菅首相のリーダーシップ欠如と対を成しているリスク回避姿勢からの北海道5区選挙区入り回避

2010-10-24 07:32:15 | Weblog

 どうでもいい話のように見えるが、決してどうでもいい話ではないと思う。

 今日10月24日は衆議院北海道5区補欠選挙の投票日。北海道教職員組合から違法献金を受け取って議員辞職した民主党小林千代美前衆院議員の欠員補充選挙。民主党は38歳の新人中前氏を立て、自民党は昨年総選挙で選挙区落選、比例区当選の町村派領袖ご本人の66歳の町村信孝が立候補。

 中前候補は66歳の町村が自民党派閥領袖であることから、古い政治の代表者の一人と把え、古い政治からの脱却、新しい政治の確立、さらに地域主権を掲げ、町村は民主党の「政治とカネ」問題、その他の民主党政治の問題点を攻撃、そして「自民党が政権を失った最大の原因は、自民党の政策が国民の期待とかけ離れてしまったことにあると思います。今、自民党はその反省の上に立って、しっかり皆さんの声を聞く、それを政策に反映させていくという地道な作業に取り組んでいるところです。私もこの1年、そういう思いで有権者の皆さまの声に耳を傾けてまいりました」(町村HPより)と心入れ替えていくことを訴えている。

 それぞれのHPを見ると、民主党中前候補は「私の政策目標」と題して次の主張を掲げている。 

1.政権交代の定着と世代交代の実現
2.一人ひとりの努力が報われる希望ある社会
3.お年寄りも子供も安心して暮らせる地域の再生
4.雪と共生する豊かな地域づくり
5.北海道の政治的自立と日本における新たな北海道の位置づけの確立

 町村たいしたことない親分は――

「5つの危機を克服する」

① 経済・雇用
② 社会保障・少子化と財政
③ 教育
④ 平和と安全
⑤ 政治の信頼の政策を掲げさせていただきました。

 肝心なことは情勢である。どちらが有利な戦いを展開し、当選を獲ち取る可能性が高いか。告示は10月12日。だが、3日、4日後にはマスコミが早くも情勢調査を行っている。選挙戦は告示前から既に始まっていたということなのだろう。

 10月15~17日に行った「読売」によると――

 町村候補――自民支持層と公明支持層の各9割を固め、無党派層の支持も4割強。幅広い年代に支持を広
        げている。
 中前候補――民主支持層の7割を固めたが、無党派層の支持は1割強にとどまっている。

 選挙は無党派層の支持が大勢を決する傾向にある。元々政党支持率と比較して高い割合を確保している無党派層の、その割合が一際高いときは政党離れを起していて、割合が少ないときは少なくなった分、いずれかの政党への支持に回っている構図を取るゆえに、より多くの無党派層を獲得した陣営が有利な結果を得ることになる。
  
 10月16、17日に行った「朝日」―― 

 町村候補――自民支持層をほぼ固める。無党派層の7割の支持を集め、民主支持層の2割も取り込んでいる
        。政権のパートナーだった公明支持層でも大半を纏めている。職業別では各層から万遍なく支持
        を集めている。昨年の衆院選で小林氏に投票したと答えた有権者の2割強が町村候補に投票の意思。

 中前候補――民主支持層の7割以上を固めたものの、無党派層の支持は2割。

 10月17日に行った「北海道新聞」の情勢調査――

 町村候補――自民党支持層の9割超、公明党支持層の8割超。支持政党なしの「無党派層」からも4割以
        上の支持。
        年代別では町村候補の支持は60代以外のすべてで中前候補を上回り、40代と70代以上で5割を超
        えた。
        地域別では厚別区以外は先行。

 中前候補――民主党支持層の約7割、無党派層の支持は2割超のみ。
        年代別では60代のみリード。
        地域別では、厚別区のみ4割超の支持。

 10月12日の告示、10月24日の投開票、その中間点での情勢。実質的な選挙戦を満足に戦わずして、情勢の上では勝敗の行方が既に占われている。

 菅改造内閣発足後の初の国政選挙、一選挙区の選挙ではあっても、その民意が国民全体の民意の一部分を代弁していない、あるいは国民全体の民意と多少なりとも重なっていないと否定できるわけではなく、当然、マスコミも伝えているように菅内閣に対する評価を問う選挙と位置づけることができる。

 この評価は、これもマスコミが伝えてもいるが、勝敗如何によっては菅内閣の今後の政権運営に影響を与えることになり、政権与党にとっては大事な選挙となる。

 仙谷官房長官もこのことに触れている。《仙谷氏、衆院北海道5区情勢「厳しい」「ぜひ勝たせてほしい」》MSN産経/2010.10.22 21:24)

 仙谷官房長官「情勢は厳しい。『政治とカネ』の問題や、自民党候補者がドブ板を踏みながら一生懸命やっている話ぐらいしかない」

 仙谷官房長官「もちろん政権運営に対する何らかのサインが出るので、ぜひ勝たせてほしい。投票日まで民主党を挙げて頑張ってほしい」

 「何らかのサインが出る」大事な選挙だと言うことなら、菅内閣は是が非でも勝利してベストのサインを出す責任を負っていることになる。だから、「投票日まで民主党を挙げて頑張ってほしい」という叱咤の言葉となったのだろう。

 この「民主党を挙げて」は菅内閣に対する評価を問い、菅内閣の今後の政権運営に影響を与える選挙である以上、内閣まで含んだ「民主党を挙げて」であるはずだ。このいきさつを持つゆえに前原外相、馬淵国交相、蓮舫行政刷新担当相、岡田幹事長、枝野幹事長代理等、錚々たるメンバーが選挙区入りして、民主党候補の応援演説を行った。

 だが、菅内閣に対する評価を問い、菅内閣の今後の政権運営に影響を与える大事な選挙でありながら、内閣まで含む「民主党を挙げて」の選挙戦に菅首相は一度も参戦しないで今日24日の投開票日を迎えた。

 大事な試合なのに自分から進んで一度もバッターボックスに立たなかった。当然、バットを一度も振ることもなかった。例え負け試合でも、点差が次の試合に向けた気持に影響してくる。選挙に於いても僅差で敗れるのと、大差で敗れるのとでは今後の展開が多少なりとも違ってくる。「政治とカネ」の問題で元々不利な状況に立たされていたのである、最少点差に持っていくことができたなら、その不利をある程度撥ね退けたことになり、見せ掛けではない強い姿勢で今後の展開に臨むことも可能となる。

 いや、そういったことよりも何よりも、リーダーには闘う姿勢が求められているはずだ。求めに応じて、闘う姿勢を示す義務と責任を負う。

 一度も選挙区入りしなかった理由は民主党候補の情勢が不利とされていることを除いて他にはないはずだ。もし有利と報道されていたなら、進んで選挙区入りし、所信表明演説や国会の答弁で、そのことを発言する段になると気力もなく原稿を読むときと違って声に気力を漲らせ、滔々と、「政権の本格稼働だ」、「有言実行内閣だ」、「20年間の日本の閉塞状態を打ち破るには私一人、あるいは民主党一つの政党ではできない、熟議の民主主義だ」、「先送りしてきた重要政策課題を遣り残して次の世代に遺してはいけない」等々、例の如くの菅節でツバを飛ばすが如きの熱弁を振ったに違いない。その勝利を自身の成果とするためにも。

 菅首相が応援に行かないことを《首相、衆院補選応援に行かず 内からも「逃げ菅」批判》asahi.com/2010年10月21日22時18分)が次のように伝えている。

 〈補選は地域問題が争点になることが多く、予算配分を握る与党に有利と言われる。それだけに歴代首相は現地入りし、有権者へのアピールを欠かさ〉いにも関わらず、アピールチャンスに反して、〈菅改造内閣として初の国政選挙となる衆院北海道5区補選(24日投開票)の応援演説に、菅直人首相が入ろうとしない。首相が単発の補選の応援に行かないのは低支持率にあえいだ森喜朗元首相以来で、民主党内からは「逃げ菅」との批判も出ている。 〉

 首相周辺「首相が無理して矢面に立つ必要はない」

 回避が得策だとしている。

 幹事長経験者「今の官邸にはどうしても勝ちたいという気持ちが足りない。逃げては駄目だ」

 選挙区入りしなかったことについて菅首相は22日の記者会見でその理由を述べている。《小沢氏即時抗告棄却「コメントしない」22日の菅首相》asahi.com/2010年10月22日19時52分)

 ――衆議院北海道5区の補選ですけれども、24日に投開票されます。世論調査で民主党候補は追いかける展開となっていますけれども、党代表として戦況をどう分析しているでしょうか。従来の衆議院補選では総理が応援に入るケースが多いですけれども、今回応援に入っていないのはなぜでしょうか。

 菅首相「若い候補者で、若い閣僚や、いろんな仲間が応援に行っているという風に聞いています。私自身のことは岡田幹事長に判断を任せています

 菅内閣に対する評価を問い、菅内閣の今後の政権運営に影響を与える選挙でありながら、その選挙情報に関しては、誰々が「応援に行っているという風に聞いています」と、距離を置いた言い方となっている。この間接性の装いには敗北した場合の批判、責任から最初から距離を置こうとする姿勢を自身の中で既に決めていることの兆候とすることができる。

 このことは、「私自身のことは岡田幹事長に判断を任せています」の言葉にも現れている。菅改造内閣発足後の初の国政選挙であり、尚且つ菅内閣に対する評価や今後の政権運営を占う選挙であり、そうである以上、これらのことのみならず自身の責任や批判にも直接影響する事柄となるのだから、自身の判断に従うべきを、自らの闘う姿勢をどこかに置き忘れて幹事長の判断だと距離を置き、置くことで菅内閣評価や政権運営のみならず、自身の責任や自身に対する批判から自身を離れた場所に置こうとしている。

 いわば選挙に距離を置いた姿勢は責任や批判に距離を置いた姿勢と相互対応している。

 この相互に距離を置いた姿勢はリスク回避の姿勢からきていることは断るまでもない。例え敗色濃厚な情勢であっても、選挙区に乗り込み、乗り込んだだけの成果を見ることができなくて責任を問い、批判の声が上がることが予想されても、それを恐れることなく、ダメ元で自身の政治を訴える、政治主張を訴える、その気概がない、意気込みを持てずに選挙区入りを回避したということは選挙区入りしてまで負けた場合のより大きくなる責任、より激しくなる批判のリスクを回避したということであろう。

 リスクを回避するリーダーにリーダシップを望むべくもないのは至極当然のことである。リスク回避姿勢とリーダシップ欠如とは対応し合っているということである。

 中国人船長の処分保留のままの不透明な釈放も、中国の「釣魚諸島(尖閣諸島)は中国固有の領土である」に真正面から向き合うことをしなかったリスク回避がもたらした結末であるはずだ。
 
 リーダーシップを欠いているから、そういった展開を招く。

 仙谷内閣だ、影の内閣仙谷官房長官と言われるのも、リーダーシップ欠如からの答弁や政策の丸投げに見るリスク回避の姿勢がそう仕向けている二重権力構造のはずだ。

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