県内でも比較的保守地盤の厚い地域で負けている。自民党への逆風が弱まったわけではないことを肝に銘じるべきなんだ」

 この日の宴席の結論はシンプルなものだった。

 「平成21年度補正予算案が成立するまで解散すべきでない」

 「麻生太郎首相は7月のサミットに堂々と出席すべきだ」

 そして。

 「5月解散は危ない」

 =敬称略(水内茂幸) 
 
 ≪データBOX≫
 
 与党が恐れる「有権者の心情」は、4月のミニ統一地方選で本領を発揮した。青森市長選では、6選を目指した与党推薦候補(76)が無所属の元県議(61)に苦杯。比較的優位とされる現職市長が10市で敗北した。

 敗れた現職は高齢多選候補が多かったとはいうが、うち4市は自民、公明両党か、どちらかの党の推薦を受けた現職。「批判票の正体はやはり反自公票ではないか」とささやかれた。

 ほかにも前市長逮捕に伴う宝塚市の出直し選で、元社民党衆院議員(61)が初当選して注目された。

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