菅首相・岡田幹事長の「カネのかからない政治実現」姿勢なしの企業献金再開は「政治はカネなり」の実践

2010-10-30 09:47:41 | Weblog

 民主党は26日午後の党常任幹事会で受入れを自粛してきた国との契約が1億円未満の企業・団体からの献金を再開することを決定した。《民主、企業・団体献金を受領へ 自粛から一転、再開》asahi.com/2010年10月26日15時0分)
 
 記事は、〈民主党は09年マニフェストで「企業団体による献金、パーティー券購入を禁止します」と明記し、今年7月の参院選でも同じ内容を掲げた。〉と書いている。

 2009年総選挙民主党マニフェスト――

6.企業団体献金・世襲を禁止する

【政策目的】

○政治不信を解消する。
○多様な人材が政治家になれる環境を整備する。

【具体策

政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する。
当面の措置として、国や自治体と1件1億円以上の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入を禁止する。
○個人献金を普及促進するための税制改革を実施する。
○現職の国会議員の配偶者及び三親等以内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することは、民主党のルールとして認めない。
○政治資金を取り扱う団体を親族に引き継ぐことは、法律で禁止する。
○誹謗中傷の抑制策、「なりすまし」への罰則などを講じつつ、インターネット選挙活動を解禁する。

 だが、多分、自民党とは違うとして民主党のクリーンさをご披露に及ぶためにだろう、「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」までも今年の1月から自粛してきた。岡田幹事長も後掲する自身のブログにこの自粛のことを書いている。

 いわばマニフェストに掲げたわけではない自主的に自粛した「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」を解禁するだけのことだから、マニフェストに違反しているわけではないと岡田幹事長は言っている。

 上記「asahi.com」記事はマニフェストが「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」というふうに禁止の条件としている「政治資金規正法改正」のめどが立たないことから、暫定措置として再開する方針を決めたと、再開の理由を伝えている。

 これは自民党その他の野党と同じ土俵に立たないまま「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」まで禁止していたなら、不利になると考えたことを意味しているはずだ。

 例えどのような内容の「政治資金規正法改正」となっても、すべての党にその“規正”のアミを掛けることになるから、同じ土俵とすることができる。但し民主党としたら、なるべく目の粗い、大き目のアミを願っているのかもしれない。改正された「政治資金規正法」に我々も従わなければならないと。

 もし民主党が「政治資金規正法」の改正に関わらず、「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」を自粛してきたように独自の禁止方法を取ると言うことなら、「政治資金規正法改正」の目途が立たないことが「1億円以下」解禁の条件とはならないことになる。

 ということは、他の政党と同じ土俵に立つことの方向をより目指した「1億円以下」の解禁の可能性が出てくる。

 記事は、〈今年9月、企業・団体献金に一定の理解を示す岡田氏が幹事長に就任。岡田氏は党副代表時代の09年3月、自らのメールマガジンで「企業・団体が政治の面で資金を出すことは、一定の範囲では認められるべきではないか」などと主張しており、今回の措置は、岡田氏の考えを反映したものとみられる。また、党内には献金がなければ、党財政や政治活動に支障があるとの指摘もある。〉と内情を伝えているが、民主党としてはマニフェストでクリーン政治に向けた理想を高々た掲げたものの、現実を知ったといったところだろうか。

 記事は菅首相が25日の参院予算委員会で公明党の草川議員に対して企業・団体献金の禁止や罰則強化を含めた政治資金規正法改正に協力を要請したばかりであることも解説しているが、鳩山首相退陣後の代表選立候補時から、自身の違いを見せるためでもあるのだろうが、「クリーン政治」を訴え、企業献金の禁止を主張してきている。9月の代表選でも、対立候補の小沢氏との差をつけるたもあるだろうが、「カネのかからない政治実現に向け、企業・団体献金禁止について議論し、年内に党方針をまとめる」毎日jp)と確約さえしている。

 菅首相は、多分岡田幹事長主導ということなのだろう、党常任幹事会決定事項に関して10月27日夜の首相官邸記者会見で次のように述べている。

 《「企業献金再開、マニフェストに反せず」27日の菅首相》asahi.com/2010年10月27日19時35分)
  
 ――企業団体献金。民主党が受け入れ再開を発表して、前原大臣、仙谷長官が否定的な姿勢を示した。民主党は去年の総選挙のマニフェストで「企業団体献金の全面禁止」を掲げたが、党代表としてどう考えるか。

 菅首相「あのマニフェストでは、法改正から3年後、そうした企業団体献金を禁止すると。そういう形になっていまして。マニフェストに反したということではありません」

 多くが「1億円以下」解禁を、“企業献金再開”と把えて批判しているが、菅首相が主張したのは「カネのかからない政治実現」である。 
  
 確かにマニフェストに違反はしていない。だが、「1億円以下」解禁は少なくとも現在以上に“カネをかける政治”への志向を示しているはずである。

 「カネのかからない政治実現」を母として、次の場面である「企業・団体献金禁止」を実現可能とする。

 決して「企業・団体献金禁止」を母として「カネのかからない政治実現」を自らの子どもとすることができるわけではない。

 このことは今回の「1億円以下」の解禁そのものが証明している。

 と言うことなら、先ず最初に「カネのかからない政治実現」に向けた努力を持ってくるべきだろう。

 だが、菅首相も岡田幹事長も、「1億円以下」解禁のみに目を向けている。いわば“カネをかける政治”への衝動を最初に持ってきているとも言える。

 菅首相は元々合理的判断能力を欠いているから、代表選で「カネのかからない政治実現に向け、企業・団体献金禁止について議論し、年内に党方針をまとめる」と発言したとき、「企業・団体献金禁止」のことしか頭になかったに違いない。

 だから、「1億円以下」解禁の方向にのみ向けた舵しか切ることができなかった。「カネのかからない政治実現」は最初からのカラ証文に過ぎなかったと言うことである。このカラ証文に過ぎなかったと言うことも、合理的判断能力ゼロの知らぬが仏に助けられて、菅首相の頭には一切意識することはあるまい。

 各議員は献金を除いた場合、歳費と政党助成金を基本的な政治資金とする。だが、岡田幹事長は、いわゆる“企業献金再開”がマニフェストに違反していないこと、メディアの反応は過剰で、事実に基づいた報道をすべきだと批判している自身のブログ《企業・団体献金―マニフェストに沿った決定、正確な報道を》岡田かつや TALK-ABOUT/2010/10/28)で、「『立法事務費』というものもありますが、政党交付金を中心とした税金で党の財政はほぼ100%賄われているのが現実です。それが、政党として健全な姿かどうかということです」と、政党助成金100%依存は健全な政治ではないと位置づけている。

 では、国会議員の歳費と政党助成金を見てみる。

 政党助成金は2010年度分であるが、共同通信の試算による。
 
 民主党――前年比36億3700万円増の172億9700万円。

 現在民主党は衆参410人として、1人頭は172億9700万円÷410人≒4200万円÷12カ月=350万(議員1人当りの月額政党助成金)

 政党助成金が党所属議員に平等に配布されていないとしたら、私自身は不公平であると同時に理不尽だと思っている。支払っている側の国民からしたら、平等を望むはずだろうと考えているからだ。

 政党助成金(350万)+一般議員歳費月額(130万1000円)+文書通信交通滞在費(100万円〈月額・非課税〉)=580万円(月収入)。

 これに期末手当がつくが、法律で、「期末手当の額は歳費月額及びその歳費月額に百分の二十五を乗じて得た額の合計額に、特別職の職員の給与に関する法律の規定により期末手当を受ける職員の例により一定の割合を乗じて得た額とする。」としている。

 後半を無視して歳費月額にプラスして歳費月額に100分の25をかけてみると、130万1000円+(130万1000円×0.25)≒162万円×年2回=324万円÷12カ月≒27万円(月平均)

 580万円+27万円平均=607万円

 2008年(平成20)年度所得分布を見るために年額に直してみると、607万円×12カ月=7284万円

 2008年(平成20)年度所得分布では7284万円は最高分布としている2000万円以上1.3%の高額所得者の中に入ることになる。日本の人口1億2千万の内、2000万円以上の高額所得者は1.3%かけて156万人、その中でも上位に位置する高額所得者となっている。

 勿論、歳費の中から生活費を賄わなければならない。国会議員ともなれば、付き合いにカネがかかりもするだろう。だとしても、一般的な生活者と比較して、遥かに高額所得者の位置につけている。

 歳費は生活費としてのみ支給されているのではなく、政治活動費としての支給も含んでいるはずである。その歳費を計算に入れずに、岡田幹事長は政党助成金100%依存は健全な政治ではないと言う。

 ここにも「カネのかからない政治実現」の姿勢を見ることはできないばかりか、より“カネをかける政治”への志向しか窺うことができない。

 岡田幹事長の健全な政治とは“カネをかける政治”=「政治はカネなり」ということになる。

 そして菅首相もこのことに同調している。 

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