◆海賊対処任務は現在も継続中
防衛省統合幕僚監部によれば、ソマリア沖海賊対処任務へ派遣中の第3護衛隊護衛艦部隊が任務を交代し帰国途上でしたがこの程、帰国の日程が発表されました。
現在派遣されているのは第3護衛隊群第3護衛隊の護衛艦まきなみ、護衛艦せとぎり、となっています。まきなみ、が佐世保を母港、せとぎり、が大湊を母港としているのですが今月18日に護衛艦まきなみ、が佐世保基地、護衛艦せとぎり、が21日に大湊基地へそれぞれ帰港予定とのことです。
アフリカ東岸のアデン湾は海賊が跳梁跋扈し、本来それを取り締まるべきソマリアが無政府状態である事と、経済が破綻しているため沿岸住民の貴重な収入源に海賊行為が含まれてしまっていることから、一仕事するかと武装して海賊に出かける住民が多く、世界最悪の海賊多発海域となっています。
海賊は大型船舶などで沖合に進出し、海軍の哨戒の一瞬のすきを突き小銃や機関銃、対戦車ロケット砲などを手に小型船舶から航行中の商船や客船に侵入、乗員を人質に捕った上で船会社や運営会社に対し身代金を要求するという行動を続けています。武装は強力で組織化されているとともに広い海域で行われる事が特色です。
片端から武装した小型船舶を臨検したいところですが数が多いですし、この海域は海賊が多発するため漁船も武装していることから武装漁船か海賊船化の見分けが非常に難しく、取締りに当たる各国海軍の悩みの種となっています、また海賊船と思って撃沈したら被害に遭っている船舶だったり、判別が難しいのも悩み。
しかし同時にこのアデン湾は地中海とインド洋、言い換えれば欧州とアジアを結ぶ重要海域であり、多くの国々のシーレーンが通る場所です。日本もこの海域が航行できなければ、食糧、工業製品、部品から装飾品、ブランド品と普段の生活に確実に影響が出てきますので他人ごとではありません。
各国海軍は哨戒方式により巡回を行い、海賊を取り締まっていますが、海上自衛隊ではアデン湾の洋上に船団護衛方式を行い海賊に対処する方式を採っています。船団を編成する以上運用は効率的とは行きませんが、護衛船舶に対する海賊の襲撃は目下皆無で任務は確実に完遂されています。
滞ることなく常時二隻の護衛艦を派遣している事は海上自衛隊の規模からして決して楽ではないのですが継続されているわけです。また、固定翼哨戒機もジブチに展開し、P-3Cによる上空からの哨戒を実施中です。大型固定翼哨戒機の任務は、この海域で任務に当たる航空機の三割程度が自衛隊機ということでその任務の重要性は大きいといえましょう。
なお、各国海軍は海賊を拘束した場合ソマリアには引き渡す法執行機関がありませんので、武装解除する米海軍、反省するまで痛めつける一部海軍、隣国ケニアで裁判を受けさせるNATO海軍等の例がありますが、日本では海賊行為は海上保安庁に引き渡され、なんと現行法ではソマリアの方からは別の星ほど遠い日本にまで連行して日本で裁判を受けさせ、日本の刑務所に収監という少々厳しい対処を行う事となっていますね。
第3護衛隊の派遣部隊は海賊対処任務第六次隊として派遣された部隊で、昨年12月22日の第203回護衛任務での11隻の船舶護衛任務終了を以て第七次派遣部隊に任務を移管、第204回護衛任務から第七次派遣隊が海賊対処の船団護衛任務に当たっています。
第六次派遣部隊と交代で任務に当たっている第七次派遣部隊は昨年12月1日に出発式を行った護衛艦ゆうだち、きりさめ、の二隻で任務中の1月1日には新年初飛行を行っていて、今月3日に第207回護衛任務を完了、現在は大208回護衛任務を実施中です。
HARUNA
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