法律に自衛隊・自衛隊員の安全確保を明記して、その通り機能するなら、戦死者はこの世に存在しない

2015-08-26 12:54:54 | 政治



 記事題名を《安全確保を求めない軍事行動は存在しない それが狙い通りに機能するなら、戦死者はこの世に存在しない》から、《法律に自衛隊・自衛隊員の安全確保を明記して、その通り機能するなら、戦死者はこの世に存在しない》に変えました。あしからず。(2015年8月27日 04:45)


 8月25日の参院特別委員会で民主党の福山哲郎が安全保障関連法案に基づく後方支援活動での自衛隊の安全確保について問い質した。

 具体的には政府が後方支援活動を自衛隊が行うことを規定している法律に安全確保を明記しているとしているのに対して福山哲郎はどこに、どう明記されているのか追及した。

 最初に結論を言ってしまうと、大体が安全確保など条文で明記することなど不可能である。戦争、もしくは戦闘は全体的には勝敗、あるいは勝敗ががつかずに休戦や撤退といった決着で終止符を打つことができたとしても、部隊単位、あるいは兵士個人単位では不測の事態と常に隣り合わせで、その不測の事態に部隊や兵士個人が備えている細心の注意を払った安全確保で対応したとしても、常時対応しきれるとは限らないからだ。

 だから、部隊単位ではその戦闘に勝利したとしても、何人かは戦死者を出すケースが生じる。

 安全確保が確保したとおりに常に機能するなら、この世に戦死者は存在しないことになる。

 アメリカ軍がイラクやアフガニスタン、その他で軍事活動をするとき、軍組織としても、兵士個人としても安全確保を図っていないと誰が断言できるだろうか。

 安全確保を最優先・最大限に図ってもなお、戦死者や重傷者は出る。例え法律にこれこれの安全確保を図るようそれぞれの行動を事細かに規定し、明記したとしても、敵勢力が存在する以上、敵の動きがときには法律通りに事を進める保証は失わせる。

 法律通りに事が進むと考えるのは敵という存在があるのに対して不測の事態を否定するようなものである。

 それを安倍晋三も中谷元も法律に安全確保を明記したと言い、「リスクは高まることはない」と自衛隊の、あるいは自衛隊員の安全を保証できるとする現実にそぐわない楽観論は法律を成立させるためのウソも方便の類いに過ぎないからだろう。

 いくらウソも方便の類いであっても、そのことが本人たちが気づかぬ間に「自衛隊絶対安全神話」、あるいは「自衛隊員絶対安全神話」を打ち立てることになっていく。

 福山は、「今日は自衛官の安全確保について議論したいと思います」と言ってから、最初に自民党と公明党の安保法制に関する与党協議の際に公明党の北側一雄議員が自民党に示した自衛隊の海外派遣に関しての、いわゆる「北側三原則」を挙げた。

 (1)国際法上の正当性を有すること
 (2)国民の理解を得られるよう、民主的統制を適切に確保すること
 (3)自衛隊員の安全確保を最優先すること

 福山哲郎「総理、このことに間違いありませんか」

 中谷元「一般的に具体的にどのように書いたのかであるが、具体的には国際平和支援法やPKOに於いて国連や国際機関の決議・要請等があった場合のみ、自衛隊を派遣することとか、国際平和支援法では例えば事前の国会承認を要することとか(方向違いの答弁だからだろう、議場から批判の声が上がり、福山も手で、違うといったゼスチャーを見せる)、自衛隊の安全確保に関する配慮規定を設けるとか、様々な形で(北側)三原則を法案に明記をしたということでございます」

 「国連や国際機関の決議・要請」が自衛隊、もしくは自衛隊員の安全確保の保証になるわけではない。「事前の国会承認」にしても然り。「自衛隊の安全確保に関する配慮規定」を設けることが、どうして安全確保の保証になるというのだろう。

 また「(北側)三原則を法案に明記をした」ことがどうして安全確保の保証になるというのか、考える頭は中谷にはないらしい。安全確保を法律に明記することは不可能を可能にしようとする企みに過ぎない。

 安倍晋三「ただいま大臣から、どのように法案に明記されているか、述べたとおりでございます。そのとおりでございます」

 福山哲郎「先ず防衛大臣、私の質問に全く答えていません。私は安倍総理にお尋ねしたんです。安倍総理は特別委員会で何度も、衆議院の本会議でも答えています。

  この北側三原則、自衛隊の安全確保のために非常に重要な三原則だと思っています」・・・・・。

 (安倍晋三のかつての国会答弁を記したパネルを掲げて読み上げる。パネルは次のような内容。 

 「北側三原則」における自衛隊員の安全確保

 【安倍内閣総理大臣】

 第一には、国際法上の正当性を有すること、そして、国民の理解を得られるように、国会の関与等の民主的統制を適切に確保すること、そして、自衛隊員の安全確保のための必要な措置を定めること、この三つでございますが、今委員がご指摘のように政府としては、全面的に受け入れまして、三原則を法律上の要件として明確に定め、全ての法案にこの原則を貫徹することができたのではないか、このように思います。 (6月1日衆議院平和安全法制特別委員会)

 政府としては、この方向性に即して法案作成作業を行い、全ての方針が法案の中に忠実に、かつ明確に盛り込まれたものと考えています。(5月15日衆議院本会議)

 福山哲郎「総理の答弁に間違いありませんねと、(安倍晋三に答弁を)お願いしているんです」

 安倍晋三「これは答弁したとおりでございます」

 福山哲郎「防衛大臣、総理がああ答弁されているのに全然関係ない答弁されるんですか。『自衛隊が海外活動を行う際に自衛隊の後方支援に於ける安全確保は、安全配慮・実施区域の指定・一時休止・撤退することで確保されている』

 これは防衛大臣が何度も衆参の委員会で答えたが、安全配慮・実施区域の指定・一時休止・撤退ということの措置で安全確保されているということでよろしいですね」

 中谷元「その他にも国連の決議や要請とか、任務の明確化、実施の区域、こういった先程委員がおっしゃった活動の停止・中断・安全配慮規定、そして武器の使用。これも安全に関わることで、派遣された隊員が安全に活動できる、そういった様々な規定が法律に盛り込んだということでございます」

 中谷元の答弁は一生懸命無理を押し通そうとして道理を引っ込めているに過ぎない。挙げたどれもが安全確保の保証とならないばかりか、こちらの都合だけの安全確保となっている。

 相手のあることに対してこちらの都合だけの安全確保はその保証足り得ない。

 例えばボクシングの試合で一方のボクサーが、「先ず左ジャブで攻めて、右フックで相手の左顔面を攻め立て、チャンスを見て右アッパーを相手の顎に打ち込んでダウンを奪う」と思い描いて、思い描いたとおりに試合が進行すると思い込んで戦いに臨むのは自分の都合のみの戦術に過ぎない。

 武器の使用が安全確保の常なる保証となるのは相手が武器を持っていない場合である。相手が武器を持っていたら、その武器が相手の安全確保の道具となった場合、こちら側の武器は安全確保を打ち砕く道具としかならない。

 にも関わらず、武器使用を安全確保だと決めてかかることができるのはこちら側の都合のみを言っているからである。「活動の停止・中断・安全配慮規定」にしても、安全確保の手段だとすることができるのは、こちらの都合だけの安全確保となっているからである。

 福山哲郎「違います。自衛隊員の安全確保は重要で、総理も大臣もこの委員会でずっと安全配慮だ、実施区域だ、一時休止・撤退があるから、安全が担保できるんだとずーっと答弁されてきたことに間違いないですかと確認しているんです」

 福山の質問も間違っている。確認したからといって、どうにかなるわけではない。「安全に配慮していることが常に安全を担保するのですか。実施区域が常に安全を保証するのですか、一時休止・撤退が常に安全を担保・保証するのですか」と問えばいい。

 中谷元「これまで答弁してきたとおり、安全の確保・配慮等につきましては法案に明記しまして、自衛隊の派遣活動等については安全確保に留意してきたつもりです」

 安全確保に何の保証にもならないことを繰返しているに過ぎない。 

 福山哲郎「それでいいですよ。その通りなんです。で、パネルを御覧ください。存立危機事態に於ける後方支援について、先日の委員会の大臣の答弁です」

 福山がなぜ「それでいいですよ。その通りなんです」と言ったのか分からない。

 「存立危機事態での後方支援活動における自衛隊の安全確保」(パネル)

 【中谷国務大臣答弁】

 これは、存立危機事態に於いて新三要件に該当すると判断する場合でございます。しかし、そういった事態におきましても後方支援を実施するということはできるわけでございまして、武カ行使そのものではございませんが、後方支援として実施をするということで、これは当然、安全に配盧し、また円滑な活動が実施できる、そういう範囲で後方支援を行うということでございます。(8月4日参議院平和安全法制特別委員会)

 福山哲郎「これに間違いありませんね」

 中谷元「その通りに間違いありません」

 福山哲郎「中谷大臣、米軍等行動関連措置法に於ける自衛隊の安全確保に安全配慮・実施区域・一時休止・撤退はどのように担保されるのですか」

 中谷元「この米軍等行動関連措置法に関しては武力攻撃事態に於いてと同様で、存立危機事態についてはこれは我が国を防衛するための諸活動を行うために様々なリスクを伴うが、その場合は隊員の安全確保は重要であることは当然で、米軍等行動関連措置法の第4条で行動関連措置は武力攻撃、存立危機、武力攻撃を排除する目的の範囲内に於いて事態に応じ、合理的に必要とする判断の限度を超えるものであってはならないと規定しています。

 このことは隊員の安全確保についても配慮した上で必要な支援を行うという趣旨を示したものでありまして、また、重要影響事態と同様に法律上、隊員の自己保存ための武器使用の規定が明記されていて、隊員の安全確保のための措置はこの法律の中にも盛り込まれています」

 福山哲郎「 すみません、今『明記』とおっしゃった。もう一回聞きます。この米軍等行動関連措置法の中に安全確保の規定がどこに明記されているのかお答えください」

 福山哲郎は法律に明記したとしても安全確保の保証とならないこと、当然、確実絶対的な安全確保の条項など明記などできないことを承知して聞いているのか、承知しないままに安全確保は重要だからと明記を求めているのか不明だが、ないものでねだりをしているしているに等しい。

 中谷元「法律上、隊員の自己保存のための武器使用の規則が書かれています。また、隊員の活動範囲に於いてもですね、この武力攻撃、この存立危機を排除する目的の範囲内に於いて事態に応じて合理的に必要とされる限度を超えるものであってはならないと規定していて、このことは隊員についても配慮した上で必要な支援を行う趣旨を含むものでございます」

 自衛隊員は後方支援活動に於いて敵勢力がライフル銃や機関銃で攻めてきたために自己保存の武器使用に至らざるを得ず応戦することになって双方が銃撃戦を交わすことになったとき、武力攻撃・存立危機を排除する目的の範囲内に於いて事態に応じて合理的に必要とされる限度を超えているかどうか常に自身に問いかけながら、武器の引き金を引かなければならないことになる。

 勿論、敵勢力を短時間の内に撃退できれば、「合理的に必要とされる限度」を超えていない自己保存の武器使用と言うことができるが、なかなか撃退できないばかりか、逆に相手の勢いが優勢となって撃退は無理だとなった場合、どこに「合理的に必要とされる限度」の基準を置くのだろうか。

 単に相手の攻撃が優勢となって、自衛隊が押され気味になった時点なのか。あるいは自衛隊員の誰かが一人射殺された時点なのか。

 基準を前者・後者いずれに置くとしても、相手の攻撃が優勢な状況下で活動の一時休止・撤退は果たして可能だろうか。

 可能なのは敵勢力が自分たちの優勢をわざわざ捨てて追撃を行わない場合に限る。追撃はないことを想定とした安全確保であるなら、自分たちの都合のみを描いた後方支援活動と言うことになる。

 あるいは勝敗の趨勢がはっきりつかないままに合理的に必要とされる限度を超えていないと判断される状況下であっても、自衛隊員が敵勢力の撃ち放った弾丸に、それが狙い定めたものであるなら正確に、狙い定めないものであっても、偶然に当たらない保証はどこにもない。

 中谷元の言っていることは無理(道理がないこと)を有理(道理のあること)と言いくるめ、不可能を可能と言いくるめる詭弁に過ぎない。

 福山哲郎が答弁になっていないと抗議したのだろう、審議は中断した。再開されても、似た答弁の繰り返しで、福山に「武器使用の権限が安全確保だなんて聞いたことがない」と言われる始末で、福山は米軍等行動関連措置法のどこに安全確保の規定が明記されているのか、規定などできないことを知ってなのかどうか分からないが、なおのこと迫った。

 もし法律に自衛隊の安全が確保されること、あるいは自衛隊員の安全が確保されることを明記して安全確保を保証しておいて、それが崩れた場合、法律の欠陥として大問題となる。

 繰返しになるが、法律では安全確保を規定などできない。

 現実の戦闘の現場で安全確保はある意味自己責任となる。敵勢力と遭遇して戦闘となった場合、敵勢力の攻撃に対して如何に臨機応変に対応できるか、あるいは敵の攻撃に自身の対応がどこまで許されるかによって安全か否かは決まってくる。

 当然、敵勢力の攻撃が遥かに優って、そのために臨機応変に対応しようとしても、自身のその対応が考えた程には、あるいは自分の都合程には許されないというケースも生じる。

 中谷元は「後方支援は戦闘を行うものではなく、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施する」から安全だといった答弁をしていたが、後方支援は本来的には兵員・食料・物資・弾薬の輸送・補給を担う活動ではあるが、その活動によって友好国軍隊の戦争継続、あるいは戦闘継続に資することになって、それゆえに敵勢力の利害に反する活動となるゆえに、後方支援自体を阻止する絶対的必要が生じる。

 後方支援をただ眺めているだけでは済まないということである。当然、後方支援活動の区域が戦闘が行われていない安全地帯であっても、安全なのは日本側の都合だけとなる。中谷元は後方支援で敵勢力との遭遇を何ら想定しない非現実に立った答弁を繰返していたに過ぎないが、「後方支援を定めた米軍等行動関連措置法には自衛隊の安全確保のための規定がない」と、やっと当たり前のことを認めた。

 その後も何度か中断を挟んで断続的に審議が行われたが、福山が依然として答弁に納得せず、審議は紛糾、とうとう午前中の質疑は休止、休憩に入って、午後に開始された。

 福山哲郎「 先程防衛大臣は米軍等行動関連措置法にいわゆる後方支援、存立危機事態の後方支援については法案の中に安全確保がない、規定がないことを認めて頂きました。

 総理、総理はこの米軍等行動関連措置法に安全確保の規定がないことはご存知だったでしょうか。ご存じなかったか、正直にお答えください」

 安倍晋三「規定が安全確保の義務、あるいは活動区域を定めた規定がないというのは承知をしておりました」

 安倍晋三は規定がないことを認めたものの、中谷元が「米軍等行動関連措置法の第4条で行動関連措置は武力攻撃、存立危機、武力攻撃を排除する目的の範囲内に於いて事態に応じ、合理的に必要とする判断の限度を超えるものであってはならないと規定しています」と答弁したことを繰返して、「北側三原則が趣旨として盛り込まれていると解釈しているわけでございます」と安全が確保されている意味のことを答弁、「明記」から「解釈」へと変えたが、例え法律に明記してあっても、安全が確保される、あるいは安全が保証されるわけではないのに、「解釈」ではなおさらに確保や保証の確かな裏付けとなるわけではないにも関わらず、裏付けとしようとするのは「自衛隊のリスクは高まることなない」と発言している以上、譲ることのできない一線として自衛隊の安全確保に拘っているからだろうが、今後共譲ることはあるまい。

 繰返すことになるが、法律に自衛隊、あるいは自衛隊員の安全確保を明記することも謳うこともできないし、明記し、謳ったとしても安全確保を保証できるわけけではない。

 福山哲郎自身、このことを認識して質問しているわけではないようだ。

 マスコミ記事によると、福山哲郎は、「隊員の安全確保は法案の根幹だ。衆院から審議をやり直すか、自衛官に『安全規定はないけど行ってくれ』と言わなければ不誠実だ」と批判したということだが、「隊員の安全確保は法案の根幹だ」と言っていること自体が、認識していないことの証拠となる。

 どういった不測の事態が突発的に発生しない保証はどこにもない。「自衛官に『安全規定はないけど行ってくれ』」と言うしかないし、そういうことが正直な姿というものだろう。

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