安倍晋三は今治市申請の獣医学部事業主体を加計学園と承知していた 2017/11/30参院予算委福島瑞穂質問

2017-12-05 12:47:33 | 政治

 社民党の福島瑞穂が2017年11月30日の参院予算委で冒頭から安倍晋三に対して今治市構造改革特区申請の獣医学部の事業主体が加計学園であることを承知していたと2017年4月18日自身提出の質問主意書に対する政府答弁書でも、2017年6月16日参院予算委でも答弁していると迫った。

 福島瑞穂は安倍晋三の答弁を求めたが、梶山静六の息子の内閣府特命担当相(地方創生、規制改革)である二世梶山弘志が答弁に立った。

 この答弁は重要な意味を持つゆえに枠付きで表示することにする。文飾は当方。

 梶山弘志「質問書の内容ですので私の方から答弁します。先程の閉会中審査に於きましても ご説明させて頂きましたけども、もう一度改めてということであります。

 今治市の獣医学部新設にかかる構造改革特区の申請は平成19年の福田内閣のときに初めて申請が行われ、それ以来、民主党政権の頃までは加計学園の事業主体である旨の記載があります。

 ですけれども、15回申請しており、最初の5回が加計学園の名前が出ているということであります。この政府答弁書では政府は継続しているものであるところから、先ず安部政権が成立する以前の事実関係について記載をして頂きました。

 第2次安倍政権発足以降も今治市から4回に亘って構造改革特区の申請が行われました。これらについてはいずれに於いても今治市の提案に加計学園との記載はございません。

 但し政府は継続しているものであり、いずれもこうした提案を受けて、構造改革特区にかかるその後の様々な政府決定がなされたこと、構造改革特区にかかる対応方針が総理が議長を務める構造改革特区本部で決定していることから、この答弁書は今治市からの提案について、今治市からの提案について(このことを認識させるために声を強めて繰返す)総理が知り得る立場にあった趣旨を答弁したものであります。

 しかし先の閉会中審査で総理が改めて整理して申し上げたとおり、今治市の提案については10数件ある案件の一つに過ぎず、結果も4回とも提案を事実上認めていないものありまして、しかも今治市の名称だけでありまして、実際には全く認識していなかったものと考えております。

 最終的に本年1月に事業者の公募を行い、加計学園から応募がありました。その後1月20日の(国家戦略特区)諮問会議で認定することになりますが、その際は総理は初めて加計学園の計画について承知をしたところであります」

 梶山弘志の発言そのものが、勿論正式な名称はないが、暗黙裡に存在する安倍晋三肝入りの加計学園安倍晋三政治関与疑惑隠しチームによる疑惑追及逃れに補強し、統一した理論なのだろう、安倍晋三も後の答弁で同じ内容の発言、同じ論理を使って事業者主体が加計学園であることを本年1月20日まで知らなかったと答弁している。

 梶山弘志の答弁を解釈すると、安部政権成立以前の事実関係を今治市15回申請のうち最初の5回のみに獣医学部の事業主体が加計学園である旨の記載があったが、第2次安倍政権発足以降の今治市の申請では加計学園の記載はなかった、

 そのため加計学園が獣医学部の事業主体であることは承知していなかったが、獣医学部新設の提案者が今治市であることは認識していたために政府答弁書で今治市であると言うことについては「総理が知り得る立場にあった趣旨を答弁した」という意味を取ることになる。

 政権交代があっても、政府そのものは「継続している」なら、今治市が提案を取り下げすに継続して申請している以上、申請の内容事項については、構造改革特区が国家戦略特区へと体制を変えたとしても、引き継いでいかなければならないことになる。

 例え「今治市の名称だけで」加計学園の名前が記載されていなくても、新設獣医学部の事業主体を少なくとも想定していないことには今治市側も申請そのものは不可能であり、申請から認可に向けて着々と手を打つことも不可能である。

 逆説すると、15回申請のうち最初の5回に加計学園の名前を記載していなかったとしても、その後も加計学園を事業主体と想定していたからこそ、申請そのものの不可能を回避できたはずだ。

 途中から加計学園以外に変わっていたなら、内閣府の公募に対して加計学園は応募することはなかった。加計学園自体が応募したことは今治市は継続して変わらずに加計学園を事業主体として想定していたことになる。

 このことは次のことが証明する。

 今治市市議会が獣医学部建設用地(16・8ヘクタール)を学園に無償譲渡する議案と校舎建設費192億円の半額にあたる96億円(県との合計限度額、うち市の上限64億円)の債務負担行為をする議案を賛成多数で可決したのは2017年3月3日のことである。

 だが、建設用地のボウリング工事開始は2016年10月31日。校舎建設や敷地整備に取り掛かる地鎮祭は2017年3月28日である。福島瑞穂が質問主意書を提出した2017年4月18日よりもボウリング工事開始は半年前であり、地鎮祭は約20日前となる。

 建物着工は2017年4月1日となっている。

 今治市市議会が建設用地の無償譲渡を決める前にその土地に足を踏み入れて工事を開始していた。

 加計学園の2017年1月10日事業主体応募前は国家戦略特区諮問会議でもワーキンググループヒアリングでも加計学園の名前が表に出ないまま、その陰で加計学園は開学に向けて準備を着々と進めていたのである。

 獣医学部新設申請が「今治市の名称だけで」あったとしても、構造改革特区当初の加計学園を事業主体と想定した今治市の獣医学部新設申請という形態は何も変わらずに継続されていたのである。

 そもそもからして今治市が事業主体をどこに想定して獣医学部の新設申請を行っているのか、国側が認識しないこと自体が不自然極まりない。当然、構造改革特区への当初の申請同様に事業主体が加計学園であると想定するか、あるいは確認しなければならない。

 だが、その両方共行わずに加計学園の名前は隠れたまま(隠したままと言うべきか)、今治市への獣医学部新設だけが議論され、決められていった。

 福島瑞穂は安倍晋三に対して今治市が新設を申請している獣医学部の事業主体がどこなのか考えたことも、あるいは確認しようともしなかったのか問い質すべきだった。

 要するに梶山弘志が最初に示した加計学園であることは知らなかったとする疑惑追及逃れの理論を打ち破る角度を変えた追及が必要であるにも関わらず、2017年4月18日の質問主意書に対する政府答弁書の文言と2017年6月16日参院予算委の安倍晋三の答弁をベースにした追及に何度も拘って再度取り上げ、虚偽答弁ではないのかと迫るだけで、安倍晋三から梶山弘志の発言と殆ど同じ内容の答弁を引き出す徒労を演じるのみであった。

 福島瑞穂の何度かの同じ追及のあとの安倍晋三の答弁も枠付きで記載してみる。文飾は当方。

 加計学園安倍晋三政治関与疑惑隠しチームによる疑惑追及逃れの統一した論理なのだろう、安倍晋三も後の答弁で同じ内容の発言、同じ論理を使って事業者主体が加計学園であることを本年1月20日まで知らなかったと答弁している。

 安倍晋三「この件についても閉会中審査で既に申し上げているところでございますが、この今治市の提案については正に今治市が提案したものであったわけでございますが、最終的には応募に応じて加計学園が公募に応じた段階で我々が知る立場になる、本年1月に事業の公募を行い、加計学園から応募があった後にですね、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません。

 ですから、加計学園から応募があったその後、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、その際、初めて加計学園の計画について承知をしたというところであります」

 福島瑞穂は「誰も納得しません」と言い、相手が認めまいとしている理論を打ち破るのではなく、上に挙げた参議院予算委の安倍晋三の答弁だけを頼りに無理やり認めさせようとするムダな努力を費やすのみであった。

 安倍晋三は「私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません」と言っている。

 このことは2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループヒアリング」に3名の加計学園関係者が出席していたにも関わらず、議事要旨に記載がないことを言っているのだろう。

 確かに国家戦略特区諮問会議議長の安倍晋三はワーキンググループヒアリングには出席しない。だが、そこで議論され、結論を得た情報を上部の会議体である国家戦略特区諮問会議で出席者全員に報告されて、その情報を全員で共有しないことには諮問会議として出さなければならない更に上の結論に導く議論は行うことができないことになる。

 いわばワーキンググループヒアリングで議論された情報は国家戦略特区諮問会議での議論の踏み台となって、一定の情報を形成しなければならない。あるいは踏み台にして、一定の情報を積み上げていかなければならない。

 もし情報の共有が行われず、安倍晋三が言っているように「情報を受け取ることもなく」、ワーキンググループヒアリングの議論、その全体としての情報と断絶した形で諮問会議で議論が行われるとしたら、ヒアリングの意味を失うし、開く意味も失う。

 2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループヒアリング」は政府側はWG委員でもあり、諮問会議の有識者議員でもあるアジア成長研究所所長の八田達夫がこの場の座長として出席、提案者側から愛媛県企画振興部地域振興局長や地域政策課主幹、今治市企画財政部企画課長が出席して「国際水準の獣医学教育特区」を議題にどのような獣医学部を目指すかを議論している。

 そして既に触れたように議事要旨には出ていないが、加計学園関係者が説明補助者として出席して発言もしていた。

 当然、加計学園関係者が議論に加わっていたことと加わって議論し、纏めた情報は諮問会議に反映され、諮問会議での議論の参考とし、諮問会議の情報として纏めなければならない。諮問会議の議長である安倍晋三にしても、議長が飾りでなければ、WGヒアリングの情報を共有する一人でなければならない。

 加計学園が事業主体であることを承知していたからこそ、諮問会議の議論がWGヒアリングの情報と断絶しているような装いを見せなければならなかったのだろう。

 福島瑞穂は安倍晋三が巧みに言い逃れるかもしれないが、「情報を受け取ることもなく」と言っていることの矛盾を突いて、それを少しでも広げる追及をすべきだったが、既に固めている言い逃れの理論を突く一本調子の追及にのみ時間を費やし、同じ答弁でかわされる堂々巡りを演じるのみであった。

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安倍晋三は対森友学園国有地売却の適切性判断は財務省・国交省報告から会計検査院報告に依拠変更せねばならない

2017-12-04 12:33:48 | 政治

 立憲民主党の長妻昭が11月27日(2017年)の衆院予算委員会で安倍晋三が国会で国有地対森友学園売却は「適切に」行われてきたと国会答弁を繰返して来たが、会計検査院の報告で適切でないことが分かった、国会や国民への謝罪はあるかと追及、安倍晋三から「財務省や国交省から適切に処理したとの報告を受けていて、そのような理解で申し上げたものだ」と、それが詭弁でしかないのだが、結局のところ、詭弁を放置したままで安倍晋三に逃げられることになった。

 安倍晋三のこの点に関する答弁が如何に詭弁なのか、長妻昭が如何に詭弁を放置し、安倍晋三に逃げられてしまったかを見てみることにする。

 2017年11月27日衆院予算委員会

 長妻昭「そして、総理ですね、午前中も縷々ありました。森友学園の問題。会計検査院から報告が出ました。我々の福山参議院幹事長が、当時参議院の予算院会で(会計検査院への調査を)提言をして全会一致で決まって、そして出てきたところでございます。

 総理はですね、森友問題、この積算について国会でもですね、ずうっと『適切』を繰り返して参りましたけども、この『適切』というのがですね、会計検査院の報告書で覆されたということでございます。

 これについて総理としてですね、そして国会や国民の皆さんへの謝罪等はあるんでございましょうか」

 安倍晋三「(原稿読み)今回の報告はですね、国会からの要請により独立した行政機関である会計検査院によって実施されたものであり、政府としてはその指摘については真摯に受け止めなければならないと思います。

 国有地は国民の共有の財産であり、その売却に当たっては国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。今般の会計検査院の報告、さらにこれまでの国会答弁の議論の中で厳しいご指摘があったことも踏まえて私としても国有財産の売却について業務の在り方を見直すことが必要と考えております。  

 えー、公共性の高い随意契約は売却価格など全て公表することなどの手続きの明確化を図ること、売却価格の客観性を確保するため財務省が提示した特殊な事案については第三者による算定確認を行うこと。そして且つ十分な文書管理の徹底を測ることという方針で財務省にもしっかり対応させることとしたい、このように考えております」

 長妻昭「いや、全く総理、答えておられんないんです。これ本当に、総理、あのー、真摯な答弁とか謙虚というふうに仰ってるんで、是非、噛み合うような推移(?――「進め方」と言うことか)をしたいと思うんですね。

 それで結局ですね、今の話、午前中の与党の質問に対しても『今後は注意します』と。与党はそれでいいよと。そんなような遣り取りがあって、私は非常に腑に落ちないわけでありますけども、総理はずっと『適切、適切に見積もられている』、『適切だ』というふうに価格算定について仰っておられるんで、これについてずうっと答弁されておられるんですから、国会に対して『これは申し訳なかった』と、『適切ではなかった』というようなことは国民(へ)の謝罪を含めてお認めにならないんですか」

 安倍晋三「先の通常国会に於いては国有地売却の問題について基本的に処分を担当している財務省や国交省から適切に処分したとの答弁があったところにより、私もそのように報告を受けていました。

 これまでの私の答弁についてはそのような理解の上で申し上げたものであります。他方で国有地の売却価格については会計検査院がきっちりと厳正に調査するものとそれも申し上げていたところであります。

 政府から独立した機関である会計検査院が検査を行い、今般国会に提出されたわけであります。報告については真摯に受け止める必要があると、このように考えております。今後関係省庁に於いて業務の在り方についてしっかりと見直しをさせる考えであります」

 長妻昭「あの、ちょっとここまで質問がなかなかうまくいかないというのは予想していなかったんですが、つまり財務省から適切だと言われたから、自分も適切だと答弁したまでだというふうに今聞いたわけですけども、でも、その適切ではなかったわけで、それじゃあ、国会で何度も色んな議員が聞いて、相当な時間を使って、『適切、適切』と仰っていたことが違っていたのでございますから、総理自身の答弁の責任としてですね、謝罪なり、国会に対して、国民に対してそういう発言というのは一切ないんでございますか」

 安倍晋三「あの、政府のですね、いわば支払い、支出等についてはですね、これまでも様々な国会での遣り取りをさせて頂いているわけであります。その際、それを執行した省庁の説明を私たちは、私は総理大臣として受ける場合もあるし、受けない場合もあるわけでありますが、しかし業務の執行がある場合はそれぞれの省庁が適切に判断をしたものを執行していくわけであります。

 で、その際、様々な指摘がある、また会計検査院がですね、様々なこの調査等を指摘、調査をし、指摘するわけであります。それを我々は真摯に受け止め、今後はそういうことがないようにうまく省庁でそれをしっかりと、えー、果たしていく、そういうことになっているわけでございます。

 当然、これはですね、今回もこれは同じことでございます。先程申し上げたように価格については会計検査院がきっちりと厳正に調査するものと思っていると申し上げているわけでございます。

 会計検査院が調査することを否定しているわけではなくて、全面的に協力させて頂きたい、このように申し上げてきたところでございます」

 長妻昭「いや、これはですね、どうなんですかね。取り組みの在り方として部下が適切だと言ったから、自分が適切だと言ったまでであると。しかもこの問題はですね、色んな、確かに適切でないことがたくさんあるんでしょ、会計検査院の指摘では。

 これだけ安倍昭恵夫人が名誉校長を務めて色々な問題が提起される中でずうっと『適切、適切』と仰って、それが適切でなかったときに今の答弁というのは私は到底、国民の皆さん理解できないと思いますよ。

 私もですね、国会で質問した政党の一員としてずうっと適切と言っていて、それが違ったときに、いや、部下が言ったから、それだけで済まされる、会計検査院が指摘した、真摯に受け止める、それだけで済まされるというのは私は如何なものかと思いますよ。

 総理の在り方として、まあ、これ以上言っても、総理はまた文章を読まれるだけだと思いますけども、私はこの姿勢こそがですね、全然治っていないんじゃないですか。謙虚な姿勢とか、真摯な答弁とか、ま、そういうふうにですね、私は言わせて頂きたいと思うんです」

 結局、安倍昭恵と前財務省理財局長の佐川宣寿、 国有財産統括官だった池田靖、今治市職員の首相官邸面会時の応対者と目されている当時首相秘書官だった柳瀬唯夫を国会証人喚問に求めることでこの件の追及を打ち切っている。

 11月30日(2017年)参院予算委でも共産党の辰巳孝太郎が同じような質問をして同じような答弁を引き出している。

 辰巳孝太郎『今般会計検査院の調査によって政府の値引きは根拠の無いと断罪されました。しかし総理は適正な処理だ、これは自分で調べたわけじゃないんだ。官僚の説明を信頼し、紹介したまでだなどと責任転嫁の答弁を行いました。

 総理、政府の値引きは適正ではなかった。それは政府の責任でもある。それはどうでしょうか」

 安倍晋三「先の通常国会に於いては国有地売却の問題について処分を担当している財務省や国交省から適切に処分していたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていました。

 これまでの私の発言についてはそのような理解の上で申し上げたものであります。その上で国有地の売却価格については会計検査院が適正にきっちりと調査すると思っていると申し上げきたところであります。

 政府から独立した機関である会計検査院が第三者的立場で検査を行い、今般国会に提出され、その報告については真摯に受け止める必要があると思っています」

 言葉の入れ替えや少しの言い換えがあるが、殆ど同じ答弁となっている。辰巳孝太郎は長妻昭の追及から何も学ぶことができなかったようだ。

 長妻昭は安倍晋三は国有地売却価格は適切に積算された、だが、会計検査院の報告では適切でなかったと判断された、適切ではなかったのだから、国会と国民に謝罪すべきではないかと求めた。
 
 対して安倍晋三は会計検査院は独立した行政機関であり、その報告に対しては「政府は真摯に受け止めなければならない」ゆえに業務の見直し、その他が必要だと今後の行政上のあるべき在り方を答弁している。

 長妻昭は安倍晋三の答弁を捉えて、「国有地売却に関して政府が適切としてきたことが正しかったのか間違っていたのか自体についは触れていないではないか」、あるいは「『国有地は国民の共有の財産であり、その売却に当たっては国民の疑念を招くようなことがあってはなりません』と仰っているが、現実に疑念を招いている事実はどうするのか、それを省いた答弁になっている。このことについてどう考えるのか」と問い詰めなければならなかったはずだ。

 ところが、長妻昭は「いや、全く総理、答えておられんないんです」と自分が望んだ答弁にだけ拘っている。だから、「答えていない」と言うなら、どこをどう答えていないのかを指摘しなければならないはずだが、頭にあるのは自分が望んだ答弁だけだから、指摘もできない。

 長妻昭は「午前中の与党の質問に対しても『今後は注意します』と。与党はそれでいいよと。そんなような遣り取りがあって」と発言しているが、午前中、同じような遣り取りがあったなら、少しは考えた追及を工夫すべきだが、工夫がないから、適切だと言っていたことが適切でないと分かったのだから、謝罪すべきだと一本調子の追及しかできない。

 そして安倍晋三は次のように答弁する。

 「先の通常国会に於いては国有地売却の問題について基本的に処分を担当している財務省や国交省から適切に処分したとの答弁があったところにより、私もそのように報告を受けていました。

 これまでの私の答弁についてはそのような理解の上で申し上げたものであります」

 要するに国有地売却を担当した財務省と国交省が適切に処分したと国会答弁し、安倍晋三自身も適切処分の報告を受けていたから、適切処分の理解で国会答弁してきた。

 このような経緯を以って、答弁に何の問題はないという意味を持たせている。そして会計検査院の「報告については真摯に受け止める必要がある」と答弁している。

 安倍晋三が言っていることは自身の「適切」とする国会答弁は財務省・国交省の「適切処分」とする国会答弁とその国会答弁に添った財務省・国交省から「適切」とする報告に依拠して適切性の判断を自らも行ってきたということである。

 だが、会計検査院の報告は地下埋設物の算定量や処分・撤去費用の見積額を根拠不十分だとした。そして安倍晋三はその報告を「真摯に受け止める必要がある」と答弁している以上、適切性の判断を財務省・国交省の国会答弁や報告に依拠していたことから、いわば「不適切処分」としている会計検査院の報告へと新規に依拠しなければならないことになる

 ところが安倍晋三は会計検査院報告の「不適切処分」に適切性判断の根拠を置き替えずに適切だとした自身の過去の答弁は何も問題はないとすることで会計検査院の報告に「厳正に」依拠して実際には適切であったか否かの判断を出すことを拒否している。

 要するに詭弁を用いて巧妙に責任逃れしている。国有地売却を不適切な取扱いだとした場合、責任と処罰を問うことになる原因究明の過程でどのようなトバッチリが安倍昭恵にいつ飛び火して、それが自身に及ばない保証はないために適切性の判断を財務省と国交省の国会答弁とその報告への依拠止まりにしておくということなのだろう。

 いずれにしても、安倍晋三が「適切でしたとしてきたことは誤りでした」と一言でも言った途端に財務省と国交省に対する責任追及が開始され、その追及は格安売却の動機にまで突き詰められることになる。証人喚問という形での安倍昭恵の国会登場を阻止できない絶体絶命のピンチに立たされない保証はナシとすることはできなくなる。

 長妻昭は安倍晋三の答弁がどのような意図を含んでいるのか思いを巡らすべきを、それができすに「あの、ちょっとここまで質問がなかなかうまくいかないというのは予想していなかったんですが」などとノーテンキなことを言い、「適切と言っていたことが違っていたのだから」といつもの如くに堂々巡りの追及に落ち込んでいる。

 要するに安倍晋三の詭弁を用いた巧妙な駆引きに太刀打ちできずに一人相撲を取っていに過ぎない。結果、安倍晋三の詭弁を放置し、逃げられてしまうことになった。

 長妻昭はこの日の質問の冒頭で与野党の質問時間を配分を元に戻すように安倍晋三に求めていたが、これでは野党にいくら時間を配分しても的確な追及は求めるべくもない。

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安部晋三森友疑惑解明の有力な方法:小学校建物周囲をボーリング、沖積層か否かを判断し、ゴミの存在を判定

2017-12-02 12:26:08 | Weblog

 2017年11月30日の参院予算委、共産党辰巳孝太郎の録音データを用いた安部晋三森友学園疑惑追及は前々日11月28日の衆院予算委、共産党宮本岳志の同じく録音データを用いた追及とほぼ同じであった。森友学園側、財務省近畿財務局、国交相大阪航空局が出席して面談した2016年3月下旬の音声データの会話を書き写したパネルを用いて、国が不動産鑑定評価額9億5600万円の国有地をゴミ撤去・処分費用として8億1974万円値引きし、1億3千万円余のタダ同然で売却した「ストーリ」をつくる口裏わせの会話の体裁を取っているとして辰巳孝太郎は張り切って追及したが、追及し切ることはできなかった。

 国側はどんな論理を用いて追及をかわしたのか。

 辰巳孝太郎が用いたパネルの体裁が宮本岳志が用いたそれと少し異なるが。大体が同じであるから、後者のパネルの会話をここで再度用いることにする。

 国側とミリとも学園側が口裏合わせ?

 関西テレビ報道番組の音声データより

 (国側の職員とみられる人物)

 「3mまで掘っていきますと、土壌改良をやってその下からゴミが出てきたと理解している」

 「その下にあるゴミは国は知らなかった事実なので、そこはきちっとやる必要があるでしょうというストーリはイメージしているです」

 (工事関係者とみられる人物)

 「3mより下からは語弊があります。3mより下からは出できたかどうかは分からないと伝えている。

 そういうふうに認識を統一した方がいいなら、我々は合わせるが、下から出てきたかどうかは私の方からは、あるいは工事をした側から確定した情報として伝えていない」

 (池田靖国有財産統括官・当時)

 「資料を調整する中で、どういう整理をするのがいいのか、ご協議させて頂けるなら、そういう方向でお話をさせてもらえたらありがたい」

 (工事関係者とみられる人物)

 「3mより上のほうがたくさん出てきている。

 3mの下からっていうのはそんなにたくさん出てきていない」

 (国側の職員とみられる人物)

 「言い方としては“混在と、9mの範囲まで”」 

 (工事関係者とみられる人物)

 「9mというのは分からないです」

 「3メートルより下はそんなにゴミは出てきていない」

 太田充財務省理財局長「先般の衆議院の予算委員会でご質問があって、このデータについて確認をさせて頂きました。かいつまんでご紹介申し上げますと、これは会話の一部が切り取られて、一方的に録音されたものでありますが、会話の一部が切り取られたものだというふうに。

 で、このデータは平成28年3月下旬から4月頃、録られたものだというふうに思いますが、この元々の前提として3月11日に新たな地下埋設物が出てきたという旨の連絡を森友学園側から受け、更に24日には森友学園より新たな地下埋設物の撤去費用を控除した形で本件土地を購入したいと、こういう要望を出されて、それを踏まえて土地を売却する方向で打ち合わせをしていた。

 あの、3月下旬から4月ということは今より以降の話で、ございます。先方から土地について地下埋設物を除去した形で購入したいという要望があって、それから先の話でございます。

 そこで近畿財務局の方は地下埋設物の撤去費用を見積もるために資料が必要なので、3メートルより深い所から出てきたものについては新たな地下埋設物になるという認識のもとで色んな資料を提出するということをお願いしているということでございまして、今委員がご指摘があったような口裏合わせ云々と言うことでは全くございません」

 要するに音声データに録音された会話は新しい地下埋設物が発見されて、その存在を確認できる「色んな資料」の提出をお願いしている会話だと道理を引っ込ませて無理を押し通そうとするようなことを言っている。

 太田充はこれ以後も同じ論理を用いた同様の答弁内容で口裏合わせを否定続ける。つまり辰巳孝太郎は同じ繰返しの答弁しか引き出すことができないでいた。

 上記太田充の発言を時系列で見てみる。

 2016年3月11日 森友学園から近畿財務局に対して新たな地下埋設物が発見されたとの連絡。
 2016年3月24日 森友学園より新たな地下埋設物の撤去費用を控除した形で本件土地を購入したいの要望。

 2016年3月下旬から4月頃の音声データはこれ以降録音されたものだと1度ではなく、念を押す形で2度も言っている。

 1度目は「3月下旬から4月ということは今(新しいゴミが発見されたことと土地を購入したいとの要望があったこと)より以降の話で、ございます」

 2度目は「先方から土地について地下埋設物を除去した形で購入したいという要望があって、それから先の話でございます」

 なぜ念を押さなければならなかったか。既に新しい地下埋設物(ゴミ)が発見され、土地の購入希望も提出されている以後のことだから、ないゴミをあるように見せかけて購入価格を大幅な値引きに持っていく「ストーリ」は必要ではないと思わせるためだろう。

 そう思わせるために「会話の一部が切り取られて、一方的に録音されたもの」で、全体の会話を示してしているものではないから、さも正確性に欠けるとする印象を与える必要があったのだろう。

 例えゴミが発見され、土地購入希望が出された後であったとしても、不当な値引き交渉が行われないとする根拠とはならない。実際に見つかったゴミの量以上に過大に見積もって、値引き額を膨らますことは可能である。

 会話が一部で、「一方的に録音されたもの」であっても、録音されている会話は現実に交わされた会話である。辰巳孝太郎は地下埋設物が新たに出てきて、その存在を確認できる「色んな資料」の提出の要望と音声データの一つ一つの会話とどう関連付けることができるのか、どう繋がるのか、問い質すべきだった。

 どう逆立ちしようと、関連付けることはできないし、資料提出要望と繋げることはできないはずだ。

 辰巳孝太郎は太田充の上記答弁に対して「工事業者はゴミはないと言っているじゃないですか。これ、どう考えるのですか」と相手が認めようとしないことを徒(いたずら)に聞き返したのみで、太田充から「再三に亘って申し上げておりますように」という枕詞つきで同じような答弁を引き出す堂々巡りを何度も誘発するムダな追及を続けるのみであった。

 同じ繰返しの質疑を何度も続けてから、辰巳孝太郎は3メートル以深のゴミの有無を会計検査院に聞く方向転換に転じた。

 辰巳孝太郎「会計検査院に聞きますが、この杭打ちの工法からして地表に出てきたゴミは一体どの層から出てきたゴミだと推認されますか」

 河戸光彦会計検査院長「杭打ちの件についてですが、本件杭工事の施工方法は深層混合処理工法の一種であり、掘削機の先端についた複数の翼状のスクリューにより地盤を撹拌して掘り進み、所定の深度において先端からセメント系固化材を注入し始めて、施工深度に到達するまで地盤を撹拌して掘り進みながらスクリューで撹拌した土壌とセメント系固化材を混合し杭を形成するものとなっております。

 この過程で掘削機の先端からセメント系固化材を注入することにより、施工深度の浅い部分に存在する廃棄物混合土から順に地表に押し出されるものと考えられます。

 よりましてこのような施工方法であれば、地表に押し出された廃棄物混合土は、施工深度の浅い部分に存在していたものであると考えられます」

 辰巳孝太郎「つまり音源テープの工事事業者が当初出てきていないと言っているのは、(工事)専門家として相当の知見を持って述べたものです。深い所からゴミは出てこない。それは過去の資料で明らかです。過去のボーリング調査から、どのようなことが分かりますか」

 河戸光彦会計検査院長「森友学園の小学校新築工事にかかる地盤調査報告書によれば、概ね地下3メートル以深は沖積層が分布しているとされていることなどから、杭工事に於いて新たに確認された廃棄物混合土は既知の3メートル程度に存在するものであると考えられるということでございます。

 これを踏まえますと、新たに確認された廃棄物混合土がどの程度の深度に埋まっていたかについては十分な確認が必要があったと認められるところでございます」

 辰巳孝太郎「今、概ね地下3メートル以下は沖積層という話がありましたが、沖積層って一体何ですか」

 河戸光彦会計検査院長「沖積層とは約1万8千年前よりのちの最終氷期以降に堆積した地層とされていると承知しております」

 辰巳孝太郎「数万年の経過でできた自然の堆積層になぜビニール片やマヨネーズの蓋が出てくるんですか。そんなものが発見されたら、それこそ歴史的発見じゃないですか。

 この政府が認めた音源テープが録られた場所には大阪航空局の職員も同席しておられました。まさに大幅値引きをするプレヤーが勢揃いということになりました。

 国交大臣、航空局のいたということを確認いたします」

 石井啓一「大阪航空局の職員に確認したところですね、平成28年3月下旬当時は新たなゴミをめぐり、近畿財務局との様々な打ち合わせを行っていたところでありますが、具体的にどの打ち合わせに出席していたかについては詳細に記憶していないということでございます。

 ちょっと付け加えて、先程の9.9メートルの杭の話がありましたけども、この杭掘削機、当時の工法はプロペラ羽のようなものが付いた掘削機を地中に貫入させることによって土を掻き混ぜ、柔らかくしながら、同時にセメントミルクを流し込むことで、地中の土とセメントミルクを一体化させて杭を形成していく特殊な工法であります。

 この工法を使用した場合、掘削機先端に絡みついた廃材等を大量に含む地下9.9メートルの位置に存在する廃材等が含まれている可能性はあることは考えられています。

 先程の沖積層のお話がありました。沖積層ですが、場所により自然に積み上がった地層ですが、場所によりですね、特に河川や池などの分布によってその厚さが変わるものと承知をしております。

 豊中市周辺で公表されている様々な公的なボーリングデータに於きましても実際の場所に於きまして地層の構成が厚さ、支持基盤の深さなどが大きく異る状況が示されてございます。

 本件土地はかつて池、沼であり、水分が深く、地層までぬかるんだ泥や細かい砂のような柔らかい地層が形成されております。また、池、沼はかつて河川と連接して形成されており、地層が深くぬかるんだ結果、この底部、底は複雑な地層となっていることも想定されております。

 また緩い底部の地層が乱され、深い所までゴミが混入している可能性もあると考えてございます」

 石井啓一、前以って言い逃れの理論武装に励んでいたのだろう、あるいは役人が考えたのか、なかなか巧妙な答弁となっている。

 「この工法を使用した場合、掘削機先端に絡みついた廃材等を大量に含む地下9.9メートルの位置に存在する廃材等が含まれている可能性はあることは考えられています」

 実際にゴミが存在していたかどうかが問題となっているにも関わらず、存在していたかどうかを放置して存在する可能性を力説している。存在する可能性が存在していなかったという根拠・証明とはならない。
 
 また、「緩い底部の地層が乱され、深い所までゴミが混入している可能性もあると考えてございます」との表現で、沖積層であっても、かつて沼や池であった場合はそれらの柔らかいヘドロ状態の底に不法投棄等の廃棄物が沈んでその上から埋土した場合の混入の可能性を主張しているが、これも可能性であって、実際に存在したとの根拠・証明とはならない。

 但し石井啓一の可能性理論を否定する証明とすることもできない。政府はゴミの存在有無の再調査は困難という姿勢を示している。例えば財務相の麻生太郎は11月29日の参院予算委で「地上には建物があり、調査を行うことは難しい。土地・建物の取り扱いについて管財人と交渉しなければならない」と発言したと「YOMIURI ONLINE」記事が伝え、安倍晋三も同午後の参院予算委で再調査を求める民進党の川合孝典に対して困難だとの認識を示し、理財局長の太田充は「本当に行おうとすれば全部、(土地を)ひっくり返してやらない限り無理だ」と否定的な見解を示したと「共同通信47NEWS」記事が伝えている。

 要するに再調査に応じないことで存在する・存在しないを水掛け論に持っていこうという魂胆なのだろう。

 辰巳孝太郎は石井啓一の答弁に対して会計検査院の報告を重く受け止めないのか、キチンと受けて止めて欲しい、ゴミは出てこないんだからと反論、「これだけ出てこないという資料がある中で出てきたという証拠を示す責任は国交省にあるんじゃないですか」と石井啓一に対して声を強めていたが、政府側にはそんな気はサラサラないのだから、ないものねだりに過ぎない。

 小学校の建物が建ったままでも、あるいは「全部、(土地を)ひっくり返」さなくても調査する方法はある。現在小学校の建物が立っている周囲全体を5メートル程度の間隔でボーリングしてみる。辰巳孝太郎が「ボーリング調査は(石井が言っているように)豊中市全体の話を言っているのではない、小学校の現地だけのこと」だといった趣旨のことを発言していたが、地層はそれが地層の変わり目とか、池や沼、側が存在したといったことは例外として一般的には一定の範囲で一定の深さを保つ。

 会計検査院報告書に「地下3.1m以深については、地下約10mまでが沖積層、それ以深が洪積層であるとされている」との記述があるから、会計検査院の報告どおりの地層になっているのか、石井啓一が言ったような沖積層ではない池・沼が埋土された地層となっているのか、ボーリングで明らかにすればいい。

 全体的に沖積層だと判明すれば、ゴミは存在しなかったことになる。かつて池・沼だと判定された地層が全体に亘っているのか、その何割かであるかによっても、ゴミが存在した土地の広さが計算できて、政府側が言っているだけのゴミが存在したのかどうかが判明する。

 政府はボーリング調査に反対はしないが、難色を示して結局は実行しないといった手を使うかもしれないが、行わせるかどうかが追及する側の腕にかかることになる。
 

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安倍晋三の北脅威「国難」、「国民の生命と財産を守る」に反した官邸入りミサイル発射2時間半後の危機管理

2017-12-01 10:56:08 | 政治

 北朝鮮が日本時間の11月29日(2017年)午前3時17分頃、西部のピョンアン(平安)南道ピョンソン(平城)付近から日本海に向けて新型の弾道ミサイル1発を発射し、日本の日本海EEZ=排他的経済水域内に落下した。

 通常軌道で発射した場合、射程距離は米国首都ワシントンを含む同国東部に届く約1万3千キロメートルに達するICBM(大陸間弾道弾)と見られている。

 北朝鮮は発射当日の11月29日、米本土全域を攻撃できる新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射実験に成功し、金正恩委員長が「国家核武力完成の歴史的大業、ロケット強国の偉業が実現した」と宣言したと政府メディアを通じて政府声明を発したと「日経電子版」が伝えている。  

 同記事は安倍晋三が発射後の11月29日の参院予算委で「核を小型化し弾頭に積むことができれば、殆どすべての国に大きな脅威になる。北朝鮮が核保有国となることは決して認められない」と発言したと報道している。

 安倍晋三の北朝鮮ICBM発射後の首相官邸入りは発射から約2時間半後の午前6時前だと同日付「共同通信47NEWS」記事が伝えている。  

 同記事は官房長官の菅義偉が記者会見で安倍晋三の発射から約2時間半後の首相官邸入りの対応に問題はないとの認識を示したと併せて報じている。

 菅義偉「首相は(官邸隣の)公邸にいて、私は(発射から約20分後の)午前3時40分ぐらいに官邸に入った。首相の指示が出ており、連携していた」
 (政府の初動対応について)先ず危機管理のチームが集まり、関係閣僚が対応する」

 政府高官首相から発射直後に指示があった。関係閣僚と現場が動いていれば、首相が早く出てくる必要はない」(下線部分は解説文を会話文に直す)

 「時事ドットコム/首相動静(11月29日)」によると、〈午前5時53分、公邸発。同54分、官邸着。同55分から同56分まで、報道各社のインタビュー。同6時10分から同26分まで、国家安全保障会議。同35分から同58分まで、トランプ米大統領と電話会談〉、その他となっている。  

 首相官邸着は正確には午前5時54分ということになる。ICBM発射が午前3時17分頃と言うことなら、約2時間37分後となる。果たして菅義偉が言うように「首相の指示が出ており、連携していた」から、あるいは政府高官が言うように「首相から発射直後に指示があり、関係閣僚と現場が動いていれば、首相が早く出てくる必要はない」から対応に問題はなかったと理由づけることができるだろうか。

 北朝鮮は今年2017年9月3日の核実験後の9月11日に国連安全保障会議による対北朝鮮制裁決議全会一致可決によって一段の厳しい制裁と米国や日本の独自の追加制裁を受けているが、国連決議に反発したと見られている9月15日の首都ピョンヤンの郊外から北海道の襟裳岬付近の上空を通過して太平洋上に落下させる新型の中距離弾道ミサイル「火星12型」1発の発射以来、制裁効果の影響かどうかは不明だが、2カ月14日間沈黙を守り続けた上でのミサイル発射である。

 但し沈黙と言っても、外から北朝鮮を見た場合の様子であって、北朝鮮は次のICBM発射に向けて順次準備を進めていた。

 9月15日の「火星12型」発射の前は8月19日の同「火星12型」発射、その前は8月26日の短距離弾道弾3発の発射、内1発は失敗、2発の成功。北朝鮮は2017年に入って1月はなかったが、2月12日の準中距離弾道ミサイル発射以降、1カ月余の間隔は1度あったが、2カ月という間隔を置くことはなかった。 

 日本やアメリカからしたら、その沈黙が制裁の効果なのかどうかを見守っていて、それが約2カ月半続いていたが、それが敢えなく裏切られたことになり、それが米本土到達可能のICBMと言うことなら、日米共に単なるミサイル発射の再開と見ることはできない危険かつ重大な意味を持つことになる。

 なぜなら、米本土到達可能という危険かつ重大さによって米国にとって北朝鮮の脅威が一段も二段も高まった場合、軍事オプションの危険性も高まることになり、日本は米国と緊密な軍事同盟を通してアメリカの軍事行動に運命共同体の関係にあり、米国の軍事オプションの影響をモロに受けるからである。

 尤も安倍晋三が今回のミサイルが米本土到達可能な危険かつ重大な意味を持つICBMだと認識したのはいつの時間か分からない。首相官邸到達前に認識していなくても、制裁の効果なのか、2カ月半は鳴りを潜めていたが、ミサイル発射によって制裁効果がなかったことが判明したことの重大さ、あるいは制裁への期待が裏切られたことが判明したことの重大さは、朝公邸に滞在していたときにミサイル発射は知らされていたはずだから、認識していなければならなかった。

 そしてこれらの重大さは単に制裁の効果のみに関係するわけではない。

 安倍晋三が9月25日(2017年)の解散記者会見で北朝鮮の脅威を「国難」と位置づけて、その対処方法として北朝鮮に対する圧力一辺倒政策を打ち出し、「圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険」があるが、「世界中の誰も紛争などを望んではいない」、「政策を変えさせるための圧力だ」と、いわば「国難」回避の唯一の手段が圧力政策だとの判断を示したことは安倍晋三の北朝鮮圧力政策が北朝鮮は暴発しないことの保障であり、その保障が「国民の生命と財産を守り抜く」という確約となって現れたはずである。

 だが、北朝鮮が再びミサイルを発射したことは安倍晋三の対北朝鮮圧力政策が現在のところ効果がなかったことを示す。外相の河野太郎は国会で、「今や北朝鮮が自制する意図が無いことがはっきりした」と河野以外は多くが前々から分かっていたことを今更ながらように発言していたが、河野太郎のこの発言は対北朝鮮制裁が効果を発揮していない、あるいは効果がないことの証明ともなる。

 安倍晋三は時折り「圧力政策によって北朝鮮の側から政策を変えるから話し合いたいという状況を作っていくことが極めて重要だ」と発言しているが、このように希望する状況が今のところ現実の保障となっていないことをも意味する。

 と言うことは、「世界中の誰も紛争などを望んではいな」くても、圧力の強化が北朝鮮を暴発させる危険性を逆に高める要因ともなり得ることを示すことになる。
 
 暴発の危険性が高まることは安倍晋三の「国民の生命と財産を守り抜く」という確約の保証を危うくする。

 安倍晋三は北朝鮮のミサイル発射の一報を受けたとき、これらのことを認識しなければならなかったはずである。制裁の効果の程度、ミサイルの種類がICBMだと把握できない段階であったとしても、北朝鮮の脅威を言い立て、それを「国難」としている以上、発射を中止しないことによって想定できる「国民の生命と財産」に影響してくることになる国家安全保障上の危機の高まり程度等々を認識しなければならなかった。
 
 当然、「首相の指示が出ていた」とか、「関係閣僚と現場が動いていた」から「首相が早く出てくる必要はない」からとの理由で首相官邸入りが北ミサイル発射2時間半後でいいということにはならない。

 「国難」だとしている認識だけでも、直ちに陣頭指揮に立たなければならなかったはずだ。

 だが、1分と離れていない公邸にいながら、ミサイル発射2時間半後の首相官邸入りとなった。このことは「国難」との位置づけや「国民の生命と財産を守り抜く」としていることの国家指導者の責任に反するお粗末な国家安全保障上の危機管理対応そのものであろう。。
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