「自由民主党は間違いが一つもないなんて言うつもりは全くありません。是非みなさん方ん中にも、色々ご意見があんだと思いますが、自由民主党という政党をもう一回、冷めた目で見ていただければと・・・・」
そのあと、松本市に移って、同じ内容の演説をしたらしい。“らしい”とは、3つの「FNN」記事があって、移動の経緯がはっきりしない。松本市の演説は2つある。その一つ目。
「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない。問題点は、一杯あるよ。我々だって、思うことありますから。しかし、それは問題あるのは直す。それが当り前でしょ」
2つ目。
「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない。問題点は、一杯あるよ。それを悪(わる)ったら、悪かったら、それを直す。改善する・・・・」
同じ趣旨の演説を14日(6月)の「47NEWS」記事《首相「都議選負けると深刻」 首都決戦応援で》が伝えている。
〈14日午後、東京都議選(7月12日投開票)応援のため自民党立候補予定者の事務所を訪れ、「首都決戦」での敗北は自らの政権運営にとって致命的になりかねないとの危機感を示した〉そうだ。そのとき言っている。
「会社だって政党だって間違いはある。しかし、改善し努力し変えていこうとしている点は、他党に比べて圧倒的に優れている」
人間が極楽トンボに出来上がっているから、自分がどれ程バカなことを喋っているのか気づかない。知らぬが仏――気がつかないから、幸せでいられる。
確かに自民党の金権体質、利益誘導体質、政官財癒着体質、族益・省益優先体質等々、挙げればキリがない問題点はあるが、
与党の一部、野党の殆ど、国民の多くが現在最も問題にしているのは麻生太郎という総理大臣の資質――リーダーシップの欠如、その延長にある決断力のなさ、いわゆるぶれていると言われる一貫性のない態度、このような欠陥と重なる政策立案に於ける貧弱な創造性と政策遂行能力の不徹底、失言の形で現れることとなっている人格の劣りなどであって、それを「自民党という政権」、あるいは「会社」の矛盾に置き換えて、「100%なんてことは絶対ない」と言っている。
いわば一国の総理大臣であるなら決して許されない、国民から見たら目を覆うばかりの欠陥・問題点を反省するどころか、自分から棚に上げて、それを他の矛盾にすり替えるマヤカシを働いている。人間が狡賢くできていなければできない責任転嫁であろう。
逆説するなら、「100%なんてことは絶対ない」という抽象的な一般論の中に麻生自身の具体的な欠陥・無能力を紛れ込ませることでその免罪を図ろうとしているのである。
大体が政策立案・遂行当事者が「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」などと自分から言うべきことだろうか。一国の政治を推し進めるとき、「100%なんてことは絶対ない」という考えを基本姿勢とされたのではたまったものではない。「100%なんてことは絶対な」くても、万全を期すべく最大限の努力を払うのが責任ある立場にある者の姿勢のはずだからだ。
責任逃れに目を向けるあまり、自分のマヤカシに気づかない。
結果、「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」は愚かしいばかりの開き直りそのものと化す。こんな男を自民党は総理大臣に選んだ。選んだばっかりに、国民は麻生を総理大臣と看做さなければならなくなった。その責任だけでも、もはや政権を維持する資格を失う。
もう一人、麻生の前の前の総理大臣安倍晋三。
6月14日の「HNK」インターネット記事《首相判断支持 郵政改革続行を》
〈埼玉県秩父市で講演し、日本郵政の社長人事をめぐって鳩山前総務大臣が辞任したことについて、麻生総理大臣の判断を支持するとともに、郵政民営化を着実に進めていくべきだという考えを示し〉たそうだ。
安倍「鳩山さんと西川さんの、この対決で、蒸し返されてしまったんです。しかし、みなさん。これは正義と悪の対決、――ではないんですよ。
ちゃんと、新しい民営化された会社が経営されているかどうか、――この判断なんですね。政府は基本的に人事に介入しない。やはり改革を進めなきゃいけない。――」(動画から)
どちらが正しいのか、間違っているのか程度で、「正義と悪の対決」だと大袈裟に把えた者はまずいないだろう。それを「正義と悪の対決ではない」とことさらに言うことによって、狡賢くも問題を小さく見せようとしている。たいした問題ではないですよとばかりに。
経営形態は民間会社でも、100%政府出資で社長人事に関わる許認可権が総務相にあると言うことなら、一般の民間会社とは言えない。にも関わらず「政府は基本的に人事に介入しない」を原則とするなら、政府総務相の社長人事に関わる許認可権限は形式に堕す。許認可権限を政府が握っている意味を失う。人事権を放棄し、すべてを日本郵政に任せるべきだろう。
また純粋に全株主が民間人で、経営陣も全員民間人であっても、株主が社長人事に介入することがある。民間会社に準ずるということなら、例え100%政府出資であっても、人事への介入に不都合はないはずである。
安倍晋三は単に西川続投賛成派に属する自己都合から、「政府は基本的に人事に介入しない」と言っているマヤカシに過ぎないだろう。
4月5日(09年)放送のNHK番組「NHKスペシャル シリーズ・JAPANデビュー 第1回『アジアの“一等国”』」が反日的だと町村派会合で問題、安倍晋三は国家主義者にふさわしく、「週刊新潮も取り上げたが、番組はひどすぎる。関心を持ってこのシリーズを見てほしい」(msn産経)と他に呼びかけたそうで、結果として思想・言論の自由に対する口先介入を行っているし、2001年のNHK教育テレビの「戦争をどう裁くか」にも、その介入が問題となった。
自己の国家主義を優先させるためなら、憲法が保障する基本的人権を平気で破ることさえして介入するのに、介入があっても不都合はない政府出資100%の民会会社に対しては「政府は基本的に人事に介入しない」などと言う。まさしく自己都合からのマヤカシ以外の何ものでもない。
アメリカ政府は今回の金融危機で破綻の危機に瀕した民間金融機関などに政府出資した、もしくは資本注入した企業トップの高額すぎる報酬・ボーナスに取り過ぎではないかという介入を行っているが、安部晋三のルールからしたら、間違ったことになる。
そもそこからして西川社長自身が安倍の「政府は基本的に人事に介入しない」を否定している。
「(日本郵政は)政府100%出資の会社、株主構成はそうなっている。通常の民間会社の通りにはならない。その点は心得ている」(日テレNEWS24 )
ごく最近の元首相安倍とこれもごく最近の前首相福田の共に任期1年も満たないうちに政権を放り出した無責任は麻生の言う「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」で片付けることができる問題ではないだろう。安倍、福田、麻生と政権を続けて一度も国民の審判を受けていない不備も「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」で済ますことはできない。
それを麻生は自身の無能・無策まで含めて「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」で免罪しようとしている。狡猾なマヤカシとしか言いようがない。
免罪できないよという答が世論調査の数値であろう。
毎日新聞が13、14日(6月)実施全国世論調査で、麻生内閣の支持率が前回調査(5月16、17日)から5ポイント減の19%、不支持は60%の最悪状態に達している。
この支持率のどこからも麻生の無能・無策まで含めて「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」と免罪する国民意識を見て取ることはできない。麻生は「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」を口実に自分自身の無能・無策まで免罪させようと、愚かにも溺れる者藁に縋っているに過ぎない。
「JNN」の世論調査でも、同じ答が返ってきている。
調査日 ――6月13・14日
対象 ――全国20歳以上の男女
有効回答 ――1201
最大誤差率 ――±2.8%
麻生内閣
支持できる ――24.4%(前回比-7.5ポイント
支持できない ――74.5%(前回比+8ポイント余り
日本郵政・西川社長の続投に反対して辞任した鳩山氏の行動について
支持する ――57%
支持しない――34%
西川社長の身体について
続投すべき ――16%
すべきでない――73%
西川社長の進退問題を巡る麻生首相の対応について
評価できる ――17%
評価できない ――81%
首相にふさわしい人
麻生氏――25%(5↓)
鳩山氏――40%(3↑)
その他――35%(2↑)
民主党の小沢代表代行・岡田幹事長の新体制について
評価できる ――49%
できない ――48%
政権交代について
必要だし、次の選挙で実現すべき ――48% (自民支持層――20%)
いずれ必要だが、まだその時期ではない ――32% (自民支持層――45%)
必要性を感じない ――18% (自民支持層――33%)(以上)
鳩山前総務相は15日午後の退任記者会見で、〈日本郵政の社長人事をめぐって、ことし春ごろ麻生総理大臣から手紙をもらったことを明らかにし〉て、
「その中には、『西川社長の後継人事で悩んでいることと思います。自分なりの考えで、後継にふさわしい人が何人かいますので、リストを同封します』と書いてあり、リストをもらった。麻生総理大臣も社長交代は既定路線と考えているものと、わたしが安心しきっていたのがバカだったのかもしれないが、その時点では麻生総理大臣もそういう考えだったことはまちがいない」
「わたしは『不透明なことをやってきた日本郵政の今の経営陣は認められない』と言って辞表を書かされた訳だから、今の内閣は西川社長の続投を認めるのだろう」
「日本郵政は、民営化されても公的な性格が強く残っているのだから、まちがっていると思ったら、当然政府として口を挟んで誤りを正していかなくてはならない。民間会社に政府が口出しをするのはおかしいという考え方には、まったく正当性がなく、誤った考えだと思う」――
「この件についての麻生総理大臣の判断は完全に誤りであって、国民はその評価として、支持率を下げる形で示してきているのではないか」――等々述べたと15日の「NHK」《“今は離党 新党の考えない”》が伝えている。
麻生内閣が今後の展開でもし西川続投を否定したなら、どう辻褄を合わせて自己正当化に走ろうとも、鳩山総務相更迭は何だったのかと麻生はさらに恥を欠くことになる。
鳩山「手紙」暴露発言に対する麻生の態度を「NHK動画」から。
――事実関係をちょっとお教えください。
麻生(質問を笑い飛ばす仕草で頭を右斜め後ろに反らし、左右に首を振ってから)「コメントありません」
――今年春の時点で、総理がその西川社長の交代を考えていたということなんでしょうか?
麻生(深刻さのかけらもなく笑いながら)「今お答えしたとおりです。コメントありません」――
なぜ、「否定しないということは事実だった証拠になりますが」ぐらいは言えなかったのだろうか。
小泉や安倍、町村等の町村派の圧力を受けて「自民党という政権は、100%なんてことは絶対ない」を自己正当化の免罪符に態度豹変のマヤカシを平然と見せたといったところなのだろう。
麻生首相が13日(6月)長野市JR長野駅前で演説、引き続き政権運営への理解を訴えたと13日の「FNN」ニュースが伝えていた。