一昨日、2月4日(2011年)の参議院予算員会。質問者は西田昌司自民党議員。前原外相に対する外国人から献金を受けていた箇所に関してのみ抜粋して前原外相の責任問題と言うよりも、菅首相の浮上している問題に対して果して合理的判断に基づいた対応能力を十分に示すことができたのかを見てみることにする。
先に外国人からの献金に関する政治資金規正法の罰則について参考人として出席、述べている田口尚文総務省選挙部長の発言を先に記載しておく。
田口選挙部長「えー、一般論として、申し上げますと、政治資金規正法に於きましては、何人も外国人、外国法人、またはそうした構成員が、もしくは外国法人である一定の団体、その他の組織から、政治活動に関する寄付をされてはならないとされており、えー、故意にその規定に反して、寄付を受けた者については罰則の定めがございます、なお、一般論として申し上げますと、故意がなければ、罰則の対象となりません」
(西田議員「今ね、お話にありましたように、それ、もう一度いきましょう。この場合、禁止の規定に引っかかったら、公民権停止になるんでしょう?そこまではっきり言ってくださいよ」)
田口選挙部長「えー、この刑に処せられた場合に於きましては、あ、公民権停止の対象になります」――
田口選挙部長「お答え申し上げます。えー、一般論で申し上げますと、政治資金規正法に於きまして、何人も、外国人、外国法人等から、政治活動に関する、規制がされておりますが、故意にこれに違反して寄付を受けた者、団体にあっては、その役職、また構成員として当該違反した者と、その者についての罰則の定めがございます。
で、もう一度一般論でございますが、故意がなければ、罰則となりません」
返金した場合の規定について――
田口選挙部長「お答えいたします。えー、一般論として申し上げますが、罰則の適用につきましては、あー、当該行為の、えー、行為時の行為が法的に評価される決まりでございまして、エ、例えば、収支報告書の訂正をしても、過去の事実関係は変わらないものと解されているところでございます」(以上)――
前原外相は在日外国人からの寄付を認めている。このことを前提とすると、「故意にその規定に反して、寄付を受けた者については罰則」を受けるが、「故意がなければ、罰則の対象」足り得ない点が責任有無の分岐点となるキーポイントということになる。
では、西田議員が前原外相の外国人からの寄付を追及した箇所から二人の遣り取りを取上げてみる。前原外相と野田財務相、蓮舫政刷新相の3閣僚が脱税事件摘発を受けた人物関係の企業からパーティー券購入を受けたり、献金を受けていた問題の追及があったのち、この問題に移っている。
西田議員「前原大臣にもう一つお聞きしたいんですね。それは前原大臣の後援会の収支報告書です。で、この話をするんですが、今日実はですね、私は本当は、えー、写真を提示しようと思ったんです。で、写真はあるんですがね、ま、民主党の理事の方から、ま、拒否されたんで、ま、(ここにあると示すように手に持っている)見せられないんですけれども、なぜかと言うと、いや、ある方がですね、私に教えていただいて、前原大臣がですね、非常に熱心な支持者がおられ、京都の山科にね。そこで前原さんと、大臣と一緒に、大臣室で写真を撮っておられて、これを大変大事に、額に入れて飾っておられるんですよ。で、この方は山科で飲食店を経営されている方ですけども、写真を撮られた。そういうご記憶ありますよね」
前原外相「ございます」
西田議員「それはどういう形のお知り合いの方ですか」
前原外相「私が中学2年のときに、イー、山科に引っ越しまして、えー、そのー、団地の傍に、えー、えー、経営をされている、焼肉屋を経営されている、方だと思います」
「方です」と断定するのではなく、「方だと思います」と推定語を使ったのは逃げる気持が少なからずあったからだろう。
西田議員「で、それで中学以来ずっと親しくお付き合いされているんでしょうけど、ど、どういうお付き合いをされてるんですか」
前原外相「まあ、あの、大変、政治の世界に出る前からもですね 親しくさせていただきましたし、えー、特に私が、政治の世界に出るようになってから、一生懸命に、イー、応援をしていただいております」
西田議員「で、応援されてるということですね。で、因みにその方は日本国籍をお持ちなんでしょうか」
前原外相「在日の方、なんです」
ここで「在日の方、なんです」と特定しているのだから、「方だと思います」の推定はやはり逃げの気持があったと見なければ、矛盾した言い方となる。
西田議員「えーと、在日の方が、在日の方の場合は、色んな選挙運動はしていけないとか、ですね、おカネを貰ったらいけないとかあるんですけれども、そういうことをされてはいませんか」
前原外相「まあ、あのー、委員が、今日資料で出されております、こと、私もきのう、ある方から聞きまして、えー、献金を受けておりまして、えー、これについては、アー、返金をして、シュウシ、収支報告書を、テイ、テイ、訂正させていただきたいと思います」
外相本人が、返金と訂正が可能であると知らずに言ったのか、知っていて言ったのか分からないが、田口選挙部長が外国人と知っていて尚且つ本人が承知の上献金を受けたといった故意による受領の場合、行為時の行為が法的罰則規定の対象としているために後日返金しても、収支報告書の訂正をしても、過去の事実関係は変わらないする説明を受ける前であるから、一応通用する答弁とはなる。
西田議員「今、大臣から、まあ、指摘する前から、言われたんですがね、献金を受けておられたんですね。いくら受けられたんですか」
前原外相「ま、あのー、委員が指摘されたものについては、5万だと、おー、聞いておりますし、私がきのう事務所から聞いた、金額も、同じ金額を聞いております」
西田議員「全然、それね、調べてないんじゃないんですか。この方が少なくともですね、私が調べただけでも、過去4年間の間で、5万ずつですから、20万あります。後分かりません。全然調べてないんじゃないですか、あなた」
前原外相「ま、私もきのう、事務所の人間からそれを聞いたところでありますので、全体像を調べてですね、しっかり対応させていただきたいと思います」
前原外相は「ある方から聞きまして、えー、献金を受けておりまして」と言い、「5万だと、おー、聞いておりますし、私がきのう事務所から聞いた、金額も、同じ金額を聞いております」と、献金と献金額の事実は第三者からの伝聞で知り得た事実だとし、自身は知らなかった事実――故意による献金受領ではないとしているが、西田議員が収支報告書を調査して過去4年間で5万ずつ、合計20万の献金を指摘していることに関しては西田議員から提出を受けた質問主意書に付されていた資料か何かに5万と書いてあったから、5万に合わせたと疑えないことはなない。
収支報告書を調べてみれば、20万なのはすぐ分かることだからだ。
西田議員「それでね、軽く返還するというようなことをおっしゃってるんですけどもね、先ず事務方に聞きますがね、これは返還するということで済まない問題ですよ。外国人に対する寄付の禁止規定であります。説明してください」
ここで田口選挙部長に外国人から献金を受け、それが故意による行為であることが判明した場合、公民権停止処分となるということを説明させている。
西田議員「外国人から継続して献金を受け取ってる。公民権停止になった場合、大臣を辞任だけではなく、国会議員の資格も失う。どうするんですか」
前原外相「まあ、あの、全体像を把握してから、お答えをした方がいいと思います」
田口選挙部長の指摘は政治資金規正法は外国人からの受領献金が故意か故意でないかを罰則有無の判定基準としているとしている。なぜ前原外相は自身は知らなかった献金――故意を争点に争わなかったのだろうか。実際は知り得ていた献金だったから、争うことができなかったのだろうか。疑問が残る。
ここで西田議員は菅首相の政治責任・任命責任追及に転ずる。
西田議員「菅総理、あなたが任命した大臣がですね、こういう問題されているんですよ。どう思われますか。その方が、外国人から献金されている方が外務大臣ですよ。直ちに、直ちに、罷免すべきじゃないですか」
菅首相「先ず、ホン、ご本人が、きちんと全貌を、あー、把握したいという、ふうに言われているわけですから、先ずは、あのー、それが私も、そうであるべきだと思います」
菅首相は内閣の最高責任者としても、前原外相の任命責任者としても、調査の結果故意による献金受領だと判明したなら、当然私自身にも責任が及びますと断言すべきで、そういった姿勢を示すことこそが合理的判断能力に基づいた合理的な対応能力と言えただろう。
また、その調査も内閣運営に影響する重大な案件と看做して、本人の調査に任せるのではなく、党による調査に言及すべきだったはずだ。自身の対応と調査に信頼性を持たせるためにもリーダーとしてそのくらいの危機管理能力を見せてよさそうなものだし、ここでそういった姿勢を示すことができたなら、徒に追及を長引かせることもなかったに違いない。だが、追及を短時間に切り上げさせる合理的な判断能力も合理的な対応能力も示すことができず、それらを欠いていたために逆に西田議員の追及を長引かせ、尚且つ厳しいものとすることになった。
西田議員「何を言ってるんですか。事実を調べたら、まだ大きくなるんですよ。今分かっているやつだけでもですよ、5万じゃなくて、20万円は分かってるんです。ね、これからもあと調べたら、増える可能性はあっても、減る可能性はないんですよ。認めたんですよ、本人が。
そして、その方を外務大臣、外国人からおカネを貰っている人間が、外務大臣なんてあり得ないんじゃないか(殆んど詰るに近い怒鳴り声となっている)何考えてるんですか」
西田議員が「認めたんですよ、本人が」とは言っているものの、前原外相は献金も献金額も第三者から聞いて知り得た事実としている。ここで必要なのは故意か故意でないかの争点のみのはずだが、西田議員にしても、本人が認めているの一点張りで、故意であったと認めていると混同しているに過ぎない。
菅首相「先ず、ウ、ご本人が、ちゃんと全貌を調べたいと言われていますから、先ずはそのことに待ちたいと思っています」
一国のリーダーでありながら、このお粗末な、合理的に判断できない能力、お粗末な対応能力はどこからきているのだろうか。例え本人の調査を待つとしても、結果に対する自身の責任まで言及すべきだろう。だが、責任感さえないから、こういった答弁に終始することになる。
西田議員「あなたはね、自分がね、何でもみなさんに振り分けるんです。先ずは誰々、先ずは国会で、先ずは与党の中で、先ずは大臣に。あなたはどうするんですか。菅総理、あなた自身の不明もあるし、ね、様々な問題を含んでるんですよ。
これは大変なニュースになるりますよ。外国との交渉をする人間がですよ、こういう関係であると言うのは飛んでもない。現に今までこういうことが分かったら、辞任されてるんですよ。何を考えてるんですか、あなたは。そしてあなた自身の、大臣を罷免するだけじゃないんですよ。菅総理、あなた自身の責任もあるんだよ。今の時点だけでも、前原大臣は認めてるんですよ。なぜ、そこの責任、あなたには分からないんですか。調べる前に責任はあるじゃないか。どうなってるんですか」
相変わらず故意の有無を問題とせずに追及と答弁が延々と続いている。菅首相はどう答弁したなら、短時間で切り上げることができるのか、合理的な対応能力を欠いているために合理的に判断することさえできない。
菅首相「ま、大変、言葉、鋭く、おっしゃいますけども、先ず事実関係をきちんと把握するというのは、当然だと思います」
答弁に不服だったために審議中断。委員長が「もう一度答えさせます。菅総理大臣」で審議再開。だが、同じことの繰返しが延々と続く。
菅首相「私の答弁はそれは西田さんは気に入らないかもしれませんけれども、私もですね、色んなケースを過去見てますから、あまりですね、あのー、短兵急にですね、あのー、おー、何かですね、やはり、いー、判断を、そのー、するというのは、あの、必ずしも私自身、党のことも、これとは関係ありませんでしたけども、聞いていなかったので。だから、きちんと、ご本人が先ず調べると言われているんですから、その、おー、調べた上での、おー、結果を待ちたいと、おー、そのように言って、何か、おかしいんでしょうか」
「色んなケースを過去見てますから」と言って、何を見たのか、その答がない。しかも西田議員が前原外務大臣が責任を取って辞任となった場合の菅首相の責任を聞いているのに対して、相変わらず自分は聞いていなかった、本人が調査すると言っているから、その結果を待てと同じ答弁を繰返しているに過ぎない。聞いている者をしてこれ程イライラさせる発言はないに違いない。バカな男だと軽蔑さえ起きる。
再び審議中断。そして菅首相の答弁のし直し。
菅首相「私自身が経緯を詳しく勿論知ってるわけではありませんが、今の遣り取りの中で、えー、前原、大臣自らですね、えー、そういう、あのー、部分について、そういうことがあった、ないし、あったようだと言うことの指摘がありましたが、それはやはり、あのー、おー、注意を、おー、して、いかなければならないのか。まあ、率直に申し上げてですね、あの、在日の方、あー、が、色んな活動をさてれる中で、あの、おー、勿論分かってる場合、場合も、国籍が、帰化されているかどうか、色んなケースが、あのー、あります。
ですから、個別のことは私は聞いておりませんので、そういう色んなことが一般的に、あるわけですから、先ずは、あの、今、お聞きした中で言えば、それは気をつけられた方がいいと思いますが、それを以てですね、何かそれを以て、えー、そのー、大臣が適格云々ということに、ついて私は今までの話の中で、そういうふうには思わなかったもんですから、ちゃんと話を聞いて、ということを申し上げているんです」
将来的な自身の責任の可能性には相変わらず触れずに同じ内容のことを言葉数多く遠回りに長々と喋っているに過ぎない。この冗長な話し方も判断能力・対応能力に関係してくる。
西田議員「あのね、菅総理。この期に及んで、非常に認識がない。今ね、在日であるとかないとか、分からないじゃないかとおっしゃったけども、これは分からなかったから、貰って罪が免責されるんじゃないんです。ここのところちゃんと説明させてあげてくださいよ」
上記記載した田口選挙部長の説明を再度記載する。
田口選挙部長「お答え申し上げます。えー、一般論で申し上げますと、政治資金規正法に於きまして、何人も、外国人、外国法人等から、政治活動に関する、規制がされておりますが、故意にこれに違反して寄付を受けた者、団体にあっては、その役職、また構成員として当該違反した者と、その者についての罰則の定めがございます。
で、もう一度一般論でございますが、故意がなければ、罰則となりません」――
田口選挙部長は外国人からの献金は禁止されているとする規定を繰返し説明したに過ぎない。但し、「で、もう一度一般論でございますが」と断りを入れて、「故意がなければ、罰則となりません」と、故意かどうかが罰則の争点となることを再度提起している。内心、争点から外した遣り取りに、政治家はバカだなあ、とあざ笑っていたかもしれない。
西田議員「前原大臣は知ってて、貰ってるんですよ。外国人であることを知ってるとおっしゃったんですからね。しかも継続ですから。これはそこに故意がある。しかも継続してですよ。継続反復なんです。飛んでもない話。
そして、今、お返しになるなど話をされたけども、返金したら、この罪、免れるんですか。答えてください」
もし前原外相の献金と献金額を第三者からの伝聞で知ったとする事実を採用するなら、西田議員のこの“故意説”は無理が生じる。
田口選挙部長は西田議員に促されて上記記載したように返金も収支報告書の訂正も効かないこと、記載したとおりの事実関係を維持することになることを説明している。
西田議員「ね、このように、今言いましたようにね、要するに返金したから、知らなかったからでは、通らないんです。しかも、継続反復しているんですよ。そして、そのことを前原大臣が認めておられるんですよ。そこまで言ってて、あなたは、この問題ね、調査しなければならないなんていう話になるんですか。もう一度答えてくださいよ。前原大臣の責任とあなたの責任も含めて」
故意であったか故意でなかったか、詳しく調査して報告しますで済むはずだが、そうはしない。
菅首相「先ほど申し上げましたけれども、私もたくさんの色んな事例を見てきておりますから、今日初めて西田さんに言われ、あるいはその答弁もお聞きしました。しかし、イー…、ご本人も、オ、さらに、イー…全貌を、はっきり把握したいということを言われているわけですから、先ずは、あー、そういったご本人のおー、そういう、うー、何て言いましょうか、調査というものを、待ちたいと。
あのー、それはですね、法律――、というのは、勿論、オ、大変、えー、色んな書き方があって、それはそれで重要ですけれども、えー、それはそれで重要ですけれども、あのー、それが、それがですね、どういう形で、あのー、何に影響するかというと、ちゃんと事実関係を聞いた上でですね、えー、考えなければいけないんじゃないでしょか。
ごく私は普通のことを申し上げているつもりですけど」
的確な答弁どころか、法律というものが色々な書き方があるとか言わなくていい余分なことまで長々と喋り、最後に「ごく私は普通のことを申し上げているつもりですけど」と、自身の発言の的確性さえ判断できない。
西田議員「貰った人が認めていて、何を調べて、何を話すんですか。ね、意味が分かりません。何を調べるんですか」
故意であったか、故意でなかったかの調査に決まっているが、両者ともそのことに思い至らないから、両者共に堂々巡りの答弁となる。
菅首相「ご本人が全貌を調べてと言われたんですから、そのことを待ちたいということを申し上げてるんです」
西田議員「いずれにしてもですね、早急に調べてください。そして処分をしなければならない、そのときは前原大臣だけじゃなく、菅総理、あなたの政治責任もあるということを、付言しておきます」
やっと終わった。疲れた。菅首相の冗長な発言自体が首相自身のお粗末な判断能力と対応能力を否応もなしに如実に曝け出すことになっている答弁のすべてであった。
こういったお粗末な合理的判断能力と合理的対応能力の酸欠状態を見るだけで、果して一国の総理大臣としての資格があるかどうか一目瞭然に分かるというものであろう。
この一文を書き上げて、ブログにエントリーする準備に取り掛かろうとしたとき、日曜討論を取上げたNHKの昼のニュースで輿石参院議員会長が、「故意であるかどうかをしっかり精査して、早急に結論を出さなければならない」といったことを言い、故意か故意でないかが責任問題のポイントになると当然の指摘をしていた。輿石参院議員会長が認識可能なことが菅首相に認識不可能となっている。
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