防衛省は東京電力福島第一原子力発電所内の放射能に汚染された瓦礫が3号機への地上からの放水に障害となっていたために、その撤去に自衛隊の戦車を投入すると昨3月20日(2011年)に明らかにしたという。《原発内のがれき除去に戦車投入へ 防衛省》(asahi.com/2011年3月20日18時55分)
陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡)に配備されている74式戦車2両。全長9.4メートル、約38トン、4人乗り、最高時速は53キロ。
一般的な戦車ではなく、戦車であると同時にブルドーザーのように車両前方に土石等を押して排除する「排土板」がついている上に放射線が高い場所でも隊員が車両内にとどまったまま作業できるメリットがあると記事は解説している。
砲撃を加えつつ進軍を阻止するために築いた土壁や土嚢壁等の障害物を押し出して進路を確保する機能を兼ね備えた戦車ということなのだろう。
「NHK」記事――《自衛隊 がれき撤去で戦車派遣》(2011年3月20日 21時23分)は少し詳しく書いている。
現場である3号機と4号機の原子炉の建屋の周辺には水素爆発などの影響で高い値の放射線を出す大量の瓦礫が散乱。この瓦礫が隊員たちの安全を確保するうえでの大きな懸念材料となっていた上、消防車が思うように通行できないこと、また放水を初め様々な活動の障害となっていた。
このため、あとでキレ菅に怒鳴られないように用心したのかどうかは分からないが、自衛隊は政府の了解を得た上で装甲が厚く、放射線に対しても一定の防護能力があり、隊員が車外に出ることなく作業可能な、前部に排土板を取り付けた戦車を投入することになった。
戦車はトレーラーに乗せられて20日午後6時半頃、駐屯地を出発、21日早朝にも現場近くの活動拠点に到着する見通し。
大量の瓦礫が散乱していて、消防車が思うように通行できない妨げとなり、放水活動の障害ともなっていた。
だったら、放水と併行させて、放水していない時間を利用するか、放水の邪魔にならない場所があれば、その場所から始めるかして撤去作業ができるようになぜもっと早くに手配しなかったのだろうか。
現場の状況と放水活動の進行状況との関係を政府、自衛隊、消防庁、警察が一堂に会して話し合い、より効率を上げる方法を検討し合うといったことはしなかったのだろうか。
早くに投入していたなら、消防車の通行もよりスムーズとなり、あるいは問題なく通行できることになり、瓦礫が与えていた放水の障害を取り除いて、作業がより効率的に進捗していたはずである。
撤去作業は大砲を後方に回転させておいて行うに違いないが、戦場でならともかく、大砲を背中にしょった戦車で土石の撤去作業は一種異様な光景に映るかもしれない。
また、日本に原子力発電所が存在し、そこに原子炉がある限り、二度とこの手の事故が起こらない保証はない危機管理上、戦車ではなく、放射線に対しても一定の防護能力があり、隊員が車外に出ることなく作業可能な車両を準備しておくべきではないだろうか。
排土板は瓦礫や土石を一方に片寄せる機能を保持するが、それらを持ち上げてダンプ等に積み上げる機能は持たない。画像に示したドーザーショベルは、そのバケット部分が排土板の役目を兼ね備え、瓦礫や土石を掬って持ち上げることができるから、ダンプ等に積載して他の場所に移動させることもできるし、例え一方に掻き寄せておくにしても、同じく掬って持ち上げることができるために排土板以上に山なりに掻き寄せておくことができる上、作業時間も短くて済み、より広い活動場所の確保が可能となる。
ドーザーショベルの運転席を放射能に対して防護仕様にしておけば早変りさせることができるのだから、準備しておけないことはない。自衛隊が所有して、万が一のときに投入する態勢にしておけば、効果ある危機管理が可能となるはずだが、どうだろうか。
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