安倍晋三の消費税10%増税延期条件の後退は自身の発言と自身の経済対策に対する裏切り

2016-02-28 10:36:25 | 政治

 安倍晋三は2017年4月1日の消費税10%増税予定を覆す条件として今まで国会答弁等で「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を挙げてきたが、その条件を後退させる発言を見せ始めたことから、与党内では2017年4月1日の10%への増税を見送るのではないかとの見方が出ていると、「YOMIURI ONLINE」記事が伝えている。    

 1月10日エントリーの当「ブログ」では、中国及び世界的な景気減速、さらに増税をデフレ逆行要因として参院選前に延期を決定して、選挙にも関係してくる増税によるアベノミクスへの影響を修正、その修正を衆院選にまで広げて衆参同日選に走るのではないかといった趣旨のことを書いていたから、安倍晋三が例え発言の軌道修正を微妙に図ったとしても驚かない。

 上記記事は二つの発言を伝えている。最初は2月24日の衆院財務金融委員会。

 安倍晋三「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」

 次は2月26日の衆院総務委員会。
 
 安倍晋三「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」

 「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を待たない状況での増税の延期条件についての発言となっていて、明らかに従来の発言から後退している。

 記事は、〈年初から急激な円高、株安が進み、世界経済が不安定になる中、再増税を既定路線にしたくないとの思いが強まっているようだ。〉と解説している。そして自民党中堅の声を伝えている。

 自民党中堅の声「首相は軌道修正を図っている。再増税を見送る可能性が高まっているのではないか」

 記事は消費税増税延期を予見する根拠のさらなる一つとして安倍晋三が自身の周辺に“半ば悔やむように”語ったとする発言を伝えている。

 安倍晋三「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」

 つまり消費税5%を予定通り2014年4月1日から8%に引き上げたことを後悔する発言となっている。

 だが、この発言は自身の発言と自身の経済対策に対する裏切りとなる。

 2013年10月21日の衆院予算委員会。

 安倍晋三「消費税引き上げを判断いたしましたが、消費税を引き上げるということは、今の経済状況がなければ、これは引き上げることにはつながらなかったと思いますよ。ですから、この我々の政策によって消費税を引き上げることができる状況は生まれてきたということでありまして、しかし、それを(消費税を引き上げることができる状況を)生み出すためにやったわけではありませんよ。(我々の政策によって)結果としてはそうなってきたということではないだろうか、このように思います」――

 要するに「消費税を引き上げることができる状況生み出すために」アベノミクス3本の矢の経済政策を打ってきたわけではない、アベノミクス3本の矢の経済政策を実行した結果、経済が回復し、「消費税を引き上げることができる状況は生まれてきた」のだと消費税増税の経緯を解説しているが、この解説は自身のアベノミクスに対する絶大な信頼に裏打ちされている。

 もし2017年4月1日からの消費税8%から10%への増税を延期するようなら、自身のアベノミクスに絶大な信頼を置いた自らの発言を裏切ることになる。

 勿論、中国の景気減速や世界経済の不透明感といった外的要因がアベノミクスに悪影響を与える可能性を考慮しなければならないが、これらの外的要因を以てしても、「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしており、経済の好循環は確実に生まれています」と国会その他で発言して、アベノミクスに置いている信頼に関して外的要因などモノともしない姿勢を崩していない。

 この信頼は一国のリーダーである以上、先を見通した予定調和でなければならない。先を見通した結果が、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を延期条件としたということであろう。

 このことを裏返すと、アベノミクへの信頼が、それが絶大であるがために、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」に延期条件を置くことになったということであろう。

 言い換えると、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」が発生しない限り、アベノミクスは悪影響を受けることはないと信頼を置く程に惚れ込んでいた。

 絶大な信頼を置き、自己陶酔的に惚れ込んでいたにも関わらず、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を待つまでもなく、実際には現在の外的要因程度でそれが怪しくなってきた。

 ということなら、アベノミクス自体が絶大な信頼を置く程の価値はなかった、アベノミクスを見誤ったことになる。

 つまり安倍晋三の政策自体を見誤ったことになる。 

 安倍晋三は消費税増税対応の経済対策を打っている。左側に画像を挿入しておいたが、安倍政権3年間で60兆円近くになる。2014年4月の消費税率8%への引き上げを決定した2013年1日の閣議の後の記者会見でも、5兆円規模の消費税増税対応の経済対策の策定を発表している。

 安倍政権3年間で公共事業関係費だけで、2014年5.3兆円、2015年5.6兆円、2016年6兆円と17兆円も支出している。

 つまり「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」には揺るぐことになるかもしれないが、それ以外の経済変動には大丈夫だと見た各種経済対策であったはずだし、そういった経済対策――アベノミクスでなければならなかった。

 ところがその基準自体に揺るぎを見せた。どう見ても、消費税10%増税延期条件の後退は自身の発言と自身の経済対策に対する裏切り以外の何ものでもない。

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