西松違法献金事件の説明責任問題で民主党代表小沢辞任、鳩山由紀夫新代表選出を受けて各マスコミが行った世論調査は自民党の思惑を裏切って、「一転、逆風」に絶句--自民」(「毎日jp」)と表現さえつける衝撃を与えたようだ。
鳩山由紀夫の対抗馬だった岡田克也の世論人気の高さから、鳩山代表決定に、「岡田より戦いやすい」と癖球の牽制球を一大合唱して投げつけていたが、それさえ裏切られが格好だ。
自民党にどの程度の「逆風」となっているのか、その吹き具合を朝日新聞と毎日新聞の世論調査インターネット記事から拾ってみた。
≪緊急世論調査―質問と回答〈5月16、17日実施〉≫(asahi.com/ 2009年5月17日22時52分)
(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。◆は全員への質問。◇は枝分かれ質問で該当する回答者の中での比率。〈 〉内の数字は全体に対する比率。丸カッコ内の数字は、4月18、19日の前回調査の結果)
◆麻生内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 27(26)
支持しない 56(57)
◇それはどうしてですか。(選択肢から一つ選ぶ=択一。左は「支持する」27%、右は「支持しない」56%の理由)
首相が麻生さん 14〈4〉 7〈4〉
自民党中心の内閣 40〈11〉 24〈14〉
政策の面 28〈7〉 53〈30〉
閣僚の顔ぶれ 10〈3〉 12〈7〉
◆どの政党を支持していますか。
▽自民党 25 (25)
▽民主党 26 (21)
▽公明党4(4)
▽共産党3(2)
▽社民党1(1)
▽国民新党0(0)
▽改革クラブ0(0)
▽新党日本0(0)
▽その他の政党0(0)
▽支持政党なし33(40)
▽答えない・分からない8(7)
◆仮に、いま、総選挙の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか。
▽自民党 25(27)
▽民主党 38(32)
▽公明党5(4)
▽共産党3(3)
▽社民党2(2)
▽国民新党0(0)
▽改革クラブ0(0)
▽新党日本0(0)
▽その他の政党1(1)
▽答えない・分からない26(31)
◆今後も、自民党を中心とした政権が続くのがよいと思いますか。民主党を中心とした政権に代わるのがよいと思いますか。
自民党中心の政権 28(29)
民主党中心の政権 45(41)
◆麻生首相のこれまでの仕事ぶりをみて、どう思いますか。(択一)
期待以上だ 3
期待通りだ 17
期待外れだ 26
もともと期待していない 50
◆麻生首相の景気対策に期待しますか。期待しませんか。
期待する 31
期待しない 64
◆民主党の小沢代表が、代表を辞任しました。辞めたことはよかったと思いますか。よくなかったと思いますか。
よかった 68 よくなかった17
◆小沢さんは辞任するのは党の結束のためだとし、西松建設の政治献金問題については「一点のやましいところもない」と述べました。辞任にあたってのこの説明に納得できますか。納得できませんか。
納得できる14 納得できない78
◆民主党の新しい代表に、鳩山由紀夫さんが就任しました。鳩山さんが率いる民主党に、期待しますか。期待しませんか。
期待する 47 期待しない 43
◆代表が小沢さんから鳩山さんに代わったことで、あなたの民主党に対する印象は、よくなりましたか。悪くなりましたか。変わりませんか。
よくなった 16
悪くなった 6
変わらない 75
◆麻生首相と民主党の鳩山代表とでは、どちらが首相にふさわしいと思いますか。
麻生さん 29
鳩山さん 40
≪毎日新聞世論調査:「辞任効果」、民主安堵 「衆院選で期待」最高56%≫(毎日jp /09.5.18)
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
毎日新聞が16、17日に緊急実施した全国世論調査結果は、小沢一郎前代表辞任後の代表選を終えたばかりの民主党を安堵(あんど)させた。代表選前の前回調査(12、13日)で鳩山由紀夫新代表への世論の支持が低かった影響や「小沢かいらい」批判が新体制の船出に水を差すことを懸念していたからだ。民主党は「小沢辞任」効果で党勢回復の足がかりを得る一方、鳩山新代表の就任に歓迎ムードもあった与党側には衝撃が走った。【田中成之、高山祐】(以下中略)
◇「一転、逆風」に絶句--自民
一方、与党側にあった鳩山新代表への歓迎ムードは「政権交代」を求める民意の強さの前に吹き飛んだ。麻生太郎首相のもとで衆院選を戦うことへの懸念も再燃し「早期の衆院解散はとてもできない」(公明党幹部)との声も出ている。解散時期を巡り麻生首相はさらに厳しい判断を迫られることになった。
自民党の細田博之幹事長は17日、島根県斐川町の出雲空港で、鳩山氏の人気について「代表選出のご祝儀的なものがあるのではないか」と述べ、あくまで一時的なものとの認識を強調。ただ、自民党の政党支持率は民主党に逆転を許し、上昇機運にあった内閣支持率も微減に転じた。調査結果を聞いた自民党幹部は数字を聞き直し、一様に絶句した。
衆院選のカギを握りそうな無党派層の回答をみると、内閣支持率は10%に低迷し、鳩山氏の方が首相にふさわしいと25%がみている。ある派閥領袖は「党内には『麻生降ろし』のエネルギーも残っていない。傷が浅いうちに早く解散した方がいい」と述べたが、公明党幹部は「国会で民主党のあやふやな財源論や『小沢院政』批判を展開し、当面は様子を見るしかない」と漏らした。
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◇世論調査の質問と回答◇
◆麻生内閣を支持しますか。
全体 前回 男性 女性
支持する 24 (27) 26 22
支持しない 58 (52) 58 58
関心がない 18(20) 16 20
◇<「支持する」と答えた方に>支持する理由は何ですか。
自民党の首相だから 35(34) 35 35
首相の指導力に期待できるから 8(10) 7 9
首相に親しみを感じるから 21(22) 23 19
首相の政策に期待できるから 29(30) 32 26
◇<「支持しない」と答えた方に>支持しない理由は何ですか。
自民党の首相だから 9 (8) 12 5
首相の指導力に期待できないから 26 (28) 21 32
首相に軽率なイメージがあるから 19(21)19 18
首相の政策に期待できないから 45(42)45 45
◆どの政党を支持していますか。
自民党 23 (27) 27 19
民主党 30 (24) 36 24
公明党 3 (6) 2 3
共産党 3 (3) 3 4
社民党 1 (1) 1 1
国民新党 0 (0) 0 -
改革クラブ - (0) - -
新党日本 0 (0) 0 -
その他の政党 2 (2) 1 3
支持政党はない 37(36) 29 45
◆民主党の新代表が、鳩山由紀夫氏に決まりました。鳩山代表に期待しますか、期待しませんか。
期待する 49 52 46
期待しない 49 47 51
◆小沢前代表が辞任し、鳩山氏が新代表になったことで、あなたの民主党に対する評価はどうなりましたか。
上がった 17 18 17
下がった 13 16 10
変わらない 68 65 71
◆麻生首相と民主党の鳩山代表とどちらが首相にふさわしいと思いますか。
麻生首相 21 25 17
鳩山代表 34 36 31
どちらもふさわしくない 42 37 48
◆今の衆院議員の任期は9月に切れます。衆院の解散・総選挙は、早く行うべきだと思いますか。
早く行うべきだ 48 51 46
急ぐ必要はない 49 47 50
◆次の衆院選で、自民党と民主党のどちらに勝ってほしいですか。
自民党 29(34)30 27
民主党 56(45)61 51
その他の政党 11(17) 6 16
(注)数字は%、小数点以下を四捨五入。0は0.5%未満、-は回答なし。無回答は省略。カッコ内の数字は前回12、13日の調査結果。
◇調査の方法
16、17日の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で調査。有権者のいる1607世帯から、1009人の回答を得た。回答率は63%。
3月に小沢民主党代表公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕されると、麻生初め各閣僚、自民党幹部は「小沢代表は説明責任を果たしていない」と散々に攻撃、追い詰めに成功して、麻生内閣は危険水域を遥かに下回って20%近くまで落ちていた支持率が危険水域の30%近くまでは回復、水中深く沈められた者がやっとのことで水面にまで顔を出して呼吸できる状態となり一息つけるところまで漕ぎつけることができ、「どちらが次の首相にふさわしいか」でも再逆転を果たして、10ポイント以上も引き離したが、小沢代表続投に対しては選挙がさらに有利と踏んで「説明責任を果たしていない」の攻撃の手を一段と強め、国民世論を麻生内閣・自民党側につけようと躍起となった。
まさか辞任するとまで思っていなかったのではないのか。辞任したなら、国民の「説明責任を果たしていない」とする6~7割の世論意識が果たすはずの選挙戦攻撃に向けた好材料を失うことになるからだ。ヘマな話で、照準を間違えてミサイルを撃ち込んだようなもので、ムダ弾となってしまった。
だったら、麻生太郎、解散権を行使してさっさと解散・総選挙に挑戦すればいいのに、挑戦するだけの勇気も決断も見せることができなかった。
小沢一郎が代表のまま選挙戦に突入して欲しかったがホンネだったろう。
だが、小沢代表が5月11日に記者会見を開いて辞任表明。5月12日の衆議院予算委員会で「政治とカネに関する集中審議」を行い、麻生首相は立派にも次のように述べている。
「政治とカネの話は長い間の懸案でもあり、国民の不信感に耐えるためには説明責任を果たさなければならない。人間の倫理やモラル、道徳に根源的にかかわる問題であり、国民の不信感に耐える努力は、政治家個人個人がきちんと果たすべき努めだ」(「NHK」)
偉そうに。二階経産相の西松からの違法献金が発覚したときは3月26日に次のように話している。舌の根を乾かしてはいけないはずだが、すっかり乾かしてしまったようだ。
「基本的には、個別の案件についてコメントすることはありません。それが一点。もう一点は本人の疑惑について、きちんとそれを、説明する説明責任というものは、かかって、政治家個人にかかっているもんで、きちんと説明できるようにする。それが一番大事なところだと思っていますが」 (「asahi.com」)
自身が任命した内閣の一員であり、自身の閣僚の問題であるはずだが、内閣の問題から外して「個別の案件」に格下げしてしまっている。果たして小沢氏の「説明責任」を「個別の案件」、あるいは「政治家個人」の問題としてのみ扱ったのだろうか。民主党の問題でもあるとして扱わなかったろうか。
町村前官房長官は小沢続投を批判して次のように述べている
「小沢代表は今回の事件で指摘されたことについてほとんど説明しておらず、あれではとても国民の理解を得られないし、民主党内でも不十分だという声が相当上がっている。今回の事件で、民主党内の自浄能力がまったくないことが明らかになり、独裁者的な党が政権交代を叫ぶことの恐ろしさを痛感した」(≪自民各派 小沢代表続投に批判≫(NHK/09年3月26日 16時34分)
何を根拠に言っているのか、多分世迷言だから言えるのだろう、「独裁者的な党が政権交代を叫ぶことの恐ろしさを痛感した」とまで言っている。戦後一貫してほほ一党独裁体制を維持し、好き勝手な政治を行ってきていながら、小賢しい限りである。
「説明責任を果たしていない」は国民世論に巧妙に乗っかって次期衆院選を有利に運ばんがための麻生自民党が仕掛けた地雷でもあろう。小沢氏が踏んで地雷が爆発は衆院選自民党勝利という構図を計算に入れてのことだろうが、小沢氏が踏む前に小沢辞任、新代表選、鳩山新代表決定と進み、この一連の経緯に対して有権者がどう把えているかを知るべく各マスコミが世論調査した。
結果は、まさしく麻生自民党の「小沢は説明責任を果たせ」集中攻撃が裏目に出たといったところであり、自分たちで仕掛けた地雷に間抜けにも自ら踏んでしまったといった絵柄であろう。
但し、民主党は油断してはいけない。ちょっとした失言や行動で一夜にして情勢が逆転することもあるからだ。