安倍晋三の不都合な事実の国民に対する説明責任回避の情報操作・隠蔽の2例 日ロ問題と拉致問題

2017-09-15 11:59:13 | 政治

 安倍晋三が20017年9月6日と7日、ウラジオストクを訪問、7日午前、「東方経済フォーラム」出席の韓国の文在寅大統領と会談。午後に「東方経済フォーラム」に出席、その後プーチンとの首脳会談。

 安倍晋三は9月7日の首脳会談後、一般的には行われる質疑を伴う内外記者会見は行わなかった模様だ。幾つかのマスコミが「会談後の共同記者発表で」と、共同発表が行われたことは伝えている。その発言要旨が普段は外務省サイトに公表されるのだが、それも公表されず、9月15日の今日に至っても前者のテキストと共に動画が官邸サイトに載せられていないのは当然ということになるが、外務省サイトに共同記者発表の要旨も載せられていない。

 但し「外務省」サイトに首脳会談で取り上げられた議題の要旨が記載されている。そこに共同記者発表の写真が載っているのだが、共同記者発表の写真を参考までにここに載せておいた。

 日ロ関係に於ける似たような例は2017年4月27日のモスクワで行われたプーチンとの首脳会談の際にも見ることができる。首脳会談後共同記者会見を行ったが、いつもは2、3日後に公開される首相官邸サイトにその動画とテキストは今回に限ってどちらも載らずじまいとなっている。

 2016年12月15日山口での日ロ首脳会談と12月16日東京での日ロ首脳会談後の12月16日日ロ共同記者会見は動画とテキスト共に公開されている。公開は国民に対する説明責任の部類に属す。

 そうである以上、2017年4月27日の日ロ首脳会談に関しても、今回のウラジオストクでの日ロ首脳会談に関しても、安倍晋三は国民に対する説明責任を満足に果たさず、その責任を回避したことになる。

 なぜ回避したのか。今回でプーチンとの首脳会談は19回を数えることになるのだそうだが、19回と数える程には共同経済活動に関しては議論が前に進んでいるが、北方四島の帰属を決めて日ロ平和条約を締結する議論に関しては何ら進展を見ないから、そのことの批判を避けるためだとは誰の目にも明らかであろう。

 と言うことは、安倍晋三にとっては不都合な事実の国民に対する説明責任回避の情報操作・隠蔽に当たる。もしそうでないなら、ウラジオストクでのプーチンとの首脳会談後に記者会見を開くべきだし、共同記者発表を行ったなら、そのテキストなり動画なりを官邸サイトに載せるべきだったろう。

 ネットで日ロ共同記者発表の動画を探したところ、「共同記者会見」という名称で見つけることができて文字に起こしてみたが、共同記者発表の間違いではないかと思う。発言から、日ロ平和条約締結議論が何ら進展していないことが分かる。文飾は当方。

 「日テレNEWS24」(2017年9月7日 20:22)   

 安倍晋三「1年前の約束通り、美しいウラジオストクを再び訪れることができました。ロシア側の温かいお迎えに心から感謝します。

 本日の会談では重大且つ差し迫っている脅威となっている北朝鮮についてプーチン大統領と深く意見交換を行い、そして北朝鮮が強行した核実験が朝鮮半島及び地域の平和と安定に対する深刻な脅威であり、グローバルな国際間関係に対する重大な挑戦となるという認識で完全に一致を致しました。

 弾道ミサイルの発射や最大の核実験を行った北朝鮮を最も強い言葉で非難します。北朝鮮がこのような道を進んでいけば、北朝鮮に明るい未来はない、このことを北朝鮮に分からせて、こうした政策を変えさせる必要があります。

 日ロ両国は国連安保理も含め、今後共緊密に連携、緊密に協力していくことで一致致しました。

 この1年間に日ロ関係は大きく進展しました。大統領と私が進める8項目の協力プランは今回50件を超える成果を生み出しました。ウラジオストクをアジア太平洋のゲートウエイとする開発の青写真。日ロ経済医療分野のでの協力、プロジェクトチームのための10億ドルの投資枠組みの創設、改正租税条約も署名されました。

 8項目の協力プランが共に利益を享受する形として結実するよう、私達の努力は続きます。4島を巡っても、昨年12月の長門の会談以降、様々な進展がありました。

 両国民が活発に行き来しながら、4島で互恵的に協力できるようにしたい、元島民の方々がふるさとを訪問し、墓参りができるようようにしたい、このような未来を心から願う。70年以上動かなかった過去を乗り超えられる。

 この新しいアプローチが現実のものとなります。私達が協議を進めている4島に於ける経済共同活動、昨年12月の長門での合意に基づき、今回早期に取り組むプロジェクトとして5件の候補を特定しました。

 海産物の共同増養殖プロジェクトと温室野菜栽培補助、島の特性に応じたツアーの開発、風力発電の導入 、ゴミの減容対策、これら5件のプロジェクトを早急に具体化します。

 人の移動の枠組みの検討も加速させます。その他のプロジェクトに就いても、引き続き話し合っていきます。またもし貝殻島灯台の改修が実施されれば、補助を行うでしょう(?)

 プーチン大統領の指示によりアクセスが閉ざされていた墓地への訪問が8月に実施されました。訪問団長は120%満足とおっしゃっています。歴史上初めての航空機を利用した墓参も9月下旬を目途に実施します。

 元島民の方々に代わって感謝の気持ちを伝えます。(プーチンの方に顔を向けて)ウラジミール。ありがとう。今後も人道の観点から改善策に取り組んでいきましょう。

 国民交流を進めていくことは重要です。来年はロシアに於ける日本年、日本に於けるロシア年です。来年5月26日、伝統あるボリショイ劇場で開会式を開催します。2018年を両国国民の信頼と友好の年にしようではありませんか。

 日ロ関係にとって最も重要なのは平和条約の締結。プーチン大統領は訪日の際、こう述べました。『平和条約を私達の手で結ぶ』との決意を新たにしました。

 ウラジミールとは11月のAPECの際にも改めて会談することを約束しました。私達はあらゆる機会を捉えて、会談を重ねていきたいと思います。

 「この1年間に日ロ関係は大きく進展しました」と言い、「4島を巡っても、昨年12月の長門の会談以降、様々な進展がありました」と言っているが、経済協力に関しての「進展」のみで占められているに過ぎない。

 そして最後の最後になって平和条約の話が出てくる。「日ロ関係にとって最も重要なのは平和条約の締結。プーチン大統領は訪日の際、こう述べました。『平和条約を私達の手で結ぶ』との決意を新たにしました」、たったこれだけで、尻切れトンボのように切り上げている。 

 「平和条約を私達の手で結ぼう」と決意新たに確認し合うだけでは首脳会談を更に1回積み重ねる意味は出てこない不都合な事実であるはずだ。もし何らかの進展が目に見える具体的な形で成果とすることができていたなら、その成果を決意の結実として取り上げていただろう。

 取り上げていないということは成果とできる進展が何もなかったことを意味する。だから、経済協力の話題が発言の殆どを占めることになって、平和条約に関しては触れない訳にはいかないから、安倍晋三にとっては不都合な事実ではあるが、最後の最後に申し訳程度に発言することになったということなのだろう。

 プーチンのこれまでの発言やロシア側の北方四島に関わる言動や政策を総合すると、安倍晋三が、当たり前のことだが、北方四島を日本に返還する形、そのような帰属を決めた上での平和条約の締結を考えているのに対してプーチンは北方四島に於けるロシアの主権を維持したままでの同床異夢の平和条約の締結を描いているに過ぎない。

 当然、安倍晋三とプーチンが「平和条約を私達の手で結ぼう」と何度決意を新たにしようとも、同床異夢となっている以上、日本側にとって何ら意味を成さない。

 同床異夢だからこそ、ロシア側は北方四島の開発にせっせと精を出し、軍備増強にせっせと励んでいる。目に見えない形で「北方四島はロシアの領土だぞ」と書いた旗を立てているようなものである。

 いずれにしても19回目となるプーチンとの首脳会談でありながら、北方四島返還問題で見るべき議論がなされなかった不都合な事実を明らかにした場合の批判やら咎めやら、とやかく言われるのを忌避したい思いがあったからこそ、記者からの質問が出る内外共同記者会見を開かず、共同記者発表を行いながら、その発言を首相官邸サイトに載せなかったこと以外の理由は誰も考えることはできないはずだ。

 自身に都合の良い事実に関しては国会答弁や記者会見で「ファクトこそが重要だ、全てだ」と勇ましく宣伝はするが、都合の良い事実だけを選んで言うことも一種の情報操作だが、不都合な事実は明らかにしないようにすることは情報操作であると同時に情報隠蔽に当たる。

 結果として不都合な事実の情報操作・隠蔽は国民に対する説明責任の回避の形を取ることになる。

 一国の首相としての責任は見当たらない。

 この安倍晋三にとっての不都合な事実の国民に対する説明責任回避の情報操作・隠蔽は拉致問題に関しても発揮されている。

 9月12日(2017年)、スイスで開かれていた北東アジアの安全保障に関する国際会議に出席していた外務省アジア大洋州局の鯰(なまず)博行参事官が同じく出席していた北朝鮮外務省北米局のチェ・ガンイル副局長と短時間意見交換を行った際、核実験など北朝鮮の一連の挑発行動に厳重に抗議すると共に核やミサイル開発を禁じた国連安保理決議を順守することと、北朝鮮が拉致被害者を含む日本人行方不明者の全面的な調査を行うと約束したストックホルム合意を履行し、一日も早く全ての拉致被害者を帰国させるよう求めたことを発表したと、2017年9月13日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。        

 この発表は日本側が求めたことのみで、北朝鮮側の反応は一切発表していない。拉致から40年経過しているということで、被害者は50代、60代となり、被害者の家族の中には年老いて亡くなっている親もいる。9月13日には拉致被害者家族会や支援団体「救う会」、超党派の「拉致議連」の訪問団が米国のワシントンでシンポジウムを開き、トランプ政権や米議会に対し、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定するよう訴えてもいる。

 安倍晋三としては北朝鮮のミサイル開発・核開発に対して圧力を加える政策だけではなく、拉致問題の解決に向けて取り組んでいる姿勢見せなければならない。

 だが、北朝鮮側の反応を一切伝えないと言うことは日本にとって北朝鮮側から不都合な事実しか伝えられなかったことの証明としかならない。逆に都合の良い事実を伝えられていたなら、安倍晋三自身が記者会見を開いて、大体的に発表しているはずだ。

 このことも不都合な事実は国民には伝えない情報操作・隠蔽に相当し、国民に対する説明責任の回避そのものとなる。

 一国の首相が不都合な事実は情報操作し、隠蔽して国民に対する説明責任を回避する。このような不誠実・不正直が罷り通っている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする