厚労省、400万円の監修料プール/いつか来た道か

2009-06-21 00:45:54 | Weblog

 6月19日の「asahi.com」記事――《厚労省捜索…机の中に400万円 前局長の職場プール金》

 障害者向け郵便の割引制度を悪用してダイレクトメールを郵送、差額を不正利得していた活動実体のない偽称障害者団体の求めに応じて割引制度を受けることができる偽の証明書を発行したとして逮捕された厚労省雇用均等・児童家庭局長の村木厚子容疑者(53)の職場を大阪地検特捜部が家宅捜索したところ、総務課職員の机の中に現金で400万円が保管してあったと言うもの。

 400万円の出所を厚労省の説明として記事は次のように伝えている。

 有志の職員約10人でつくる研究会メンバーが業務時間外に法令に関する民間の出版物を校閲した際の報酬として出版社が研究会の代表者となっている職員名義の口座に複数の職員の分を纏めて振込み、代表者が引き出してプールして置いたカネだという。

 使途は例の如くと言うか、よく目にする事例で、メンバーらの私的な飲食費に充てていたという。「あてられていた」と書いてあるが、「あてるつもりだった」とは書いてないから、既に充てていた分を含めると、400万円以上の報酬を受けていたことになる。

 ここまで読んで、何年か前に同じような記事があったことを思い出した。

 各自の収入は職員がそれぞれ確定申告で税務処理していたと説明しているらしいが、当てにはならない。口で言っているだけかもしれない。そういった例が多いから、直ちに信用はできない。〈会の名称や出版物は「私人としての代表者と出版社の契約なので答えられない」としている。 〉こと自体が怪しい。省の規則、あるいは公務員一般の規則に何ら触れない、それゆえ疚しいことも後ろめたいことも何一つなければ、公表は構わないはずだからだ。省からの公表はできないというなら、代表者本人に公表させればいい。

 〈同局総務課は、職員が出版物への執筆や校閲で報酬を受け取ることについて

(1)報酬が作業量に見合う
(2)公費による出版物の買い上げが限定的
(3)職員の所属分野で普及・啓発になる――などの要件を満たせば「問題ない」と説明。今回もそれにあたる〉として、何ら就業規則に触れないとの見解だが、いくらこのように規則を並べ立てようとも、省の政策を啓発、もしくは広報する出版物・冊子の類ではなく、「民間の出版物」の「監修」によって得た報酬の使途が公的性格を一切持たない「私的な飲食費」に振り向けられていたということなら、公務員の副業禁止規定違反に当たらないだろうか。

 現金を保管していたことについては、〈代表者の職員は「長時間勤務で極めて多忙なため、現金を管理していたことを失念していた」と釈明し〉、〈総務課は「多額の現金を職場に保管していたことは好ましくない」とし、この職員を口頭で注意した〉と言うが、「監修」が例え公務員の副業禁止規定違反に当たらないとしても、簡単に私的な飲食費として消費できる、その惜しげもないカネ離れは「長時間勤務で極めて多忙な」合間の「業務時間外」の労働で得た貴重さに反する。

 ここまで日本の公務員が熱心になれるなら、もっと生産性が上がってもいいはずだが、欧米と比較した日本の公務員の生産性の低さが問題となっている。この矛盾はどう解いたらいいのだろうか。

 こういった相反する価値意識や矛盾に妥当な答を与えるとするなら、「有志の職員約10人」の報酬分として「400万円」もプールできて、それを私的な飲食費として惜しげもなく散財できるということなら、余禄、もしくは余得、あるいは役得として得たカネと言うものはムダ遣いをしても惜しくないという通念を当てはめるしかなく、その報酬を余禄、もしくは余得、あるいは役得と見る以外に答は見つけようがないのではないだろうか。

 各自の収入は職員がそれぞれ確定申告で税務処理していたとしているが、飲み食いに使ってしまう別収入のカネを確定申告というのも日本の公務員からしたら正直過ぎて、眉に唾をつけたくなる。

 最初に何年か前に同じような記事があったことを思い出したと記したが、「asahi.com」記事は最後にそのことを伝えている。

 〈厚労省では04年10月、職員が03年度までの5年間で書籍やビデオなどの「監修料」7億5千万円を受け取っていたとして、幹部ら約400人が約1億3千万円を自主返納したと発表したことがある。監修料には補助事業や大量の買い上げで公金が還流しており、関係した職員は延べ1475人にのぼった。同省は05年12月、職員22人を国家公務員法上の懲戒処分にあたる戒告処分にするなどの対応をとっている。 〉――

 04年8月1日『朝日』朝刊――《厚労省 30人、監修料1.8億円受領》から見てきる。

 厚労省外郭団体関連の出版社などの約20法人が研修ビデオや冊子、パンフレットなどを製作する場合、厚労省が補助事業として補助金を交付、20法人は監修料名目で同省国民保険課職員30人に03年までの4年間に監修料名目で1億8千万円を還流していたと言うもの。

 この構図を可能とする方法は十分過ぎる補助金の流れが保証されなければならない。4年間に1億8千万円も還流していたことがこのことを証明する。当然、還流は十分過ぎる補助金を手に入れる担保としての意味も持つことになる。言ってみれば、十分過ぎる補助金を手に入れるためのワイロの側面を持たせた監修料名目のキックバック(=還流)であろう。

 〈監修料については、同課では歴代の庶務係長が、法人との間で窓口となり、報酬は一括して現金で受取る場合が多かった。受領した現金はそのままプールしていたといい、同課の宴会費や職員の深夜帰宅のタクシー代などに充てていたほか、職員たちに現金を分配する場合もあったという。〉・・・・・

 この惜しげもないバラ撒きに近い私的流用を可能としている要因はそのカネが余得、余禄、役得の類だからだろう。給与として計算される仕事から生み出されたカネであった場合、余程の浪費癖の持主でない限り、遊興費にこうも偏った使い方はしないだろう。

 そしてこの記事に現れている「監修料」名目で還流された報酬の扱い方は最初の記事の総務課職員の扱い方とほぼ同じパターンを踏んでいる。プール、そして主として飲食費に充当――

 「法令に関する民間の出版物」の校閲・監修だと言っているが、その出版社が04年当時のように厚労省の外郭団体の関連会社と同じ地位にあり、厚労省の補助金を受けて書籍や冊子、パンフレットの類や研修ビデオの製作を行っていたとしたら、監修・校閲で補助金の一部を還流して利益を遣り取りするのは一度露見していることだからと、報酬を正当付けるために名目を「法令に関する民間の出版物」の校閲・監修に変えていたとしたら?

 前科ある者は疑われる。

 08年9月に発覚した事故米を食用米として転売した事件で出先機関がいい加減な調査をして問題となったばかりの農林水産省で、同じく出先機関の職員が減反量策定のために農家を一軒一軒訪ねて米や麦の在庫量を調べて報告する数量を訪ねもせずに当てずっぽうに書き込みデーターを捏造していたとして56人が処分されたと6月19日の各マスコミが伝えていたが、日本の公務員である、みな同じ穴のムジナだと思えば、何も驚くには当たらない。


コメント (1)
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