同じ民主党の櫻井満参議院が昨日(2011年9月28日)の参院予算委員会の質問に立ち、最後に保険料負担の不公平について追及した。所管省庁として答弁に立った小宮山洋子女史は殆んど官僚が書き上げたと分かる原稿を機械的に読み上げるだけの無能を見せたばかりか、古巣NHKに関する質問に対しては狡猾な情報操作で誤魔化しを見せた。
果たして大臣の資格ばかりか、国会議員の資格があるのか疑わせる無能ぶりに見えたが、どんなものだろうか。
櫻井議員が追及した問題提起は記憶しておくべき政治課題に思える。但し野田首相が実現するだけの能力と意志を発揮できるかは疑問符をつけざるを得な熱意ない答弁となっていた。
NHKテレビの中継から文字化した。
棒グラフのフリップを示すが、棒グラフの画像をうまく切り取ることができなかったので、数字のみ書き写すことにした。要は給与報酬が多い層程、本人負担は少なくなっている反比例の関係を示している。 《保険料を100とした場合のサラリーマンの本人負担》
総報酬額階級 平均44.4%
800万円以上 組合数(72) 最低22.1%
750~800万円未満 組合数(54)
700~750万円未満 組合数(74)
650~700万円未満 組合数(133)
600~650万円未満 組合数(222)
550~600万円未満 組合数(245)
500~550万円未満 組合数(244)
450~500万円未満 組合数(251)
400~450万円未満 組合数(163)
350~400万円未満 組合数(93)
300万円未満 組合数(33)
政管健保(平均384万円) 50% |
「政管健保」とは櫻井議員が中小企業加入の健康保険組合だと後で触れている。
櫻井議員「今回の社会保障と税の一体改革の中で、定額支払い、患者さんの窓口支払いがまた増えるようなアイデアが出てきております。で、こういったことをやる前に、財源がないからだと言われるわけですが、先ず大事な点は不公平を是正して、財政的に僕は財源生み出せると思っているので、提案させていただきたいと思います。
あのー、これ(フリップのこと)、保険料を100とした場合、要するに本人負担ですから、50%が最大だとは言えませんが、政管健保、中小企業の方々が加入しているところは50%です。平均所得がいくらかと言うと、384万円の方は50%です。
尚且つですね、他のところはどうなっているかと言うと、800万円以上のところは40%弱ぐらいで、大体年収に応じて負担割合が増えているという、逆の構造になっているんですね。
(注) (言い方が悪い。年収と負担割合は逆比例となっているから、「大体年収に応じて負担割合が少なくなっているから」と言わなければならないが、「逆の構造になっている」と言うことで、逆比例であることを表現している。)
本来であれば、社会保険というのは、あの、所得配分機能を持たせてるわけですから、保険料率、せめて保険料率は全部同じにならないと、僕はおかしいんじゃないかと思いますが、この点について如何でしょうか」
分かっている、余計なお世話だと思うかもしれないが、参考までに。
【保険料率】「契約者が保険会社へ支払う金額に対する保険料の割合のこと」
【保険料】「各種損害保険や生命保険へ加入した際、加入者が納める料金のこと」
小宮山議員「あの、お示しいただいている図は社会保障費2200億円削減のシーリング対策として旧政管健保の国庫補助を1千億円削減して、財政力のある健保組合と共済組合から支援金を強制するために大企業程サラリーマン本人負担割合が低く、格差が大きいことを示すためにつくった資料だと理解しております。で、これが現在は、これは平成16年ですが、えー、22年度の決算見込みでは、本人負担割合の平均が44.8%、最低が25%となっております。
今、あの、ご指摘ですけれども、国民皆保険の仕組の中でやはり、加入する制度によって給付や負担の水準に大きな差が生まれないよう、給付の平等と負担の公平を図るということ。これは大変重要なことだと考えております。
一方で健保組合の保険料率を協会健保の水準まで引き上げる。このことにつきましては健康保険組合の保険料率は労使協調の枠組みの中で、自主自立の運営で決めているということ。
それから、厳しい保険財政の中で効果的な実施や医療費の適正化など、保険者機能の発揮が重要ですが、一律に保険料率が設定されることになると、その意義が失われかねないということ。
また協会健保には公費を投入しているなど、財政力の格差を是正した上での保険料率であること。
そういったような論点がございまして、保険料を負担する被保険者や事業者や関係者のご意見を聞きながら、検討をしていく必要があると言うことを考えております」
櫻井議員は社会保険が年収に応じて不公平が生じている、是正すべきではないかといった趣旨の質問を行った。当然、小宮山議員本人が公平と看做しているか不公平と看做しているか、いずれかの自身の認識を吐露すべきを、時折り顔を上げるだけで、殆んど下を見て原稿丸読み状態となっていたのだから、自身の認識を官僚文章の読み上げで代えていたことを窺わせるのみである。
いわば自らの認識を持たない無能を曝したも同然と言える。
櫻井議員「与党の質問だと言われていたんですけどねえ。あの、民主党のマニフェストの中では医療保険一元化って謳ってたんじゃないですか?
そうするとですね、一元化するということは、みんな保険料率一律になるんだと、私は思いますよ。違いますか」
桜井議員が「与党の質問だと言われていたんですけどねえ」と言っていることは、与党議員の追及はどうせ馴れ合い、ヨイショに終始すると看做されているということの言及であろう。小宮山の官僚答弁で、そのとおりになってしまったと暗に揶揄?した。
小宮山議員「それは政策集の中に入ってきたものかと思いますが、えー、もう一つですね、やはり、そのー、えー、えー、その、保険料率が低いところは比較的、その、被保険者一人当たりの保険料が高くなっている、そのような実情もございますので、色々と実情をしっかりとチェックしながら、マニフェストの方は、政策集の方はどういうふうに見合った形で進めていけるのか、しっかりと検討をさせていただきたいと思っています」
民主党に所属しながら、2009年総選挙に合わせて作成した『民主党政策集INDEX2009』に謳っている政策を「政策集の中に入ってきたものかと思いますが」と、「かと思いますが」と推定しかできない。
今後の推移に関しても、紋切り型の発言しかできていない。
調べたところ、次のように謳っている。
〈後期高齢者医療制度の廃止と医療保険の一元化
後期高齢者医療制度は廃止し、廃止に伴う国民健康保険の財政負担増は国が支援します。国民健康保険の地域間の格差を是正します。国民健康保険、被用者保険などの負担の不公平を是正します。
被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域医療保険として、医療保険制度の一元的運用を図り、国民皆保険制度を守ります。〉――
櫻井議員「あの、こういう不公平があるにも関わらず、実はマスコミは書きません。なぜかと言うと、マスコミは物凄く恵まれているからです。
ちょっと数字を比較させていただきたいんですが、あの、ご答弁いただきたいと思いますが、中小企業のサラリーマンの方々の労使での保険料率はいくらでしょうか。国家公務員の保険料率はいくらでしょか。
これはあの、通告してあります。私、そして答弁を頂いております。それが、NHKの、NHKの、保険料率はいくらでしょか」
小宮山議員「えーと、日本放送協会、NHKの保険料率は5.35%です。国家公務員の共済の、えー、保険料率は6.71%。協会健保の保険料率は9.34%となっています。
ただ、一方でですね、先程申し上げたように被保険者一人当たりの保険料が日本放送協会は、55.7万円。国家公務員共済が、えー、44.1万円。そして協会健保が34.6万円となっているということもございます」
要するにNHKや国家公務員は保険料率で優遇されているが、被保険者一人当たりの保険料が高額となっていることで平等性が確保されていると言っている。
櫻井議員「あまりそういう答弁されたくなかったんですが、それではですね、今、給料は高いんだという話(ヤジ、もしくは不規則発言)がありました。各々の平均給与、出していただきますか」
小宮山議員「えーと、日本放送協会の平均報酬は1041万円、国家公務員の保険料の基礎となる平均報酬658万円。協会健保が371万円となっています」
櫻井議員「しかもですね、もう一度、一つ大事なことがありまして、NHK、あの、保険の負担はですね、事業主負担62、本人が38なんですよ。
こんなに恵まれているんですねえ。これで受信料上げようとかですね、みなさまのNHKが。
所得の低い方々は本当に苦労されてるんです。こう、保険料支払ってですね、低い給料から。こういうことは放送されないんです。だから、私は厭がられることを覚悟で放送中にあります(拍手でよく聞き取れないが、「放送中に発言することにした」とでも言ったのか)。
保険負担は非常に不公平なんです。こういうことをちゃんと是正していくのが私は民主党だと思いますよ。不公平を直すことは。
すみません、総理。不公平だと思いませんか」
小宮山はNHKや国家公務員が報酬で厚遇されていることと、NHKの場合はその上に事業主負担との間に本人負担が優遇されている割合といった都合の悪い情報を隠して、「保険料率が低いところは比較的、その、被保険者一人当たりの保険料が高くなっている、そのような実情もございます」と、いわば一種狡猾な情報操作の誤魔化しを行って平等性は担保されているとさも偽ろうした。
野田首相「今の数値を聞く限り、今随分と開きがあるなと、不公平感があるなというふうに思いました」
お気楽に軽く笑いながら答弁したが、『民主党政策集INDEX2009』に「医療保険の一元化」政策を掲げるについては各健康保険組合加入被保険者の年収と保険料率の関係等を知らべた上で民主党政策としたはずだ。漫然と「医療保険の一元化」を謳ったわけではあるまい。
それを「今の数値を聞く限り」と今知った「不公平感」としている。
だとしても、野田首相は「不公平感」を認めた。当然、『民主党政策集INDEX2009』に掲げた「医療保険の一元化」政策である以上、それを実現させ、不公平を是正する改めての責任を負ったことになる。
だが、そういった認識もなく、軽く笑いながら「不公平感があるなというふうに思いました」とあまり心にピンと響かなかったのだろう、あっさりとした答弁で終わらせている。
櫻井議員「有難うございます。こういう不公平を是正すればですね、おカネはまだまだ出てまいります。そうすると、窓口負担を増やすなどということをやらなくてもいいんでよ。きちんとやっていただきたい。そして私が話をすると、この組合健保の方々が意見が強くてどうしようもないんだと言うんですが、そういったことこそ政治主導で、政治家が身体を張って、変えさせていくとくことが私は民主党の役割だと思いますよ」
医療と介護分野の雇用問題に移る。
櫻井議員は「政治主導で、政治家が身体を張って」不公平是正に立ち向かうべきだと熱意を見せているが、その熱意は伝わっていない野田首相の答弁となっていた。
小宮山厚労相に関しては不公平という認識とは遥かに縁遠い官僚答弁と紋切り型の発言、古巣NHK擁護の狡猾な情報操作を展開したに過ぎないのだから、櫻井議員一人相撲の熱意といったところかも知れない。
最悪、櫻井充民主党議員の熱意はドンキホーテの熱意で終わる可能性すら考えることができる。
民主党が2009年11月の事業仕分けで一旦建設凍結と決めた埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設工事が今月1日(9月)に野田財務大臣(当時)が判を押して再開された問題で、安住現財務相は「私もNHK時代には、給与では生活できず社宅に住んだ。多少宿舎の便宜供与もあってしかるべきだと思う」(MSN産経)と建設擁護の発言を行っているが、NHKHPの『NHKキャリア採用情報:採用情報:待遇・福利厚生』に大学卒(22歳)初任給213,360円、大学院(修士)卒(24歳)初任給227,210円と書いてあり、小宮山女史が明かしたNHKの平均給与高待遇と併せると、安住の発言も一種の情報操作による誤魔化しに過ぎないことが分かる。 |