--補正予算案が最優先ならば、もし民主党が引き延ばした場合も大幅延長しても成立を目指すのか?
「参院で引き延ばしたら60日(で再議決)ということですか。まあ、色々なことを考えないといかんでしょうね。ただ、これは国民から『アホらしくてやってられるか。こうなったらさっさと解散しろ』という意見が出てくるかもしらんし…。そりゃ色んなことを考えてやらなきゃいかんことだと思いますよ。『補正予算案だけ通せば関連法案なんかは先でもいい』という意見が出てくるかもしれんし…。ちょっと今の段階では何とも言えませんね」
「でも、まあ、みんな解散、解散っていうけど違ったって4カ月なんて誤差の範囲でしょ。任期4年間からしてみれば。そう思ってみんな選挙をやっていると思うけどね。『いつでもいいよ』と思ってみんな(選挙準備を)やってなるんじゃない。俺は衆院議員だったら絶対そうしてると思うけどね。別に来月でも8月でもいいと思ってやっているけどね。選挙を一生懸命やっている人だったら…。それが普通だと思うけどね。俺がこういう立場じゃなかったら、さっさと自分の事務所は選挙に走っていると思うけどな…。残り4カ月で選挙に走ってなかったらおかしいよ。別に今あっても4カ月後でも大して違いないじゃない。(笑)それが普通の衆院議員の意識だと思うけどな…。そんなに解散時期に関心あるのは新聞くらいじゃないの?」
--公明党との関係もあり、都議選との時期の絡みもあるが?
「よく言われるけど、公明党から俺に都議選について申し込まれたことはないんだよね。正直言って。みんなよくその話をされますけど『衆院選と都議選をどちらを優先しますか』っていうのなら、そりゃあ衆議院ですな」
麻生はマスコミや世間から見られている“いつもブレている”という印象を否定して、「言っていることはいつも同じ」だとか、「私の申し上げているのは、ずっと同じこと」、「いつも同じことしかお答えしていない」を決まり文句としているが、認めるわけにはいかないから強弁を働いているだけのことで、裏返して言うと、世間の“いつもブレている”とする印象に間違いはなく、今回も言っていることが支離滅裂、ゴマカシと矛盾と“ブレ”に満ちた主張となっている。
確かに「任期4年間からしてみれば」、「4カ月なんて誤差の範囲」と言える。麻生総理大臣らしい名言と言える。だが、この主張は単に衆議院議員の任期4年から「4カ月」という月数を割って「誤差の範囲」だ言っているに過ぎない。解散のない参議院と違って、任期内でもあり得る解散・総選挙という国会議員の身分に直接関わってくる肝心要の規定を無視している。無視できるのも麻生が単細胞にできているからだろう。戦後、4年の任期を全うしたのは1度しかないそうだ。
「4カ月」も長期に亘って、人目を惹くために地元選挙区の立地条件に恵まれた目抜き通りといった場所に当然賃貸料も高くつくカネを払って選挙事務所を構えていることができる議員は会社を経営していた、親の財産があった、あるいは世襲議員みたいに地盤・看板・カバンが保証されているということならいざ知らず、どれ程いるだろうか。特に政治資金の獲得もままならないといった多くの1、2年生議員にとっては選挙でのカネのかかりは頭痛の種に違いない。そういった議員にとっては単なる「誤差」で済ますことができる残された「4カ月」ではないだろう。
当然、解散・総選挙の時期が一度で決まった方が多くの議員にとって、あるいは立候補予定者にとって限りある資金を選挙に向けて集中的に効率よく投資できる。それを年内だ、09年度予算通過後だ、景気の底割れを防ぐために09年度補正が必要だ、5月解散だ、都議選とのダブル選挙もあり得るだと惑わせておいて、尚且つ「4カ月なんて誤差の範囲でしょ。任期4年間からしてみれば」などと一般議員の気持も思いやらずに言う。
だから、「K・Y」だと言われる。決して「『いつでもいいよ』と思ってみんな(選挙準備を)やって」るわけではない。単細胞の麻生太郎のみに通用する単細胞な言い分に過ぎない。
次の例が解散時期が「4カ月なんて誤差の範囲でしょ。任期4年間からしてみれば」でないことを端的に示す。
ヒステリー症が顔にまで現れて隠しようもない細田自民党幹事長が昨08年10月半ばに日本外国特派員協会で記者会見して、年内解散もあり得ると表明、自身の選挙事務所まで開いてさも事実であるが如くに見せかけ、与野党の衆議院議員をして選挙準備に走らせたが、10月30日に麻生自身が解散の当面見送りを表明すると、翌31日の記者会見で、年内解散がさもあるが如くに振舞ったことに 「責任があるとは考えていない。警鐘を鳴らし、準備を怠るなというのが私の役割だ。油断大敵、常在戦場という意味で言ってきた」(「中国新聞」)と開き直りとも言える責任否定を図々しく鉄面皮にも披露している。
誰が選挙の準備を怠っているだろうか。継続して衆議院議員として務めようと考えている者なら、あるいは前回落選したとかで再度の立候補、あるいは新規に立候補を予定している誰もが怠っていないはずである。選挙資金が限られている多くの議員・立候補予定者にとって、その準備は具体的な準備以前の準備であって、カネを集中的にかける必要が生じる具体的な準備は具体的な解散時期を前提として初めて取り掛かり可能となる。そのことの方が肝心なことであろう。
細田幹事長は「準備を怠るな」ではなく、実質的にカネかける「準備」にまで走らせたのである。細田は年内解散論を撤回したあとも、「今でも早期解散をすればよかったし、そうすべきであるという考え方は変わっていない」(「msn産経」とうそぶいていて、得意顔までしていた。金欠症気味の議員の中にはカネの息切れを起こしかけた者もいるに違いない。
上記「中国新聞」は次のように伝えている。
<周辺は「解散風で、民主党が国会審議に協力するようになった。このまま重要法案を処理しようと考えたのだろう。『早期解散』を言う役目だったのでは」と解説する。>・・・・
細田が「『早期解散』を言う役目だった」とは、「早期解散を言わせる役目」が麻生だったということで、麻生との連係プレーではなかったかとの推測である。
「中国新聞」は与党議員の反応を次のようにも伝えている。
< ただ細田氏の開き直りには「選挙準備はだましてさせるものではない。自身の政局音痴ぶりをごまかしているだけ」(衆院当選一回議員)と怒りの声が出ている。
選挙事務所費などの手当ても深刻な問題となりつつある。「当然、幹事長が面倒を見るのだろう」と不満も充満しつつある。民主党に対しても、今後この手法が通用しないのは確実で、影響は小さくなさそうだ。>・・・・
細田は麻生に唆されてのことだろうが、小賢しくも狡猾に「狼と少年」のウソつき少年を演じたのである。審議促進を狙って民主党などの野党を騙すつもりだったろうが、敵を欺くには味方の与党議員まで欺き、国民をも欺いたことに気づいていない。多くの国民が細田の虚言に乗せられただろうし、議員が選挙に走れば、支持者たる国民も走る。
一方で「政治家の言葉は重い」とか「首相の言葉は重い」とか言う。だが、多くの政治家が自分の言葉だけその基準から平気で外す。
選挙は一般議員にとって死活問題であり、自身の生殺与奪を左右する重大機会でもある。決して弄んでもいい解散・総選挙ではない。それを 「でも、まあ、みんな解散、解散っていうけど違ったって4カ月なんて誤差の範囲でしょ。任期4年間からしてみれば」などと言う。何という軽さだろうか。軽量麻生の真骨頂発揮といったところだろうか。
大体が「解散は総理大臣の専権事項」、「解散は私自身が決める」と言っている以上、そのことだけを言っていれば済むはずだが、「参院で引き延ばしたら60日(で再議決)ということですか」とか、「別に来月でも8月でもいいと思ってやっているけどね」とか、「別に今あっても4カ月後でも大して違いないじゃない」とか必要もないのに時期を惑わして愉しんでいる。
惑わしの最たる箇所が「これは国民から『アホらしくてやってられるか。こうなったらさっさと解散しろ』という意見が出てくるかもしらんし…」と言っている箇所であろう。
細田幹事長が年内解散、その打消しで国民を欺いた年内騒動の08年12月6、7の両日実施した「朝日新聞」全国世論調査(電話)によると、
衆院の解散・総選挙の時期について
「早く実施すべきだ」――51%(前回10月調査――33%)
「急ぐ必要はない」 ――40%
と、前回33%を18ポイントも上回る51%の有権者が早期解散を望んでいたし、08年12月5~7日に実施した「読売新聞」の全国世論調査(電話方式)によると、
衆院解散・総選挙の時期について
「年明けの早い時期」 ――36%
「今すぐ」 ――22%
「来年春ごろ」 ――22%
「来年9月の任期満了までに」――14%となっている。
「今すぐ」の「22%」は、08年暮れの細田の年内解散打ち上げ→麻生の解散当面見送り表明→細田の年内解散否定の経緯を承知していて、「22%」もの有権者が尚且つ「今すぐ」と求めた数値のはずで、「年明けの早い時期」の「36%」と合わせると、半数を超える58%もが早期解散を望んでいるし、さらに「来年春ごろ」の「22%」まで加えると、80%もの有権者が早い時期の解散を望んでいたと言える。
いわば既に「国民から『アホらしくてやってられるか。こうなったらさっさと解散しろ』という意見が出て」いたのであって、気づいていないはずはない。気づいていなかったなどと言ったとしたら、国民が自身をどう見ているか、自身をどう受け止めているか、あるいは自身に国民は何を望んでいるのかに疎い裸の王様、最近の言葉で言うと、既に触れたように「K・Y」と言うことになって、即総理大臣失格となる。
にも関わらず、「これは国民から『アホらしくてやってられるか。こうなったらさっさと解散しろ』という意見が出てくるかもしらんし…」と、さも近い将来予想される国民の態度の如くに欺いている。
「政局よりも景気対策」、「選挙よりも経済対策」が選挙に負けたくない自己都合からの主張でないなら、国民の麻生に望む解散事項は無視して、景気対策でのみ国民の要望に応えるべきだが、景気が回復したわけでもない、景気の底割れを防ぐためと言っている補正予算がまだ国会を通過したわけでもない、いわば景気回復はまだまだ先という時点で、「政局よりも景気対策」、「選挙よりも経済対策」と言って今まで無視してきた解散に関わる国民の声に耳を傾ける姿勢を見せる矛盾を平気で犯している。
このことだけを以てしても「政局よりも景気対策」、「選挙よりも経済対策」が選挙に負けたくない自己都合からの主張に過ぎないことの何よりの証明となる。
この自己都合は次のやり取りにも現れている。
<--公明党との関係もあり、都議選との時期の絡みもあるが?
「よく言われるけど、公明党から俺に都議選について申し込まれたことはないんだよね。正直言って。みんなよくその話をされますけど『衆院選と都議選をどちらを優先しますか』っていうのなら、そりゃあ衆議院ですな」>・・・・
4月15日昼、太田公明党代表が首相官邸に首相を訪問。その日の夜には北側一雄幹事長が都内のホテルのバーで首相と会っている。
2日後の4月17日、 太田代表の記者会見。
「(都議選と)同じ時期の選挙は望ましくない。・・・・総理も同じ考えであろうと思う」(≪公明に8月解散論 補正予算対応で「6月」消える≫asahi.com/2009年4月18日12時32分)
この5日後、太田公明党代表が首相官邸で首相に会ってから1週間後の4月22日、河村官房長官が都内で講演。
「都議会は公明党が全力をかけて、やっているから、このときもし解散したら、我々、自民党の応援なんか、している暇ないよ、と、こういう警告を、いただいておりますから、あの、これ、その、国政選挙と関係あるかどうか、んー、ですけども、しかしまあ、政権与党一緒にやっている公明党がそう言うんですから、それは無視できないだろうと・・・・」(「NHK」動画から)
舌の根も乾かない記者会見後に河村官房長官は次のように釈明している。
「(公明党の)友達との話の中で『都議選に集中しているときによその応援をしろと言われても困る』という感じだったから、『警告を受けた』という表現にしてしまった」(≪「公明党から警告」官房長官発言、与野党に困惑と反発≫asahi.com/2009年4月23日1時0分)
一方の麻生首相の河村発言についての言い分。
「公明党という与党、友党にいろいろと配慮するというのは、常日頃からそういった配慮は持っているとは思います。思いますけども、それにあわせて選挙の日にちを考えるということはありません」(同 「asahi.com記事」
「(公明党の)友達との話の中で『都議選に集中しているときによその応援をしろと言われても困る』という感じだったから、『警告を受けた』という表現にしてしまった」云々――
「友達との話の中で」受けた「感じ」を「警告」に変えて講演でわざわざ官房長官の公式見解として披露するとは、相当影響力の無視できない大物の部類に入る「友達」だったと言うことだけではなく、常に「都議選」のことが解散と関連して頭から離れないキーワードとなっていたからに違いない。いわば無視できない配慮問題となっていたと言うことであろう。
いくら釈明し、麻生自身が否定したとしても、大田代表が麻生に会った後の記者会見という話の内容が世間に広く知れ渡る、いわば言葉の認知を与える公の席で、「(都議選と)同じ時期の選挙は望ましくない。・・・・総理も同じ考えであろうと思う」と「同じ考え」であるとしたのは、「同じ考えだった」との断言は世間に公明党優先と取られて問題が生じるが、さりとて黙っていたのでは空約束となった場合は公明党に打撃とならない保証はなく、婉曲的な間接表現で「同じ考えであろうと思う」と世間に公表する形で麻生の約束に証拠としての担保を与えたい意図があったからだろう。
いわば世論を味方につけて、麻生の約束が果たされることを迫った。
またいくら麻生が衆議院選を優先させたいと思っていても、公明党の選挙応援が中途半端となったら、その優先度はかなり殺がれることとなる。衆議院選の自民党側の優先度を確保するには都議選での公明党の優先度に配慮しなければならない自公の関係にあるのは周知の事実となっている。
それを麻生は都議選に合わせて「選挙の日にちを考えるということはありません」とか、「よく言われるけど、公明党から俺に都議選について申し込まれたことはないんだよね」と欺く。
要するに言っていることの全体を通して解散時期を特定させない文脈となっていることから解くと、解散・総選挙に踏み切れなかった優柔不断を隠し、優柔不断と思わせないために、優柔不断を逆手に取って、公明党に対する選挙協力も含めて、意図的に時期を曖昧にして、あれこれと憶測させる手に出ているのではないのか。
一体いつなんだ、補正成立後か、それとも公明党が嫌っている都議選と重ねる積りなのか、任期切れまで引っ張る積りなのかとあれこれめまぐるしく考えさせる方向に持ち込むことができれば、「私は決して逃げません」をキャッチフレーズとしている麻生の持ち前の優柔不断を隠すことができると言うわけである。
この優柔不断さから考えると、「別に今あっても4カ月後でも大して違いないじゃない」と言っているように「4カ月後」の9月任期切れ解散の確率が高くなるが、天敵の関係にある小泉元首相に「ここまで来ると、政策やテーマを設定し、(首相が)積極的に解散権を行使して信を問うことはできなくなってきた。『追い込まれ解散』にしかならない」(≪「もう追い込まれ解散にしかならない」小泉元首相≫asahi.com/2009年5月1日21時41分)と武部勤元幹事長や小池百合子元防衛相、小野次郎衆院議員ら1年生議員数人と都内で会食中に貶(けな)されたことに対して、「個人のご意見というのはいろいろとあるんだと思っている」(≪「個人のご意見はいろいろある」小泉発言に麻生首相≫msn産経/2009.5.1 20:20 )と平気を装った手前、その時点で9月任期切れ追い込まれ解散・総選挙の芽は摘み取られてしまったはずである。
小泉元首相に言われてまでして9月任期切れの「追い込まれ解散」とする程鉄面皮ではあるまい。もしも言葉通りに追い込まれた末に止むを得ず「追い込まれ解散」を選択した場合、小泉元首相の予測の的中、それ、見ろの得点を進呈することとなって、自分にとっては最悪のイメージダウン、格好がつかない、世論からも、さすが「私は決して逃げないい」麻生らしい解散の仕方だと評価を頂いて票の流れにも悪影響する。
次に許される優柔不断の限界は本人も言及している2009年9月11日任期満了に少しでも先んじる解散、「8月でもいいと思ってやっているけどね」であろう。
だが、これが9月任期切れ追い込まれ解散・総選挙の優柔不断が許されなくなったことからの「8月でもいいと思ってやっているけどね」だとしたら、「準追い込まれ解散」と名づけてもいいだろう。9月11日以降、後がないその“後”を9月11日以前に持ってきて、そこを解散の最終場面、優柔不断の賞味期限へと自分からセットしたのだから。
麻生は最後に、「そんなに解散時期に関心あるのは新聞くらいじゃないの?」と言っているが、相変わらず全体を客観的に眺める目を持たない単細胞の幸せ者の地位に甘んじている。
昨年末からの麻生内閣と自民党に不利な世論調査の情勢から判断するなら、麻生内閣と自民党に不利となる早期解散を(だからこそ、「私は決して逃げません」と言いつつ、逃げに逃げまくっているのだろうが。)逆に望んでいた国民の殆どは麻生の退場を一日も早くと願っていたと見るべきで、常に早期解散派が優勢を占めていたのだから、「解散時期に関心あるのは新聞」だけではなく、国民の多くがそうであったと見るべきだが、麻生はそこまで見通す頭の視力は持ち合わせていない。
チェコとドイツ訪問に出た麻生首相と同行の記者団との間で最初の訪問地チェコで3日夜(日本時間4日早朝)解散時期や総選挙の争点、世襲制限等についての応答があったという。「msn産経」記事≪【麻生首相の懇談詳報】「党首討論早く実現し、次期衆院選の争点を明確にすべき」≫が詳しく報道しているから、ブログのテーマとしている解散問題に限って参考引用してみる。