仙谷官房長官の地検に代って短いテープ提出を相当性あるとする弁解が政治介入を証明している(1)

2010-10-29 13:46:32 | Weblog

 昨10月28日の参議院内閣委員会で自民党の西田昌司議員が公開するという尖閣沖中国漁船衝突事件のビデオについて仙谷官房長官に質問した。

 西田議員「えー、自民党の西田昌司でございます。エー、早速ですが、あの、これ通告していないですが、官房長官にちょっとお尋ねしたいことがります。と言うのは、えー、今日の新聞等にも報道がありましたけれども、昨日菅総理と一緒に、例の尖閣のビデオを見られた、ということなんですが、このビデオが何分くらいのビデオだったんでしょうか」

 仙谷官房長官「えー、昨日、私が、あー、見ましたのは、あー、7分ぐらいのビデオであります」

 西田議員「私が質問をしたのは実は、今朝ですね、自民党の外交部会で、えー、この問題についての、えー、質疑がありましてですね、えー、法務省の定口(?)参事官が説明されたんですけども、それによりますと、要は、えー、この、今度の国会の方に提出するビデオ、ですね、えー、短く編集して、出したものであると、それ、5分少々であると、いうふうに発言されているんですね。

 そうしますと、我々が、あのー、要求したのは、えー、那覇地検に、ま、提出したものを、出せという形で要求したはずなんですが、先ず、それがですね、えー、那覇地検に提出したやつが、国会に提出されるようになっているんだけど、それだけ先ず確認しておきたいんです」

 仙谷官房長官「えー、私が聞き及んでいるところによりますと、すべてのテープを、海保が、あー、あー、撮影した、あー、すべてのテープを、那覇地検に送致したと。送ったと、オー、いうふうに聞いておりまして、えー、その中から、那覇地検が国会に、提出してきたものが、昨日衆議院議長を経て、予算委員長のところに届いたんだろうと。こういうふうに私は、承知しているところであります」

 西田議員「ということはですね、それともう一つ確認しますが、その、国会に送致されてきたビデオですよ、送られてきたビデオと、官房長官が総理と見られたビデオは同一のものじゃないと言うことですね」

 仙谷官房長官「全く同一のものでございます」

 西田議員「そこがちょっとずれるんですが、ですから、それが5分少々だと言ったのが、7分だとおっしゃるんで、微妙なズレがあるんですが、まあ、いずれにいたしましてでもですね、私が問題にしたいのは、要はですよ、我々が要求しているのは、あの事実関係なんですよ。あの海保が那覇地検に送ったと。で、それを見せろと言っているものをですよ、なぜ法務省がそこに手を入れるんですか。

 この前から検察の問題で、非常に大きな問題となっているのは、あのDVD、この証拠のですね、ビデオを、改竄をしたと、いう大きな問題となっている今ですよ、なぜ、なぜ、同じようにですよ、海保が出してきた資料を、法務省がそこで手を入れる、これはおかしいじゃないですか。これは政府の方針ですか、それは」

 仙谷官房長官「あのー、ちょっと、誤解があるようでございますが、そんなにいきり立たないで(いきり立ちを押さえ宥めるように両手で何度も上げ下ろしする)、あのー、結構でございますので。(少しヤジ)

 私が、私が、一番当初見たビデオは、5分ぐらいのものであります。で、これは逮捕、手続きに入るプロセスの中で、拝見したものでございます。当日、これは多分ですね、推測をいたしますと、撮影したビデオを、飛行機で送るわけにもいきませんから、多分電送等々の手段で、海上保安庁に、送られた、もの、多分、そのー、オー、この部分だけ、これは推測ですが、現地の海保がですね、この部分だけ、本庁の方へ送っておけと、よく分かる部分だと、いうことだったんでしょう。

 これ全部推測ですよ。この部分は。で、これが逮捕手続きをするに当たって、官邸に持ってこられて、私が拝見した。こういうことでございます。そこは捜査過程での一つ。

 それから、捜査の過程でですね、検察官がこの事件を処理するに当たって、色んな証拠の送致を受けます。検察官送致であります。で、そのときに、送られたビデオ、後どのくらいビデオがあるのか、私は確たることは知りません。そこまでは知らない方がいいと思っています。

 で、証拠として、送った物の中に、この、私共が昨日見た、ビデオもあると言うことでございます。で、検察官が、これをですね、これを、ア、那覇地検が、衆議院議長の、提出の、お、要求と言うか、あー、請求をされた、このことに対して出すビデオですと。従って、行政当局としても、この、ビデオを、出すんで、見ておいてくださいと。まあ、ある意味では、刑事事件としては、刑事事件証拠としては、例の刑事訴訟法47条本文ではなくて、但し書を適用して、この範囲が、相当と認められるので、本来は出せないけども、出すんですと。

 そしてさらに、これは内閣の責任でもありますから、内閣の方としては、ご意見をつけてくださいと、いう趣旨だと、いうことで、ご、意見をつけるについては、これは見ないと、意見をつけるわけにはいきませんから、私共は拝見をして、要望書という形で、内閣の意見、を、つけたと、いうことでございます」

 西田議員「ま、意味がよく分かりませんね。要するに大事なことは、衆議院の方が、ま、参議院も要求していますがね、この国会に提出せよと言ったのは、那覇地検のビデオを提出せよと言ってるんです。那覇地検には海保からビデオがそのままあると。それをそのまま提出するのが、それは義務じゃないですか。なぜ、それをわざわざするんですか。そしてそれが内閣の意見によって、やられたということを官房長官おっしゃっていますが、これはまさに国会に対するですね、国権の最高機関は内閣ではなくて、国会なんですよ。それを国会の要求に対して、なぜあなた方が、自分たちのですね、その、意見を、差し挟んで、そして、那覇地検にそういう編集をしろということを言うですか。

 おかしいんじゃないですか、それは」

 仙谷官房長官「あのー、随分誤解もあるし、私の発言を、内閣の意見を差し挟んで改竄したとか何とかおっしゃるけど、あくまでも、あくまでも那覇地検に送られたビデオが、そういう意味では、数種類あるんでしょう。数種類。

 つまり、私共が見た物の他にも、あるんだろうと思います、私は。ただ那覇地検はこれを国会に出すのが相当であると、相当性の判断をして、出したんだろうと思います。で、それでいて、行政全体としてですね、そのことでよろしいかと、あるいは行政全体として、刑事手法的観点を含むけど、それよりも広い範囲の中で、行政的な判断を、内閣も、何かおっしゃるんだったら、やってくださいと、そういうことだろうと思うんですよ。

 で、これから先はですね、いいですか、国権の最高機関の104条と、相当性の判断という関係になるわけですね。行政としては、このようなことを、考慮してくださいよと。考慮する事情としては、こういうことが、ありますよということを要望として、お伝えをしているということで、従来の例を見ますとね、ロッキードもリクルートも、あるいは、えー、協同銀行ですか、そういうときも、そういう遣り方でやっているということもございますので、証拠をですね、本来は外に出せない証拠を出す、場合には、こういう手順とか遣り方でやるということになってますから、その先例も見ながら、私共が意見を要望としてつけたと、こういうことでございます。

 あー、あの、テープを改竄するとか何とか、テープをどのようにするとか何とか、一切、我々は触っておりません。那覇地検があくまでも、相当と認める範囲で国会に送ってきたと、いうことであります」

 西田議員「あの時間が絶え(?)ていますから、簡潔に答えてくださいよ。要するにですね、要望されたとおっしゃってるから、要望によって、その出てくるテープが全体テープじゃなくて、一部編集されたことになったということじゃないですか。だから、何を要望されたですか。じゃあ、どう要望されてるんですか」

 仙谷官房長官「あの、我々が那覇地検に要望したわけじゃないんです。那覇地検が判断をされて、この範囲が、多分ですよ、このテープが、提出したテープが、相当の範囲だと、刑事訴訟法47条1項、但し書の、相当な場合に当たる部分が、この部分だという判断をされて、送られたと思いますね、それは。そういうふうに那覇地検の書類にも書いてございます。と、いうふうに読めるようにですね。

 で、私共はそれを踏まえて、さらにですね、これ、拒否するときは、拒否するときはですね、出せません。拒否するときは、内閣が声明を要求する段取りになってますよね。104条というのは、2項、3項。

 と言うことは内閣の責任も、この提出をするということについては、内閣の責任もあるということですね。で、その責任を果たすために、これは見なければ、責、見て、我々の考え方を纏めなければ、責任を果たせないということになりますから、その責任を果たすために、ビデオテープを拝見もし、要望書と言う格好で意見もつけたと、こういうことでございます」

 西田議員「だから、要望書の中身を聞いているんじゃないですか。だらだら長い答弁をしなくて、要望書の中身を聞いているんだから、それを答えてくださいよ」

 仙谷官房長官「それ、ご存知、ご存知で質問をされてると思ったんです(「です」を京言葉のように語尾を上げて答える)。ご存じなかったとすれば、誠に、あの、失礼なことをいたしましたが、読み上げます。昨日は、あのー、記者会見でも、全文読み上げましたので、ご存知だと思ったんです。

 平成22年10月24日付、衆議院発、158号、カッコ、(記録の提出要求について)、カッコ閉じる。の件について、点、那覇地方検察庁検事正は当該提出要求に対して、カッコ、(本年9月7日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の映像記録)、カッコ閉じる、を衆議院議長に提出したところでございます。この記録はもとより捜査当局によって、検察、あー、ごめんなさい、もとより捜査当局によって、捜査の過程で収集された証拠であり、点、本事件被疑者について、未だに検察当局による処分がなされないと、点、海上保安庁に於ける海上警備、点、あ、これはナカボツ(中点のことか)。えー、海上警備・、ナカボツ、えー、取締り活動の秘匿性が格別に配慮される必要があると、点、関係者の名前・、ナカボツ、人権を保護する必要があること、点、国際政治情勢への影響も考慮することがあることなど、から、点、これを公にするに当たって、より慎重を期すことが相当だと判断されます。マル、従いまして、点、貴委員会の取扱いにつきましては、これは衆議院予算委員会という意味であります。貴委員会の取扱いにつきましては、点、視聴される方々の範囲、方法等を含め、点、極めて慎重な取扱いに特段の御配慮方要望をいたします。マル、

 これをですね、内閣官房長官仙谷由人から衆議院予算委員会委員長中井洽殿、えー、平成22年10月27日、要望書という表題の文書を作成しまして、中井衆議院予算委員長のところに要望をしたということでございます」

 西田議員「それは、だから、官房長官がね、中井予算委員長に対して要望をされた。それは分かりました。私が今言っているのはね、そもそも衆議院の方で予算委員会が那覇地検に要望しているのは、このテープそのものを、公開するように要求していまして、それをですね、先ず国会が見てですよ、国会が見た上で、その官房長官、おっしゃるように、外交的配慮をしなければならないかもしれない。

 それも含めて、我々が判断すべき問題で、なぜ入り口のところでですよ、那覇地検が判断して、この部分だけ出すということになるのかと。それはまさに、政府が国会に対して、そういう要望書を出したとおっしゃったけども、それが同時に那覇地検に対しても同じことを言っているからでしょう。だから、那覇地検が政府の方針として、国会に提出する分をですよ、わざわざ改竄しているわけですよ。編集しているのですよ。

 そういうことになると、国民の知る権利、国権の最高機関としての権利がですね、著しく侵害されることになるじゃないですか。そのことについて問題があるのではないかということを官房長官に指摘しているわけですよ。どう思いになってるんですか」

 仙谷官房長官「先程お読み申し上げたけども、読みましたけども、那覇地検検事正、えー、衆議院のこの記録提出要求についてという、題する書面が書かれているのは、えー、カッコつきでですね、本年、本年、9月7日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の、映像記録と、いうふうに書かれていますね。この事案に関する、映像のすべてとか、証拠物一切と、いうふうにか書かれていませんですよね。

 で、これは、今、西田議員がおっしゃったけど、実は、私共の判断といたし・・・、私共と言うよりは那覇地検の判断といたしましては、刑事訴訟法47条、基づきますとですね、但し、公益上の必要、その他の事由、その場合には、ある種、国会に、提出、あるいは公開することができるという規定ですね。で、相当と認められるという場合は、現証拠中の、この部分であるという判断を、当然のことながら、検察庁としては、する。あるいは、実務上していると、いうことだろうと私は思います。

 で、内々、衆議院側と、那覇地検側から話があったかどうか私は存じませんけど、これを、つまり、さっき申し上げた7分物を、出すことが、相当であってですね、刑事訴訟法47条の相当性がある部分を、じゃあ、私共は出します。例えばですね、ロッキード事件のとき、実は、灰色高官を、全部出せと言われたときに、これは多分、私の、これは私が議員になっていませんが、よく分かりませんが、本当のこと分かりませんが、それじゃあ、灰色高官と言われている人たちの、なぜ、灰色高官と言われてて、誰と誰と誰と誰とだというのはですね、報告書を作成して、報告書を作成して出させたわけですよね。国会が、国会が――」

 委員長「簡潔に、簡潔に」

 仙谷官房長官「で、それと同じように相当な範囲を、話をしたかどうか知りませんけど、少なくとも那覇地検の、方では、こういう判断をして、このテープを出せばいいと、7分物を出せばいいと、いう判断をして、出されたと、私は理解をしております」

 西田議員「全く納得できません。委員長にお願いしたいと思います。この問題についてですね、当委員会で集中審議をしてください。これ要望します」

 委員長「本日理事会、理事懇で協議をいたします」

 (次の質問に移る。)

 仙谷官房長官の地検に代って短いテープ提出を相当性あるとする弁解が政治介入を証明している(2)に続く

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仙谷官房長官の地検に代って短いテープ提出を相当性あるとする弁解が政治介入を証明している(2)

2010-10-29 12:56:23 | Weblog

 全体を通して仙谷官房長官が簡潔とは正反対のくどくどしたあれやこれやの言葉を費やして行ったことは、那覇地検が7分だか5分だかの短いテープを提出したことが間違っていないことの弁解の一大展開に過ぎない。

 本来ならば、そのような提出の相当性が正しいか否かの主張は地検側が行うべき事柄であって、官房長官が代って行い得ないことを代って、「相当性の判断をして、出したんだろうと思います」と推測までしてやって、提出の正当性を訴えてやっている。

 この「だろうと思います」、あるいは。「これ全部推測ですよ」といった推測で提出の正当性を成り立たせている点で、言ってみれば、地検の身の潔白を、潔白かどうかも分からない事実を代って晴らそうとしている点で既に論理の破綻を生じせしめている。

 そうしなければならないということは政府が指示、もしくは要請して件のテープを提出させた以外の理由を考えることはできない。要請した通りの内容のテープであるかどうか確認するために、国会に提出したテープであるにも関わらず、国会に先んじて官房長官と首相が見なければならなかった。

 見た結果は、官房長官は27日午後の記者会見で述べている。《「逮捕となる事実分かる」=仙谷官房長官-尖閣衝突ビデオ》時事ドットコム/2010/10/27-16:46)

 仙谷官房長官「(中国人船長の)逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオだ」

 ここに誤魔化しがある。なぜなら国会のビデオ提出要請はビデオによって検察が処分保留のまま釈放した時点で政治介入があったかどうかの証明を果たすことを目的としているのであって、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かる」証明のためではないからだ。

 いくら「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分か」ったとしても、そのことによって政治介入があったかどうかの判定はできない。

 すべてのテープの提出ではなく、一つの短いテープの提出を正しい、相当性あることだと偽装することによって、テープの内容自体の正しさ、相当性に代えて、尚且つその正しさ、相当性を以ってその閲覧のみで逆に那覇地検の事件処理の正しさ、相当性の証明に再度代えようとする意図を働かせた結果の「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオだ」としているのだろうが、逆にそのことが「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分」からせる「ビデオ」のみの提出を指示したことを証明することになる。

 本来なら、「政治介入がなかったことを証明する事実が分かるビデオだ」としなかればならないところを、そのことに役立たないビデオであるところから、政治介入のプロセスを省略する、あるいは抹消する必要上「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオだ」としなければならなかった。

 那覇地方検察庁の鈴木亨次席検事が9月24日、船長を処分保留のまま釈放することにした午後の記者会見での発言を見てみる。

鈴木亨次席検事「衝突された巡視船の損傷の程度が航行ができなくなるほどではなく、けが人も出ていない。船長は一船員であり、衝突に計画性が認められない」

 鈴木亨次席検事「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上、船長の身柄の拘束を継続して捜査を継続することは相当でないと判断した」

 国会のビデオ提出要請はビデオによって政治介入の有無の証明を果たすことを目的としているはずだと書いた。当然、地検側はそこに政治介入がなかったことの事実と、国内法に則って粛々と事件の最初から最後まで処理したこと、特に中国人船長の処分保留のままの釈放を行った、上記記者会見で説明した地検自身の判断の相当性を提出したテープによって証明しなければならない義務と責任を負うことになる。

 また政府も政治介入を行っていないことの証明のために那覇地検が提出したビデオで証明しなければならない義務と責任を負うはずだ。

 くどいようだが、決して、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実」を「分か」らせる証明のためではない。

 それを7分だか5分だかのたった1本の短いテープで行おうとしている。本来なら、すべてのテープを提出することによって、計画性がなかっという判断の相当性だけではなく、悪質性がなかったことの判断の相当性と、処分保留のまま釈放した理由として「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮」した判断の相当性の当否を証明する材料とし得るはずだが、いわば検察としての身の潔白を晴らすことができる材料とし得るはずだが、それを7分だか5分だかのたった1本の短い、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かる」だけのテープで果たそうとしていること自体に無理があるだけではなく、矛盾がある。

 また国会が検察に提出を要請したテープを国権の最高機関である国会が閲覧する前に官房長官と菅首相が閲覧したことを、提出を「拒否するときはですね、出せません。拒否するときは、内閣が声明を要求する段取りになってますよね。104条というのは、2項、3項。と言うことは内閣の責任も、この提出をするということについては、内閣の責任もあるということですね」と正当化しているが、那覇地検が国内法に粛々と則って単独、独自の判断で逮捕から釈放に至るまで関わった事案であり、内閣は何ら関与していなかった、政治介入していなかった事案であるなら、検察の事件処理とテープの内容自体に関しは内閣の責任は生じないことになる。例え中国を刺激する場面があったとしても、例えば船長は中国に戻ってから道徳的規範の持主として表彰されたそうだが、それを裏切る内容が含まれていたとしても、出発点が国内法に則って粛々ということなら、あくまでも国内法の範囲内で最初から最後まで処理する問題となるのだから、内閣の責任云々するのは矛盾することになる。

 例え中国を刺激する内容を含んでいたとしても、西田議員が言うように「先ず国会が見てですよ、国会が見た上で、その官房長官、おっしゃるように、外交的配慮をしなければならないかもしれない」という段取りを取れば済んだはずだ。

 またビデオを国会に先んじて見るにしても、責任問題の観点から見る必要はなく、単なる外交問題への影響の観点からのみ見れば済む。要望書をつけるにしても、国会の判断を待つべきであろう。

 それを内閣の責任を云々し、慎重な取扱いを要請する要望書を提出しなければならなかったのは、そこに内閣の責任の関与を置くことで二重三重に7分だか5分だかの提出ビデオの提出の相当性と提出したビデオの内容そのものの相当性を担保する必要上からのこじつけしか考えることができない。そうすることによって検察も政府も政治介入の罪に関して無罪だとする論理の展開が可能となる。

 このことは仙谷官房長官の「あの、テープを改竄するとか何とか、テープをどのようにするとか何とか、一切、我々は触っておりません。那覇地検があくまでも、相当と認める範囲で国会に送ってきたと、いうことであります」という言葉が証明している。

 事実ビデオ自体を改竄する恣意、意図を働かせなかったとしても、数あるビデオの中で7分だか5分のビデオの一つを選択をして衆議院に送ったこと自体が、その選択に検察側の何らかの恣意、あるいは意図が働いたことになるだから、国会のビデオ提出要請はビデオによって政治介入の有無の証明である以上、数あるうちから短い一つを選択したその恣意、意図は政治介入を否定する恣意、意図を働かせた選択と見なければならない。

 恣意、意図を一切働かせる必要がなかったなら、すべてのビデオを提出しただろう。

 当然、送らなかったビデオについても、送らなかったことについての恣意、意図を働かせた選択となる。これも国会のビデオ提出要請が政治介入の有無の判断にあることからの送らなかった選択と見なければならない。

 その結果、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオ」に絞ったということである。

 その政治介入とは中国を刺激することを恐れた措置としての介入なのは誰でも想像つくことであるが、仙谷官房長官は弁護士出身らしく物的証拠を徹底的に隠すことで政治介入の疑いを疑いのみにとどめる強い意志を、菅内閣が吹っ飛ぶ恐れがあるのだから当然でもあるが、強い意志で働かせてはいるものの、非事実を事実と企もうとする余り、検察に代って検察の正当性を証明しようとするくどくどとした回りくどい弁解の一大展開となったといったところに違いない。

 多分、ビデオのすべてを公開した場合、「衝突された巡視船の損傷の程度が航行ができなくなるほどではなく、けが人も出ていない。船長は一船員であり、衝突に計画性が認められない」の釈放理由の内、「計画性」を除いて否定され、逆に悪質性の証明と、「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上、船長の身柄の拘束を継続して捜査を継続することは相当でないと判断した」のみが正当な理由となって残り、そこから政治介入が浮かび上がって国内法に則って粛々として対応したとする釈放そのものが破綻を来たすことになり、そのことを恐れたことからの「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオ」ということなのだろう。
 
 結局はビデオのすべてを見ないことには政治介入は証明できなくても、仙谷官房長官の西田議員の質問に対する答弁は限りなく政治介入のクロを証言していると見ざるを得ない。
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