多くの童話、その他の物語でネズミの典型的なキャラクターとして描かれている狡猾さそっくりの性格を持った自民党副総裁高村正彦が福岡市で講演し、北朝鮮の「人工衛星」と称する事実上の弾道ミサイル発射予告に関して次のように発言したと2月6日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。
その尤もらしい講釈に尤もらしいことだとコロッと騙される日本国民が多いのだろう。
そのことを期待した発言でもあるだろう。
高村正彦「北朝鮮は最低300発のミサイルを持っていて、日本列島のほぼ全体を射程に入れている。何10発ものミサイルを一緒に撃たれたとき、それをすべて撃ち落とすことは今の技術では到底考えられない。
北朝鮮の指導者に『日本を攻撃したら、間違いなくアメリカから叩き潰される』と思わせることが最大の抑止力だ。極めて限定的な集団的自衛権くらいないと日米同盟がうまくいかず、北朝鮮の脅威からは国を守れない」――
北朝鮮のミサイルの脅威を楯に体よく集団的自衛権を正当化している。
北朝鮮が人口衛星打ち上げを予告したのは2月2日(2016年)。2016年1月28日付の「CNN」記事が北朝鮮北部東倉里(トンチャンリ)の西海衛星発射場監視の米国偵察衛星が同施設へのミサイル関連機材や燃料の搬入及び人の出入りの加速状況を把握、米当局はこのことを公表して、警戒を呼びかけていることを伝えている。
いわば米軍は北朝鮮の人口衛星打ち上げ予告以前から北朝鮮の軍事的動向を逐一把握している。アメリカと北朝鮮間に軍事的緊張が極度に高まった状況下で、もし地上からのミサイル発射の動きを見せたなら、米国は発射迄待つだろうか。
動きを見せた段階で先制攻撃に出て、ミサイル発射を阻止しないだろうか。
地中からの発射で、発射までの動きを偵察できなかったとしても、何10発ものミサイルの発射まで待つだろうか。最初の発射を即座に探知して、その何十倍ものミサイル発射で応えるはずだ。
いくら金正恩がバカでもそのことくらいは知っているから、実験と威しを繰返すしかない。
当然、高村正彦が言うように「何10発ものミサイルを一緒に撃たれたとき、それをすべて撃ち落とすことは今の技術では到底考えられない」という言葉は無効となる。
北朝鮮が「何10発ものミサイル」を一度に発射し終えるまで米軍や日本が待ったときのみ有効な言葉となる。
それを無条件に北朝鮮が「何10発ものミサイル」を一度に発射できるようなことを言う。まさに物語に現れるネズミの狡猾さだ。
一度に発射させる前に北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃で叩けば、北朝鮮が最低300発のミサイル」を持っていたとしても、「300発」という数そのものも、その有効性を失うことになる。
高村は「北朝鮮の指導者に『日本を攻撃したら、間違いなくアメリカから叩き潰される』と思わせることが最大の抑止力だ」と言っているが、既にそのことを承知しているから、今まで日本を攻撃できないでいると見るべきだろう。
北朝鮮が日本を攻撃して占領できる軍事的勝算を成り立たせることができ、なおかつアメリカの反撃がないことを計算できたなら、とっくの昔に日本を攻撃していたろう。それができないことの金正日の代償行為が日本人拉致であるはずだ。
金日成が日本統治の朝鮮のうち北朝鮮の解放者・反日闘争の勝利者として北朝鮮の指導者にのし上がりながらも、朝鮮戦争によって疲弊、経済成長から取り残されながら、かつての敵国日本は逆に朝鮮戦争の特需の濡れ手に粟を元手に高度経済成長へと歩み出し、豊かとなり、先進国入りした。そのことに対する複雑な感情・恨みを金正日は北朝鮮の秘密工作員を自由に日本に上陸、北朝鮮との間を行き来させて多数の日本人を拉致、そののことに気づかない日本政府と日本人に対しての鬱憤晴らしとした、そういった代償行為であったはずだ。
要するに今更「『日本を攻撃したら、間違いなくアメリカから叩き潰される』と思わせる」必要はないと言うことであって、それを今更言うのは単に北朝鮮の脅威をいたずらに煽って国民の危機感を高め、憲法違反の安倍集団的自衛権行使から憲法違反の色彩を限りなく薄めて国民に認知させようとする高村らしい狡猾な企みに過ぎない。
北朝鮮の真の脅威はミサイルではないはずだ。ミサイルは数多く持っていたとしても、戦闘機やその他の兵器は物資不足から旧式となっていて、燃料不足もあり、一般的な兵器の持久戦能力は十分ではないと言われている。
日本も対米戦争でアメリカの物量に遥かに劣り、そのことの対応でアメリカのそれと比較した持久戦能力にしても劣ることになり、緒戦は各戦闘で勝利を収めることができても長続きせず、中盤戦以降はガタガタと崩れていった。
北朝鮮が真に所有している持久戦能力はゲリラ戦であろう。最初の攻撃でミサイルを数発撃ったとしても、反撃されて発射能力を失うことを考えて、直ちにゲリラ戦といった持久戦に出るはず。既に工作員を日本本土に自由に出入りさせたノウハウと能力を保持している。
その時のために既に工作員という形ではなく、戦闘員という形で何人かを密かに潜入させて、市民として生活させている可能性もある。
このことは2011年12月26日の当ブログにも書いたが、日本政府が真に気をつけなければならないのは偵察衛星で目に見える形にすることのできるミサイルの発射よりも、神出鬼没の形を取ることによってより対応が困難となるばかりか、持久戦能力を持たせたならより厄介となるゲリラ戦の可能性であるはずだ。
にも関わらず、高村正彦はミサイル発射予告を機会に北朝鮮の脅威を煽る。集団的自衛権を国民の間に認知させ、定着を図る自分たちの利益のためのこのような宣伝にコロッと騙される日本国民は決して少なくないないからだろう。ゴマンといることを期待しているはずだ。