国交省・常総市の堤防決壊に関わる危機管理不備を前にした人命云々は国民をバカにしているように見える

2015-09-13 10:45:38 | 政治



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

      《9月13日(日)山本太郎代表のテレビ出演ご案内》   

     山本太郎代表がNHK『NHKスペシャル』に出演します。
     「緊急生討論 10党に問う どうする安保法案採決」をテーマに議論します。是非ご覧ください!

     ◆番組名:NHK『NHKスペシャル』
     ◆日 時:平成27年9月13日(日)午後9:00~10:30
     ◆内 容:集団的自衛権の限定行使容認について
           自衛隊の海外活動の拡大について
           法案の審議・採決について         

 9月10日午後0時50分頃、常総市内で大雨増水によって鬼怒川土手が決壊、鬼怒川を管理する国土交通省関東地方整備局が浸水した面積を航空機で撮影した写真を使って分析した結果、浸水地域は鬼怒川とその東側を流れる小貝川の間に広がり、常総市の面積の5分の1に相当する約25平方キロに及ぶと推定したと、9月12日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 NHKニュースなどは当初常総市新石下付近で決壊したと伝えていたが、現在は常総市三坂町と場所を変えている。ネット地図で見ると、三坂町は鬼怒川に沿って南隣となっている。常総市が今回の大雨被害に関わる河川情報を伝えるホームページに決壊から20分後の時間で、「(午後1時15分)鬼怒川が三坂町地内において、決壊しました」とあるから、それに従って決壊場所を三坂町にしたのだろうか。

 この午後1時15分は防災行政無線で市内全体に放送した時間でもあるはずだ。テレビのニュースを見ると、かなりの被災者が口々に大雨で放送内容が聞き取れなかったと言っているから、遅くても早かったとしても、大して差はなかったのかもしれない。

 当初は20メートルだった決壊の幅が午後5時時点では140メートルに広がったというから、川から溢れ出していく濁流の勢いは相当な勢いを持ち、住民の多くが避難していない状況での決壊後のいくら早い情報伝達であっても、その速さは決壊個所に近くに住まいを構えている住民には殆ど意味をなさなかったに違いない。

 NHKニュースで中年の女性が強い雨が降る中、何度も堤防を見に行き、増水の状況を見て避難しようかどうしようか迷っていたところ、知り合いから堤防が決壊したと知らせが入って避難したと話していた。

 増水の状況は目視できる。だが、決壊は前以て目視できない。目視できるのは決壊後である。決壊の危険性を想定していない限り、決壊前の的確な危機管理は機能しない確率が高くなる。

 常総市は9月10日午前2時20分に玉地区、本石下と新石下の一部(県道土浦境線以北の区域)に避難指示を発令している。そして午前10時30分には中三坂、 上と中三坂、下地区に避難指示を発令している。

 常総市自体も増水→越水→万が一の氾濫のみを想定していて、堤防の決壊は頭になかった。だから、一度に広範囲に亘ってではなく、市内の鬼怒川沿いをコマ切れに地区割りしたような方法で順次避難指示を出すことになった。 

 今回の鬼怒川の増水と堤防決壊は降水量のみの影響ではなく、鬼怒川が常総市内の堤防決壊場所から20キロ下流で合流している利根川の川幅と水量、そして流れの速度が鬼怒川のそれらより遙かに上回っているために利根川の水が鬼怒川の水を流れにくくする形を取り、鬼怒川の水位を降水量の影響以上に高くしてしまうバックウォーター現象も関係したと、9月12日夜のNHKスペシャル「緊急報告 列島大水害」が伝えていた。

 国土交通省はその合流地点を起点に河川法に基づく計画で、鬼怒川が「10年に1度の大雨に耐えるため」(同省)、堤防の嵩上げや拡幅工事をする予定だったと、9月11日付「asahi.com」記事が伝えている。 

 決壊現場付近は昨年度から用地買収を始めたばかりだったと言う。工事が完成する前に堤防が決壊してしまったのは皮肉なことだが、計画に則って工事を進めていたのだから、止むを得ないことであろう。

 堤防の拡幅工事が単に嵩上げ(堤防を現在以上に高くする)必要上、堤防の底部を広げて、順次頂点まで広げてより頑丈にするための拡幅工事なのか、増水による氾濫だけではなく、堤防の決壊まで想定した拡幅工事なのか、どちらなのだろう。

 だが、2日前のブログに書いたが、国交省は10年前に今回堤防が決壊した茨城県常総市の鬼怒川の現場のすぐ近くで堤防が決壊した場合を想定して浸水の状況をシミュレーションしていたと、9月10日付の「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。 

 そのシミュレーションは今回の被害面積約25平方キロよりも広い37平方キロと想定している。

 より最悪を想定して、そのことに備えることが危機管理の基本ではあるが、鬼怒川の今回の決壊現場近くの堤防の決壊を想定したシミュレーションであった以上、現在進めている鬼怒川堤防の嵩上げと拡幅工事は堤防の決壊の危険性をも想定した、その防災工事だったことになる。

 と言うことは、完成まで決壊の危険性を進行形にした工事だったと言うことができる。

 堤防工事に対するこのような認識は決壊・浸水シミュレーションの内容と共に国交省のみならず、常総市も把握し、共有していなければならなかったはずだ。

 情報は如何に認識しているかによって生かすこともできるし、生かさずにムダにしてしまうことで二次的な被害という形でより多くの住民を巻き込んでしまうこともある。

 国交省も常総市も、今回の堤防決壊に対して自分たちが把握し、共有していなければならない認識と情報を何ら生かすことができず、多くの住民を洪水の中に孤立させることになった。

 逆説するなら、災害から住民を孤立化させないためにも、人命を守るためにも、自分たちが把握していなければならない決壊の危険性に関わる認識と情報を的確に把握して住民との間で情報共有・情報伝達等々に生かしていく責任と義務を負いながら、そのような情報管理を十分に機能させることができなかった。

 安倍晋三は首相動静を見てみると、9月10日午後0時50分鬼怒川堤防決壊後の3時49分開始の関係閣僚会議に出席している。

 安倍晋三「今回の大雨は、これまで経験したことのない異常な状態だ。茨城県では、大規模河川の決壊により、多くの住民が取り残され、甚大な被害が生じており、事態は重大な局面に来ている。国民の命を守るために、一刻の猶予もない。

 政府として取りうる限り、最大限の勢力を動員するよう指示する。警察、消防、自衛隊、海上保安庁などの各救助部隊が一丸となって、人命救助に力を尽くしてほしい」(NHK NEWS WEB

 確かに孤立化を招いてしまった以上、孤立状態にある住民の人命救助は必要である。だが、国交省と常総市が防災上の情報管理を的確に機能させていたなら、孤立化を最小限にとどめることも可能であって、とどめることができたなら、自衛隊や海上保安庁や警察庁や消防庁等のヘリコプターの出動機数も出動人員も抑えることができたろう。

 だが、機能させることができずに情報管理の不備が招いた人災の側面を持つ住民の孤立化を前にして、いわば国などの行政側がつくり出したと言うことができる住民孤立化でありながら、行政のトップに立つ人間が「多くの住民が取り残された」とか、「国民の命を守るために、一刻の猶予もない」、「人命救助」等々の“人命の大切さ”を言う言葉はどこか住民をバカにしているようで虚しく聞こえる。

 安倍晋三は9月12日、常総市を訪れ、堤防決壊個所の対岸から決壊状況などを視察したという。

 この対岸からと言うのが、国交省と常総市の情報管理不備を一切間に置かずに大雨と増水と堤防の決壊だけの災害と把えている状況と似ていて、何か皮肉な一致を見る。

 安倍晋三「被災地の惨状を目の当たりにして、被害の甚大さ改めて認識した。いまだにたくさんの方たちと連絡が取れなくなっており、警察、消防、自衛隊、海上保安庁などを最大限、投入して捜索救助活動に全力を投入したい。

 自治体と協力しながら、生活物資をしっかりと確保し、医療を提供し、住宅環境を確保することに万全を期していく。多くの方々が将来に不安を持っておられるので、生活の再建に向けた支援策に全力で取り組んでいく」(NHK NEWS WEB

 やはり生かすべき情報を生かすことができず、防ぐべき二次被害を防ぐことができなかったと明らかに見える事態を前にすると、そのことを一顧だにしないままの捜索活動も、生活物資確保も、医療提供も、住宅環境確保等々の“人命優先”も、それを懸命に約束すればする程、どことなく国民をバカにしているようで、虚しく聞こえる。

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