2/15衆院予算委緒方林太郎もアベノミクスの成果を誇るパターン化した安倍晋三の答弁を破ることができず

2016-02-20 12:05:36 | Weblog

 今国会も与党からアベノミクスの経済効果について質問が相次いでいる。対して安倍晋のアベノミクスの成果を誇る答弁はパターン化している。と言うことは、そのパターンを破ることができる程に野党の追及は効果がない証明となっている安倍晋三の無敵なまでにパターン化した答弁と言うことになる。

 質問の目先を変えても、効果を出すことができない。民主党議員で東京大学法学部中退の緒方林太郎43歳の2016年2月15日衆議院予算委の追及にしても同じで、アベノミクスの成果を問う質問と答弁の内、肝心な発言に限って拾ってみる。

 緒方林太郎は先ず安倍政権での2015年7月の株価ピーク時を100とした場合の2016年2月12日は72.6まで下がっている株価下落の要因を尋ねた。

 安倍晋三は石油価格の低下、米国の政策金利を上げたこと等の海外要因を挙げた上で、次のよう答弁している。

 安倍晋三「しかしながら我が国の実体経済を見れば、もはやデフレではないという状況を作り出す中で企業の収益は過去最高、雇用者数は110万人以上増加するなど、経済のファンダメンタルズは確かなものと確認しています。こうしたファクトをしっかりと見て頂ければ、日々の株価の状況は一喜一憂すべきではない」

 緒方林太郎は株価下落は海外要因だけなのか、2015年7月から少なくとも7カ月は続いているトレンドで、これがファクトだと認めて貰いたいと迫った。

 安倍晋三「アベノミクスの3本の矢の政策ににより、もはやデフレではないとう状況を作り出す中、政権発足以来名目GDPは27兆円増えたわけで、これがファクトだ。企業の収益は過去最高となって、倒産件数は約3割減少した。

 失業者も53万人減っている。政労使会議などを通じて好調な収益を雇用・所得環境の改善に振り向けることによって、就業者数は110万人以上増加し、有効求人倍率は24年振りの高水準となっている。

 賃上げ率は2年連続で大きな伸び率となり、経済の好循環を生み出している」

 緒方林太郎は外的要因に影響されない経済を作っていくことがアベノミクスの3本目の矢ではなかったのかとさらに尋ねた。

 安倍晋三「殆どの人が日本が外的要因に関わらず日本の経済だけでデフレ脱却ができると考えている人はいない。現在株価が下がっていて、円が高くなっているのは多くのエコノミストがイランとサウジアラビアの断交、北朝鮮のミサイル発射、中国の景気に不安が出ていること、そのために円が買われて、その影響で株が下がっている。そういう分析もしっかりとしなければならない。

 GDPが発表されたが、2015年暦年に於いて(1年間を通して)名目は2.5(2015年1年間を通したGDPの伸び率は実質でプラス0.4%、名目ではプラス2.5%)となっている。もしかしたらこういう数字を(民主党は)聞きたくないかもしれない。こういうファクトもしっかりと見て頂きたい」

 緒方林太郎はあくまでも2015年7月の株価ピーク時を100とした場合の2016年2月12日は72.6となった株価の下落傾向に拘り、この点からアベノミクス経済効果の無効性を炙り出そうとし、「総理自身が言っているように政治は結果なんですよ、ファクトが大事なんですよ。今日本の経済が下向きのドライブがかかっていることを素直に認めて、政策を練り直すべきではないか」と迫った。

 安倍晋三「私が総裁になった時から、株式市場の変化が出てきたのは事実で、ファクトだと思う。当時は8千円を割っていたわけですから、その際我々は量的緩和をしっかりとやっていくと言うことを出しました。これは国際社会が認めているファクトだと思う。

 安倍政権が出きてから(株価)が8千円からスタートした。今は倍ぐらいになっているのが事実なのは間違いない。一時1万3千円程度に下がった時、この国会で随分騒がれたが、『皆さん落ち着いてください』と申し上げた。

 その中で国際経済に不安定要因が出てこれば、変化は出てくる。変化のためにアベノミクスは失敗していると批判するが、一番大切なのはファクトは何か。実体経済の中で一番大切なファクトは何だと思います。

 雇用なんです。これが一番大切なんです。我々は雇用を生み出している。しかし残念ながら、みなさんの時代に倒産件数が多かった。失業者の数を53万人減らした。生活保護を受けている世帯をみなさんの時よりも6万世帯減らしているのですよ。

 それがファクトなんです。それが大切なファクトなんです。そうしたものから目をそらしてはいけない。世界的要因をすべてせいにしてはならない。昨年の暦年に於いても(1年間を通して)名目(GDP )はプラス2.5だったことはしっかりと見て頂きたい」

 緒方林太郎はここで実質賃金の減少と非正雇用の増加に触れたから、質問側の質問のパターンに入ったように見えたが、そのパターンをカード(切り札)にするわけではなく、安倍晋三が挙げた指標にちょっこっとケチをつけた程度で、株価の下落によって資産効果が減少したのではないか、逆資産効果が生じているのではないか、そのことを認めるのかと問い質した。

 2014年11月4日の参院予算委員会でも桜井充民主党議員から「総理は前原さんとの衆議院での質疑で、賃金が上がるよりも株価が上がった方が経済に対する影響は大きいんだと答弁しているが、本当にそう思っているのか」と問われて、「資産効果としてはいわば賃金が上がった場合は支出については当然、慎重になるが、株価が上がった場合にはすぐに消費に回る傾向が、分析の結果、高いというのが事実であります」と答弁している。

 さらに2週間後の安倍晋三は2014年11月18日、言論圧力ではないかと批判を受けた発言を行ったあのテレビ番組TBSの「NEWS23」に出演して、「しっかりとマクロで経済を成長させ、株価が上がっていくということはですね、これは間違いなく国民生活にとってプラスになっています。資産効果によってですね、消費が喚起されるのはこれは統計学的に極めて重視されていくわけです」と発言している。
 
 資産効果とは「株や土地の価格、貴金属の価格等の資産価格が上昇することで消費・投資などが活性化する効果」のことを言う。要するに安倍晋三は「賃金が上がるよりも株価が上がった方が消費が活性化して経済効果がある」と言ったのである。

 だが、株価上昇の恩恵をより多く受けるのは国民全体から見たら一部の富裕層や所得に余裕のある上流階級である。当然、活発な消費はそういった層に限られることになって、このことに対応してこういった経済効果を生み出す資産効果自体にしても多くが上流階級に限られることになって、資産効果に経済効果を期待すること自体に既に格差の構造を孕んでいることになる。

 このことは安倍政権を通して個人消費が低迷している事実が証明する。個人消費活動が富裕層等の所得余裕層に偏っていて、絶対的多数の一般生活者はギリギリの生活を強いられていることの実態を受けた個人消費の低迷であるはずだ。

 緒方林太郎は安倍晋三の資産効果に関わる発言を承知して質問したのだろうか。

 安倍晋三「私が申し上げた資産効果は株価に顕著に出てくる。3本の矢の効果が顕著に出てきたことは緒方委員も認めるだろうと思う。これを否定するんであれば、我々の政策を全く否定することになって、また3年前に戻したいと言うことかもしれない。

 そうすればまた失業や倒産が増えていくことになると思うが、そこで大切なことは確かに株価の下落はいい影響を及ぼさないのは当然のことで、大切なことはしっかりと経済のファンダメンタルズを見る必要がある。

 今の経済のファンダメンタルズは企業は最高の収益を上げている。これを注目していかなければならない。海外の要因は多くの人が認めるところだが、大切なことは今の状況で一喜一憂すべきではない」

 安倍晋三は逆資産効果について一言も答えていない。緒方林太郎は株価の下落傾向を受けた逆資産効果によって消費・投資にネガティブな影響が出てくるが、このことを認めて頂きたいと、あくまでもアベノミクスの無効性を株価下落の観点から問い質しす戦術に出た。資産効果を受けた経済効果が本来的に孕むことになる格差の構造の観点から追及はしなかった。

 安倍晋三「確かに2015年と比べれば下がっているが、皆さんが政権を取っているときに比べれば、世の中、市場は民主党政権に任せていいのか、安倍政権に任せていいのかと言えば、これは明らかではないか。ここのところはみなさんも謙虚に認めなければならない。

 皆さんが政権を取っている時と比べると海外からの投資は10倍に増えているんですよ、10倍に。そういう事実は皆さんにも見て頂きたいと思う」

 そして、「皆さんが政権を取っていた以上、政権を取っていた時の結果は批判されると言う覚悟を持った方がいい」と好きなようにあしらわれるが、緒方林太郎は「株価下落は株で運用している年金資産の棄損に影響するが、そのことを認めるか」と、既に効果がないことは分かっていなければならないのに、株の下落からのアベノミクス効果の追及に拘った。

 安倍晋三「株価に於いても今委員が調べ上げた株価は安倍政権の中の株価であって、最初の株価は安倍政権の成果ということはお認めになると思いますよ。それが凄い成果が出たところから今下がったからと言って、今でもみなさんの時よりもいいんですよ。そのことを先ず申し上げておきたいと思います。

 普通は皆さんの時の成果と私たちの成果を見比べるもんですが、安倍政権の中の成果を比べるというのはちょっと苦笑を禁じ得ない」

 民主党政権時の成果と安倍政権下の成果で唯一比較できるのは格差の拡大であろう。

 株価を上げた、為替を円安に持っていった、そのため企業収益は過去最高となった、あるいは倒産件数を約3割減らした、失業者の数を53万人減らした、生活保護受給世帯を6万世帯減らした、賃上げ率は2年連続で大きな伸び率となった、雇用者数は110万人以上増加させた、株は下がっているが、経済のファンダメンタルズはしっかりしていると、パターンとなっているアベノミクスの成果を繰返し誇っているが、緒方林太郎は安倍晋三に誇らすまま、パターンを持ち出すに任せるままで、何ら有効な手を打つことができない。

 アベノミクスの成果をいつものパターンでいくら繰返し誇ろうとも、こういったプラスの指標に反して実質賃金は殆ど横這いで、個人消費も低迷したままの状況で推移しているということはいくら仕事を得て、賃金を手にすることができたり、元々働いていて少し賃金が増えても、個人消費活動のレースに参加できない生活者が大多数を占めていることの証明であって、株価上昇と円安と過去最高の企業収益等のアベノミクスの最大の成果状況と個人消費活動のレースに参加できない生活者が大多数存在する状況は、アベノミクスが格差を構造としていることの何よりの証拠であろう。

 「確かにアベノミクスは景気を良くした。だが民主党の時はこれ程には格差が拡大していなかった」と両政権の比較をなぜしないのだろうか。

 これまで野党がアベノミクスの成果を問う質問した場合、安倍晋三があれやこれやとパターンとなっている成果を例の如く持ち出したなら、実質賃金が増えないこと、個人消費が伸びないことを上げて追及すると、安倍晋三は消費税増税による影響を除いた指標である実質総雇用者所得を持ち出して、それが増えたと言って逃げる。

 だが、実質総雇用者所得とはおおまかに言って毎月の現金給与総額に全雇用者数を掛けた金額で、雇用者の中身は上は大企業の役員クラスから、下は非正規の最低限の給与で働いている労働者もいる。

 実質総雇用者所得が増えた経済状況にありながら、このことに反して実質賃金が横這いで個人消費が伸びない事態に見舞われているということも、賃金が上は増え、下が増えないという格差の構造を内包している何よりの証拠としかならない。

 アベノミクスの危険性はそれが格差を構造としている以上、景気が良くなれば良くなる程、格差を拡大していくと言うことの危険性である。

 今までの追及のパターンではアベノミクス成果を誇るパターンとなっている答弁を破ることができないから、緒方林太郎は追及の手を変えて、株価の下落を持ち出したのだろうが、緒方林太郎には安倍晋三のパターンは固かったようだ。

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