「週刊新潮」の取材に鴻池副長官は「浮気旅行と言われても仕方がない。申し訳ない。・・・ボクには祖父の代からのDNAがある。親父も大酒飲みやし女癖も悪かった。そのDNAがボクにもある」(「スポニチ」)と答えているというから、本人も認めた事実中の事実と言うことになる。
「DNA責任転嫁論」といったところである。「DNAが私を浮気に走らせるんですよ。それを除けば、私は至って品行方正、品格ある人間です」とでも言いたかったのだろうか。
不倫、浮気の類は親代々から受け継いだ「DNA」のせいだと認めることにしたとしても、では、ちゃっかりと言うか、要領よくと言うか、抜け目なくと言うか、狡賢くもと言うか、職務限定の無料「JRパス」を私的利用して自分のカネは浮かせた件に関しても親代々から受け継いだ「DNA」が仕向けた公私混同なのだろうか。
そうだと言うなら、まるっきり「DNA人間」で、この世に生を受けてから社会人としての常識を社会から何も学習しなかった人間と言うことになり、そういった人間が国会議員となり、内閣の一員を占めていたこと自体が大問題となる。
地方議員が政務調査費を私的流用する、あるいは国会議員が政治資金を私的流用するのと同じで、無料「JRパス」を私的利用していたことの方が大問題ではないだろうか。「週刊新潮」が報じたこの件に限って利用したということはまずあり得ないことで、いわば一度や二度のことではないだろうからである。
公的使用が目的で公的支出されたカネ(金券も含めて)と自分のカネの区別をつけることができない人間は地方・国を含めて議員の資格はないだろう。そのような人間が国会議員となり、内閣の一員を占め、官房副長官を務めていた。
当然、国会議員としての資格及び官房副長官としての資格が問われる。官房副長官の資格の問題はその職を辞任したことで、資格を問われることから免れることとなったということにはならない。資格もない人間を官房長官に据えていた問題が残る。
当然の結果として、各報道機関、あるいは野党が共に麻生首相の任命責任を問い質すことになった。
我が麻生首相は13日のぶら下がり記者会見でこう答えている。「asahi.com」(2009年5月13日20時12分)から鴻池問題のみを見てみる。
≪鴻池氏の女性問題「事実関係知りません」13日の首相≫
【鴻池官房副長官辞任】
――週刊誌に女性問題を報じられた鴻池官房副長官が、健康上の理由として辞任した。総理の受け止めを。
「えーっと、今朝でしたかね、あのー、官房長官経由で辞任の申し出がありましたんで、健康上ということでも、もう入院もしておられるという話だったんで、やむを得ないと思いましたけども」
――鴻池副長官は以前、1月にも、同じ女性との関係を報じられているが、内閣を支える立場の鴻池副長官が、再び女性問題で報じられたことについて、政権に与える影響についてどう考えか。
「あのー、事実関係を知りませんので、そのことに関しては、何とも申し上げようがありません。今回の場合は、健康の理由でしたし、この前のときも、えーっと、病院に入院して来てましたんで、あのー、あんまり良くないとは知ってましたから」
――鴻池副長官は私的な旅行にもかかわらず、公務用に支給されているJRの無料パスを使用したことについても、与党内からも「道義的な責任がある」と厳しい指摘も挙がっている。総理は自身の任命責任についてどう考えか。
「あのー、いまのJRの話については、その事実関係を知りませんので、何とも答えようがありませんが、少なくとも、そういったようなことに関しては、間違われるとか、誤解をうむような、うむとか、そういった不信感を買わないようにしておくというのは、大事なことだと思っております。任命責任については、健康上というのに関しては、健康上というんであれば、その件に関しましては、うん、健康までちょっと任命責任なのかわかりません」
――鴻池副長官の行動に問題があったとは考えか。
「行動。だから、詳細を知りませんので、行動に対してお答えのしようがありませんとお答えしている」
我が麻生首相は辞任理由を鴻池の健康上の問題だとし、それを自らの事実としている。逆説的にいうと、不倫問題が辞任理由であることを自らの事実とはしていないということになる。
そのくせ、不倫問題に関しては、「事実関係を知りませんので、そのことに関しては、何とも申し上げようがありません」と言っている。
いわば自らが率いる内閣の一員たる官房副長官の不倫行動に関する「事実関係を知」らずに、辞任は健康上の理由だと自らの事実を限定する矛盾を犯して平然としている。
不倫行動に関しては「事実関係を知りません」。でも辞任は健康上の理由からですでは、あまりにもご都合主義的な事実解釈となる。
任命責任回避の意識が強く働き過ぎて、辞任理由を健康上の問題としたいばっかりに不倫問題から目を背けるこじつけを生じせしめることとなっているご都合主義なのは明らかである。
問題はご都合主義で済ませることができるかどうかという点である。
「事実関係を知りませんので」を2回、同じ意味の「詳細を知りませんので」を1回、同じことを3回も言っている。
麻生内閣は麻生太郎自身が組織し、率いている内閣であろう。内閣を組織し、十分に機能・維持していくためには政策の有効性のみならず、内閣人事の適格性も重要な柱として関わってくる自らの判断事項であろう。内閣の構成員が例え一人であっても無能であったなら、その無能さが内閣の運営全体に影響することあるし、評判自体を落とすだけではなく、ときには内閣を崩壊に至らしめる危険要因ともなる。
いわば最終的には政策の有効性のみならず、人事の適格性にしても内閣を率いる任命権者たる内閣総理大臣自身の判断にかかっている総理大臣自身の責任事項であろう。
的確・有効な判断は政策と人事、それぞれに関係する情報収集とその処理が可能とする。
当然、「事実関係を知りませんので」は必要とする情報収集・責任事項を怠ったこととなって、今度は内閣を率いる者としての適格性が問題となる。
内閣を率いる以上、「その件に関しては現在営為情報収集に当たっています」までは許されるが、「事実関係を知りませんので」は情報収集を重要な責任事項としている以上、そのことに怠慢を示すもので、許されないと言うことである。
今回鴻池女性スキャンダル官房副長官辞任問で浮上することとなったのは麻生太郎の総理大臣としての任命責任回避の姿勢、内閣組織者としての適格性の問題であろう。
鴻池は今年1月初旬に議員宿舎の自分の部屋に夫のいる女性を何回か宿泊させる前科があるし、3月には麻生内閣が北朝鮮のミサイル発射に備えてミサイル防衛(MD)を備えている最中に、「ピストルの弾同士が当たるのは、なかなか難しい」(「毎日jp」)とか、「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」(同「毎日jp」)等、内閣の一員でありながら内閣の足並みを乱すミサイル防衛(MD)役立たず発言を行っている。
もし鴻池が麻生派に所属していなくて、他派閥だったなら、そこの領袖・親分に頼んで抑えてもらうこともできるが、自分が麻生派の領袖・親分でありながら、自分には抑える力がなかったからだろう、官房副長官の任命責任者でありながら、派閥の一員としても内閣の一員としても律することができず、好き勝手な行動を取るのを許してしまった。
この点からも、内閣と派閥の違いはあるが、組織運営及び「人事管理という点で、その適格性が限りなく疑わしくなる。
鴻池官房副長官が4月28日から30日までの3日間、熱海で知人女性と落ち合い、ゴルフをし、ホテルに同宿したスキャンダルばかりか、熱海までの往復に(帰京の際だけ使用したと報じているマスコミもある。)乗務目的が職務限定で、私的な利用は禁止されている国会議員特権の無料の「JRパス」を利用したスキャンダルまで13日発売の「週刊新潮」に暴露記事されることを受けて、12日夜麻生太首相に辞表を提出、麻生は13日午前、辞表を受理したと各新聞・テレビのインターネット記事が伝えた。