安倍晋三の「リーマンショック級の事態がない限り消費税増税」はアベノミクス機能不全隠蔽のオオカミ少年

2017-09-28 12:28:12 | 政治

次期衆議院議員選挙 争点とすべき


      2つのこと



  森友・加計政治関与疑惑にまみれた

     指導者を続投させるべきか否か

  成長実感ゼロのアベノミクスを

     効果があると見せかける幻想に

      今後も付き合うべきか否か

 「オオカミ少年」――ある少年がオオカミが来もしないのに「オオカミが来た、オオカミが来た」と叫んで、襲ってきたオオカミから逃げる振りをして村人がいる方向に走り出す。村人はオオカミが襲ってきたと信じ込んで我先に逃げ惑う。少年は自分のイタズラが成功し、見込み通りにつくり出すことができた村人の慌てぶりを面白がる。

 その成功に味をしめて、何度も「オオカミが来た、オオカミが来た」と叫んで、村人の方向に走り出す。暫くは成功続きで少年を喜ばせていたが、本当にオオカミが襲ってきて村人の方向に「オオカミが来た、オオカミが来た」と叫んで必死になって逃げるが、村人は少年にとって肝心なときに「どうせまたイタズラなのだろう」と信用せず、農作業を続けた結果、少年はオオカミに食べられてしまったとさ・・・・・・。

 少々脚色はあるが、「ウソばかりついていると、本当のことを言ったとしても、同じウソと受け取られて誰からも信用されなくなる」という教訓なのだろう。

 安倍晋三が9月26日夜、〈民放の番組で、再来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて、平成20年の世界的な金融危機、リーマンショックのような事態が起きないかぎり、実行する考えを示しました。〉と2017年9月27日付NHK NEWS WEB    

 安倍晋三「ことし4月から6月までの四半期も、名目GDP=国内総生産が3%成長した。消費も穏やかに回復している。現在の状況からすると、引き上げを行う経済状況を生み出すことができるのではないかと考えている。

 当然、引き上げなければ、私たちが進めていく政策を実現する予算は確保できない。リーマンショック級の事態が起こらないかぎり、基本的には引き上げていきたい」

 要するに現在の経済情勢から言うと、2019年10月の消費税8%から10%への増税は可能な状況にあるが、その間、「リーマンショック級の事態」が出来した場合は増税は延期することになるとの趣旨となる。

 同じニュースを伝えている同日付「時事ドットコム」記事は趣旨は同じだが、発言自体が微妙に異なる。

 この記事では「民放」は「テレビ東京」と明かしている。 

 安倍晋三「経済状況如何に関わらず引き上げるということではない。リーマン・ショック級の緊縮状況が起きれば判断しなければならない」

 2019年10月は絶対的増税ではなく、経済情勢に対応させることになる相対的増税だと増税条件に幅を持たせている。

 安倍晋三が「リーマンショック級の事態が発生しない限り増税する」と約束したのは今回が初めてではない。「リーマンショック級の事態」に時に「大震災級」を挙げて、大自然災害をプラスして増税延期の条件としていた。

 但し2014年4月1日に5%から8%へと消費税増税を決定通りに実施、次の2017年4月1日に予定されていた8%から10%への増税の最初の延期は「リーマンショック級の事態が発生しない限り増税」と口にしていたわけではないから、その約束を破ったということには当たらない。


 「安倍晋三解散記者会見」首相官邸/2014年11月21日)   

 安倍晋三「本日、衆議院を解散いたしました。この解散は、『アベノミクス解散』であります。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります。連日、野党は、アベノミクスは失敗した、批判ばかりを繰り返しています。私は、今回の選挙戦を通じて、私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢はあるのか、国民の皆様に伺いたいと思います。

 2年前を思い出していただきたいと思います。リーマン・ショックから4年もたち、世界経済は立ち直ろうとしていたにもかかわらず、日本だけはデフレに苦しみ、3四半期連続のマイナス成長となっていました。
  ・・・・・・・・・・・・

 (行き過ぎた円高や産業空洞化等の)日本全体を覆っていた強い危機感が、私たちの政権交代へとつながりました。強い経済を取り戻せ。これこそが総選挙で示された国民の皆様の声であると信じ、三本の矢の政策を打ち続け、経済最優先で政権運営に当たってまいりました。

 その結果、雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は10%アップしました。9月末の時点で既に半分以上の学生が内定をもらっている。15年ぶりの出来事です。今年の春は、過去15年間で最高の賃上げが実現しました。企業がしっかりと収益を上げれば、雇用を増やし、賃金を上げることができる。その好循環を回していく。これがアベノミクスなのです。

 アベノミクスの成功を確かなものとするために、私は、消費税10%への引上げを18カ月延期する決断をいたしました。

 消費税引上げを延期する以上、社会保障を充実させるスケジュールも見直しが必要です。しかし、子育て世代の皆さんを応援する、その決意は揺らぎません。子ども・子育て支援新制度は来年4月から予定どおり実施します。

 2年間で20万人、5年間で40万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童を無くしてまいります。更に『小1の壁』を突き破り、学童保育についても待機児童ゼロを実現していく。そのスケジュールは全く変わりません。女性の輝く社会を実現する。この安倍内閣が掲げた旗はこれからも高く掲げてまいります」

 2014年4月1日の5%から8%消費税増税以降、駆け込み需要の反動で景気は落ち込んだ。だが、この落ち込みは織り込み済みで、そのための景気対策は打っていたはずだし、打ったことを安倍晋三自身も2014年6月5日午後(日本時間同日夜)のベルギーで開催G7(先進7カ国)首脳会議の閉幕後の記者会見で述べている。

 その成果でもあるのだろう、2012年12月26日第2次安部政権発足から2年足らずのうちに「雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は10%アップ」、「過去15年間で最高の賃上げが実現」と景気の順調な回復を誇らかに謳っていて、そうであるならアベノミクス3本の矢の効能あらたかということであって、しかも2017年4月1日10%への増税予定まで余すところ2年4カ月という時間がありながら、「消費税10%への引上げを18カ月延期する」というのはアベノミクス経済の実態が誇らかに謳っている程の中身を備えていないからであろう。

 要するに円安・株高で大企業や高額所得者は利益を上げていたが、その利益が一般国民にまで回っていかないために、2年先という時間があるにも関わらず、その改善の見通しがつかない、あるいは改善の自信がないために先んじて増税延期を打ち出した。

 安倍晋三自身、既にアベノミクスの欠陥に気づいていたことになる。格差ミクスであるということの欠陥、カネ持ちミクスであるということの欠陥に。

 ベルギー・ブリュッセルでの「記者会見」発言を取り上げてみる。文飾は当方。 

 安倍晋三「消費増税は、国の信認を維持し、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくため、17年ぶりの政治の決断でありました。

  同時に、(消費税増税駆け込み需要の)反動減を乗り越えるため、万全の手を打ってきた訳であり まして、5.5兆円規模の経済対策を発動中であります。成長戦略も しっかりと打 ち出していきます。

 IMFからも、日本経済に関し、消 費税率の影響をうまく乗り越えつつある、反動減により4~6月期に経済は縮小しますが、本年の後半には、雇用増加や賃金上昇に支えられて、経 済は回復する見込み、との分析がなされていることも承知しています。

 7月から年度後半にかけて、すみやかに成長軌道に戻していきたいと思います。安倍内閣は日本経済の再生を必ず成し遂げていきます」

 「万全の手を打ってきた」にも関わらず、増税を延期する。自身の景気対策の失敗を告げているに過ぎない。

 景気対策がアベノミクス政策に基づいている以上、アベノミクス失敗宣言となる。 

 知る限りでは衆院解散記者会見から2カ月半後の2015年2月4日の衆院予算委で「再来年に消費税を引き上げ、これはリーマン・ショックのような事情の変更があったら別でございますが」と、「リーマン・ショック」を増税延期の条件として持ち出している。

 そしてこの衆院予算委から7カ月と20日後の記者会見でも同じことを述べている。文飾は当方。

 2015年9月24日自民党両院議員総会後の自民党総裁としての「記者会見」  

 記者「経済最優先で引き続き取り組まれるということだが、平成29年(2017年)4月に消費税の増税を実施することに変わりないか。増税時の負担軽減策をめぐる与党協議が進んでいるが、党総裁としてこの調整にリーダーシップを発揮されるおつもりはあるか。来年の参院選で憲法改正を訴えるつもりはあるか」

 安倍晋三「まず先ほど申し上げた1億総活躍社会をつくっていく。そのために新3本の矢を新たに放っていく、その決意についてお話をさせていただいたところだ。1本目の矢、まさにこの経済成長、非常に重要だ。そして戦後最大規模の経済を、豊かな社会をつくっていかなくてはならない。600兆円、GDP600兆円という大きな目標を掲げた。それに向けて、しっかりとした具体的な成長戦略を進めていく考えだ。

 その上で、今お話があった消費税の引き上げについてだが、再来年の4月の10%への引き上げについては、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくという責任を果たしていかなければならない。そして、市場や国際社会の信認を確保するため、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り実施していくことは、すでに今まで申し上げてきている通りで、その考え方に変わりはない。その段階で10%に引き上げていくことができる、そういう経済状況をつくっていく考えだ

 「世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくという責任を果たす」ためにも、そして「市場や国際社会の信認を確保する」ためにもと2つの責任を挙げて、「リーマン・ショックのようなことが起こらない限り、予定通り実施していく」と2017年4月の増税を確約している。

 そして「リーマンショック級の事態」が出来しなかったにも関わらず、2019年10月1日予定の消費税10%への増税を延期している。

 「安倍晋三消費税増税再延期記者会見」首相官邸/2016年6月1日)      

 安倍晋三 1年半前、衆議院を解散するに当たって、正にこの場所で、私は消費税率の10%への引上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言いたしました。リーマンショック級や大震災級の事態が発生しない限り、予定どおり来年4月から10%に引き上げると、繰り返しお約束してまいりました。

世界経済は今、大きなリスクに直面しています。しかし、率直に申し上げて、現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実であります。

熊本地震を『大震災級』だとして、再延期の理由にするつもりも、もちろんありません。そうした政治利用は、ひたすら復興に向かって頑張っておられる被災者の皆さんに大変失礼なことであります。

ですから今回、『再延期する』という私の判断は、これまでのお約束とは異なる『新しい判断』であります。「公約違反ではないか」との御批判があることも真摯に受け止めています。

国民生活に大きな影響を与える税制において、これまでお約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、正に税こそ民主主義であります、であるからこそ、まず国民の皆様の審判を仰いでから実行すべきであります」

 その「新しい判断」とは中国や新興国、その他の国の経済の「陰り」を受けてリーマンショッククラスと自身では見ている「大きなリスクに直面」している世界経済の不透明感を挙げている。

 例えそうであったとしても、「現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実」と言うことなら、消費税10%増税2019年10月1日直前に「リーマンショック級の事態」が発生して日本経済が壊滅的な打撃を受けたとしても、あるいは増税後の2019年10月1日以降に発生して日本経済が壊滅的な打撃を受けたとしても、立法府に緊急要請して増税停止を求める法律の審議を求めて、その法律を即時に採決、反対する野党はいないだろうから(反対したら、次の選挙で落とされる)、即日公布・即日施行に持っていくといった対応は可能なはずだが、3年4カ月も前に再度の増税延期を決めている。

 勿論、スーパー等のレジ自体は即座な対応は困難かもしれないが、現金で払い戻すことで対応不可能ということはない。

 この記者会見は「通常国会閉会」の体裁を取っているが、参議院議員の任期が約1カ月20日後の2016年7月25日に満了、7月中に選挙が行われると見られていた。最初の増税延期を決めたのは衆院解散当日2014年11月21日で、10%増税を最初に予定されていた2017年4月1日からは約2年4カ月前となることは既に書いた。

 衆議院選挙、参議院選挙共に自公与党が大勝しているから、国民が暮らしを最大の利害としていることを利用した選挙目当ての消費税増税延期と言うことになるが、何年も前から増税延期を決めたということはアベノミクスが満足に機能していないことを消費税増税延期で隠蔽して勝利するためのリーマンショックを口実とした、あるいはリーマンショッククラスと自身では見ている世界経済の不透明感を口実とした選挙目当てが実態ということであるはずだ。

 つまりアベノミクスが満足に機能していないことが前提となっている。

 安倍晋三は9月25日(2017年)の衆議院解散を告げる記者会見では2019年10月の8%から10%への消費増税を予定通り行うことを述べ、2%の税収約5兆円分のうちの借金返済に回す4兆円の半分を子育て世代への投資拡充に使途変更することを申し渡したのみで、リーマンショックを増税延期の条件とはしなかった。

 そして舌の根も乾かないうちにとも言うべきか、たった1日経っただけの9月26日夜、テレビに出て、リーマンショックを増税延期の条件とした。

 なぜなのだろう。考えられることは東京都知事小池百合子代表の新党希望の党に小池百合子の人気にあやかる意味合いもあるのだろう、民進党やその他の党、自民党からも1人、入党する流れが出始めて、それが徐々に強まり、勢力を拡大していく気配を見せ始めた。希望の党は2019年10月の消費税増税に反対している。

 安倍晋三はこれまでの消費税増税延期を利用して選挙の勝利に味をしめた手前、勢力拡大の勢いを見せ、選挙の手強い敵となりかねない希望の党の増税反対が選挙に有利に働く要因となる可能性が心配となって、再度リーマンショックを理由に増税延期の条件として提示することで急遽、希望の党と同様の立場に立ち、相手の有利性を相対化しようとしたのではないだろうか。

 だとしても、やはりこういった姑息な手を使わなければならない要因はアベノミクスが満足に機能していないこと、アベノミクス機能不全が前提となる。満足に機能していたなら、いわば国民に景気の実感を満足に与えていたなら、増税時には軽減税率も予定されていることを考えると、多くの国民は2019年10月の消費税増税を比較的安心して迎えることができるはずだ。

 選挙のたびにリーマンショック、あるいはそれに類似した経済リスクを増税延期の条件として持ち出す。アベノミクスが満足に機能していないことに対しての選挙に勝利するための隠蔽であって、もはやオオカミ少年の「オオカミが来た」に等しい。

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