安倍晋三のCLSAジャパンフォーラム講演、同一労働・同一賃金はアベノミクスに逆噴射ロケットの取り付け

2016-02-26 10:46:13 | 政治

 安倍晋三が2月25日(2016年)、「CLSAジャパンフォーラム2016」(機関投資家向け説明会)に出席、講演している。 

 内外の機関投資家に日本への投資を呼びかける集まりだから大風呂敷になっても仕方がないという向きもあるかもしれないが、国会でアベノミクスの成果を誇示しているときと同じ喋りなのだから、国会答弁の大風呂敷を引きずった講演での大風呂敷ということになって、投資を呼びかける集まりだから特別に大風呂敷ということではないようだ。

 どこで喋ろうとも、都合のいい統計のみを出し、都合の悪い統計は出さないマジシャン振りに何ら変わりはない。

 冒頭、中国を始めとする新興国の景気減速への懸念等を要因とした世界経済の不透明感に触れているが、「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしており、経済の好循環は確実に生まれています」と、世界経済の不透明感に影響されないアベノミクスの力強さを確約してみせた。

 日本経済は小舟を脱して、親船に成長しているとの宣言でもある。少しぐらいの定員オーバーでも、傾くことはあるまい。

 経済成長率・物価上昇率・失業率・国際収支等の一国の経済状態を判断するための基礎的条件である「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」――。

 だが、内閣府が2016年2月15日発表の「2015年10─12月期国民所得統計1次速報」によると、実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.4%、年率換算でマイナス1.4%の2四半期ぶりのマイナス成長となっている。これは市場の予測を超える景気減速だとマスコミは伝えている。

 2月15日に内閣府がGDP減速の統計を発表し、安倍晋三が2月25日(2016年)の講演で、「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」と言う。

 このGDPマイナスの要因は個人消費の大幅な落ち込みだと言う。世界経済の不透明感に影響されないアベノミクスの力強さを確約していながら、あるいは「日本企業の収益は、史上最高の水準に達しています。その企業収益は、着実に雇用や賃金に回っています。就業者数は110万人以上増え、賃上げ率は、2年連続で大幅に上昇しました。失業者は60万人程度減り、失業率は3.3%と18年ぶりの低水準、有効求人倍率は24年ぶりの高水準であり、タイトな労働市場が続いています」と国会答弁や記者会見等と同じことを言って日本経済のファンダメンタルズの堅牢性を保証しながら、これらのアベノミクス成果が個人消費には反映されない。

 個人消費に反映されることのない堅牢な経済のファンダメンタルズとは何を意味するのだろうか。企業収益も反映されない。110万人増の就業者数も反映されない。賃上げも反映されない。失業者減も反映されない。高水準な有効求人倍率も反映されない。

 これがアベノミクスだと言うしかない。

 人件費にしても、製品単価にしても、エネルギーにしても、「より安く」追求で新興国に生産地を展開するデフレ型経済成長には限界があり、本籍国での「より良い」に挑戦するイノベーション型経済成長への転換の必要性を説いているが、イノベーション(技術革新)は労働生産性に関係していく。労働生産性に関係しないイノベーションは経済成長への足がかりとはなり得ない。

 《日本の生産性の動向2014年版 》日本生産性本部)に次のような記述がある。 

 〈2013年(暦年ベース)の日本の労働生産性は73、270ドル、OECD加盟34力国の中では第22位。順位は前年と変わらず、主要先進7カ国では1994年から20年連続で最下位となっている。〉

 製造業等の現場ではイノベーションによる機械化によって労働生産性を上げているだろうが、全体で見ると、〈主要先進7カ国では1994年から20年連続で最下位となっている。〉

 いわばイノベーションが追いつかない状況にある。にも関わらず、「日本は21世紀型(=イノベーション型)の経済ルールを広げるため、リーダーシップを発揮してまいります」と、日本でできていないことを世界でその教師になろうとしている。

 大風呂敷と解釈しなければ、日本の労働生産性に関わる情報に無知としか言いようがなくなる。

 また、「これまで、ダボス会議など海外の様々な場において『人口が減少する日本に未来はないのではないか』との質問を受けました。

 皆さんの御懸念は、私も、よく理解しています。

 しかしながら、高い教育を受け、多くのポテンシャルを秘めた女性や、元気で意欲にあふれ、豊かな経験と知恵を持っている高齢者が、日本には、たくさんいます」

 だから、少子高齢化社会となったとしても、日本の経済は大丈夫だと保証した。

 2015年の男子の大学進学率は55.4%、女子は47.4%。それ程の差はない。高い教育を受けているということは労働生産性につながっていかなければならない。如何に効率良く働くか、そのために如何に想像力を発揮していくか、高い教育を労働の機能化に役立てていかなければならない。

 だが、日本の労働生産性が低いということは日本の高い教育が労働生産性につなげるべきポテンシャル(潜在的な能力)となっていないことを意味することになる。

 と言うことは、従来の教育改革が改革の役目を果たしていなかった。当然、今騒いでいる教育改革も、その実効性の保証は確実視できないことになる。

 少なくとも安倍晋三が講演で言っていることと日本が現在置かれている社会の実情とはかけ離れているということだけは間違いない。

 だから、大風呂敷となる。

 安倍晋三は「正規雇用と非正規雇用の壁を取り払います」と言って、同一労働・同一賃金の導入を確約した。

 安倍晋三は自分が何を意味することを口にしているのか気づいていないらしい。格差が一国の経済や世界の経済を活性化させていく原動力であり、そのように構造化されているのであって、安倍晋三はアベノミクスに気づかないままにブレーキを掛けている。

 〈安倍政権下で進んだ株高で、富裕層が増えている。預貯金や株式、投資信託などの金融資産を1億円以上持っている「富裕層世帯」は、2013年に初めて100万世帯を超えた。一方で、資産を持たない「ゼロ世帯」も3割と高止まりしている。〉と2014年11月28日付の「asahi.com」が伝えていた。

 この「100万世帯」は50世帯に1世帯の割合だそうだ。

 50世帯のうちの1世帯がいくら1億円以上の資産を持っていても、残り49世帯の消費活動が活発化しないことには国全体の個人消費額は伸びない。これが日本の経済の現状であり、この現状は格差の現状でもある。

 アメリカでは2009~2010年の金融危機後の時代、家計を平均した実質所得が2%しか伸びていないのに対して上位1%の実質所得は12%増え、1%の「勝ち組」が手に入れた所得の割合は全体の93%に達していると、「東洋経済オンライン」(2013年06月12日)が伝えている。

 この格差が世界最強のアメリカの国力をつくり出している。

 富を平等に配分し、平均化したら、より平等な社会は実現できても、その平等に伴って企業の経営力は弱まり、弱まれば、国力は殺がれていく。安倍晋三はその覚悟までして同一労働・同一賃金の導入を唱えているのだろうか。

 そんなことはあるまい。何しろアベノミクスは格差ミクスを本質的な構造としているのだから、格差こそがアベノミクスの推進力であって、同一労働・同一賃金の導入はアベノミクスに対して逆噴射ロケットを取り付けるようなものだからである。

 安倍晋三がアベノミクスは格差ミクスだと自覚しない限り、何を言っても大風呂敷になりかねない。

 
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