橋下徹は安倍晋三と同様、慰安婦関与が日本軍の組織的か兵士の個人的かを区別せず日本の免罪を意図している

2015-07-25 09:52:11 | 政治

 橋下徹が、〈米カリフォルニア州サンフランシスコ市議会の委員会で、慰安婦の碑または像の設置を支持する決議案が審議される問題で、姉妹都市の橋下徹大阪市長は(7月)23日の定例記者会見で、「旧日本軍だけを取り上げるのだとすればアンフェア」と述べ、決議案の内容を確認し、見解をただす文書を送る方針を明らかにした。〉と7月24日付け「産経ニュース」《橋下氏「旧日本軍だけ取り上げるならアンフェア」 姉妹市・サンフランシスコ市議会の慰安婦像設置決議案に見解ただす文書》の表題記事が冒頭で伝えている。 

 決議案は複数のサンフランシスコ市議が共同提案。

 橋下徹は慰安婦を「(先の大戦で)日本軍に拉致され、性的奴隷の扱いを受けることを強制された20万人のアジアの女性や少女」などと表現していることを問題視しているようだ。

 橋下徹「先の戦争で女性の人権が蹂躙されたのは事実。今も紛争地帯で苦しんでいる女性がおり、二度とやってはいけないと表明するのは当然。先の大戦時に世界各国がどうしていたのか。日本だけ特別に非難することはあってはならない。

 (決議案が旧日本軍だけを取り上げているのが事実なら)アンフェアだ。おかしい。(碑か像に)刻み込む文言によっては姉妹都市や日米関係に影響する」

 但し見解を質す文書は決議案の趣旨を確認するもので、抗議ではないとしているという。

 最後に記事は、〈サンフランシスコ市議会は平成25年(2013年)6月、橋下氏の慰安婦をめぐる発言に対して非難決議を採択。この際も「20万人の性的奴隷」との表現を用いており、橋下氏は当時、決議撤回を求める書簡を送っていた。〉と解説している。

 橋下徹は「先の戦争で女性の人権が蹂躙されたのは事実。今も紛争地帯で苦しんでいる女性」の存在を指摘して戦時、あるいは戦地に於ける女性の人権蹂躙が一般的であったことを示した上で、「日本だけ特別に非難することはあってはならない」と日本の従軍慰安婦問題を戦時、あるいは戦地に於ける一般的な女性の人権蹂躙の中に紛れ込ませて相対化し、前者と後者を同質・同レベルの出来事だとしている。

 安倍晋三も日本の従軍慰安婦問題では橋下徹と同じスタンスを取っている。いわば20世紀・21世紀の戦時・戦地に於ける女性に対する人権蹂躙の中に日本の従軍慰安婦問題を紛れ込ませて、同質・同レベルの人権蹂躙だとして、橋下徹のようにはっきりとは口にしないが、日本が特別に非難される謂れのないことを暗に示している。

 オバマ大統領が2014年4月23日・24日と日本を訪問、4月25日午前中離陸し、次の訪問国韓国に向かった。同日午後、パク・クネ韓国大統領と首脳会談を行い、会談後共同記者会見に臨んでいる。

 先ずパク・クネ大統領が、安倍晋三が先月従軍慰安婦の問題について政府の謝罪と反省を示した河野官房長官談話を見直す考えはないと表明したことに触れて次のように発言したという。 

 パク大統領「安倍総理大臣が約束したことに関して誠意ある行動が重要だ。今後、日本が大きな力を傾けてくれればと思う」

 オバマ大統領「(慰安婦の問題は)甚だしい人権侵害で衝撃的なものだ。安倍総理大臣も日本国民も、過去は誠実、公正に認識されなければならないことは分かっていると思う。

 日韓両国はアメリカの重要な同盟国だ。過去のわだかまりを解決すると同時に未来に目を向けてほしいというのが私の願いだ」(NHK NEWS WEB)――

 このオバマ大統領の発言に対して安倍晋三は4月27日午後、視察先の岩手県岩泉町で記者の質問に答えている。

 安倍晋三「筆舌に尽くし難い思いをされた慰安婦の方々のことを思うと、本当に胸が痛む思いだ20世紀は女性を始め、多くの人権が侵害をされた世紀だった。

 21世紀はそうしたことが起こらない世紀にするために日本としても大きな貢献をしていきたい。今後とも国際社会に対して、日本の考え方、日本の方針について説明していきたい」(NHK NEWS WEB)――

 日本の慰安婦問題を20世紀の女性に対する人権侵害と同列に扱うことで一般化し、日本の従軍慰安婦問題が決して特別ではないことを発言の裏で仄めかしている。

 勿論、橋下徹の歴史認識通りに、あるいは安倍晋三の歴史認識通りに前者・後者が事実同質・同レベルの戦時・戦地に於ける一般的な女性に対する人権蹂躙であるなら問題はない。果して同質・同レベルの人権蹂躙だとすることができるのかが問題となる。

 2010年1月12日のハイチ巨大地震の復興・再建に各国から国連平和維持活動(PKO)部隊が派遣された。ところが2015年5月15日付の国連内部監査部が多分、先に働きかけたのはPKO部隊員の方なのだろう、支援物資提供の対価としてハイチ女性の肉体を報酬としていたことを報告書で明らかにしたと「asahi.com」記事が伝えている。

 この取引関係にハイチ女性200人以上が加わっていたという。

 もしハイチ女性の方から先に働きかけた取引なら、ハイチ女性は自身の肉体提供の対価としてPKO隊員からの支援物資を報酬としていたことになる。

 尤もこういったことが慣習化すると、働きかける側はハイチ女性であったり、PKO部隊員であったり、時と場合で攻守を変えるようになった違いない。

 記事は、〈ハイチのほか、リベリアや南スーダン、コンゴ民主共和国のPKO部隊。リベリアでは18~30歳の女性489人への調査で、25%以上がPKO隊員との取引の性交渉を証言し〉ているが、〈国連は隊員に対し、支援物資などを見返りとした性交渉と、18歳以下との性交渉を禁じている。〉と解説している。

 しかしこの取引関係は女性の人権を蔑ろにするものであっても、あくまでもPKO部隊員対ハイチ女性個人――個人対個人の一種の商取引であって、それぞれのPKO部隊が女性に提供する物資を支援物資の中から抽出してストックしておき、交渉にも関わって取引を主導、成立させて、交渉が成立した場合の性行為の場を部隊内に前以て用意しておいて提供し、性行為終了後に取り決めた支援物資を報酬として渡すといった組織的なアクションとして存在した取引だとはどの記事も書いてはいない。

 だが、各国の元従軍慰安婦の証言から炙り出すことができる日本の従軍慰安婦問題の多くは日本軍兵士が数人から10人前後の集団で軍用トラック等で駆けつけて占領地の未成年含めた若い現地人女性を力づくで捕まえ、拉致同然に強制連行して、部隊が用意した慰安所に監禁、部隊の兵士ほぼ全員が代わる代わるに強制的に売春を強いた、日本軍が軍として組織的に行った女性に対する人権蹂躙となっている。

 強制的な拉致・監禁と強制売春の対象とされた従軍慰安婦にとっては決して個人対個人の取引で成立させた性行為とは言えないし、兵士が休日あるいは夜間に部隊駐屯地を抜け出して現地人女性を強姦するといった個人の犯罪で片付けることができる問題ではないし、日本軍という組織が個人性を超えて集団で行った女性に対する人権蹂躙、あるいは人権侵害であり、他の国の軍隊も同じく軍隊として組織的に行っていた売春形態とされていない以上、橋下徹や安倍晋三のように20世紀の女性に対する他の人権侵害や人権蹂躙と同質・同レベルに置いて相対化することも一般化することも決して許されない。

 にも関わらず、橋下徹も安倍晋三も日本の従軍慰安婦問題が日本軍の組織的関与による人権蹂躙、あるいは人権侵害なのか、兵士の個人的関与による人権蹂躙、あるいは人権侵害なのかの区別をつけないままに20世紀の他の女性に関わる負の人権問題と同質・同レベルとする相対化・一般化を行って、日本という国の免罪を謀ろうと意図している。

 理由は両者共に従軍慰安婦問題に関して個人の人権や尊厳を守る立ち場から個人主義(=個々の人格を至上のものとして個人の良心と自由による思想・行為を重視し、そこに義務と責任を発現する立場。〈大辞林〉を重視することよりも、それを国家の犯罪とした場合に失う国家としての品位を守ることを最大の利害とする国家主義の立場に立っているからであり、その上合理的判断能力を欠いているからに他ならないだろう。

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