安倍対習近平の国連を舞台とした対アフリカ・対中東援助レース、安保理常任理事国入りの実弾となるのか

2015-09-30 09:47:33 | 政治



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

      《9月28日 共産党との党首会談の要旨及び記者会見動画 党HP掲載ご案内》

      小沢一郎代表は9月28日、国会内で日本共産党の志位和夫委員長と会談し、「『戦争法(安保法
      制)廃止の国民連合政府』の実現をよびかけます」との提案を受けました。会談要旨及び会談
      後の小沢代表の記者会見動画をホームページに掲載しました。ぜひご覧ください。

 第70回国連総会が15日ニューヨークで開幕。28日から一般討論が始まった。我が日本の首相安倍晋三は日本時間の9月30日未明、一般討論演説に臨んで、様々な問題を抱えるアフリカや中東への資金援助を申し出、多分腹の中では誇らしげにだろう、それぞれの金額を掲げた。

 援助項目と金額

 ① シリアとイラクの難民・国内避難民に向けた支援約8億1000万ドル(972億円)――昨年実績の3倍」
 ② イラク民生安定向け上下水道整備と中東・アフリカの平和構築推進に約7億5000万ドル(日本円900億円)
 ③ シリア等の難民受け入れ国レバノンに200万ドル、中東難民の対欧州移動ルート上のセルビア、マケドニア
   等に約250万ドルの支援。
 
 安倍晋三の難民支援で見えてくることは、特に最後の③に象徴的に現れているが、中東にとどまっている難民の面倒と欧州に向かう難民の移動のお手伝いはしますよという対外的支援に限定している点である。国内的受入れ支援は見えてこない。

 演説冒頭の発言。

 安倍晋三「今また、私たちの目の前で、多くの難民が命を賭してでも恐怖から逃れようとしている。しかし、例えどんな問題があろうとも、国連の下、共に立ち向かおう」(NHK NEWS WEB) 

 記事解説は、〈中東各地から難民がヨーロッパに押し寄せている問題の解決に向け、国際社会の一致した行動を呼びかけた。〉となっている。

 要するに国際社会の一致した行動と言っても、日本はその殆どが対外的支援に限定した一致した行動というわけである。
 
 次に中国の習近平主席。安倍晋三に4日先立つ9月26日、世界各国の首脳が参加する国連サミットで演説、次いで途上国首脳を集めた会合を開催。これら二つの場所で表明した支援と金額。

 ① 今後5年間で途上国向けに貧困対策や農業協力など6分野で計600項目のプロジェクトを支援する20億ドル(約2400億円)拠出の「南南協力援助基金」の設立。
 ② 対後発開発途上国投資を2030年までに120億ドル(約1兆4400億円)を目指す。
 ③ 同後発開発途上国対象に2015年末に返済期限を迎える政府間の無利子融資の未返済分の債務免除方針の表明。

 習近平「国際社会は(先進国が途上国を支援する)南北協力を堅持しながら、(途上国同士の)南南協力を深化させなければならない。

  (中国推進のシルクロード経済圏構想「一帯一路」や中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも言及)途上国の経済成長と国民生活の改善のため貢献する力になりたい」(時事ドットコム) 

 日本は日本政府が主導、国連・国連開発計画(UNDP)・アフリカ連合委員会(AUC)・世界銀行共同開催のアフリカ開発会議(TICAD)を来年の2016年、アフリカのケニアで開催を予定している。そこでも多額の資金支援を表明するだろうし、中国も様々な機会に対中東・対アフリカ援助を行うだろうが、あくまでも今回の国連を舞台とした援助レースに限って見ることにする。

 日本の対中東・アフリカ支援は年間約2000億円と計算して、難民問題が解決したら、他に振り向けるだろうから、200億円を2030年まで今後15年間続けるとすると、約3兆円となる。これは中国の対後発開発途上国投資2030年までの120億ドル(約1兆4400億円)の2倍以上となる。

 中国の貧困対策や農業協力等6分野で計600項目のプロジェクト支援20億ドル(約2400億円)拠出の「南南協力援助基金」を加えても、1兆円以上の開きがある。

 今回の国連を舞台とした援助レースでは金額の点では日本が中国に優っている。

 日本は2005年に引き続いて国連の安全保障理事会の改革を行ってその常任理事国入りを目指している。だが、前回の2005年の小泉時代、常任理事国を現行5カ国から11カ国に増やすことを主な内容とした日本、ドイツ、インド、ブラジルと29カ国の共同提案国と共に国連総会に提出した「安保理改革に関する枠組み決議案」(G4案)はアジア・アフリカ国から賛成を得ることができずに廃案とされている。

 賛成を獲得できなかった理由が中国のアジア・アフリカ各国に対する根回しだとされている。

 天児慧早稲田大学教授「国連分担金の多さは米国に次ぐ2位(05年で全体の19.5%)、その他災害支援、イラク・アフガン支援をはじめ実質的な国際貢献は高い。しかしそれは日本の常任理事国入り支持にならない。しかもG4案の共同提案国29カ国中、日本のODA最大の供与地域であるアジアからは、なんとブータン、アフガン、モルジブの3カ国のみでASEAN諸国、南アジア諸国からもことごとくそっぽを向かれてしまった。これは明らかに深刻な外交的失敗である」

 エンディ・バユニ・ジャカルタ・ポスト編集局長「実際、日中韓の緊張が続く中で、中国は日本の安保理常任入りに反対するよう、インドネシア政府に様々な働きかけをしてきた。

 再び2人の友人のどちらかを選ぶような状況に追いやられたくないのが、インドネシアの本音だ。だが、仮に同じような状況が来れば、国益を最優先に考える。その結果は東京を喜ばすことはできない。中国を選ばざるを得ないからだ」(朝日新聞

 当時、アフリカ連合(AU)も改革案を提出していた。日本はアフリカ各国からも支持を得ることができるように日本政府は対アフリカODA倍増を打ち出し、AU案との一本化を働きかけた。だが、拒否された。
 
 中国がAU各国に中国と敵対する国の常任理事国入りへの反対を求め、AU各国がその反対に応じたからだという。

 中国はアフリカ各国にある自国大使館に現地政府関係者を招き、日本が戦争行為で残虐な行為をしたことを告発する映画を上映して日本への不支持を呼びかけたとの報告が外務省に入っていたと当時の朝日新聞は伝えている。

 安倍晋三は9月26日朝(日本時間9月26日夜)に米ニューヨークに到着後、直ちにと言うべきか、早々とドイツ、インド、ブラジルと「G4」首脳会合に臨んでいる。

 安倍晋三「今年は国連創設70周年。安保理は21世紀の現実にあった姿に改革されるべきだ」(YOMIURI ONLINE

 安倍晋三のことだから、自分の手で安保理常任理事国入りを果たし、集団的自衛権行使容認と共にそれを功績とした自身の名を日本の歴史に刻み込みたいと激しく、激しく願っているに違いない。

 そのための国連を舞台とした中国援助金額を大きく上回る多額の対中東・対アフリカ援助だろうが、果たしてアフリカ各国やアジア各国の支持を得ることのできる実弾足り得るのだろうか。

 中国の後発開発途上国対象に2015年末に返済期限を迎える政府間の無利子融資の未返済分の債務免除といったことが日本にとって意外とボディブローとなって効いてくるかもしれない。

 いわば最初に決めたルールを最後まで決めたとおりに進めて完結させるのではなく、相手側の状況が不利となった場合に応じて相手に有利となるルールに臨機応変に変えていく。

 このことはインドネシアの高速鉄道整備計画でも見ることができる。インドネシア政府は財政負担が生じることと融資に対して政府の返済保証を負うことの双方の負担の大きさをを警戒して一旦は計画を中止したが、中国側がその両方共に負担を求めないこととしたことによって中国側が建設の受注を決定に持ち込むことができた。

 日本側は特にインドネシア政府の返済保証に最後まで拘った。要するに損はしたくないという気持を最後まで働かせていた。

 国連を舞台の日中援助レースが日本の安保理常任理事国入りにどう働くか、見ものである。

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