安倍晋三、橋下徹等の従軍慰安婦強制連行を示す資料なしを731部隊人体実験証拠資料なしから解く

2013-05-26 10:09:16 | Weblog

 辻元清美民主党衆院議員が「安倍内閣は河野談話を継承するのか否か」の質問主意書を安倍内閣に提出、安倍内閣が継承するとの答弁書を決定したという5月25日の新聞報道を見て、一覧が出ている「衆議院質問主意書・答弁書」のページにアクセスしてみたが、「経過情報」の項目に「質問主意書提出年月日 平成25年 5月16日」、「内閣転送年月日 平成25年 5月20日」と記載されているのみで、質問主意書も答弁書も未だ記載されていない。

 これは例の如くのことで、新聞報道後、何日間か経過しないと閲覧できない。情報時代に相応しいスピードなのだろう。

 そこで試しに辻元清美のオフィシャルサイトにアクセスしてみたら、《慰安婦問題に関する一連の閣議決定について<報道資料>》と題して記載されていた。安倍内閣として「河野談話を継承しているか否か」に関する個所のみ抜粋してみる。

 全体についてはアクセスして頂きたい。

 〈問い四 安倍総理は現時点で、1993年8月4日の内閣官房長官談話(いわゆる「河野談話」)を継承しているか。今後も「河野談話」を継承するか。

 答 先の答弁書(=辻元清美が出した質問主意書に対する平成19年3月16日の答弁書)三の2についてでお答えした政府の基本的立場と同じである。

 →(辻元清美の解説)政府の基本的立場は、官房長官談話を継承している。〉――

 新聞報道(時事ドットコム)の解説をそのまま借用してどういうことなのか記すと、〈第1次安倍内閣当時の2007年に「政府の基本的立場は、官房長官談話を継承している」とする答弁書を決めており、今回は「先(07年)の答弁書で答えた政府の基本的立場と同じ」とした。〉ということになる。

 この答弁書決定に対して辻元自身が同じページで自らの感想を述べている。

 〈私の質問主意書に対し、安倍政権がついに「河野談話を継承する」と閣議決定しました(2013年5月24日更新 )

 私が提出した質問主意書に対する答弁書が本日閣議決定されました。
 安倍首相が、現在、河野談話を継承しているかを問うた質問主意書に対し、その内容は、
 「政府の基本的立場は、官房長官談話を継承している」
 というものでした。第二次安倍政権ではじめて、「河野談話を継承する」と閣議決定したのです。〉――

 要するに決定を歓迎している。

 この歓迎の気持は上記「時事ドットコム」記事が紹介している5月24日記者会見の辻元の発言にも現れている。

 辻元清美「継承していることがはっきりした意義は大きい」

 無防備・単細胞な喜びとしか言いようがない。

 2007年の辻元清美の質問主意書に対する第1次安倍内閣政府答弁書は、河野談話は〈調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。〉と、証拠不十分の嫌疑をかけて談話の有効性に疑問符をつけた上で、〈閣議決定はされていないが、歴代の内閣が継承しているものである。〉と、非公式の談話ではあるが歴代内閣が継承しているからという理由づけで、〈政府の基本的立場は、官房長官談話を継承しているというものであり、その内容を閣議決定することは考えていない。〉と、安倍第1次内閣も継承する、但し閣議決定して、政府公式の談話とするつもりはない、あくまでも非公式の位置づけにとどめておくというものである。

 要するに河野談話に疑義を呈しつつ形式的な継承を謳ったに過ぎない。

 そのような継承と現安倍内閣の基本的立場は同じだとしたのである。河野談話に対する疑義も変わらない、形式的継承も変わらないという内容だということであろう。

 こういった姿勢を堅持しているからこそ、第1次安倍内閣で、〈政府の基本的立場は、官房長官談話を継承している〉としていながら、それが形式に過ぎないから、〈軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述〉が見当たらない証拠不十分を根拠に安倍晋三の河野談話見直しの熱意が消えることなく頭をもたげさせることになっているはずである。

 辻元清美のように「継承していることがはっきりした意義は大きい」などと単純に歓迎を示していいものではないはずだ。

 2013年2月7日の衆院予算委で安倍晋三は自らの河野談話観を述べている。そこには辻元清美も出席していた。

 前原誠司民主党議員「去年の9月12日、自民党総裁選挙立候補表明。(従軍慰安婦の募集に)強制性があったという誤解を解くべく、新たな談話を出す必要があると御自身がおっしゃっている。菅さん(官房長官)がおっしゃっているんじゃない、御自身が総裁選挙でおっしゃっている。総裁になれば政権交代で総理になる、そういう心構えで総裁選挙に出た総理がおっしゃっている、御自身が。

 そして、討論会、9月16日。河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込み女性を人さらいのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を日本は背負っている、安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない、河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある、孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない。総裁選挙の討論会でおっしゃっている。これは御自身の発言ですよね」

 安倍晋三「ただいま前原議員が紹介された発言は全て私の発言であります。そして、今の立場として、私は日本国の総理大臣であります。私の発言そのものが、事実とは別の観点から政治問題化、外交問題化をしていくということも当然配慮していくべきだろうと思います。それが国家を担う者の責任なんだろうと私は思います」

 第1次安倍内閣で政府として河野談話を継承するとしながら、自身は孫の代までの不名誉だと信念する程に河野談話の内容の有効性に疑義を持ち、その見直しに熱意を持ち続けている。

 だが、政治問題化・外交問題化を避ける観点から、見直しへの直接行動は控えるといったところなのだろう。

 見直しの機会は国内世論ばかりか国際世論の手前、なかなか訪れはしないだろうが、歴史認識に関わる世論の関心が鎮まった頃に河野談話の有効性の疑義、見直しの必要性を世に知らしめるために安倍晋三はその二つを持ち出すに違いない。

 河野談話の通念的公式化を恐れ、その非公式性を訴えるために。

 要するに安倍晋三は実体は狼の如くに河野談話の見直しに虎視眈々としていながら、基本的に継承すると見せかける羊の姿を装っているに過ぎない。

 従軍慰安婦の軍・官憲による強制連行を否定する勢力は強制連行を示す文書等の直接的な証拠資料の不在を根拠としている。

 橋下徹然り。

 2012年8月24日記者会見。

 橋下徹「河野談話は閣議決定されていませんよ。それは河野談話は、談話なんですから。だから、日本政府が、日本の内閣が正式に決定したのは、この2007年の閣議決定だった安倍内閣のときの閣議決定であって、この閣議決定は慰安婦の強制連行の事実は、直接裏付けられていないという閣議決定が日本政府の決定です」

 この発言を受けた安倍晋三の2012年8月27日午後の産経新聞のインタビュー

 安倍晋三「橋下さんは慰安婦問題についても河野談話を批判した。強制連行を示す資料、証拠はなかったと言った。私は大変勇気ある発言だと高く評価している。彼はその発言の根拠として、安倍内閣での閣議決定を引用した。戦いにおける同志だと認識している」

 だとしても、日本軍が業者と一体となって慰安婦募集やその移動に関与していた資料が残されている。この関与が軍直接のケースもあるが、業者を介したもので、直接的な強制性を持たなくても、日本軍及び日本軍兵士自体が持つ威圧性や強圧性を業者が代弁し、慰安婦の意思に反した連行を行った場合、強制連行の範疇に入れなければならないことと、1945年8月14日の御前会議でのポツダム宣言無条件受諾決定を受けて、同8月14日、政府・軍の重要文書類の焼却を閣議決定、内外の日本軍にも通達し、連合国軍進駐までに実施を徹底させたことを受けて、慰安婦の強制連行を証拠づける文書やメモ等が存在したとしても、特に戦争犯罪性が高く、戦争犯罪人とされることを回避するために焼却の最優先対象としただろうことを根拠に具体的な証拠資料が存在しなかったからといって軍・官憲による慰安婦の強制連行は存在しなかったとすることはできないと主張してきた。

 今回、異なる事例を提示して、強制連行を示す文書等の直接的な証拠資料がないからといって従軍慰安婦の軍・官憲による強制連行はなかったとすることはできないということを根拠づけたいと思う。

 韓国の中央日報記者が、広島と長崎への原爆投下を人間の手を借りた神の懲罰だとする趣旨の記事を書いて批判が起きたが、その中で安倍晋三が5月12日に被災地の航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)を訪れ、T4練習機の操縦席に乗り込んで右手の親指を立てて得意気に笑みを浮かべたポーズを取ったが、その機体が「731」と番号が打ってあったことを取り上げて、人体実験を行った731部隊(正式名:関東軍防疫給水部本部)に引っ掛け、原爆投下は「特に731部隊の生体実験に動員された丸太(死者)の復讐であった」と書いている。

 安倍晋三が731部隊と同じ数字の機体に搭乗したのは偶然の一致に過ぎないだろうが、うろ覚えに記憶している731部隊の人体実験を詳しく知りたいと思ってインターネットで調べてみた。

 「Wikipedia」取り上げているので、覗いてみると、〈人体実験]や(生物兵器の)実戦テストを行っていたという意見もあるが、実際の文書の形での記録証拠は現在までのところ発見されていない。〉と、従軍慰安婦の強制連行を証拠立てる直接的な証拠文書と同じ扱いになっている。

 その一方で、731初代部隊長の石井四郎陸軍軍医中将が、〈再度のGHQ内のアメリカ人による尋問に対し、「人体実験の資料はなくなった」と主張。〉とか、〈731部隊の幹部たちは戦犯免責と引き換えに人体実験の資料をアメリカに引き渡した。最終報告を書いたエドウィン・V・ヒル博士は「こうした情報は人体実験に対するためらいがある(人権を尊重する)我々(アメリカ)の研究室では入手できない。これらのデータを入手するため今日までかかった費用は総額25万円(当時)である。これらの研究の価値と比べれば、はした金に過ぎない」〉と書いてある。

 ところが、2007年1月12日公開の米国立公文書館対日機密文書の731部隊に関するページには人体実験及び生物兵器の実践使用と実戦テストの言及はなかったという。上記「Wikipedia」の〈人体実験]や(生物兵器の)実戦テストを行っていたという意見もあるが、実際の文書の形での記録証拠は現在までのところ発見されていない。〉としていることは対日機密文書の扱いに対応した言及なのだろうか。

 だが、米国立公文書館公開の文書に人体実験への言及が存在しないことを以ってその実態が存在しないとすることができないことはソ連が戦後行った731部隊兵士に対する「細菌用兵器ノ準備及ビ使用ノ廉デ起訴したハバロフスク裁判での証言が証拠立ててくれる。

 《731部隊 ハバロフスク裁判公判書類 証言》真実を知りたい/2008/07/07)から引用すると、
  
 〈生キタ人間ヲ使用スル犯罪的実験

 元満州国軍憲兵団日本人顧問証人橘猛男ハ、次ノ如ク供述シタ──

 「……被訊問者ノ中ニハ、私ガ担任シテイタ憲兵隊本部特高課関係デ処置サレルベキ部類ノ者ガアッタ。此ノ部類ニ該当シタ者ハ、パルチザン、在満日本当局ニ対シ極度ニ反感ヲ有スル者等デアッタ。斯ル囚ニ対シテハ、私達ハ、コレヲ処置スベク第731細菌戦部隊ニ送致シタ故、裁判手続ハ行ワナカッタ……」〉という記述、〈他ノ証人、元哈爾濱(ハルピン)憲兵隊長木村ハ、本人立会ノ下ニ、第731部隊長石井中将ガ哈爾濱(ハルピン)憲兵隊長春日馨トノ談話ニ於テ、今後モ、従来通リノ方法デノ「実験」用ノ被検挙人ヲ受領シ得ルコトヲ確信スル旨言明シタコトヲ訊問ニ於テ確認シタ。〉――

 明らかに人体実験のために生きた人間を受領していると証言しているのだが、従軍慰安婦の強制連行に関してもそうだが、731部隊の人体実験を認めまいとする意志が強過ぎてなのか、この裁判の証言までも捏造に貶め、731部隊の人体実験を扱った森村誠一の『悪魔の飽食』までも捏造本だとする説がインターネット上に流布している。

 だが、1945年8月14日閣議決定による政府・軍の重要文書類の焼却の命令は関東軍の各部隊にも通達されなかったはずはなく、各部隊は通達を受けて、既にポツダム宣言が連合軍の俘虜を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰を加えると宣言していたこととと併せて誰もが戦争犯罪人として訴追されることを恐れただろうから、証拠隠滅の重要文書焼却に過剰反応したことは想像に難くない。

 そのような過剰反応の結果としての、人体実験や生物兵器に関係する〈実際の文書の形での記録証拠は現在までのところ発見されていない〉ということであったとしても、十分に整合性をつけることが可能となる。

 直接的な証拠資料の不在を根拠として従軍慰安婦の強制連行はなかったとか、731部隊の人体実験は捏造だとかは決して言えないということである。

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