安倍晋三の「戦後70年談話」をウソにする欧州大量難民流入問題に距離を置く安倍政権の姿勢

2015-09-08 08:56:30 | Weblog


 
 欧州が難民問題で揺れている。中東や北アフリカ情勢の不安定化に伴って難民や不法移民が大量に欧州に押し寄せ、その処置に混乱を来たしている。

 各マスコミ記事から、経緯を振返ってみる。

 昨年は22万人が流入し、今年は8月までに30万人に達しているとマスコミは伝えている。特に今回ハンガリーで話題となった大量の難民流入問題はハンガリーが地中海を渡って欧州連合へと向かう玄関口となっていることから、内戦や治安悪化を逃れたシリアやイラクなどから今年に入って16万人以上が流入、ナチス時代のユダヤ人迫害への反省から寛大な難民受け入れ政策を取ってきた歴史を抱えていて、経済的に豊かで安定しているドイツに向かうべく、主としてハンガリーに集中したようだ。

 その結果、列車でドイツに向けて移動しようとした難民が首都ブダペストの西欧行き直行列車が発着する駅舎に向けて行列をなすこととなった。

 ハンガリー政府は駅舎を一時封鎖したり、西欧行き直行列車を停めたりする対策を取ったが、9月3日、難民や移民の駅への立ち入り制限を解除、多くの難民が一斉に列車に飛び乗り、大移動を開始した。

 あるいはドイツとハンガリーの両国に挟まれたオーストリアに歩いて移動を開始していた難民をハンガリー政府はバスを仕立てて数千人をオーストリア国境に運ぶなどの対策を取ったという。

 その多くがオーストラリアを横断して、ドイツに向かに違いない。老若男女様々に果たして受け入れてくれるのだろうかという不安と疲労と空腹を抱えて。

 9月6日付のドイツ紙が欧州連合(EU)欧州委員会の9月9日発表の難民計12万人の加盟国分担案でドイツが最も多い3万1443人を受け入れる内容になっていると報じたと「時事ドットコム」が伝えている。 
 
 フランス2万4031人、スペイン1万4921人。最も少ないのは地中海のマルタの133人。分担の対象はギリシャやイタリア、ハンガリーに押し寄せている難民。

 まだ決まったわけではなく、〈東欧諸国の一部は受け入れの義務化を嫌っており、加盟国全体で合意が得られるかは不透明だ。〉と解説している

 9月6日時点で難民は既にドイツ南部ミュンヘンに到着しているという。ドイツ人男性の一人は「難民を受け入れて多様性が深まれば、ドイツの力になる」(時事ドットコム)と強調したという。 

 ドイツの産業界も高齢化と出生率の低下による生産年齢人口減少を受けた人材確保の面からも、難民の受入れに前向きだという。

 このように歓迎する一方で、ドイツ政府が今回の措置は1回限リだと強調しているものの、ドイツの積極的な受入れ策が難民流入の誘い水になることへの警戒から国内外で反発の声が上がっていると、「The Wall Street Journal」が伝えている。 

 〈ハンガリーのオールバン首相は先週、難民に優しいドイツの移民政策と福祉制度のせいで、西欧に向かう難民が増加していると批判し、欧州の難民問題は「ドイツの問題だ」と言い切った。〉

 〈最近設立されたドイツ野党のAlfaの報道官は、「難民歓迎はナイーブな考え方だ。われわれは現実主義で平衡感覚を持つ必要がある」と訴え、「難民申請者には、食料や収容施設など生活の基盤以上のものを提供すべきではない。そうでなければ、さらに難民が流入する」と警告した。〉

 〈フランスでは極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が6日マルセイユで開いた年次党集会で、「ドイツは難民流入の危機に対し欧州連合(EU)レベルで受動的な対応をするように煽(あお)っている。ドイツはおそらく人口減少に考慮して、大量の難民を受け入れて奴隷にしたいのだろう」と皮肉った。〉等々の反移民の声を紹介している。

 今朝のNHKニュースが、フランスとイギリスの政府がそれぞれ2万人規模で難民を受け入れる考えを表明したと伝えていた。

 例えドイツの産業界が人材不足の面から難民の雇用を考えていたとしても、基本的にはこれは人権問題である。

 この人権問題に日本政府はどういった姿勢を見せているのだろうか。9月4日午後の官房長官の記者会見。

 菅義偉「差別、偏見、迫害を受けている人に対し、国際社会の一員として適切に対応する必要がある。難民が出ないよう協力したい」(産経ニュース) 

 「差別、偏見、迫害を受けている人」だと人権問題であるとしながら、「難民が出ないよう協力したい」と、既に難民が大量流出している事態に目を向けずに治安や政情が不安定化している中東や北アフリカといった地域の出来事に限定する問題の矮小化を平気で謀っている。

 9月7日の記者会見。

 菅義偉「現時点で具体的な政策を追加することは考えていないが、国際社会としっかり連携して取り組みたい。欧州に難民が押し寄せる状況について認識している。難民対策は極めて重要だと思っている」(日経電子版

 まるで他人事のような発言となっている。「国際社会としっかり連携して取り組みたい」と言っているが、どう連携するのかは明らかにしていない。

 「現時点で具体的な政策を追加することは考えていない」と発言していることからして、国際社会との連携は現時点では取り立てて考えていないということなのだろう。

 また現在行っている難民に関わる「具体的な政策」とは、安倍晋三今年2015年1月17日にエジプトのカイロで行った中東政策スピーチで述べた金銭的支援のことを主として指すのだろう。

 安倍晋三「中東の安定を、私たちがどんな気持ちで大切に思い、そのため力を尽くしたいと念じているか、意欲をお汲み取りください。

 2年前、私の政府はこの考えに立って、中東全体に向けた22億ドルの支援を約束し、これまでにすべて、実行に移しました。本日この場で皆様にご報告できることは、私にとって大きな喜びです。

 ・・・・・・・・・・・

 イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」――

 この発言が「イスラム国」(ISIL)を刺激し、「イスラム国」はシリアで拘束していた2邦人の人質解放の身代金として安倍政権に対してイラク、シリアの難民・避難民支援2億ドルと同額の、一人当たり1億ドルずつ計2億ドルを要求、安倍政権が無視したために2邦人共殺害し、その死体の映像をインターネットに投稿した。

 この難民・避難民支援の2億ドル以外、「現時点で具体的な政策を追加することは考えていない」ということを意味しているはずだ。

 要するにヨーロパで現在進行形の難民大量流入問題には関わる意思はないことの表明に過ぎない。

 安倍晋三は8月14日に「戦後70年談話」を発表したばかりである。 

 安倍晋三「私たちは、国際秩序への挑戦者となってしまった過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」――

 「自由、民主主義」の基本的価値のみならず、「人権」という基本的価値を揺るがずに「堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してい」き、「国際秩序」の守護者の一国となることの誓いとなっている。

 何という気高く高邁な理想なのだろうか。

 安倍晋三は「戦後70年談話」で掲げたこの理想の実現を基本的価値を共有する国々と手を携えて現在ヨーロパで進行している難民大量流入問題で試してみる気はサラサラ持っていないようだ。

 それなら、それでいいのだが、「安倍晋三戦後70年談話」を自らウソにすることになる。

 尤も2013年の日本の難民認定数は難民認定申請者3,260人に対してたったの6人であり、2014年の難民認定者数は申請者数5,000人に対して11人に過ぎないことからも、今回のヨーロッパでの難民問題での安倍内閣の対応は、特に安倍晋三自身が、その熱烈な天皇主義者であることが証明することになっている日本民族優越主義者であることからも、最初から見通していなければならなかったのかもしれない。

 テロや政情不安とそれらの被害者という立場で大量に発生している難民とその自国からの移動が人権問題のみにとどまらず、国際秩序を脅かそうとしている。

 安倍内閣は「70年談話」に掲げた理想をウソにして難民問題から距離を置こうとしている。

 いや、元々ウソで積み上げた談話に過ぎなかったということなのだろう。

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