安倍晋三の日米間、日韓間の不信だけを成果とした自己正当化のウソで塗り固めた飯島訪朝の大失敗

2013-05-25 10:35:10 | 政治

 5月23日(2013年)の当ブログ記事――《安倍晋三の「日朝協議再開検討」は飯島訪朝が失敗に終わったことを失敗とは言えないための取り繕い - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》にも書いたが、その後の安倍晋三や菅官房長官、飯島本人の発言からも飯島訪朝の完全失敗を裏付けることができ、発言の殆どが完全失敗隠蔽を取り繕うウソとなっていて、ウソにウソを塗り重ねるウソが続けることになっている

 《首相 日本側の意思第1書記に伝わった》NHK NEWS WEB/2013年5月23日 12時18分)

 5月23日の参議院内閣委員会。北朝鮮が飯島内閣官房参与の訪問をマスコミ報道したことについて。

 安倍晋三「北朝鮮側が公表することも十分に可能性があるだろうということは、当然、計算に入っていた。

 報道されたことが悪いということではなく、飯島氏がナンバー2のキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長に会っている以上、当然、こちらが何を話したかということは、キム・ジョンウン第1書記には伝えられることになるのは間違いない。

 (米韓に訪問の事前連絡しなかったことについて)拉致問題は簡単にはいかない。日本が主導的にこの問題を解決しなければ、アメリカがやってくれるわけではない。アメリカに、ただついていけば解決してもらえるという問題ではない」――

 「北朝鮮側が公表することも十分に可能性があるだろうということは、当然、計算に入っていた」とウソをついている。

 だったら、なぜ米韓に事前に連絡しなかったのか。公表の十分な可能性を危機管理として想定していたなら、その危機管理は公表された場合の備えとして米韓に前以て連絡して置くことをスケジュールに入れておかなければ整合性がつかないことになる。

 だが、実際には公表されてから、米韓に説明を求められて説明する後手の危機管理となっている。

 秘密は完全に守ることができるを危機管理上想定できたときにのみ、事前連絡を省くことができ、秘密外交は推進可能となる。

 にも関わらず、安倍晋三は公表された場合の備えとしての米韓への事前連絡を省きながら、「公表の可能性は計算に入っていた」と、矛盾した発言をしている。

 この矛盾を解くには「公表の可能性は計算に入っていた」は自らの秘密外交失敗を隠蔽して正当化するためのウソと見なければならない。

 また、安倍晋三の「公表の可能性は計算に入っていた」は飯島が平壌空港に降り立った瞬間に北朝鮮国営メディアによって公表されたことを念頭に置いた発言だから、初っ端からの露見に疑問を置かず、当然視していたことになる。

 当然視していたことが早々の露見ではなくても、飯島訪朝中に於ける遅かれ早かれの露見の可能性を当然視していたなら、いわば訪問している間を通して秘密を守ることはできない可能性を覚悟していたなら、秘密外交は成り立たないことまで計算に入れていなければならなかったはずだ。

 では、なぜ国民に公表してから飯島を北朝鮮に派遣しなかったのだろうか。

 飯島北朝鮮派遣を国民に知らせずに秘密外交としながら、「公表の可能性は計算に入っていた」と矛盾したことを平気で言うことができるのは「公表の可能性は計算に入っていた」をウソだとしなければその矛盾を解くことはできない。

 「報道されたことが悪いということではなく、飯島氏がナンバー2のキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長に会っている以上、当然、こちらが何を話したかということは、キム・ジョンウン第1書記には伝えられることになるのは間違いない」と言って飯島訪朝を正当化しているが、この正当化は飯島を訪朝させた自身の判断の正当化でもあるが、同時に「伝えられること」を飯島訪朝の成果としていることになる。

 お粗末な成果としか言いようがないが、実際には秘密外交であったはずが報道された上に「キム・ジョンウン第1書記には伝えられることになるのは間違いない」と予想したのみで、確認したわけではなく、確認は金正恩からの何らかの回答を得て初めてできることだから、金正恩から何らかの回答を得る成果がないままに帰国したことを成果とする倒錯を口にしているに過ぎない。

 どのような回答も得ない秘密外交が秘密外交でなくなった訪朝とは完全な失敗であったことの証明以外の何ものでもない。上記安倍発言は自分では気づかないままに飯島訪朝に関わる自らの判断を正当化しながら、失敗だったことを自ら公表したのである。

 米韓に事前連絡をしなかったことについて、「拉致問題は簡単にはいかない。日本が主導的にこの問題を解決しなければ、アメリカがやってくれるわけではない。アメリカに、ただついていけば解決してもらえるという問題ではない」と言っているが、日本が米韓中露と共に北朝鮮の核兵器及びミサイル開発問題、拉致問題等の包括的解決を方針としている以上、その方針に制約されていることに変りはない。

 いわば包括的解決という制約下で、その制約を守りながら如何に日本が拉致問題に主導的に関わることができるかの方策が問われているはずで、当然他の関係国との協議の中で見い出さなければならない主導的方策を見い出す努力もせずに「アメリカがやってくれるわけではない。アメリカに、ただついていけば解決してもらえるという問題ではない」と言って、日本独自の行動を意図して包括的解決の制約と矛盾させている。

 安倍晋三の以上のような矛盾も然ることながら、飯島自身も5月22日の発言と翌23日の発言で矛盾を曝していること自体が自身の訪朝の成果を如実に物語っている。

 《飯島参与「日朝協議再開は参院選後に」》NHK NEWS WEB/2013年5月22日 21時0分)

 5月22日の首相官邸での記者団に対する発言。

 飯島「もう私の任務は終わった。ある程度のやることはできましたから。

 (政府間の日朝協議再開について)常識的に考えると、夏の参議院選挙までには間に合わないでしょう。お互いにそれなりのスタートラインに立つには、複雑なパズル、検討、いろいろありますから」

 もし金正恩から拉致解決に何らかの成果を見込むことのできる回答を得ていたなら、日朝協議再開を「夏の参議院選挙までには間に合わない」からと参院選後に先送りする理由をないし、日朝協議再開を待つまでもなく、安倍訪朝を実現させて一人でも拉致被害者の帰国に成功したなら、参院選大勝利間違いなしだろうから、この飯島発言自体が飯島訪朝の失敗を如実に物語っている。

 翌5月23日の飯島発言。《北朝鮮訪問で飯島参与「事務協議は終わった」》MSN産経/2013.5.23 11:14)

 飯島「事務的協議は全部終わった。あとは安倍晋三首相と菅義偉官房長官の判断だ。

 (今後、外務省ルートで交渉が進められる可能性が取り沙汰されていることについて)何で交渉する必要があるのか。あとは、お互いにどうやって考えてやっていくかというだけだ。(今後の)事務協議、何をしようとしているか、よく分からない」――

 上記「NHK NEWS WEB」では、政府間の日朝協議再開は「夏の参議院選挙までには間に合わない」と言っているのに対して、ここでは「何で交渉する必要があるのか」とか、「事務協議、何をしようとしているか、よく分からない」と言って、日朝協議再開の不必要を主張する矛盾を見せている。

 この矛盾を解くとしたら、自身の訪朝が成功したと見せかけるレトリックとするしかない。

 記事は飯島の「事務的協議は全部終わった。あとは安倍晋三首相と菅義偉官房長官の判断だ」とする発言を取り上げて、〈訪朝した際の北朝鮮要人との会談で、日朝双方の主張や提案に関する意見交換を終えたことを示唆した。〉と解説しているが、いわば「事務的協議は全部終わった」、あとは交渉当事者を一段階上げた日朝両首脳部の双方が満足のいく解決の着地点をどう見い出すかの「判断」のみが残されているという意味になるはずで、進展を見たような印象を受ける発言となっている。

 だからこそ、飯島訪朝で一定の進展・成果があったのだから、順次段階を上げていくべき交渉当事者を逆行させて内閣官房参与よりも下位の地位にある外務省ルートを交渉当事者として「何で交渉する必要があるのか」と言うことになるのだろう。

 このことは外務省ルートでの「事務協議、何をしようとしているか、よく分からない」という発言にも現れている。残されているのは日朝両首脳部が「あとは、お互いにどうやって考えてやっていくかというだけだ」と、最終調整のみだとしている。

 だが、安倍晋三が「こちらが何を話したかということは、キム・ジョンウン第1書記には伝えられることになるのは間違いない」という文言で金正恩から何の回答も得ていないことを自ら暴露していて、当然、他の要人を介した回答も得ていないはずだから、金正恩の反応を欠いた状況で「事務的協議は全部終わった」とするのは矛盾そのものとなる。

 精々できたことは飯島が日本側の要望を伝えただけといったことでなければならないはずだ。

 だが、交渉が進展したような印象を持たせた。やはり失敗を取り繕って批判が安倍晋三に集中するのを避ける演出としか思えない。より厳しく言うと、情報操作・情報偽装に当たる。

 ところが、権哲賢・前駐日韓国大使が5月22日の韓国・朝鮮日報のインタビューで、安倍晋三が早ければ今月末から6月初めの間に北朝鮮を訪問する可能性が高いとの見方を示したと、「MSN産経」が伝えた。

 但し菅官房長官はこの可能性に関して、「答えることは控えたい」と言及を避けたという。

 もし権哲賢・前駐日韓国大使の発言が事実なら、飯島訪朝は大進展の成功を見たことになる。自らが言っていた「事務的協議は全部終わった」にしても、ウソも矛盾もない正真正銘の事実ということになる。

 だとすると、外務省ルートで交渉が進められる可能性が取り沙汰されること自体がおかしなことになるし、安倍晋三の金正恩から何らの回答も得ていないことを暴露することになった発言もおかしなことになる。

 それとも5月18日の飯島帰国後に金正恩から外交ルートを通じて何らかの回答があったのあろうか。

 権哲賢・前駐日韓国大使のインタビューは5月22日。新聞報道は翌日の5月23日。安倍上記発言は5月23日午前の参議院内閣委員会。飯島の「事務的協議は全部終わった」も5月23日。5月18日の飯島帰国後から権哲賢・前駐日韓国大使のインタビューの5月22日までに金正恩から何らかの回答があり、そのことを権哲賢・前駐日韓国大使が何らかのルートを使って察知したと言うことなら、安倍発言は違った内容とならなければならない。

 だが、金正恩から何の回答もないことを間接的に証言している。

 にも関わらず、5月25日になって、北朝鮮側が特定失踪者2人の帰国を提案したとする報道にお目にかかることになる。

 このことが事実なら、最終的決定権者は金正恩でなければならないから、安倍晋三の金正恩から何の回答もないとする間接的証言は矛盾することになる。

 情報源は5月23日の韓国紙ソウル新聞(電子版)で、日本の情報筋の話としているらしい。《特定失踪者2人の帰国可能=飯島参与に北朝鮮―韓国紙》時事ドットコム/2013年5月24日 00:04)

 〈同筋によると、飯島氏は北朝鮮当局者に、政府認定の日本人拉致被害者12人の速やかな帰国を要求。これに対して北朝鮮は、大部分は拉致をしていないか、死亡したとの従来の見解を繰り返した。

 北朝鮮はその上で、特定失踪者2人を日本に帰国させられるとの新たな提案をしたという。〉云々――

 安倍晋三からしたら特定失踪者2人では満足できないから、勇んで訪朝することはせず、参院選後の日朝協議に詰めを任せようということなのだろうか。

 奇々怪々なことばかりが起きる。

 権哲賢・前駐日韓国大使のインタビューに対する5月24日午前首相官邸での飯島反応。

 飯島「(前駐日大使が韓国紙インタビュー発言について)そんなことあるわけない」(MSN産経

 失踪者2人の帰国提案に対する飯島反応。同じく5月24日午前首相官邸で。《飯島参与「妨害工作だ」 韓国紙の特定失踪者帰還報道》asahi.com/2013年5月24日16時53分)

 飯島「日朝(交渉)がうまくいかないための妨害工作だ。あるわけない。私は知らない。南北対話も大事なら、日本政府との協調が大事だ。

 (日本人拉致問題、核開発、ミサイル問題の)全体像がうまくいくには協調が必要だ。(日本が)抜け駆けすることはあり得ない。韓国は一番冷静でなければいけないのに、上から下まで『日本外し』みたいな状態の発言とか『天罰』とか(言っている)」――

 報道は事実ではないが事実なのか、交渉を進展させるために事実ではないとするカモフラージュなのか。

 安倍晋三は飯島帰国5月18日2日後の5月20日午後の参院決算委員会で特定失踪者の帰国も要求していくことを表明している。このことは北朝鮮提案に呼応した表明だったのだろうか。

 後者だとすると、それが満足のいかない一人、二人の人数であったとしても、日を置かずに早急に帰国に向けて詰めていかなければならない緊急事態であるはずだ。常識的には先ずは2人を帰国させて、さらに帰国を要求していく手順を取る。

 だが、飯島は日朝交渉再開は参院選後だと言っている。

 これも今後も秘密外交を進めるためのカモフラージュなのだろうか。

 だが、安倍晋三が「飯島氏がナンバー2のキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長に会っている以上、当然、こちらが何を話したかということは、キム・ジョンウン第1書記には伝えられることになるのは間違いない」を、金正恩から回答があるのかないのかも分からない段階で飯島訪朝の唯一の成果としていることがすべてを物語っている。

 いくら自己正当化のウソを続けようとも、日米間、日韓間の不信だけを成果とした飯島訪朝の大失敗が正体とみなければならないはずだ。

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