■久居駐屯地祭2008 速報
日曜日に行われた陸上自衛隊久居駐屯地祭は、旧軍駐屯地の歴史を重ね合わせれば創立100周年という節目の年にあたることから、土曜日の津市内における市街パレードとあわせ、盛大に執り行われた。
三重県津市に所在する陸上自衛隊久居駐屯地には、第10師団隷下の第33普通科連隊が駐屯している。33連隊は2002年に14両の軽装甲機動車を中部方面隊の部隊として初めて受領した部隊として知られ、100年の歴史と伝統に育まれつつも、最新鋭装備の運用や戦術研究には余念が無い精強な普通科連隊である。
式典開始とともに駐屯地に隣接する演習場(グラウンド)に部隊が入場する。
道路を横断しての部隊移動には三重県警が協力、式典開始に先んじて会場後方に集結した各種車両に続き、普通科隊員が堂々の行進で会場に進んでくる。
待機車両の前を行進し、定位置に向かう隊員。手前には87式中距離対戦車誘導弾(中MAT)を搭載したジープ(73式小型トラック)が待機している。連隊は、本部管理中隊、四個普通科中隊、対戦車中隊、重迫撃砲中隊により編成されている。中MATは普通科中隊対戦車小隊に装備されている装備だ。列国の歩兵中隊は100名程度の編成であるが、陸上自衛隊では連隊隷下に大隊を置かず戦闘基幹部隊として中隊を配置している関係から、200名以上の比較的大型の普通科中隊を置いている。
120ミリ重迫撃砲RTと牽引する高機動車の前を隊列が進む。120ミリ重迫撃砲は、フランス製で豊和工業においてライセンス生産されている。通常弾で射程8100㍍、射程延伸弾を用いれば射程は13000㍍にも達し、簡便にして強力な直掩火力として重迫撃砲中隊に12門が配備されている。牽引する重迫牽引車には高機動車が転用されており、迅速な陣地転換により高い生存性を有する。
国旗入場に際して、起立して国旗を迎える指揮官と来賓。式典には甲斐芳樹連隊長の他、野呂昭彦三重県知事、坂口力衆議院議員ら地元の有力者が出席した。甲斐連隊長、坂口議員は昨年の駐屯地祭でも訓示、祝辞を述べられた。指揮官巡閲、訓示、祝辞、祝電披露と行事は進められてゆく。
観閲行進準備の号令とともに、車両待機位置に隊員が駆け寄る。写真は81ミリ中迫撃砲を搭載した高機動車。普通科中隊の迫撃砲小隊に装備されており、前述の対戦車小隊と併せ、一個中隊の普通科部隊はなかなか侮れない能力を有する。掲げられているのは第33普通科連隊が防衛・警備・災害派遣を担当する三重県の市町村旗。
写真は第10音楽隊のマーチとともに徒歩行進の最後を務めた四月に入隊したばかりの新隊員教育隊の新隊員。旧式の66式鉄帽を装備し、64式小銃を担ぎ観閲行進に参加している。
昨年よりもスタンド席が増加しており、訓練展示を順光にて撮影しようという計算から、観閲行進を正面や側面から撮影することは出来なかったが、一周して待機位置に向かう車列を撮ることができた。写真は第4中隊の軽装甲機動車。33連隊では第4中隊に軽装甲機動車が装備されている。
対戦車中隊の79式対舟艇対戦車誘導弾。対戦車中隊は、第10師団の他、旭川の第2師団、南九州の第8師団隷下の普通科連隊に装備されている虎の子装備で、かつては師団直轄装備であったが師団改編に伴い、各連隊に装備された。
観閲行進に続き、野外音楽演奏、喇叭演奏、ライフルドリル、格闘展示が行われ、式典は訓練展示模擬戦に進んだ。
超低空で仮設敵が占拠した地域を偵察するOH-6Dの見事な飛行とともに幕を上げた状況は、続いて偵察隊による威力偵察や特科火砲による射撃、と進んでゆく。
軽装甲機動車とともに、前進する隊員。中部方面隊で最初に軽装甲機動車を受領した部隊というだけあり、降車後の相互支援などは興味深いものがあった。軽装甲機動車は受領部隊により装備密度に差があることから、運用が模索されている装備であるが、例えば高機動車と軽装甲機動車を同一小隊に配備して、相互支援運用の研究、というのはあるのかな、と。
火炎放射や対戦車戦とともに仮設敵は徐々に押されてゆき、最後に戦車が鉄条網を踏み潰し障害を突破、それに続いて普通科部隊が突撃、仮設敵が拠点を築いた建造物に突入、近接戦闘によりこれを無力化し、状況は終了した。泥飛沫を巻き上げながら機銃を撃ちまくり障害を踏み潰す戦車というのは、文章では表せないほどの迫力があり、空気を圧搾して響く空包の砲声はその場に居たものにしか分からない貴重な体験と強烈な印象を与える。
状況終了後、ヘリコプターがグラウンドに着陸し、装備品展示に加わった。駐屯地では装備品展示が行われており、普通科部隊の有する各種装備の他にもホークミサイルやペトリオット、特科火砲、戦車などが公開、100周年を祝うほどの晴天下、見学者は満足ゆく一日を過ごせたことだろう。
HARUNA
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