宜野湾市保育園屋根落下物を「全数適切保管」等の米軍側説明で保育園の「自作自演」としてしまう幸せな頭

2017-12-19 12:16:43 | 政治

 12月7日(2017年)、上空がアメリカ軍機の飛行ルートになっている沖縄県宜野湾市保育園で屋根に物が落ちる大きな音がしたため職員が確認したところ、高さ9.5センチ、直径7.5センチ、厚さ8ミリ、重さ213グラムの筒状のプラスチック製で、赤いラベルに英字で「飛行前に外すこと」、さらに米国を表す「U・S」の文字が印字されていたという。

 ネットで画像を探したところ、12月7日 付「琉球新報」が写真を掲載していたから、ここに拝借することにした。

 12月11日付「ロイター」記事によると、防衛省沖縄防衛局長の中嶋浩一郎が12月11日に県や市の首長らを訪ね、飛行中の米軍機からの落下を在沖縄米海兵隊が改めて全面否定していることを説明したと伝えている。       

 〈中嶋局長によると、海兵隊は落下物を、米軍大型輸送ヘリコプターCH53の部品で、回転翼の損傷を検知する装置を保護するカバーと説明。上空から落ちたとされる時間帯に、保育園近くの米軍普天間飛行場を離陸したCH53についてはヘリ1機に装着される「保護カバー7個、全て離陸前に取り外した。袋で保管しているのも確認した」と回答した。〉

 つまりヘリ飛行中には装着していない保護カバーが保育園の屋根に落下したことになる。当然、ここで問題となるのはどちらが事実を話しているかである。保育園側が事実を話しているとしたら、米軍側は虚偽の情報(デマ)を発信したことになる。

 勿論、逆もあり得る。米軍側が事実を話しているとすると、保育園側は虚偽の情報(デマ)を発信したことになる。

 米軍側発信の「全数適切保管」のマスコミ報道を受けて、一瞬のうちに事実の情報と判断、つまり保育園側情報をデマと即断したのだろう、保育園に連日なじるようなメールや電話が舞い込んできていると12月16日付「朝日デジタル」記事が伝えている。     

 「自分たちでやったんだろう」
 「教育者として恥ずかしくないのか」
 「そんなところに保育園があるのが悪い」

 記事は、〈1日4~5通のメールが毎日届き、電話もしばしばかかってきて相手は名乗らない。〉と紹介している。

 保育園長8「メールの内容を見ると、何も知らない内地(本土)の人だろうなと思う。保護者や職員が落ち込みそうになっているが、(全国に署名を呼びかけている園上空の米軍機の飛行禁止を求める)嘆願書に賛成してくれる声が大きくなって、そんな気持ちを吹き飛ばしてほしい」

 「自分たちでやったんだろう」と「教育者として恥ずかしくないのか」は自作自演のデマだと断罪していることからの非難ということになる。

 ネットでも自作自演説が飛び交っている。「カバーの重量は200g程度だそうなので、ヘリが飛ぶ高度から落下すれば穴ぐらい当然開くだろう」と、凹みだけで穴が空いていないことを根拠に自作自演説を展開している。

 上記記事は、〈部品が見つかった屋根にはへこんだ痕跡があり、宜野湾署も確認している。職員や園児が「ドーン」という衝撃音も聞いている。〉と解説しているが、保育園の屋根はトタン葺きだそうで、上記写真を見ると、トタンは平板ではなく、波板であって、平板よりも強度は遥かに強い。

 ダンボールの表裏2枚の紙製平板の間に波状加工して波打たせた紙製中芯を挟むのも強度をつくり出すためで、同じ原理である。あるいはペットボトルに縦横に線上の凹凸をつけたり、何かの模様で凹凸をつけるのも強度を強くする目的からの加工であろう。

 20グラムの筒状の保護カバーの直径が波トタンの谷の直径よりも小さくて、その谷間に縦に浅い状態で落下した場合は、ヘリの高さから重力加速度がついたとしても、谷間の強度と谷間との間隙によって、谷間部分は凹んでも穴まで開くと限らない。

 あるいは保護カバーが波トタンの谷間と直角か斜めに交差する形で落下した場合、強度を増すことになる二つ三っつの谷の頭で落下の衝撃を受けることになって、やはり凹みはできても、穴まで開くとは限らない。

 逆に自作自演で誰かがプラスチック製の重さ213グラムに過ぎない保護カバーを屋根に向かって放り投げただけなら、屋根にそれ相応の凹んだ痕跡をつけることはできない。屋根に上がってわざわざ叩きつけたとしても、相手が波トタンの場合は表面にかすり傷ぐらいはつけることができても、空から落ちてきたような凹みはなかなかつけることはできないだろう。

 但し以上のことはあり得ることとしての推測であって、確実にそうなると確証を与えることができる根拠は何一つない。保育園の自作自演なのか、米軍側が責任逃れに虚偽報告をしているのか、上空を飛行中のヘリコプターから保育園のトタン屋根に直撃できるよう、重さ213グラムの保護カバーを落下させる実験をすべきだろう。

 そうすれば全てが明らかになる。防衛省はそこまですべきである。

 保育園側がウソをつかないという保証もなければ、米軍側がウソをつかないという保証もない。だが、米軍側を絶対正義として、保育園側を絶対悪だと簡単に決めつけてかかる。

 天下の大企業東洋ゴムが建築物の免震ゴムの数値データを偽装し、同じく天下の大企業神戸製鋼が強度偽装している。これまた大企業なりに社会的責任の重い日産は無資格者に完成車の検査を日常的に行わせていた。

 スズキと三菱は国の燃費基準に満たないにも関わらず、満たしているかのように偽装して完成車として世に出していた。

 保育園の自作自演だと一方だけを悪と単純・即決で決めつけ、もう一方の米軍側を疑いの可能性すら持たずに単純・即決で正しいとすることができる。

 そのように単純化できる。幸せな頭をしているように思える。
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安倍晋三の先の総選挙自民党投票20代50%だからと言って、「若者は自分の意見を持っている」は我田引水

2017-12-18 11:58:54 | 政治

 安倍晋三が12月15日(2017年)、共同通信加盟社編集局長会議で「スピーチ」首相官邸)した。相変わらず自己都合な発言が多い。ときには詭弁まで使っている。

 スピーチは幾つかのテーマで成り立たせているが、今回は朝鮮問題と先の総選挙での自民党大勝に若者の投票が大きく貢献していたとする発言を取り上げ、他のテーマについては次の機会にしたいと思う。

 安倍晋三「今週、今年の漢字に『北』が選ばれましたが、この解散総選挙でも大きな争点となったのは、緊迫する北朝鮮情勢への対応でありました。本年に入って、北朝鮮は挑発行動を 一気に活発化。2月から新型とみられる弾道ミサイルを立て続けに発射し、9月には6回目となる核実験を強行しました。

 私は、トランプ大統領と何度となく電話会談を重ね、日米、日米韓の結束のもと毅然(きぜん)とした外交を進めてまいりました。ロシアのプーチン大統領とも機会あるたびに首脳会談を重ねるなど、国際社会と緊密に連携することで、国連安保理で、北朝鮮に対して石油の輸出制限を含むこれまでにない厳しい制裁措置を全会一致で採択することができました。

 この決議の後、私は解散に踏み切るわけでありますが、この間北朝鮮は暫くミサイル発射を行いませんでした。国際社会の結束による強いメッセージを発し続けたことが、北朝鮮の政策を変更させる大きな力となります。

 先月の習近平国家主席との日中首脳会談でも、全ての国連加盟国がこの決議を厳格に履行していくべきことで一致いたしました。通常、石油関連製品の輸入が3割もカットされたら国民経済は成り立ちません。決議から3か月がたち、制裁の効果は間違いなく生じているはずであります。今後も、挑発が更に続く可能性がありますが、重要なことはこうした脅かしに屈しないことであります。

 北朝鮮の方から、政策を変更するので話し合いたいと言ってくるまで、国際社会が連携して圧力をかけ続ける。そうすることで、北朝鮮の核・ミサイルの問題、そして最重要課題である拉致問題を解決してまいります。

 今月、我が国は安保理の議長国として、正に本日、北朝鮮問題に関する閣僚級会合を開きますが、今後とも国際社会の 取組を日本が主導していく考えであります。同時に、強固な日米同盟の下、高度の警戒態勢を維持し、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを守り抜く。これは政府の最も重い責任であります」

 安倍晋三は石油の輸出制限含む「これまでにない厳しい」対北朝鮮国連安保理全会一致の日本も加わった制裁措置が暫くの間、北朝鮮がミサイル発射を控えた誘因となったかのように言っているが、「圧力、圧力」と騒いだ自身の圧力政策をも正当化しようとする我田引水の最たる自己都合の詭弁に過ぎない。

 2017年9月3日、北朝鮮は6回目の核実験を強行。
 2017年9月11日、国連安保理は北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択。

 北朝鮮は、にも関わらず、4日後の9月15日、首都ピョンヤン(平壌)の郊外から北海道の襟裳岬付近の上空を通過して太平洋上に落下させる新型の中距離弾道ミサイル「火星12型」1発を発射。

 多分、国連安保理追加制裁決議案に反発、屈しないところを見せたのだろう。

 ところが、北朝鮮は1カ月が経っても、ミサイル発射の動きを見せなかった。

 2017年10月22日、安倍晋三が「圧力、圧力」と騒ぎ、北朝鮮脅威を「国難」と位置づけて戦った総選挙の投開票があり、自民党は大勝した。

 「火星12型」の発射成功9月15日から2カ月と約2週間の間を置いた2017年11月29日、北朝鮮は米本土到達可能な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射に成功。

 この3カ月近い間隔は国連安保理制裁決議の影響を図っていたと見ることができる。その影響を乗り越えることができると見たからこそ、制裁決議に反して、あるいは予想される世界各国の激しい批判の嵐を無視して「火星15」の発射を強行することができたはずだ。

 そして中国もロシアも「火星15」の発射を批判しながら、両国共に北朝鮮を軍事力や制裁で追い詰めることに反対、対話重視の姿勢を見せた。

 と言うことは、このような中ロの姿勢は北朝鮮から見た場合、世界的な対北制裁の何らかの抜け道の意味を持つことになる。

 安倍晋三が言うように「これまでにない厳しい制裁措置」が北朝鮮のミサイル発射を3カ月の間思いとどまらせる効果の役目を果たしたわけでは決してない。

 その効果であったなら、米本土到達可能の弾道ミサイル発射などと言った衝撃的な事態を出来させることはなかったろう。

 要するに国連安保理制裁決議を受けた加盟各国の経済的圧力は、少なくとも現在のところは効果を見せていないことを示す。

 だから、「火星15」を発射することができた。約3カ月間の北朝鮮の音沙汰なしを以って「国際社会の結束による強いメッセージを発し続けたことが、北朝鮮の政策を変更させる大きな力となります」との文言で、音沙汰なしに効果があったかのように言うのは自己の圧力政策を正当化するための薄汚い詭弁、薄汚い我田引水の類いに過ぎない。

 安倍晋三「最近はマスコミ各社の世論調査でも、全体の結果だけではなくて年齢別の数字をよく出すようになりまして、大変興味深く見ております。共同通信が実施した12月の世論調査では、衆院予算委員会での与党の質問時間の割合が増えたことについて、妥当だとする人が47.4%で、妥当でないの42.8%を上回ったという結果が載っていました。この全体結果と併せて、共同通信は、ちゃんと年齢別の分析も公表してくれています。大体私が何を言おうとしているか予測をしていると思いますが、そこを見ますと、妥当だと答えたのは、60代以上では36%で全体より低い。

 ところが、30代以下の若年層では、なんと62.3%だったそうであります。2倍まではいきませんが大きな違いがある。これは投票行動においてもそうなんですが、20代、30代と60代は大きく答えが違ってきているというのが、これは最近の現象ではないかと思います。念のため申し添えておきますが、質問時間は国会がお決めになることでございますから、この結果について私がどうこう言おうというわけでは全くありません。ここのところは間違ってニュースにしないでいただきたいと、こう思うところで ございますが。

 私が申し上げたいことは、若者たちは上の世代に影響されることなく、自分たちの意見をしっかりと持っているということであります。SNSやユーチューブなど、インター ネットがこれだけ発達した時代にあって、若い世代は自分で多様な情報を集め、自分で判断するということなんです。

 だからこそ今、年代別の意識の違いが注目を集めているのではない かと思います。先般の衆院選の出口調査でも、NHKが年代別の投票先を公表していました。自民党に投票した人が最も少なかったのは、60代。私も60代でありますが、60代であります。32%です。それでも比較第一党ではありますが。

 私と同世代が一番低いというのは、随分私も同年代の方に嫌われたものだということで悲しい思いはするわけでありますが、 もしかしたら、ちょうど皆さんの新聞の愛読者層ではないかとも思いますので、もう少しお手柔らかにお願いしたいと思いますが、他方、最も人気があったのは、20代でありまして、 20代では50%の人たちが我が党自由民主党に投票してくれたわけであります。自民党の支持率が高いから持ち上げるというわけではありませんが、若い人たちは自分の意見をしっかりと持っている。私はここに、日本を変革するチャンスがあると思っています。

 与野党の質問時間が従来の割合から変更されて与党質問時間が増えたことの妥当性に対する共同通信の世論調査で、「妥当だと答えたのは、60代以上では36%で全体より低い」、「30代以下の若年層では、なんと62.3%だった」ということを以って「若者たちは上の世代に影響されることなく、自分たちの意見をしっかりと持っているということであります」と結論付けことができる合理性はどこにあるのだろうか。

 単なる平等の観念からの若者の妥当性なのか、野党がより多く担っている国家権力監視の役目に然程重きを置いていないからなのか、あるいは与党に対しても国会質疑の場での出番をより多くしてやるべきだと考えてのことなのか、数字だけからでは見えてこない。

 因みに私自身のことを言うと、野党議員が言う程には野党の質問時間の長いことが国家権力監視に直結するとは考えていない。直結させるためには質問時間よりも質問の質・言葉の質がより有効な権力監視の道具・より有効な追及の手段となるはずだが、質問時間が長いだけのことで、気づかないままに堂々巡りの質疑に陥る時間のムダを費やすことが多い。

 安倍晋三が数字だけで若者たちが「自分たちの意見をしっかりと持っている」と若者の独自性を保証するのは余りにも安易、余りにも単細胞としか言い様がない。

 また、「SNSやユーチューブなど、インター ネットがこれだけ発達した時代にあって、若い世代は自分で多様な情報を集め、自分で判断するということなんです」と若者の判断能力の確かさを請け合っているが、裏付けのない付和雷同型の、あるいは他人の意見をそのまま引き写しただけの情報が氾濫しているのもインターネットの世界でもあって、多様に見えて、類似性を纏っている情報を少なからず見る。

 いわば個別に見ないことには独自の判断に基づいた意見かどうかは区別できないということであって、若者の多くが利用し、多くの意見を述べていることを以ってして若者の独自性を言うのはやはり単細胞でなければできない芸当であろう。

 さらに安倍晋三は10月の衆院選のNHKの出口調査を取り上げて、「自民党に投票した人が最も少なかったのは」「皆さんの新聞の愛読者層」と予想される「60代」で、対して「20代では50%」という高率である一事を以ってして「若い人たちは自分の意見をしっかりと持っている」ことの更なる根拠とし、高く買っている発言をしているが、逆に「60代」はよく新聞を読んで、その情報をよく吟味し、その結果自民党投票者が最少という数字が出て、対して若者はネットの情報に頼った結果、自民党投票者が50%という数字となって現れたと見ることもできる。

 いわば「60代」は「自分の意見をしっかりと持っている」ゆえに自民党投票者は少なく、逆に「若い人たち」はネット情報に頼って自分の意見をしっかり持っていないゆえに自民党投票者が50%もいたとする解釈も可能だということである。

 合理的根拠を持たない評価に対する解釈は幾つもに変更可能となる。

 若者が「50%」も自民党に投票したからと言って、「若い人たちは自分の意見をしっかりと持っている」と肯定的に評価し、「60代」が「自民党に投票した人が最も少なかった」からと言って、暗に若者と正反対に自分の意見をしっかり持っていないかのように示唆する。

 薄汚いばかりの詭弁と我田引水に満ちた情報操作を行っている。

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安倍内閣の「縦割りを排し、省庁の垣根を越え」の謳い文句でのテロ対策組織新設は屋上屋を架すだけの宿命

2017-12-16 11:56:00 | 政治

 12月11日(2017年)付「NHK NEWS WEB」記事が、〈3年後の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、 2017年12月11日、政府は総理大臣官邸で国際テロ対策推進本部の会合を開き、関係省庁の国際テロ情報を共有する、情報共有センターを来年夏に新設することなどを盛り込んだテロ対策推進要綱を決定しました。〉と伝えていたから、会合の冒頭、安倍晋三が挨拶でどのようなスピーチをしているのか首相官邸サイトにアクセスしてみたが、会合の説明だけで、挨拶なしなのか、何の記載もなかった。

 「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部会合について」首相官邸/平成29年12月11日(月)午後)
      
 本日午後、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部会合を開催いたしました。会合では、現下の厳しい国際テロ情勢を踏まえ、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えたテロ対策推進要綱を決定しました。

 政府としては、本日決定した要綱に基づき、縦割りを排し、省庁の垣根を越え、より核心に迫る情報収集が可能となるよう、国際テロ情報収集ユニットの活動を強化し、新たに国際テロ対策等情報共有センターを設置して、関係省庁による情報の共有・分析を促進するとともに、多くの観客の利用が予想される公共交通機関や競技会場等のソフトターゲット対策に万全を期すなど、大会の成功に向けて、引き続き、テロ対策を強力に推進してまいりたいと思います。

 先ず2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えたテロ対策推進要綱を決定した。

 そして要綱に基づいて縦割りの排除、省庁の垣根を越えた核心的・的確な情報収集と情報処理(共有・分析の促進)が可能となるように国際テロ情報収集ユニットの活動を強化して新たに国際テロ対策等情報共有センターを設置し、このような体制のもと、公共交通機関や競技会場等のソフトターゲット対策等に万全を期して大会の成功に導く所存でいると言うことなのだろう。

 かと言って、「国際テロ情報収集ユニット」を廃止し、装い新たに新組織「国際テロ対策等情報共有センター」に改組するというわけではない。

 「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等を見据えたテロ対策推進要綱」国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部決定/平成29年12月11日)  

情報収集・集約・分析等の強化

(1)イスラム過激派等に関する情報収集・集約・分析等の強化

ア「国際テロ情報収集ユニット」等の活動の拡大・強化官邸を司令塔として活動する「国際テロ情報収集ユニット」、「国際テロ情報集約室」等は、平成27年12月の設置以降、体制増強を図りつつ、各国治安・情報機関との関係強化を始めとする情報の収集・集約に取り組んできたところであるが、今後、大会等に向け、より核心に迫る情報収集が可能となるよう、その活動の拡大・強化を図る。

具体的には、関連要員の更なる増員を図るとともに、その業務の専門性を向上させるため、海外における情報収集活動に関する研修の充実、現地における情報収集活動をより安全かつ効果的に行うための専用インフラの整備等に取り組む。

また、「国際テロ情報収集ユニット」と政策部門や情報コミュニティ省庁の連携が強化されるよう、「国際テロ情報集約室」において必要な連絡調整を行う。

これらにより、これまで以上に、官邸・政策部門に対して有益な国際テロ情報が提供され、情勢判断や政策決定に有効に活用されることを可能とする。

「国際テロ対策等情報共有センター」(仮称)の活用

テロ容疑事案等に関する情報の共有・分析を強化するため、平成30年夏から「国際テロ情報集約室」に設置する「国際テロ対策等情報共有セン
ター」(仮称)を活用する。同センターでは、11省庁(内閣官房、警察庁、金融庁、法務省、公安調査庁、外務省、財務省、経済産業省、国土交通省、海上保安庁及び防衛省)の職員が一堂に勤務し、これら省庁が保有するデータベース等や知見を有効に活用、テロ容疑事案等に関する端緒情報について迅速に共有するとともに、各省庁が保有する関連情報と照合するなどの分析を行い、当該テロ容疑事案等の詳細についての解明に努める。

分析の結果判明した事項については、テロの未然防止対策の実施等に資するよう、官邸及び関係省庁に迅速に提供する。〉

 このように「国際テロ情報収集ユニット」をテロ対策組織として存続させた上で、 「国際テロ対策等情報共有センター」を新たなテロ対策組織として設置するということである。

 「国際テロ情報収集ユニット」は2013年1月のアルジェリア邦人人質殺害事件や2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件を受けて2015年12月8日に発足した。

 2016年7月1日の邦人7名の犠牲者が出たダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件では安倍政権は「国際テロ情報収集ユニット」を現地に向けて派遣したが、現地入りする前に既に特殊部隊が突入。この時間のズレはアルジェリア事件のように長期戦になると踏んでいたが、襲撃発生から約10時間後、治安部隊が突入、犯人側と銃撃戦となり、犠牲者が増えることとなった。

 いわばバングラデシュ側との情報共有が満足に機能していなかった。あるいは機能させることができなかった。

 2015年12月8日の「国際テロ情報収集ユニット」発足当時テロ対策組織の組織図が発足同日の2015年12月8日付「国際テロ情報収集・集約体制の強化」内閣官房 外務省/平成27年12月8日)に記載されていたから、左に掲げておいた。  

 画像冒頭部分に記載されているが、ここにも分かりやすい段落で書き記しておく。

〈邦人関連事案に関する国際テロ情報の収集等を抜本的に強化するため,

①国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部に「国際テロ情報収集・集約幹事会」(議長:内閣官房副長官)
②内閣官房に「国際テロ情報集約室」(室長:内閣官房副長官)
③外務省(総合外交政策局)に「国際テロ情報収集ユニット」を置く。

 全て新設である。内閣官房長官を本部長とした「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」の下に2つのテロ対策組織、外務大臣のもとに1つのテロ対策組織が既に置かれていて、その上、平成30年夏から内閣官房の「国際テロ情報集約室」に「国際テロ対策等情報共有センター」(仮称)なる名称の新たなテロ対策組織を新設する。

 海外、あるいは国内で日本人が巻き込まれるテロ事件が発生したとき、4つの組織が同時にそれぞれが抱えている少なくないはずの職員を動員して個別に情報収集し、情報分析を行うが、4つの組織それぞれがそれぞれに異なる実体験や見聞で得た知見に基づいた推測・解釈に従った4つの統一見解で纏められて、それらの統一された4つの見解が4つの組織全体で相互に情報共有を図ることになる。

 当然、組織全体で共有された情報は最終的に集約・統一されて一つの情報として発信され、一つの発信に基づいた統一された対策と行動を打ち出されなければ、迅速なテロ対策は望むことができないことになる。

 最終的な情報の共有までに4つの組織の4つの情報から1つの情報に統一という時間のかかる手続きを取らずに4つの組織から優秀な人材を抜擢して1つの組織に組み替えて、直接的にその場で収集し分析した情報を1つの情報に集約・統一する迅速な手続きを採用し方がテロ対策として機能するのではないだろうか。

 大体がそれぞれの省庁の下に幾つものテロ対策組織を設けること自体が縦割りそのものを意味する。省庁横断、あるいは省庁の垣根を越えてといった常に繰返される古くて新しい決まり文句に実効性を持たせるとしたら、どの省庁にも属さない一つの行政組織として新たに設立、そこに各省庁から優秀な人材を集めて機能させるべきだろう。

 2011年4月12日の参院外交防衛委員会で自民党参院議員の佐藤正久が独自に作成した「東日本大震災対策組織図」(左掲)を示して、名前だけを見ると、同じ役割を連想させるものが幾つもある菅内閣の災害対策組織が10以上も乱立していることを取り上げて、「色々なものができあがって責任が分散している。会議が多過ぎて、何の会議か分からない。誰の指示を聞けばいいのか分からない。みんな困っている」と批判した。

 菅内閣の東日本大震災対応は世論調査で評価しない、原発事故についての政府の情報提供については不適切が常に上回っていた。要するに菅内閣の災害対応はそのための組織の数程にも機能させることができなかった。

 と言うことは、災害対策の組織の数だけを増やしていったことになる。組織を増やすことで、仕事をしている気になっていたのだろう。あるいは仕事をしているように誤魔化していた。

 安倍内閣がテロ対策で今更ながらに「縦割りを排し、省庁の垣根を越え」と謳わなければならないのは、現実問題として縦割りと省庁横断とは逆の省庁ごとの縄張りが存在していてテロ対策組織が満足に機能する様子が見えないからだろう。

 だから、新たに「国際テロ対策等情報共有センター」を置くことになったはずだが、組織としての機能を妨げる縦割りと省庁ごとの縄張りが存在する以上、縦割りと縄張り排除が先決問題で、それをせずに「縦割りを排し、省庁の垣根を越え」といった謳い文句だけで新たなテロ対策組織を設置するのは菅内閣の災害対策組織程の乱立状態ではないとしても、屋上屋を架すだけとなる宿命しか待ち構えていないはずだ。

 組織づくりには長けているが、組織を機能させることは苦手と言うことにならないように気をつけなかればならない。

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安倍晋三の対北朝鮮圧力一辺倒政策は拉致被害者を人間の盾としかねない危険な綱渡り

2017-12-15 10:48:53 | 政治

 安倍晋三が12月13日(2017年)、日本と共に国連安全保障理事会非常任理事国を務めているセネガルのサル大統領と首相官邸で会談、安保理による北朝鮮制裁決議を厳格に履行し、圧力強化に向けて連携することで一致したとマスコミが伝えている。

 対北朝鮮圧力で利害を一致させることができる国の首脳と会談して、誰彼なしに圧力の連携を求め、一致させているに過ぎない。だが、連携・一致の手続きを実現させなければならない肝心のロシアや中国に対しては、それができない。日本にしても安倍晋三にしても、そうするだけの力はない。

 要するに安倍晋三は裸の王様を演じているに過ぎない。裸の王様でなくなるとき、北朝鮮が軍事的暴発、あるいは軍事的攻撃を出来させい保証はない。

 安倍晋三は一切の対話を排除、圧力最大化によって「北朝鮮の側から政策を変えるから話し合いたいという状況を作っていくことが極めて重要だ」と、常にそうすることができる、あるいは常にそうなるかのように録音した言葉の繰返しの再生さながらに何度も口にしているが、圧力によって北朝鮮がそのように態度を変える保証もない。

 アメリカが北朝鮮に対して経済制裁と軍事的圧力を強めながら、対話の条件に核放棄を掲げていたが、12月12日、ティラーソン米国務長官がワシントンのシンクタンクで講演、北朝鮮と前提条件なしで直接対話する用意があると述べたと、2017年12月13日付「ロイター」記事が伝えている。   

 ティラーソン米国務長官「とにかく会おう。向こうが望むなら天気の話をしてもいい。ラウンドテーブル(丸い机)にするか、四角い机にするかを話してもいい。

 その上で、どのような方向に向けて進んでいくか、ロードマップの設計(公式協議の基本ルール)を始めることができる。

 (北朝鮮の核保有は容認できないとの従来の立場を改めて表明した上で)対話の準備を整えれば、いつでも対話に応じる用意がある。但し北朝鮮は従来の軌道を修正する意向を持って対話に臨むべきだ」(下線部分は解説部分を会話体に直す)

 要するにトランプは核放棄→対話の手順を求めているが、ティラーソン米国務長官は北朝鮮の核保有は容認できないものの、核放棄→対話の手順ではなく、対話→核放棄に向けた話し合いをしようと提案したことになる。

 だから、「北朝鮮は従来の軌道を修正する意向を持って対話に臨むべきだ」との条件を付けつつ、「とにかく会おう」と対話を呼びかけた。

 このティラーソン米国務長官に対してトランプ政権で安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官が12月13日の講演で北朝鮮への圧力を最大まで強め、核開発を放棄させるという従来の方針に何ら変わりはないと強調したと12月14日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。    

 マクマスター大統領補佐官「ティラーソン長官が述べたのは結局のところ前提条件などないということだ。我々は北朝鮮への圧力を和らげる考えはないし、彼らの要求を受け入れ、対価を与えるつもりもない。

 交渉は単なる話し合いであってはならない。交渉すること自体が目的ではない」

 これは安倍晋三の対話を排除し、核放棄まで圧力の最大化を図るとしている姿勢と一致している。

 ティラーソン米国務長官発言に対して官房長官の菅義偉が12月13日の午前の記者会見で次のように述べている。「ロイター」(2017年12月13日/12:02)    

 菅義偉「累次の日米首脳会談で北朝鮮政策については突っ込んだ議論を行っている。北朝鮮への圧力を最大限まで高めていくことを含め、首脳間の考え方は100%一致している。

 米ホワイトハウスでもトランプ大統領の北朝鮮に関する考えに変更はないと発表している。米国と緊密に連携しながら北朝鮮に政策を変えさせるため、あらゆる手段を通じて圧力を最大限まで高める政策に変わりはない」
 
 日米共に圧力最大化の政策に変わりはなく、その考え方で「日米首脳間は100%一致している」と、従来からの姿勢に些かも揺るぎがないところを見せている。

 例えそうであっても、ティラーソン米国務長官が北朝鮮の核保有は容認できないものの核放棄を前提とせずに「先ず話し合おう」と呼びかけ、トランプが軍事攻撃も含めてすべての選択肢がテーブル上にあると言明、軍事的選択肢の証明・デモンストレーションとして日本海に原子力空母を派遣、米日、あるいは米韓共同軍事訓練を繰返し行いながら、北朝鮮が2017年11月29日に米本土攻撃可能な弾道ミサイル(ICBM)発射に成功、技術開発の向上を間近に見、その技術開発は進行形で北朝鮮の脅威が増していく方向にあるにも関わらず、あるいは米国の戦闘機や戦車、艦船の攻撃兵器の保有数とその保有数が証明する軍事攻撃能力が北朝鮮を遥かに凌駕していながら、トランプが軍事攻撃に踏み切れないのは攻撃した場合の北朝鮮の反撃がもたらす北朝鮮国民、韓国国民、日本国民、さらに韓国や日本に在留する米国民の犠牲が甚大な数に及び、もし北朝鮮が核兵器を使った場合、何百万人の犠牲者が出ること、そして多数の難民が発生することが予想されるかだろう。

 このことが北朝鮮にとって米国の軍事攻撃に対する抑止力となっている。

 米国が自国国益を優先して韓国・日本在留の米国民の本国帰国を前以って指示した場合、そのことを以って北朝鮮は米国の北朝鮮軍事攻撃を察知し、先制攻撃に出る危険性が生じる。

 いわばトランプは軍事攻撃にも踏み切れずに北朝鮮の着実なミサイル開発・核開発の技術向上・性能向上を前にして手をこまねいている状況にある。

 予想される膨大な犠牲者数がアメリカの軍事攻撃に対する北朝鮮の抑止力となっていることに反して万が一米国が軍事攻撃に踏み切る姿勢を見せた場合、犠牲者を米国の攻撃を鈍らせる抑止力とするために日本や韓国、米本土に対する先制攻撃と同時に米国と軍事行動を共にする日本に対する抑止力として拉致被害者を人間の盾としかねない保証はない。

 例えトランプが軍事攻撃に踏み切らなくても、経済制裁で政治や国内経済が立ち行かなくなることによって金正恩体制の維持が困難になった場合、長年生活と自由を締め付けられてきた北朝鮮国民の多くは堕ちた偶像に対しては冷酷なまでに情け容赦ないことは理解しているだろうから、唯一イチかバチかで暴発という形で外に向かって打開策を求めざるを得なくなった場合にしても、拉致被害者を人間の盾として使うことに変わりはないはずだ。

 例えそれが卑劣な手段であったとしても、自己防御の心理が利用できるものは何でも利用しようとするに違いない。

 安倍晋三は自身の対北朝鮮圧力最大化が拉致被害者を人間の盾としかねない危険な綱渡りの側面を抱えていることを承知しているのだろうか。

 圧力と拉致解決は相互矛盾の関係にあることは誰もが認識しているはずだ。なぜなら、安倍晋三の圧力政策に対して北朝鮮が激しく反発を強めて、拉致問題に取り憑く島も与えていない状況が何よりも証明している。
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沖縄米軍ヘリ部品落下事故:小野寺五典の国民の1人2人の犠牲をも可とする米軍側に立った安全保障優先姿勢

2017-12-14 10:46:34 | 政治
 
 12月7日(2017年)に上空がアメリカ軍機の飛行ルートになっている沖縄県宜野湾市保育園で屋根に物が落ちる大きな音がしたため職員が確認したところ、長さ約20センチ、直径約7センチの「US」と記名のプラスチック製の筒状の物体が落下していたということだが、6日後の12月13日午前10時過ぎに沖縄アメリカ軍普天間基地隣接の普天間第二小学校グラウンドに縦横約90センチのヘリコプターの窓が落下した。

 保育園の場合は落下した建物隣の園庭で園児たちが遊んでいでいて、後者の小学校グラウンドでは落下地点から10メートル程離れた場所で4年生の児童約30人が体育の授業を受けていて、男子児童1人が落下による破片が飛んできて左手に軽いケガをしたという。

 保育園の落下物は米側は米軍の物ではないと否定している。

 2017年12月12日「小野寺五典記者会見」(防衛省) 

 保育園落下に関する箇所のみを取り上げる。

 記者「今月7日に沖縄県宜野湾市の保育園に落下した筒状の物体について(と、11月29日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、それぞれ)新しい情報があればお願いいたします」

 小野寺五典「保育園への落下でありますが、本件のような事案の発生は保育園の関係者のみならず、地元の皆様に不安を与えるものであることから、政府としては、特に防衛省は、発生直後から沖縄防衛局長を中心に情報収集と地元対応をさせていただいているところであります。

 これまでに米側からは『今般の部品については、IBIS(アイビス)というCH-53Eヘリのブレードの損傷を検知するための装置の保護に用いるカバーであり、本件事案が発生した当日、今月7日、10時15分頃に普天間飛行場からCH-53Eヘリが1機離陸しているが、この機体に使用している7個のカバーは離陸前に全て取り外され、保管されていたことを確認した。

 また、普天間飛行場で運用されているCH-53EヘリのIBISのカバーは全数が適切に保管されていることも確認をした。引き続き日本側関係機関と連携し、事実関係の究明に協力する』という旨の説明がありました。この内容について、昨日、沖縄防衛局から沖縄県及び宜野湾市に情報提供したところであります」

 記者「沖縄の落下物の件ですが、米軍から報告があったということですが、防衛省としては、米軍のヘリからの落下物の可能性というのは否定できないと考えているのか、その受け止めについてどのように考えているのでしょうか」

 小野寺五典「米側からはIBISが全て保管されていることを確認したということであります。現在、米側と警察が対応をされているということであります。防衛省としては、現時点においてなんら結果を予断するものではないということであり、繰り返しになりますが、米軍及び警察の関係機関による調査の結果を待ちたいと思っております」

 記者「関連ですが、CH-53のヘリの飛行時間や飛行の位置というのは当該の音がした、落下した時間との関連性はどのようになっていますでしょうか

 小野寺五典「防衛省として、普天間飛行場の航空機に関してはモニターをしています。当然、どの時点でどの飛行機が飛んでいたかということは確認をしているのだと思いますが、これは、米側、そして調査に当たっている警察等にも連携して情報共有をしているものだと思います」

 小野寺五典は米側の説明をそのままオウム返しに記者たちに伝えるのみで、誰もが持つ疑問――記者が指摘した飛行ルート・飛行時間・落下時間との関連性と、CH-53EヘリのIBISのカバーの全数が適切に保管されていることとの整合性を米側に問い質すこともせず、また防衛省が普天間飛行場航空機の飛行をモニターしているなら、目視で解析不可能で何らかの解析が必要なら、12月7日に落下してから5日後の12日の記者会見だから、解析が間に合わないとうことはないはずで、解析した情報を伝えるべきを伝えもせず、防衛省は「米側と調査に当たっている警察と連携して情報共有をしているものだと思います」と他人事のこととする発言をしている。

 要するに小野寺五典は日米安全保障に於ける日本側の米軍に対する管理機関であると同時に国民の生命財産を与る政府の閣僚として防衛省の最高責任者を務めていながら、米軍側に立っていて、日本国民、あるいは沖縄住民の側に立っていない。すべてが米軍優先となっている。

 保育園は上空が米軍機の飛行ルートになっていて、職員が屋根に物が落ちる大きな音がした、いわば衝撃音を耳にして「US」名入りのプラスチック製の物体を確認している以上、米軍機と衝撃音と物体の一体性を否定することはできない。

 だが、米軍側は「CH-53EヘリのIBISのカバーの全数が適切に保管されている」としていて、ヘリからの落下物であることを否定している。

 矛盾したこの二つの否定に整合性を与えるとしたら、今年9月29日に新石垣空港にオスプレイ2機がエンジントラブルで緊急着陸し、10月11日に沖縄県東村の牧草地にヘリが不時着、炎上・大破しているヘリの運航にマイナスとなるこの立て続けの事故に続く2カ月しか経過していない、今後の運航へのマイナスを積み重ねかねないヘリ部品落下事故ということで情報隠蔽を謀ったと見ないわけにはいかない。見ることによって矛盾が解ける。

 保育園でも小学校のグラウンドでも部品の落下物が園児や小学生に直撃しなかったのは不幸中の幸いだと片付けることはできない。また部品の落下はヘリがエンジントラブルで墜落する重大事故とは異なると見ることはできない。もし片付けたり、見たりしたら、些細な事故だと重大視していないことになる。

 機体からの落下物にしても、機体の急激なエンジントラブルで直ちに制御不能となった墜落にしても、落下させる、もしくは墜落させる側も落下を受ける、もしくは墜落を受ける側も、落下・墜落の場所・時間は当たり前のことを言うことになるが、予測可能ではなくて、予測不可能と決まっている。

 落下・墜落の場所・時間のこの予測不可能性が、こうも様々に事故が頻発すると、それが結果的にケガや死亡を伴わないヘリや戦闘機からの部品の落下事故に過ぎなかったとしても、墜落が無人の場所を選んだ不時着で片付いたとしても、ヘリや戦闘機の飛行を上空に見ただけで、住民をして落下物や墜落の直撃を受ける不安に駆られたとしても、自然過ぎる心理であって、不安に駆られない方が不自然に過ぎることになる。

 特に子どもを持つ親としたら、子に対する事故の不安は大きいはずである。

 このような沖縄住民の極く当たり前の不安心理を何とも思わずに無視できるからこそ、小野寺五典は事故に関して米側の説明をそのままオウム返しに記者たちに伝えるだけの他人事のような米軍側に立った安全保障政策優先の姿勢を見せることができるのであって、不安心理無視のこの姿勢は否応もなしに国家安全保障の手前国民の1人や2人の命を犠牲にしてもいいという意味を取ることになる。

 安倍晋三の北朝鮮が軍事的・経済的に追いつめられたときの危険性としてある暴発によって、あるいはアメリカが北朝鮮を軍事攻撃した場合の北朝鮮の反撃によって日本人の犠牲が生じるケースを国家危機管理として想定しない北朝鮮圧力一辺倒政策と同様の小野寺五典の飛んだ国家主義である。

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安倍晋三の教育無償化:幼児対象は保育の受け皿整備優先 高等教育無償化は全面的給付型奨学金で片付く

2017-12-12 12:13:29 | 政治

 12月10日(2017年)放送のNHK「日曜討論」が安倍晋三の新経済政策を取り上げた「“新政策パッケージ” 経済再生の道筋は」を見たが、気づいたことがあって、大変に参考になった。

 出演者は内閣府特命担当大臣(経済財政政策)茂木敏充、大和総研のチーフエコノミスト熊谷亮丸(くまがい・みつまる)、BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト河野龍太郎、教育経済学者・ 慶応義塾大学総合政策学部准教授中室牧子。

 司会島田敏男と牛田茉友(まゆ)

 先ず「人づくり革命」の礎とする「幼児教育・保育の無償化」について上記ページは次のように解説している。(文意は変えず、簡潔な文章に直す)

幼児教育・保育無償化の対象
▼0歳から2歳までは住民税が非課税の世帯
▼3歳から5歳までは所得にかかわらず一律

無償化の施設
認可保育所や認定こども園、幼稚園。
ただ、幼稚園については、保育料が高額な私立幼稚園もあることから、支援額に上限を設ける
認可外の保育施設などについては、無償化の範囲を来年の夏までに結論を出す

待機児童の解消
2020年度末までに、32万人分の保育の受け皿を整備するほか、保育士の処遇改善にも取り組む。

 発言の主なところを拾ってみる。

 茂木敏充「日本が直面する最大の課題、少子化対策、人口減少の状況下でも一人ひとりが活躍できる社会をつくっていく。教育の無償化で20代、30代に対して教育の負担を減らしていく。人材が少しでもその人材の付加価値が上がっていくと、生産性が上がっていくような側面性――人づくり革命、生産性革命、少子化対応していく上での車の両輪となる。

 少子化対策、20代、30代の若い女性が理想の子供の数を持たない理由が一番、子育てや教育にカネがかかり過ぎる。この子育て世代の負担を減らすことが第一目的。

 小さいときから子どもの潜在能力を引き出して、将来活躍できる筋をつくる。様々な研究で根気強さや意欲、社会性など、非認知能力が幼児教育の段階で身についてくる。

 大人になってからの活躍のためにも大きな能力を与える。人生100年時代だからこそ、幼児教育の重要性ある。

 日本の成長力との関係、かつてイギリスのトニー・ブレアが『7歳の子どもの読書力で20年後のイギリスの成長力・国力が決まる』。そんなことを言っていた。日本も少子化が進むことで、幼児教育の段階から投資をする。生産性も上がっていくと考えている」

 河野龍太郎「日本の社会保障制度は日本の実情にそぐわなくなっている。変更すべきだ。3つの点、方向性としては賛成だが、付け焼き刃の感がある。費用対効果が検証されていない。

 目玉は3歳から5歳まで一律無償化と言うと、低所得者向けはかなり措置がされている。誰が一番メリットを受けるのか。カネのある方、我が国の財政に所得者の高い方をサポートするゆとりがあるのか。

 待機児童対策を優先させるべきではないか」

 茂木敏充「9割が幼稚園・保育園に通っている。これを全世帯対象に無償化する。全体を見ると、低所得者に厚い政策となっている。少子化対策の中で保育の受け皿を整備するのが重要。

 これらは思い切って前倒しする。来年度から始め、無償化の方は財源が必要で、消費税を使うから、再来年度行う。2019年から一部スタート。20年にフルスペックで行う」

 熊谷亮丸「全面的に賛成ではないが、大筋では賛成。幼児教育とか保育とか、重点的に投資するのは非常に効率いい投資。二つの側面があって、このことによって個人・子どもにプラスの影響が出てくる。人格というのは幼児期につくられる。社会的に見たとき、貧困格差がなくなったり、犯罪率が落ちる。あるいは投票率が上がる。プラスの効果が出てくる。

 諸外国で見て、1ドル教育とか幼児期の投資を行うと、将来的にはそれが7倍となって返ってくる。そういう研究結果がある。もしくはOECDの10カ国で見ると、教育投資をやると、75年後にその国のGDP36%出るというような結果がある。

 内訳で待機児童の解消に使うか、保育の質に使うか色んな議論があるが、大筋に於いて正しい政策だと思う」

 中室牧子「2つの点で高く評価ができる。全世代型の社会保障ということで、より若年の人に積極的に投資ができる。これは間違いなく必要なこと。教育段階別に見ると、就学前の投資は将来的に見たとき、子どもたちの収入だとか能力を高める効果があることを示している研究が少なくある。

 他の教育段階に比べると、就学前に投資をしていくのは悪くないアイデア。注意点は就学前に投資をするということが幼稚園や保育園の無償化であるべきなのかと言うことに関しては非常に慎重に考えなければならない。

 アメリカの研究が明らかにしていることは貧困世帯の子どもたちに質の高い就学前教育を行うと、その子どもたちの収入や健康状態、幸福感が高まる言うことが示されているのであって、無償化とは全く別の議論。

 今の無償化は応能負担となっている家庭にとってみれば、所得の高い人への所得移転になるということがあるので、財政状況の厳しい中で、それを喫緊の課題とすべきかどうかは議論があるかと思う」

 茂木敏充が幼児教育無償化にいいこと尽くめを言うのは当然だが、茂木敏充にしても熊谷亮丸にしても、幼児教育無償化が人格形成や非認知能力形成と必ずしも結びつくとは限らないことを無視していいこと尽くめの中に入れている。

 例えば茂木敏充は潜在能力を引き出すだ、「根気強さや意欲、社会性など、非認知能力が幼児教育の段階で身についてくる」だと言い、熊谷亮丸は人格形成の利点や、貧困格差解消の効能、犯罪率低下、GDPへの貢献まで言い立てている。

 一方、河野龍太郎は「低所得者向けはかなり措置がされている」結果、無償化で高所得者がメリットを受ける点を批判し、中室牧子は子どもたちの将来的な収入や健康状態、幸福感形成に寄与する質の高い就学前教育と無償化とは別の議論であって、幼児教育費が応能負担となっている家庭からみると、所得の高い人への所得移転になると批判している。

 河野龍太郎が言っている「低所得者向け措置」と中室牧子が言っている「幼児教育費の応能負担」について見てみる。茂木敏充が「9割が幼稚園・保育園に通っている」と言っているが、何年の9月16日なのか分からないが、「WG厚生労働省提出資料」と記されている「保育園と幼稚園の年齢別利用者数及び割合」のPDF記事によると、該当年齢人口に対する年齢別の保育園・幼稚園の通園者数と未通園者数は次のようになっている。    

 保育園の数値は平成26年4月1日現在)の認可保育園の数。幼稚園の数値は平成26年5月1日現在とある(未就園児は推計)。

 0歳児 保育園11.9万人(12%)               未就園児92.3万人(88%)
 1歳児 保育園33.3万人(32%)               未就園児70.8万人(68%)
 2歳児 保育園40.5万人(38%)               未就園児66.1万人(62%)
 3歳児 保育園46.8万人(45%) 幼稚園44.2万人(42%) 未就園児13.4万人(13%)
 4歳児 保育園47.2万人(45%) 幼稚園54.1万人(52%) 未就園児 3.1万人( 3%)
 5歳児 保育園46.8万人(44%) 幼稚園57.6万人(54%) 未就園児 2.9万人( 2%)
 
 2017年の待機児童数は2万6081人だそうだから、4歳から5歳までの未就園児の殆どを待機児童が占めていると見て間違いないと思う。0際、1歳は家庭で見るケースが多く、3歳となるとそれが減少しているということなのだろうか。

 上記数字からは3歳児から5歳児まで97~98%の幼児が幼稚園・保育園に通っていることになる。保育園料は生活保護世帯や1人親世帯のうち市町村民税非課税世帯の場合は、第1子から無料の応能負担となっている。

 となると、安倍晋三の幼児教育無償化の対象となっている〈0歳から2歳までは住民税が非課税の世帯〉は元々第1子から無料だから、無料が対象の世帯に対して改めて無料にしますと謳っていることになる。

 また、〈3歳から5歳までは所得にかかわらず一律〉は河野龍太郎が指摘しているように「誰が一番メリットを受けるのか。カネのある方、我が国の財政に所得者の高い方をサポートするゆとりがあるのか」、あるいは中室牧子の指摘のように「所得の高い人への所得移転」となって、一見誰もがいいこと尽くめの平等のように見えるが、結果的に不平等を生み出す投資ということになる。

 更に3歳児から5歳児まで97~98%の幼児が保育施設に通っているということになると、茂木敏充が言っている無償化が非認知能力形成に貢献するといった類いのメリットを新たに生み出すが如き言説とはさして関連がないことになる。

 わざわざ国の借金の返済を先延ばしにして生活余裕者にまで無償化する必要があるだろうか。熊谷亮丸が言っているように「大筋に於いて正しい政策」と見做すことは難しい。

 中室牧子が質の高い教育の提供と教育無償化とは違う議論だと言ったことに対しての茂木敏充の発言。

 茂木敏充「中村さんが言うように質の問題も必要。保育士さんの処遇改善。我々は4年間で大体10%、額にして月にして3万2千円。今年からキャリアを積んだ保育士には月額最大4万円まで処遇を改善する。

 今回更に人事院勧告の部分で1.1%、さらにそれらに上積みして1%。そういう場所で働く人材の質を高める処遇を改善することによって保育士を増やし、保育で働く人材が集まるような環境を作っていく」

 処遇改善で質の高い人材を集め、質の高い保育の提供を期待するためには余程の高給を出して求人数に対して遥かに上回る求職者数が集まるような状況をつくり出して、その中から優秀な能力を持った保育士を厳選するといった方法を採用しなければ、不可能だろう。
 
 単なる処遇改善を以ってして保育の質の問題に変えるのは中室牧子が言っていることとは違って、見当外れに近い。

 安部政権は待機児童の解消を2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を整備すると打ち出していて、河野龍太郎は待機児童対策優先を言っていたが、現在、どのくらい保育施設が不足しているのかネットで調べたところ、「保育の受け皿拡大の状況」なるPDF記事を見つけた。    

 最初に挙げたPDF記事と同様に記事提供者がどこか記載がない。記載年月日も記されていない。こういったことがよくあるが、このような点に役所の情報伝達の不足を見る。

 アドレスから探すと、「厚労省雇用均等・児童家庭局保育課」に突き当たった。

 上記記事に、〈平成29年4月時点の待機児童数は、26,081人。〉と記載されている。

 平成29年4月時点の保育施設への申込者数は2,650,100万人で保育の受け皿量は企業主導型保育事業を含めて2,836,281と、差し引きすると18万6181人分の保育の受け皿が上回っている。だが、待機児童が2万6081人も存在している。

 待機児童とは親が入所申請をしているにも関わらず入所できない状態にある児童を言うのだから、要は親が望む場所にリーズナブルな費用で預けることができる保育施設の定員が満員状態か、あるいはそのような保育施設が存在しないことによって主として生じている待機児童という状況ということであろう。

 保育園料が生活保護世帯や1人親世帯のうち市町村民税非課税世帯の場合は、第1子から無料と負担軽減がなされている以上、それ以外の低所得者の負担軽減策として入園料を下げた(下げた分の費用を国が地方に補償する)保育の受け皿の整備を進めることが優先的課題であって、何も無償化を3歳から5歳にまで広げて一律に無償化する必要はどこにもないはずだ。

 いいこと尽くめ、気前のいい政策に見えて、矛盾が隠されている。この矛盾を隠していいこと尽くめ、気前の良さだけを選挙で訴えていたのだから、選挙に勝つための大盤振舞いに見えてくる。しかも国のカネを使うことになる大盤振舞いであるから始末に悪い。

 次に高校無償化は既に行われている高等教育無償化の議論を見てみる。「日曜討論」記事には次のような解説が乗っている。

高等教育無償化・住民税非課税世帯を対象
▼国立大学の場合は授業料を免除
▼私立大学の場合は、国立大学の授業料に一定額を加えた金額を上限に支援を図る
▼財源 消費税率を10%に引き上げた際の増収分などを充てる

 茂木敏充「日本は所得が低い程、進学率が低い。全世帯平均で52%だが、住民税非課税世帯は進学率20%。学歴によって生涯賃金に大きな差が出るという指摘がある。格差の固定化を防ぐ観点が一つの理由。

 少子化は幼児教育の負担だけではなく、高等教育の負担も含めて重いと言うことだから、少子化対策という側面もある。人材投資、非認知能力を小さい頃に養うのと同時に大学になってもより高い人材をつくっていくという観点もある」

 ここでも茂木敏充は無償化と質の高い人材の育成を結びつけている。

 熊谷亮丸「大事なことは意欲や能力のある人が誰でも高等教育を受けられる。家庭の経済的な事情によってこれが妨げられることがないような仕組みをつくるという意味で、今回の施策は一定の評価ができる。

 実際過去10年間のOECD諸国で経済成長の中身を見ると、半分以上の部分が高等教育を受けた人の、この労働所得に関連している。日本で見ても、大学を出た人と高校を出た人で言うと、障害の所得が7千万円ぐらい違ってしまう。最終学歴が中学卒の人、高校卒の人は大体5割の人が非正規労働者になる。

 ある意味貧困の連鎖になっている。これを防ぐ意味でこの制作は重要な手が打たれている」

 河野龍太郎「生産性を高めるためには人的資本を高める必要があるということで高等教育を充実させるということには賛成。ただ、大学の質を高めるということも大事であるし、一つ注意しなければならないのは熊谷さんが今おっしゃった高等教育のメリットと言うのはその授業を受けた個人に帰着する。

 そのため対象を慎重に絞り込む必要がある。住民税非課税世帯は国立大学無料というのはやや大盤振舞いが過ぎる。成績だけでは判断しないと言っているが、高校在学時に努力をして成績も優秀で強い意欲もあるけれども、家庭の事情で大学に行けない、そういった方を絞り込んでサポートしないと政府のおカネで勉強しない大学生ばかり作ってしまうことになりかねない。

 だから選択と集中が必要である」

 中室牧子「学術観点から言うと、家庭の所得の状態だったり、経済状態によって学力や意欲に格差があって、今の議論の前提としてこれが高校生や大学生のときに生じるということになっていたと思うが、最近の社会学や経済学の研究によると、家庭の経済格差による学力や意欲の格差というのはひょっとすると小学校低学年や就学前に始まっているのではないかと言うことを示した研究がある。

 高校生や大学生のときに既に大きな格差がついてしまっている状態なので、意欲はあるんだけれども経済状態によって進学できない人がどれくらいのボリュームでいるのか問うことが非常に大切で、もしこういった税金を投入するような政策によって家庭の経済格差による進学の格差を解消していくのであれば、高等教育の無償化というのが最も効果的な政策かどうかということについては慎重に考えなければならない」

 ここまでが高等教育無償化の効果についての議論で、以下、財源の問題、その他に移る。

 住民税非課税世帯の国立大学無償化によって低所得世帯の高卒者が誰でも大学生となって高等教育を受けられる条件化という面からのみ見ると、素晴らしい政策に見える。

 だが、その全てが意欲・能力・学力を備えているわけではない。備えていない場合、河野龍太郎が言うように「政府のおカネで勉強しない大学生ばかり作ってしまうことになりかねない」

 当然、住民税非課税世帯の大学生が無償化の恩恵を受けて大学進学率を高める役割を担って社会的な学歴格差を小さくしたとしても、いわば中室牧子が言うように「家庭の経済格差による進学の格差を解消」したとしても、意欲・能力・学力を備えないことには、これらの後天的資質の格差が将来的経済格差に延長されることになって、格差とその悪循環解消の手立てとなるわけではない。

 いわば高等教育の無償化が意欲・能力・学力形成の保証となるわけではない。ゆえに中室牧子の指摘通りに「高等教育の無償化というのが最も効果的な政策かどうかということについては慎重に考えなければならない」と言うことになる。

 つまり意欲・能力・学力を備えていない非課税世帯の大学生に対する一律無償化という恩恵は国の大切なカネをドブに捨てるムダな部分がかなり出てくることを意味する。

 このようなムダの解消は非課税世帯の中で大学進学を申し出た高校生に対して意欲・能力・学力を試す試験を課して、それに合格した高校生に対してのみ大学での教育費を無償化する、河野龍太郎が言っている「選択と集中」を行うことによって可能となる。

 高等教育無償化の方法も、そういった大学生に限った全面的な給付型奨学金制度を設ければ片付くことで、何も大騒ぎすることはない。

 にも関わらず、大騒ぎし、過剰なまでにいいこと尽くめの宣伝をしている。どう見ても、国のカネがムダ遣いになることを犠牲にして選挙勝利の代償を獲得する無償化の提案にしか見えない。

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安倍加計学園政治関与疑惑:安倍晋三は自身の発言通り、「WGの情報を受け取ることもない」は事実なのか

2017-12-11 12:38:13 | Weblog

 2017年8月6日付一部有料記事「朝日デジタル」が2015年6月の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で内閣府が獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、学校法人加計学園の幹部が出席していて、学園の教員確保の見通しを巡る質疑等が行われたが、議事要旨には出席していた幹部の名前や発言の記載はなく、その事実関係を政府側、提案者側双方の出席者が朝日新聞の取材に認めたと報じている。   

 加計学園側の出席者は加計学園系列の千葉科学大の吉川泰弘教授(現・加計学園新学部設置準備室長)と他2名。

 記事は〈複数の出席者によると、吉川氏はヒアリングの場で、既存の大学の獣医学教育では、獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べたという。政府側の委員からは教員確保の見通しなどの質問があり、吉川氏が答えたという。〉などと記している。

 このワーキンググループ(WG)ヒアリングは2015年6月5日の開催。議事要旨に出席者名も発言も記載がないとの「朝日デジタル」の報道を受けて、内閣府国家戦略特別区域諮問会議有識者議員で6月5日のWGで座長を務めたアジア成長研究所所長・大阪大学社会経済研究所招聘教授の八田達夫が「朝日デジタル」と同じ2017年8月6日付、「国家戦略特区WG座長 八田達夫」名で、「国家戦略特区WG(平成27年6月5日)の議事要旨について」なる題名のPDF記事を公表、ヒアリングは非公開との前提で開催したものの、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから2017年3月6日に議事要旨を公開したが、加計学園関係者(3名)は今治市が独自の判断で説明補助のために出席させたもので、説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはないといった内容の断りを書き込んでいる。   

 この内容の裏を返すと、もし今治市が国家戦略特区に指定されず、提案が実現しなかった場合は議事要旨は公表しなかったことになる。物事が成功裏に進捗した場合は公表し、しなかった場合は非公表とするというルールは物事を完璧に見せるための情報操作であり、非公表部分は情報隠蔽に当たるばかりか、公表したとしても、説明補助者だからと言って、その名前と発言を非公表とするのは二重の情報操作であり、二重の情報隠蔽となる秘密主義の恣意的横行そのものである。

 今年2017年11月30日の参院予算委で社民党の福島瑞穂が自身が提出した過去の質問主意書に対する政府答弁書と安倍晋三の過去の国会答弁で今治市提案の獣医学部新設に関わるその事業主体が加計学園であると承知していたと発言していたのに対して2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議で加計学園が獣医学部の事業主体として認定された際に初めて知ったとしているのは「ウソをついている」と追及。

 対する安倍晋三の答弁。

 安倍晋三「この件についても閉会中審査で既に申し上げているところでございますが、この今治市の提案については正に今治市が提案したものであったわけでございますが、最終的には応募に応じて加計学園が公募に応じた段階で我々が知る立場になる、本年1月に事業の公募を行い、加計学園から応募があった後にですね、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません」――

 「私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません」と言っていることは、2015年6月5日開催のWGヒアリングで加計学園関係者が出席して発言したとしても、自身はWGには出席しないタテマエになっているし、WGの情報を諮問会議で受け取ることもないから、事業主体が加計学園であるとは知る由もなかったとの自己正当性の主張である。

 自身の政治関与を隠す目的で2015年6月5日のWGヒアリングに加計学園関係者の出席と発言を議事要旨に非公表とし、2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議で初めて知ったことにしたのではないかと疑うこともできるが、疑惑=事実とすることはできない。

 2015年6月5日の今治市獣医学部新設提案に対するWGヒアリングに対応する諮問会議はWGヒアリングから24日後の2015年6月29日に「第14回」目として開催されている。

 WGヒアリングと諮問会議の議事要旨に加えてそれぞれに提出された配布資料から、安倍晋三が「WGから情報を受け取ることはない」と言っていることが事実かどうか探ってみる。

 先ず「朝日デジタル」が報じている2015年6月5日WG議事要旨に記載がないにも関わらず出席していた加計学園関係者3名の内1名は加計学園系列千葉科学大教授であり、加計学園新学部設置準備室長の吉川泰弘である。

 吉川泰弘はネットで調べてみると、昭和46年に東京大学農学部畜産獣医学科卒業、昭和51年に獣医師免許を取得、北里大学獣医学部教授や加計学園系列千葉科学大学副学長等を経て、現在は同大学危機管理学部動物危機管理学科教授に就任中となっている。
 
 バリバリの獣医学のエキスパートと見ることができる。当然、肩書は「新学部設置準備室長」となっているが、実質的には獣医学部設置準備室長を意味し、準備する側の加計学園の代表としてWGヒアリングに出席した。

 今治市はこのWGヒアリングに備えてPDF記事の「提案書」と「配布資料」を提出している。

 「提案書」は2015年6月4日の日付で、「今治市国家戦略特別区域提案書」と題している。内容は「具体的な事業の実施内容」として「国際水準の大学獣医学部の新設」を謳い、教育方針として「動物由来新興感染症等のリスク回避と蔓延防止 (高病原性鳥インフルエンザ、SFTS等)」、「食料貿易における品質保証、安全性確保、ブランド化、国際トレーサビリティー等の推進」、「公衆衛生を担う公務員獣医師や産業獣医師の確保」、「応用型ライフサイエンス分野への貢献(新技術・新産業の創出)」等を挙げている。   

 「配布資料」は「添付資料」と題して、テーマを「提案書」と同様、「国際水準の大学獣医学部の新設」に据えて、枠ごとに背景を幾つかの色で色付け、背景色に応じた色文字で、従来の獣医学やアメリカの動向、「日本の課題」、「地域の課題」、新設大学獣医学部の「効果」等々、プレゼンテーションしている。 

 吉川泰弘が獣医学のエキスパートであり、獣医学部設置準備室長の役目を担っている以上、PDF記事の作成そのものは自身以外の誰かであっても、記事内容に関しては吉川泰弘がタッチして、その指示で作成され、最終的に出来栄えに目を通した上で内閣府に提出されたはずだ。

 当然、WGヒアリングの議事要旨に吉川泰弘、他の2名の加計学園関係者の名前や発言が載っていようと載っていなかろうと(実際には無記載だが)、「提案書」と「配布資料」に記載してある専門的な様々な点についての質問に対しての説明は加計学園の獣医学部設置準備の責任者として吉川泰弘が主に担っていたはずだ。

 いわばWGの影の主役は吉川泰弘の背後に控えている加計学園であって、今治市提案の新設獣医学部の事業主体が加計学園であることをWG出席の全員が承知していて、そうであることを前提に政府側委員は議論に臨み、議論が進められた。

 このことが2015年6月5日のWGヒアリング後の2015年6月29日に開催された「第14回国家戦略特別区域諮問会議」の安倍晋三に伝えられていたかどうかが問題となる。但しWGヒアリングの座長として出席していた八田達夫は「第14回会議」に有識者議員として出席しているから、加計学園が新設獣医学部の事業主体であることは承知していたはずであるし、承知していなければならない。

 この事実が安倍晋三に伝えられていなかっとしたら、八田達夫はずっと黙っていたことになる。

 先ず「第14回諮問会議」には、「改訂日本再興戦略素案(抜粋)(資料2-2)」(有識者議員提出資料)が提出されている。 

 獣医学部新設に関しては以下の内容のみが記載されている。

 〈⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討

・ 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。〉

 この「資料2-2」で、〈現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し〉と言っている「構想」自体は加計学園の新学部設置準備室長の吉川泰弘が提出し、議事要旨には記載されていないが、説明しないはずはない「提案書」と「配布資料」に基づく「構想」であるはずだ。

 「諮問会議」の議長は安倍晋三であるが、「第14回」は石破茂が内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域)として進行役を務めている。「資料2-2」に関する八田達夫の発言を見てみる。

 八田達夫「最後、8ページ、⑭です。獣医師養成系大学は、40年以上新設されていないのですが、今、エボラその他いろいろな獣に由来した病気が伝播しています。したがって、こういう研究者をつくるということは非常に大切なので、獣医大を新しく新設することを検討することになりました」

 「第14回国家戦略特区諮問会議」での獣医大学の新設についての発言はこれだけである。

 吉川泰弘がWGヒアリングに今治市名で提出した「提案書」と「配布資料」に関わる説明と、それらに基づいて議論され、結果得た結論についての説明があり、そのような説明に対して諮問会議でも議論が行われる常識的なプロセスが進行していいはずだが、議事要旨からはこのようなプロセスは見えてこない。

 この常識なプロセスは今治市提案の新設獣医学部の事業主体が加計学園であることを前提として行われることは断るまでもない。

 当然、安倍晋三のWGから「いちいち情報を受け取ることもありません」と言っていることは常識に対して整合性を欠くことになり、虚偽に位置づけられる。

 常識的であるのに議事要旨には常識が反映されていないということは2015年6月5日のWGヒアリングの議事要旨と同様、「第14回諮問会議」の議事要旨でも議論の多くを省いて隠してしまっているからだろう。

 議事要旨に記載しないことによって表に現れるべきことが現れずに隠れた状態になっている構図は意図的な隠蔽の介在なくして起こりようはない。

 この点を加味すると、安倍晋三の「いちいち情報を受け取ることもありません」は虚偽の位置づけから、限りなく虚偽そのものに近づく。

 その虚偽は加計学園獣医学部新設に安倍晋三が政治関与していた事実を隠すために必要とした虚偽ということなのだろう。
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安倍政権の日米同盟緊密化至上命題を前にトランプエルサレム米大使館移設に旗幟鮮明ができない対米従属性

2017-12-09 11:58:21 | 政治

 米大統領、歴代最単細胞のトランプが2017年12月〈6日、ホワイトハウスで演説し、「エルサレムをイスラエルの首都と公式に認める時だと判断した」と述べ、商都テルアビブにある米大使館を移転させることを正式に発表した。〉と12月7日付「中日新聞」が報じている。   

 この決定に欧州各国やアジアのイスラム国家はパレスチナを含むイスラム国家とイスラエルとの一段の関係悪化、紛争やテロ誘発の危険性の出来を理由に反対や懸念を示した。

 「コトバンク」から、「エルサレム問題」を纏めてみる。 

 1.パレスチナの中心都市エルサレムはユダヤ教,キリスト教,イスラム教の聖地となっていて、その帰属を巡る問題。
 2.第1次世界大戦後イギリスの委任統治下に入る。
 3.1947年の国連パレスチナ分割決議により国連管理下の国際都市とするよう定められる。
 4.1948年5月14日、イスラエル建国
 5.これにアラブ諸国が反発、軍を動員し、5月15日にパレスチナに侵攻、第1次中東戦争が勃発
 6.戦争の結果、エルサレム市の西半分はイスラエル、旧市を含む東半分はヨルダン領に組入れらることになった。
 7.1950年、イスラエルは西エルサレムを首都と定める。
 8.1967年6月5日勃発の6日戦争 (第3次中東戦争) でイスラエルは東エルサレムを含むパレスチナ全土を占領、統合エルサレム全体を首都と定める。
 9.対してアラブ側は6日戦争の全占領地からのイスラエル軍の撤退要求と東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立を要求。(以上)

 以後、パレスチナ側からの何度かの民衆蜂起(インティファーダ)や衝突が発生、パレスチナとイスラエル間で険悪な硬直状態が続いている。

 米国はイスラエルに於ける大使館設置場所について米議会は1995年に1999年5月31日までに在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移すこととする「エルサレム大使館法」を成立。猶予条件として大統領に対して法律執行を6カ月ごとに延期できると認めている。

 以後、クリントン、ブッシュ、オバマの各政権は米大使館をパレスチナに移設した場合の中東の混乱を恐れて6カ月毎に延期の大統領令に署名、トランプも2016年6月に移転を半年間先送りする文書に署名しているが、昨年の大統領選挙で公約していた移転推進を実行に移すことにしたようだ。

 トランプの決定に対する日本の態度を見てみる。

 「河野太郎記者会見」外務省/2017年12月7日)     

 冒頭発言

 河野太郎「日本時間の7日の午前3時,エルサレムについてトランプ大統領が発表を行いました。我が国はイスラエル・パレスチナの間の紛争の二国家解決を支持しており,エルサレムの最終的地位の問題も含め,これまで累次採択されてきた国連安保理諸決議や,これまでの当事者間の合意などに基づき,当事者間の交渉により解決されるべきとの立場を取っております。

 我が国としては,トランプ大統領が恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントや,二国家解決への支持を表明したことは,評価をしております。又,エルサレム市内の主権の境界線を含む,最終的地位は当事者間の交渉に従わなければならないと明確に認めたことの重要性に深く留意しております。

 しかしながらこの発表を契機として今後の中東和平を巡る状況が厳しさを増したり,また中東全体の情勢が悪化し得ることについて懸念しており,本件の動向については大きな関心を持って,これから注意して参りたいと思っております」

 質疑応答

 記者「アメリカが今回,こういった宣言,トランプ大統領が宣言しましたが,賛成反対というか,どういった態度を日本政府として示されるお考えですか」

 河野太郎「日本は大使館を移動するつもりはございません」
 記者「この問題に関して,関係各国等々と電話会談などで意見を交わしたということはございますでしょうか」

 河野太郎「昨日,サウジアラビアの外務大臣とは電話会談を致しました」(以下略)

 発言に河野太郎の人間性が反映されているのだろう、非常に不誠実、誤魔化しがある。トランプがエルサレムについて発表した内容について一言も触れていない。いくら記者たち全員が理解していたことであったとしても、記者のみを相手にしているわけではない。記者以外の人間が記者会見の模様を目にしたり、耳にするケースもある。

 その上、事実は事実としてその事実を詳細に話す責任がある。その責任を果たさないのだから、不誠実なまでの責任の誤魔化しであろう。

 日本にとって歓迎すべきことだったなら、得々として詳しく喋ったに違いない。裏を返すと、歓迎できないことだから、触れなかった。

 河野太郎は「我が国はイスラエル・パレスチナの間の紛争の二国家解決を支持」しているとし、「当事者間の交渉により解決されるべきとの立場を取っております」と言いながら、このような立場に反するトランプの一方的なエルサレムへの米国大使館移設に関しては賛成も反対も明らかにしない。いわば賛成か反対か、いずれも隠したまま旗幟を鮮明にしないままでいる。

 この誤魔化しは如何ともし難い。

 河野太郎は「発表を契機として今後の中東和平を巡る状況が厳しさを増したり,また中東全体の情勢が悪化し得ることについて懸念」を持ちながら、トランプが「恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントや二国家解決への支持を表明したこと」を「評価」するとし、その「評価」を以ってして手順が逆であることを無視しているばかりか、トランプの大使館移設の決定に賛成なのか、反対なのかも明確に明らかにしない誤魔化しまで働いている。

 いわばパレスチナ国家樹立・二国家共存を言うなら、あるいは「イスラエル・パレスチナ間の紛争の二国家解決の支持」を言うなら、エルサレム市の西半分はイスラエル領、東半分はパレスチナ領とする恒久的な和平合意促進へのコミット以外に方法はないはずだが(パレスチナ、イスラエル双方共にこのことを納得しなければ、紛争や反目、険悪な関係は永遠に続くことになる)、そのような手順を取るべきを、トランプがエルサレム全体をイスラエル領と認めることになる米国大使館の設置を先の手順としていることには何ら態度を明らかにせずに目をつぶっている。

 要するにトランプの決定に賛成した場合は欧州各国やイスラム各国の反発を招くことになって賛成はできない、かと言って反対した場合、トランプのご機嫌を損なう恐れが出てきて、反対もできない。

 そのために河野太郎は自身の不誠実な人間性も相まって誤魔化す内容の、賛成も反対も明確には意思表示しない事勿れ主義の記者会見発言となったということなのだろう。

 この事勿れ主義は12月8日午前の自民党役員連絡会での副総裁高村正彦の発言に如実に象徴されている。

 「産経ニュース」  

 高村正彦「日米同盟は死活的に重要。こういう問題については、和して同ぜずという君子の外交姿勢を貫いていくのがいいのではないか」

 「和して同ぜず」という言葉の実際の意味は「君子は人と協調するが、安易に同調したり雷同したりすることはない」ことの姿勢を指すが、トランプの米大使館移設をこの言葉に当てはめると、死活的に重要な日米同盟への悪影響を慮(おもんばか)って、いわば日米同盟緊密化を至上命題とする余り、「トランプとは協調するが、米大使館エルサレム移設には安易に同調したり雷同したりすることはない」との意味を取ることになる。

 移設に反対や懸念を示している欧州各国やイスラム各国にこの言葉を当てはめると、「このような国々とも協調するが、協調の手前、米大使館エルサレム移設には安易に同調したり雷同したりはしてはいけない」と言っていることになる。

 但しこの両勢力と可能な限り公平に「和す」協調を可能にしようとすると、大使館移設に対する同調・雷同の拒絶は賛成か反対かの態度を限りなく不鮮明にする事勿れな態度を迫られることになる。

 同調・雷同の姿勢を少しでも見せた場合、トランプとはなお一層「和す」ことになるが、欧州各国やイスラム各国との「和」に悪影響を及ぼすことになるからだ。

 トランプの米大使館エルサレム移設に対して賛成か反対か何も言わないとする高村正彦のこの「和して同ぜず」の事勿れ主義が河野太郎の記者会見での同じく旗幟を鮮明にすることができない事勿れ主義と奇しくも一致を見たということなのだろう。同じ安倍政権の人間である。一致は当然と見なければならない。

 安部政権が至上命題としている日米同盟緊密化を前にしてハッキリと賛成か反対かを言うことができない事勿れ主義であるなら、そのまま対米従属の関係にあることを表す。

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佐藤正久の役目の違いを無視した自衛隊『服務の宣誓』を用いた外務副大臣就任挨拶と河野太郎の呆れた擁護論

2017-12-08 12:52:10 | Weblog

 自衛隊出身の自民党佐藤正久が2017年12月5日の参院外交防衛委員会で自身の外務副大臣就任挨拶に自衛隊が入隊時に行う「服務の宣誓」を用いたことを民進党小西洋之が問題したとマスコミが報じていたから、その動画をダウンロードして、問題がどこにあるのか考えてみた。

 先ず外交防衛委員会冒頭の佐藤正久の挨拶。文飾箇所が「服務の宣誓」

 佐藤正久「外務副大臣を拝命致しました佐藤正久でございます。事に臨んでは危険を顧みず、身を以って責務の完遂に務め、以って国民の負託に応える決意であります。厳しい安全保障環境の中で国家・国民の安全・安心を守るため、現場主義で汗をかいてまいります」

 佐藤正久が自己紹介に自衛隊員が入隊するときに口にする「服務の宣誓」の一部を用いたということ、そのこと自体が自衛隊に対する親近感の現れ以外の何ものでもない。

 親近感なくしてこのような発言はしない。

 実際の「服務の宣誓」は次のようになっている。

 自衛隊法52条 服務の本旨

 〈私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。〉

 小西洋之は佐藤正久の発言を繰返してから次のように追及を始める。

 小西洋之「私は佐藤副大臣の挨拶、外務防衛委員会に対して政府として行われた挨拶は日本国憲法の趣旨に反し、また自衛隊法や外務省設置法などの関係で、これらの趣旨やまた国家行政執行法(?)の趣旨に反する暴言であると思います。

 佐藤副大臣は内閣に於いて即刻罷免をされるべきだと考えております。今からその理由を説明させて頂きたいと思います。

 では、小野寺大臣、この自衛隊員の服務の宣誓ですけども、何をこれに基づいて全自衛隊員が自衛隊員になったときに行うものであることをご存じですか」

 小野寺五典が自分の席から小西洋之の方に向かって小声で何か聞く。

 小西洋之「知らなかったということでございます。服務の宣誓は何の法令に基づいて自衛隊員が行うものだとご存じですか」

 小野寺五典「服務の宣誓は自衛隊法第53条の規定に基づくと思います」

 自衛隊法第53条((服務の宣誓)〈隊員は、防衛省令で定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。〉

 小西洋之「いま大臣からご答弁頂きましたが、佐藤副大臣が外務防衛委員会で行われたこの服務の宣誓は自衛隊法に基づく制度なんです。自衛隊法と自衛隊組織会(?)に基づくものであります。

 先程外交と防衛の違いの質問もございましたけれども、紛争を阻止する他の適当な手段がない、他に全て手段がない、外交ではもう間に合わない、どうしょうもない、防げないときに武力を行使して国民を守るのが防衛省の役割であり、そのための自衛隊の役割であります。

 また日本国憲法の第66条2項にはこういう規定があります。『内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない』、文民でなければならない。

 この趣旨はかつて政府答弁に於いて武断政治を排除する、で、安倍内閣の解釈改憲以前に唯一解釈変更が行われた例でございます。かつて自衛隊員は武人ではない、文民であるとされております。自衛隊の装備の実態から見て、文民ではない、武人であるというふうに解釈変更された経緯もございます。

 つまり自衛隊委員の服務の宣誓とういうものは武人の全精神の真髄を言ったものであり、武力の行使に当たってのその職務の精神、それを述べたものであります。

 河野大臣に質問させて頂きます。大臣は佐藤副大臣の服務の宣誓の、『以って国民の負託に応える決意である』、このような就任に当たっての挨拶をこの外交防衛委員会に当たって行うことを事前にご存知でしょうか」

 小西洋之は佐藤様久の挨拶の暴言であることと罷免すべきことの理由を述べると言いながら、述べずに「服務の宣誓」がどのような場合に使うのかの説明にとどめている。理由を論理的に提示ぜずに「暴言だ」、「罷免だ」と言うのは幼稚以外の何ものでもない。

 自衛隊法で自衛隊員に対する入隊時の義務付けとして規定した「服務の宣誓」は自らに課せられることになる軍事上の役目を前提とした心得である。いわば軍事力を用いて自衛隊員の義務としてこのように役目を果たしますという誓いの言葉であって、同じ国民に対する奉仕者に位置づけられていても、外交を役目として国民に奉仕することとは自ずと前提が異なってくる。

 ところが、佐藤正久は役目の違いを無視して、外務副大臣としての自らの役目が持つべき精神を自衛隊員が体現すべき精神と一体化させた。

 佐藤正久の自衛隊に対する親近感がそうさせた一体化であって、親近感が自衛隊寄りの態度に向かわせないとも限らない危険性は否定できず、明らかに日本国憲法が規定する「文民」であるとしなければならない厳格な精神を自ら害した。

 佐藤正久は自衛隊員出身である。「服務の宣誓」の一部分を口にしたとき、自衛隊員たちの誓いを自らの精神に蘇らせなかったということなあり得ない。

 それぞれに役目があり、それぞれがそれぞれの役目に忠実でなければ、国という全体を成すことはできない。外務副大臣であるからには外務副大臣という立場に忠実な心得・誓いを持ち、それらを以って国民への奉仕を務めなければならない。

 外務大臣の河野太郎は佐藤正久が外交上の役目を前提とした挨拶をすべきを軍事上の役目を前提とすることになる「服務の宣誓」の一部を用いて挨拶した役目の違いを無視して佐藤正久の擁護に走る。

 河野太郎「あのー、佐藤副大臣がどのような挨拶をするのか事前に原稿を見ているわけではございませんが、外務省の職員も国民の平和、あるいは安全、反映を守るために身を投げ打って職務を行うわけございます。

 外務省の中には外務省の職員として殉職した方々を慰霊した(?聞き取れない)碑と言うか、像がございますが、いざというときには国民を守るためには危険を顧みず、身を以って責務の完遂に務める必要があるのは、これは、あのー、公務員として変りません。

 これは自衛隊であろうが、外務省の職員であろうが、あるいは国家公務員ではないかもしれませんが、警察官、消防員、あるいは消防団員といった方々も、いざ事に臨んでは危険を顧みず、身を以って責務の完遂に務める。

 そういう方が大勢いらっしゃるわけでございまして、私は特に問題があるとは思っておりません」

 河野太郎は自衛隊員のようには軍事上の役目を前提としない警察官、消防員、あるいは消防団員を持ち出して、自衛隊員が軍事を前提として持つべき精神・誓を他の職業の者が持っても何ら問題はないとしている。明らかに強弁を用いた佐藤擁護となっている。

 小西洋之はなぜ暴言になるのか、なぜ罷免に値するのか、その理由をなおも述べないままに「服務の宣誓をしている公務員は他にいるのか」などと時間のムダとなる余計な質問をしている。

 河野太郎「佐藤副大臣は別に服務の宣誓をしたわけではなく、『事に臨んでは危険を顧みず、身を以って責務の完遂に務め』と言うのはこれはどんな場面でも国民として必要な場合にはこういう覚悟で事に当たらなければいけないということを述べたまでであります」

 自衛隊員が軍事上の役目を通して“事に臨む”、あるいは“危険を顧みず”という自衛隊員としての精神と自衛隊員以外の省庁の職員がそれぞれの役目を通して“事に臨む”、あるいは“危険を顧みず”というそれぞれの省庁の職員としての精神は決して同じではなく、似て非なるものである。

 それをさも同じであるかのように言う。詭弁・強弁の類いでしかない。

 小西洋之は「聞いたことに簡潔に答えてください」と前置きして、「服務の宣誓をしている公務員は他にいるのか」と同じ質問を繰り返して、河野太郎から「存じ上げません」の素っ気ない答弁を引き出す時間のムダを更に費やしたあと、河野太郎の自衛隊員も他の職業の人間も事に当たるについては同じ態度を取るとした発言の撤回を求めて、殆ど変わらない内容の答弁を引き出す徒労を重ねた。

 堂々巡りと気づいたのだろう、佐藤正久が就任挨拶に用いた「服務の宣誓」の一語一語と全体の言葉をそれぞれどのような意味で使ったのかと言うことと、内閣として罷免すべきであること、佐藤の就任挨拶を肯定した河野太郎問題を理事会で協議して頂きたいと委員長に求めて、次の質問に移ることになった。

 役目が違えば、それぞれが担当する事柄、任務に違いが出て、その違いに心得・誓いは応じなければならない。応じないままの文民の外務副大臣という立場からの自衛隊に対する親近感は、その親近感が勝らない保証はなく、勝れば、当然文民の性格を侵食していくことになる。

 佐藤正久は外務副大臣の資格はないということであり、如何なる国務大臣に就く資格もない。

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安倍晋三の言葉のみが踊っている国会答弁「縦割り排除」、省庁の生産性革命・人づくり革命をこそ優先させるべき

2017-12-07 11:45:22 | 政治

 2017年11月27日衆院予算委

 新藤義孝「地方創生の最も新しい政策です。KPI(key performance indicator の略、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)という目標を設定して、その達成状況を見ながら、次は何をすべきかとPDCAを回していく(PDCAサイクル=計画(P)-実施(D)-評価(C)-改善(A)の4段階を繰り返すことで、計画の進行管理を適切に行い、その成果を高める仕組み)。

 そういう仕組みを作らせて、まあ、作って頂いて、私はこれもかつて担当させて貰っていましたが、(「東京都への転出超過数」との題名のパネルを示して)こここにある福岡県、5700人、東京に流出している。本来なら地方と東京の転出には均衡させなければいけないのだが、結局12万人オーバーしている(東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)で転入者が転出者を上回る「転入超過」が約12万人と言うこと)。しかも拡大しちゃってるわけです。

 このね、福岡県に5700人。福岡から東京に流出超過しちゃってるんですけども、この間、地方創生の私達の会議で新潟の田中元副知事(?)、参議院議員、仰いました。『福岡出ているって言うけど、九州中から南福岡に吸い取られたんだ』とね。

 ですから、九州の中から福岡が吸い取っちゃって、それから東京に吸い取っている。ここ(パネル)に出ている数字、もうちょっと先の細かいところを見ないと、(動画からは聞き取れない)いうことになるんですね(「流出入の原因が見えてこないということになる」と言うことか)。

 そして例えば北海道のですね、北海道中からも札幌に集中しているんですよ。全国で出生率ワーストツーの札幌ですから、子ども育てづらいところに集中して、(合計特殊出生率ワーストワンの)東京に全国から集中して、そこが最も子どもを産み育てづらいところなんだと。

 この悪循環を、この流れを改善しなければいけない。東京に行きたい人は行っていいんです。全体的に地域できちんと踏まえる中、この周辺も含めたそういうKPI、PDCAの確立、きちんともう1回やるべきだと。

 地域別の所得だって打ち出すべきだと私はこう思っておりまして、その意味に於いてですね、是非、今後これも要望しておきます。梶山大臣に積極的にやって頂いておりますから、この問題は実効性を上げるためには総力を集中して、5年間の集中機関にちょうど3年目ですから、さらなる改善を上げていただきたいと思います。

 そしてもう一つ地方創生に関してですね、地方創生の中でも横串を刺すべきだ。私はこの間、常磐常陸市、ごめんなさい、常陸太田市、行ってきました。梶山大臣のポスターがバンバン貼ってある所。

 そこで市長さんに話して貰ったの。それは道の駅で新しい無人走行の実験をやるんだって言うんで、それを見に行ったの。そしたら何と道の駅自体は市が造りますよね。そして自動走行で走らせた車に近所のお爺いちゃんたちが自分たちの野菜を積んでいるんです。

 で、野菜を積んで道の駅までいくと、道の駅に今度は東京都の中野区に出してね、中野区と里まち連携事業というのをやっていて、高速バスのお腹のトランクに貨物を乗せて運んで貰っている。

 今までできなかったんだけど、これ規制緩和でやるようになった。そして人が乗るような運賃で外に出すことができると。そしてそこにですね、自動運転の予算は内閣府がSIP(内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト)の予算を国交省が受けて、運用を委託している。

 こういうふうに幾つもですね、実は色んな工夫をして規制緩和を絡めてやっている。だから、地方創生が独立したものではなくて、人づくり革命の独立したのもではなくて、あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要だと。

 総理これは一つですね、これは総理の発想で始まってるんですから、地方創生、人づくり革命、生産性革命、こういったものを思い切って政府内で横串連携、更にさせるための指示が必要と思いますが、是非お願い致します」

 安倍晋三「正に地方が直面している様々な課題ですね、省庁の縦割りの枠の中に当然はまらないわけでありまして、まさに横串、横串を通すためにですね、省庁間の間にある壁を倒すか、穴を穿つしかないんだろうと、こう思うわけでありまして、意義のある成果を得るためには省庁の壁を打ち破ってですね、効果的な事業を実施していく必要があると、考えております。

 ご紹介のあった常陸太田市の例もですね、中山間地域の課題を解決するためには単に農水省の政策の枠では対応できず、自動運転初め国交省なり、他省庁と連携することで課題解決の大きな効果を上げる事ができたと思います。

 地方の皆さんにはですね、霞が関の縦割りには囚われることなく、多くの省庁を巻き込むような革新的な地方創生のアイデアを出して貰いたいと、こう思います。

 私もあらゆる場面で縦割りの打破を指示しているところでありますが、国なども交付金を活用して省庁横断的な取り組みを力強く後押ししていきたいと思います」

 新藤義孝は合理的思考能力に欠陥があるらしく、相手が簡単に理解できる的確な表現ができていない。

 新藤義孝の最初の発言は国レベルの人口移動に関して地方からの一方的な人口流出の東京圏一極集中に触れている。国レベルのその一極集中にしても地方レベルでは国レベルのパターンを踏襲して最も都市化度の高い県庁所在地への人口一極集中という、今に始まったことではない人口移動の偏った状況にあることを描いている。

 何のことはない、新藤義孝自身は気づいていないだろうが、気づいていたらお仲間としてできないことだが、安倍政権のKPIやら、PDCAやら、地方創生の新しい政策を以てしても地方の活性化という“創生”が満足に機能していないことをあげつらったに過ぎない。日本自体が人口減少で様々な面で歪みが生じているというのに東京という中央による人口吸収の反動を受けた地方の人口減少によって地方の発展が妨げられているのに対して地方は地方で県庁所在地への人口集中により県庁所在地以外の小都市の発展が阻害され、衰退への道を辿っている。

 当然、このような地方の負の状況から浮かび上がってくる否応もなしの政治性は安倍政権の連鎖し合う人口政策と地方政策の無策を反映させていることになる。安倍政権の無策は歴代自民党政権の無策に通じる。

 あるいは歴代自民党政権の無策を受け継いだ安倍政権の無策と言うことができる。

 新藤義孝は後段で「地方創生が独立したものではなくて、人づくり革命の独立したのもではなくて、あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要だと」発言している。

 もう少し論理的な言い回しをしてくれると簡単に理解できるのだが、要するに地方創生や人づくり革命をそれぞれの権限に応じて各省庁がそれぞれに独立した別個の事業として取り扱う縦割り方式ではなく、「あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要」との文言で、いわば地方創生も人づくり革命もひっくるめた事業として地方に任せるべきだと提言しているということなのだろう。

 だから、「横串を刺すべきだ」との表現で縦割りを打破して横割り(=省庁横断)に改めるよう指示を出してくれと安倍晋三に求めた。

 この要求の裏を返すと、省庁間で現在もなお縦割りが横行している状況の示唆ということになる。

 安倍晋三は新藤義孝の縦割りが横行している状況の示唆に対して「省庁間の間にある壁を倒すか、穴を穿つしかない」、あるいは「意義のある成果を得るためには省庁の壁を打ち破ってですね、効果的な事業を実施していく必要がある」などと縦割り打破の必要性に触れだけで、縦割り打破の方法論には触れずじまいの無策ぶりを曝け出している。

 安倍晋三の縦割り打破の方法論の無策は、「私もあらゆる場面で縦割りの打破を指示しているところでありますが」との発言に象徴的に現れている。

 安倍晋三の数々の指示が無効だから、縦割りが横行している状況が今以ってなくならずに維持されているということであるはずだ。

 震災3周年を迎えるに当たっての2014年3月10日の記者会見。

 安倍晋三「総理に就任以来、13回にわたり被災地を視察いたしました。昨年春ごろはあ ちこちで用地確保が難しいという切実な声がありました。特に、いつ、何戸の住宅が再建されるかの見通しも全く立っていませんでした。

 こうした中、安倍内閣におきましては、省庁の縦割りを排しながら現場主義を徹底し、政府一丸となって加速化に全力をあげました。被災地 の抱える課題は制度面、執行面、多岐にわたります。現場主義で用地取得手続の迅速化、そして自治体へのマンパワー支援などきめ細やかに対応してまいりまし た」

 安倍晋三は2015年10月15日、内閣官房に約20人の職員からなる「1億総活躍推進室」を発足させた。

 安倍晋三「今日から、この『1億総活躍推進室』がスタートしたわけでございます。皆様方には、その一員としての未来を創っていくとの自覚を持って、省庁の縦割りを排し、加藤大臣の下に一丸となって、正に未来に向けてのチームジャパンとして頑張っていただきたいと思います」

 何度も縦割り排除の指示を出してきた。

 自身が縦割り排除に無策だから、「地方の皆さんにはですね、霞が関の縦割りには囚われることなく、多くの省庁を巻き込むような革新的な地方創生のアイデアを出して貰いたいと、こう思います」と他力本願丸出しとなった。

 地方が省庁横断的なアイデアを出して「多くの省庁を巻き込」もうと、各省庁の方で中央集権的な立場からの自らのそれぞれの権限に拘って、そのアイデアを、これはこっちの権限、これはあっちの権限といった形で権限に従った役割の出番で分割しているからこそ、縦割りが横行している状況が今以って続いているというこであって、安倍晋三はそのことに対する現状認識が甘いから、地方に丸投げする他力本願に縋ることになった。

 中央と地方が中央集権の関係で結びついている以上、縦割りはあくまでも各省庁の問題であって、それを打破できるかどうかは省庁を監督・指揮する政府の側の能力の問題となる。

 縦割り排除の進行と共に中央対地方の中央集権の関係も剥がれ落ちていく。

 安倍晋三はこれまでも何度も「縦割り排除」を言ってきた。にも関わらず、現在もそれが排除されていないということは安倍晋三の「縦割り排除」の言葉だけが踊っていたことになる。

 安倍晋三は最近やたらと「生産性革命」だ、「人づくり革命」だと言っているが、各省庁の「人づくり革命」をこそ優先させるべきだろう。縦割り排除の人づくり革命ができたとき、地方創生・地方活性化の生産性が上がり、それだけではない、役所の業務に関する全ての生産性革命が実現に向かうことになる。

 そんなことは気づいていない安倍晋三のノーテンキな頭なのだろう。

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