鎮火に手間取った被災地製油所火災はなぜヘリコプターで消火しなかったのか

2011-03-17 10:04:18 | Weblog



 石油不足で救援物資の輸送が被災者にまでなかなか届かないことが僅かばかりの食事や寒さに耐えなければならない辛い思いをさせ、ただでさえ不安な生活を強いている上になおさら不安にしている。特に近親者を亡くしたり行方が分からない被災者の悲しみや不安を少しでも和らげるには温かい食事と暖かい居住空間が必要となるはずである。

 被災から免れた住民も東北地方では冬の間の必需品である灯油がガソリンスタンドで売り切れていて手に入らず、寒さに耐えなければならない。この辛さは冷暖房完備、毎日おいしい食事にありつける首相官邸には届くまい。

 届いていたなら、もう少し迅速で効果的な対策と実施を行っていたはずだ。

 多くの病院が手に入らない、届かないと薬品不足を訴えている。ヘリコプターで支援物資を輸送し、必要とする避難場所や病院に着地可能な場所がない場合はヘリコプターをホバーリング状態にしてロープで吊り降ろして直接投下するという発想が当初からなく、14日になって孤立生活を強いられている被災者からの困窮を訴える声に押されたからだろう、ヘリコプターからの物資投下を検討する声が防衛相や農水相から出始めた。だが、投下を開始したというにニュースはまだ耳にしない。

 どういった理由からヘリコプター投下を逡巡しているのか分からないが、勘繰るとするなら、ヘリコプター投下が成功し、物資不足をスピード解決した場合、逆になぜもっと早くから始めなかったのかという批判が起こる可能性から、計画をなしにしてしまうといった深慮遠謀を働かせているのかもしれない。

 もしそういった考えでいるなら、被災者の生命・財産を蔑ろにしするだけではなく、国民もを冒涜する行為となる。

 2004年12月26日のスマトラ沖地震では支援各国軍のヘリコプターによる食糧投下が行われたと《バイクやヘリで物資、防疫にも力 スマトラ沖地震活動例》asahi.com/2011年3月16日0時12分)が伝えている。

 〈緊急食糧支援を担当した国連の世界食糧計画(WFP)は、協力協定を結んでいた大手宅配会社から提供を受けた倉庫やトラックをフル活用し、ピストン輸送した。だが交通が遮断され孤立化した西岸地域では、港も破壊されていた。このため食糧などを積載した船を沖合に停泊させ、はしけで荷揚げし、バイクや徒歩で運んだ。

 各国軍のヘリコプターによる食糧投下も行われた。沖合に停泊した米空母を拠点に、食糧を積み内陸部などに向かった。ただ現場では食糧の取り合いになる場面も見られ、老人や女性、子供など弱者にきちんと届いたかどうか疑問の声もあがった。 〉――

 確かに欠点はあったかもしれないが、学習して複数の国連職員、もしくは各国軍の兵士が食糧投下前にローブで現地に降り立ち、平等に行き渡るように監視・指導すればより平等に行き渡るのではないだろうか。

 いずれにしてもヘリコプターからの物資投下は効率的で、その有効性を証明している。

 ヘリコプター投下に手間取るうちに刻々と時間は経過していく。当然、物資不足の解消に向けた主たる手立ては空がダメなら、陸地輸送に必要なガソリン、軽油等の石油製品不足の早急な解消ということになる。

 昨日のテレビで放送していたが、トラック協会の人間が被災地以外の地域ではトラック輸送に必要な燃料は確保できるが、被災地からの帰りの燃料の確保が保証されないとして配送を断っている事情があると話していた。

 被災地での極端な石油不足の原因の一つは東北6県唯一の製油所である仙台市宮城野区の「JX日鉱日石エネルギー・仙台製油所」が地震で火災を起こし、機能停止に陥っているからだという。その火災が一昨日の15日になってやっと鎮火した。だが、復旧には早くて2週間だというから、石油不足・燃料不足の早急な解決に役立たない。

 石油不足のもう一つの原因は石油元売りの東北地方の輸送拠点が被災して操業停止に陥っていたからだというが、「出光興産」の宮城県塩釜市の輸送拠点が復旧、今日17日から操業開始するという。《出光 塩釜の輸送拠点を再開へ》NHK/2011年3月16日 21時17分)

 〈塩釜市の輸送拠点の再開によって、宮城県内の被災地にガソリンなどを届ける時間が、これまでの3分の1に短縮され、被災地へのガソリンなどの供給を効率よく行える〉と記事は解説している。

 前田出光興産需給部長「物流手段の負担が格段に軽減されるほか、輸送効率も上がる。地域の復興に対して大きく貢献できると思う」

 記事は最後に〈ほかの石油元売り大手各社の被災地の輸送拠点は、いずれも復旧のめどが立っておらず、宮城県塩釜市の輸送拠点について「出光」は、石油元売り各社が、被災地向けの燃料の供給拠点として、共同で使えるよう各社と話し合いを進めている〉と書いている。

 今日17日から操業開始だとしても、不足緩和に持っていくことはできるだろうが、1両日に不足解消まで持っていくことができるわけではないはずだ。

 不足原因の一つとなっている被災各県の港湾の機能回復も待たれるが、仙台塩釜港のみが16日にも使用可能となる見通しだと3月15日付の日刊工業新聞が伝えている。だが、河野太郎自民党議員のツイッターに、〈都内には出荷始まってます。塩釜からも被災地に出し始めてるようです。塩釜の港に接岸できるようになれば、船で油槽所に運び入れられます。RT @takopaul 河野さん、燃料の供給の件、もう少し分かりませんか? 約16時間前 TwitBirdから〉と投稿されているが、16時間前というと16日夕方6時頃の投稿だから、その時間にはまだ再開されていないということになるのだろうか。河野氏が再開の事実を把握していないということもあるが、再開されていたとしても、本格的な稼動には相当な時間が必要になるに違いない。

 河野氏のツイッターに触発されて、次のようなツイートを私自身のツイッターに書いた。

 〈河野太郎自民議員が石油は「塩釜の港に接岸できるようになれば、船で油槽所に運び入れられます」とツイッターで言っている。中国は四川省大地震で自重30トン前後の大型重機を大型ヘリコプターで運搬。やろうと思えばヘリコプターで石油タンクローリーを吊り上げて塩釜の油槽所まで運搬できるはず。 約14時間前 webから〉 

 〈ロシアは旧ソ連時代から戦車を吊り上げる大型ヘリコプターを所有している。自衛隊のヘリコプターでは不可能だということなら、国民の生命・生活を言う以上、苦難を強いられている生活から被災者を早急に解放するため、社会生活維持するためにロシアに依頼、運搬するぐらいのことはしてもいいい。 約14時間前 webから〉

 とまあ、相変わらず私はヘリコプターの拘っている。

 ここで問題としたいのは東北6県唯一の製油所である仙台市宮城野区の「JX日鉱日石エネルギー・仙台製油所」の地震発生11日午後2時46分後火災発生から消火が、なぜ15日にまで(何時か正確には分からないが、)かかったのかということである。

 《仙台の製油所鎮火 ガソリン供給の要衝、復旧最優先》asahi.com/2011年3月16日19時53分)

 消火が手間取った理由を記事は〈地震発生後、出荷用タンクが炎上、炎と黒い煙を上げて燃え続けた。道路が遮断されて消防車が近づけず、15日に延長ホースを使ってようやく鎮火させた。〉と書いている。

 2週間かかる復旧までの代替措置として〈JXは同社の関東にある製油所が利用できないことから、西日本の製油所の稼働率を通常の80%前後から100%近くまで上げる。船で青森市、秋田市、山形県酒田市の港に運び、そこから陸路で太平洋側の被災地に運ぶ計画も進めている。〉ということだが、これも相当な時間を要して、痺れを切らしている被災者のすぐの満足に応えることは難しい。

 〈被災地ではガソリンスタンドの給油待ちが長蛇の列となり、順番待ちを巡るトラブルも発生。〉と現地の状況を伝えている。

 販売店「いつ暴動が起きてもおかしくない状態」

 にも関わらず、政府は早急・有効な手を打てないでいる。

 宮城県多賀城市現地被災者「被災者にとって食料運搬車のガソリンと避難所ストーブの灯油がとても大事。2週間とは言わず数日内に復旧させてほしい」

 これは切実な正直な思いであろう。

 「道路が遮断されて消防車が近づけず」という状況は1995年1月17日発生の阪神淡路大震災で既に学習していたはずだ。にも関わらず、同じ障害を繰返す。

 阪神淡路大震災では道路が遮断されて消防車が近づけなかったばかりか、送水機能が麻痺して消火栓が使えないという悪条件も重なったことが燃えるに任せて火災を大規模化することになった。

 当時消防車が使えなければ、なぜヘリコプターによる消火を行わなかったのかという批判が起こった。だが、消防関係者から、上空は火災による上昇熱気流が強くヘリコプターに危険、高い場所からの一度に1トン前後の水の塊を投下することによって惰力のついた水圧で倒壊家屋に下敷きになっているかもしれない被災者を圧死させる危険性があるといった理由を挙げて不可能としていた。

 例え圧死することになっても、燃え盛っている倒壊家屋下の生存の可能性は低いと見て、早い鎮火によってまだ延焼を免れている倒壊家屋下の可能生存者の1人でも多い救命に賭けるべきだと思うが、生存の可能性を言い、圧死の恐れを口にしながら、延焼に任せることによって結果的に生存の可能性を無残にも一切断ち切ることになった。

 これは意図的・間接的な殺人に当たらないだろうか。

 日本の防災関係者の多くが否定したヘリ消火だが、阪神淡路大震災前年の1994年1月17日(太平洋標準時)のロスアンゼルス地震では建物消火にヘリコプター消火が活躍し、効果を上げている。新聞記事で読んだことだが、ロスアンゼルス消防署員だと思ったが、ヘリコプターから投下した水は霧状化するために塊のまま落下するからとする圧死の危険性を否定していたことを記憶している。

 この霧状化が消火の効果点であるようなことを言っていた。この証拠としてドイツで開発され、東京消防庁、その他が導入しているという個人携行型の消火装備であるインパルス消火銃を挙げることができる。舞鶴消防署のHPがインパルス消火銃について解説している。

 《消防・防災最前線 救助活動編:災害現場の必需品 第9弾!インパルス消火銃》 

 インパルス消火銃とは、空気ボンベと消火剤容器(容量約12リットル)が一体となったドイツで開発された個人携行型の消火装備です。舞鶴消防では救助隊に1機配備されています。

 圧縮した空気の力で水の塊(約1リットル)を噴霧状に発射し消火します。水量も少ないため水損防止に優れ、特に車両火災には1~2発で消火することが可能です。

 多少の遮へい物があっても、火元に対して霧状の水が的確に到達することができ、また背負って使用する為、消防車がホースを伸ばせない、狭い現場等でも消火活動が行えます。大規模火災よりも、初期消火に威力を発揮します。 

 重量約25kg【インパルス消火銃+消火剤容器+消火剤(水)】

 このインパルス消火銃を大型化したものがヘリコプター消火ということであろう。

 だが、なぜかヘリコプター消火は活用されていない。消火に手間取り、火災が長引けば、施設の損傷も大規模化し、復旧にも時間がかかることになる。地震発生の3月11日からの火災に鎮火が15日と4日かかった結果、復旧に2週間ということだろ。

 当然、1日、2日で消火できたなら、復旧も短時間で可能となる。HP《防災とヘリコプター》(Aviation Now/航空の現代:ラジオ・インタビュー/西川渉)には、〈ヘリコプター消防のノウハウついて、消防研究所や東京消防庁などが、模擬建物を並べてヘリコプターによる大規模な消火実験をおこなうなど、消火の効果、火勢のヘリコプターへの影響、あるいはローターのダウンウォッシュの影響など、さまざまな実験データが得られています。〉と書いてある。
 
 このような実験は阪神淡路大震災の大規模な家屋火災になす術もなかったことの反省からであり、学習したからであり、教訓としたからであろう。なぜ活用して、空腹や寒さ等の困窮に耐えている被災者の要望に応えることをしなかったのだろうか。医薬品不足と満足な治療が行えない不安を訴える医療関係者の要望に応えることはしなかったのだろうか。

 「JX日鉱日石エネルギー・仙台製油所」火災の1日も早い鎮火と1日も早い復旧が各港湾の復旧や道路の復旧、石油輸送拠点の復旧、その他の復旧・回復と同様に各要望により多く、より早く応えることができる要素の一つとなることは確実に言えることなのだから、実際に確実にするためにもヘリコプター消火の活用は必要ではなかったろうだ。

 このことは今後の大規模災害についても言えることで、活用しなければならないことだと思うが、どんなものだろうか。

 この記事を校正中の9時48分、自衛隊のヘリコプターが福島第一原発3号炉の上空から最初の水を投下したシーンをNHKテレビが実況中継していた。なぜこの方式を「JX日鉱日石エネルギー・仙台製油所」火災の消火に用いなかったのだろうか。ますます腑に落ちない。

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