北朝鮮世襲/「いいとか悪いとかいうコメントを言うことはありません」程度の麻生

2009-06-06 11:14:39 | Weblog

 全く総理大臣の資格なし、「外交の麻生」は全くの見せかけ

 6月2日夕方、《首相VS記者団 対北朝鮮「6者協議の枠組みで話をしていくのが一番いい」6月2日午後6時58分~》毎日jp/2009年6月3日)によると、首相官邸でのぶら下がり記者会見で支持率の低迷、政策不人気、自民党内反乱等で悩み尽きないらしく、大分頬がおこけになられている我が日本の麻生太郎総理大臣は北朝鮮のミサイル発射問題についての応答の後、そのことに関連して後継者問題について記者から次のような質問を受け、次のように答えている。
 
Q:総理、関連してですが、フジテレビです。金正日総書記の後継者問題が浮上していましたが、韓国の情報当局がですね、三男の金正雲(ジョンウン)氏に決定したとの通知が、北朝鮮の在外公館から送られてきたという報道を発表しましたが、総理はこの後継問題についてはどうお考えでしょうか。

A:他国の後継者について私のほうで、それがいいとか悪いとかいうコメントを言うことはありません。――

 たったこれだけ。

 6月5日の「msn産経」記事《金正男氏 マカオで亡命の公算 側近らが相次ぎ粛清 金正雲の後継体制作り急ピッチ》が題名が示唆しているように三男正雲後継を目指して、多分それを確実にするために権力の分散、もしくは分裂の阻止を狙ってのことだろう、北朝鮮国内での金正日の長男正男(ジョンナム)周辺で粛清の動きが出てきたために滞在先の中国特別行政区マカオに留まり、中国に亡命する公算が強まっていると伝えている。

 記事は韓国などの情報当局筋からの情報として、北朝鮮の秘密警察である国家安全保衛部が4月3日午後8時頃、平壌市内で正男の複数の側近を拘束しとも伝えている。

 また記事は北朝鮮の朝鮮労働党が中国共産党に金正雲氏の後継を伝えたとされていることと、その伝達に対する中国の態度を伝えている。

(1)世襲反対
(2)改革開放
(3)核放棄

 以上の3項目を求め、金正雲氏の後継を認めていないとしている。
我が日本の麻生太郎総理大臣の「他国の後継者について私のほうで、それがいいとか悪いとかいうコメントを言うことはありません」とは大違いの積極的「コメント」となっている。

 尤も中国のこの3項目の要求は5月25日の北朝鮮の地下核実験に対して強い非難の姿勢を示していながら、安保理での制裁決議となると慎重姿勢に転じているように、他の大国とのバランスから世界の常識から言ってより正しいとされる態度を取らざるを得ず、タテマエとして取るが、ホンネの態度は違えているように表向きの姿勢だと疑えないこともない。

 それに表向き世襲に反対することによって、同じ一党独裁であっても、世襲の北朝鮮よりはましだと世界に示すこともできる。世襲制度を採っていない我国としては表面的には反対しなければならないが、最終的にはあなた方が決めることだと内々に伝えている可能性も否定できない。

 金正日権力の世襲継承とはわざわざ断るまでもなく、今ある金正日体制の継承を併せて行う。金正日体制は金正日が一人で担っているわけではなく、体制の頂点に位置する金正日の最周辺を忠実・忠誠な複数の側近で固めていて、各側近はそれぞれに忠実な部下を複数従え、そのような忠実・忠誠集団のパターンを下層方向に段階的に人数を増やしていく形で裾を広げていきピラミッド型を形成する。勿論その中には軍上層部を頂点として最下層の一般兵士までピラミッド型に裾野を広げた軍部も含む。、

 権力世襲継承者はその体制をも継承する。だが、世襲権を持った人間が3人もいれば、それぞれから厚遇された者がそれぞれに忠実・忠誠な集団を派閥の形で形成することになるし、中には先物買いで世襲継承するに違いないと当りをつけて自分自身も特大の権力を握ることができると計算を働かせて肩入れした側近もいるだろうから、一人に決定した場合、それぞれの派閥利害が対立することとなって、その対立の中で世襲継承に将来的に阻害要因となりかねない危険分子と看做された場合、粛清という名の対立解消、あるいは阻害要因の排除が断行されもする。

 また権力の世襲継承の場合、既にブログで何度か言っていることだが、世襲継承の正統性を父親である金正日の正義に置く。金正日が金日成から権力を世襲継承したことの批判に対して、「金正日は金日成の息子だから後継者となったのではなく、もっとも優れた後継者がたまたま金日成の息子だった」(「Wikipedia」)と宣伝しているそうだが、金日成が正義の存在でなければ成り立たない継承の正当論理であろう。

 3人の息子のうち、誰が金正日の権力とその体制を継承しようとも、その者は金正日体制を支えてきた側近と、両者が共々つくり出した先軍政治をも継承し、それを金正日が生み出した正義として正当づけなければならないことから、例え金正日の死後であっても、そこから外れようとした場合、側近たちが障害となって立ちはだかるに違いない。先軍政治は金正日を独裁者として支えてきた側近たちにとっても、失ってはならない虎の子の最大利害だからだ。

 体制を変えた場合、側近たちは失脚の危険を伴い、失脚した場合は握っていた権力をも失う。場合によっては政治犯、あるいは国家反逆罪の罪を着せられて刑務所送りとなり、最悪の場合死刑に処せられないとも限らない。

 失脚と権力失墜を防ぐには自分たちがつくり出した金正日独裁体制という世界を何が何でも維持しなければならない。

 いわば世襲権力継承によって、中国が要求していた「世襲反対」ばかりか、「改革開放」も「核放棄」も、少なくとも近い将来に亘って実現可能性は見込み薄となる。

 日本側からしたら、「拉致問題」解決も遠のくことになるだろう。金正日に正義を置く世襲継承である間は、金正日の仮面を暴くことは重大なタブーとなるからだ。

 それを「外交の麻生」を売りにしている我が日本の総理大臣麻生太郎は「他国の後継者について私のほうで、それがいいとか悪いとかいうコメントを言うことはありません」と、カエルのツラに小便で済まして憚らない。

 北朝鮮のミサイル発射や核実験に対して「安保理制裁決議だ」を声高に叫ぶよりも、世界は「権力の世襲継承反対」を声高に叫ぶべきだったろう。北朝鮮の核や、長距離ミサイルの所有は国民の自由を抑圧し、世界を敵に回して平然としている独裁者が支配・君臨している国だからこそ危険であって、警戒が必要となってくるのであって、権力の世襲継承はそのような危険性の根を断ち切らずに存続させる方向に手をこまねくことになる。

 その反対は当然、権力の世襲継承を何が何でも謀っている金正日にとって大いなる圧力となるはずである。

 勿論、反対を内政干渉と反撥するだろうが、国連総会特別首脳会議が05年に「保護する責任」として国家が国際社会と共々負うべきと掲げた理念に基づいて、国民の人権と自由を抑圧し、その多くを飢餓に陥れている独裁体制をそっくりと受け継ぐ世襲継承に対する反対は内政干渉に優先するとすべきであろう。

 以前ブログにも書いたことだが、「保護する責任」とは、「Wikipedia」が次のように紹介している。

 基本理念

 国家主権は人々を保護する責任を伴う。
 国家が保護する責任を果たせない場合は国際社会がその責任を務める。
 国際社会の保護する責任は不干渉原則に優先する。

 保護する責任には、「予防する責任」を筆頭に、「対応する責任」と「再建する責任」の3つの要素が包まれていて、「予防する責任」を尽くした上で解決しない場合は、軍事干渉も含む状況に対する強制措置を「対応する責任」として認めている。

 そして「対応する責任」を遂行した後、復興、和解等の「再建する責任」を課している。

 「保護する責任」を掲げて、権力の世襲継承に反対する。金正日の独裁政治に対抗する。

 少なくとも実際の制裁決議となると腰を引く中ロとの妥協の産物となって実効性が弱められることとなる決議よりも、北朝鮮もそのことを計算に入れてミサイル発射や核実験を行ったのだろうが、圧力としての力を持つに違いない。

 はっきりと言えることは、我が麻生の「他国の後継者について私のほうで、それがいいとか悪いとかいうコメントを言うことはありません」とは雲泥の差で圧力効果はあると断言できる。
 

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