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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

エジプト民主化暴動と邦人救出の可能性 チュニジア動乱が北アフリカ・中東へ波及

2011-01-29 22:55:01 | 国際・政治

◆チュニジアからエジプトへ

 エジプトでの民主化要求が暴動に発展していまして、チュニジアでの政変が既に遠くエジプトへも発展したのか、と驚きは隠せません。

Img_0354  邦人救出、特に現時点では民間航空航路や空港運用基盤に影響が出るというようなことは起きていないのですけれども、チュニジア動乱の時は突然でしたからね。エジプトは民主化要求に対しても冷静に対処できたとしても、しかし他のアフリカ諸国や中東諸国への波及が心配です。

Img_0629  準備は考え始めた方が良いのでは、と。邦人救出で物々しく展開するのに抵抗があるのなら日本国内の民間航空会社に、予めチャーター機の契約を準備するというようなものでも良いですし、政府専用機と誘導隊の待機態勢、というようなものでもいいです。

Img_0778  この点で少し疑問というか、印象になった事があるのですけれど、ボーイング747クラスの機体を二機、もしくはボーイング777クラスの機体ならば三機、今日明日中にチャーターしたい、というような要求というのがあったとして成り立つのかな、と素朴な疑問。

Img_4450  いや、政府専用機の必要性に少し関連するのですが、政府チャーター機というのは国際法上、シカゴ条約では軍用機扱いになりますので国外のエアラインを簡単にチャーターするのは難しいです。平時から協定を結んでおいて、というような旗国の国内法と日本の国内法で整合性を取っておく場合は別なのですが、そういう法整備はありません。

Img_4453  日本のエアラインに相当な余裕があって、国内線の長距離旅客機を数機程度ならすぐに都合をつけてくれる、という体制があるのなら、また別の話になるのだけれども、日本航空や全日空にB-747-400やB-777ER300やA-340クラスの機体に余裕はあるのかな、と。

Img_6150  民間が出来ないからこそ国が行う、これ公共事業分野などでもさんざん聞こえた話なのですが、国内エアラインに政府が支援してでも旅客機の余裕を確保するのか、もしくは政府がこの種の大型旅客機を保有するのか、という議論、こういう議論ももう少しあっていいのではないですかね。

Img_6286  他方、邦人救出の必要性、という話を添えた後でこういう事を記載するのもなんですが、政府専用機のような民間塗装に近い航空機に比べて軍用機の塗装を維持しているKC-767や迷彩のC-130Hですと、特に武力紛争以外の場合では不都合があるのではないでしょうか。

Img_9609  まあ、受け入れ国や軍関係者は理解してくれるでしょうけれども、航空機に疎い一般市民では日本空軍が民主化運動に介入した、ととられると大変なことになります。こういうところで、軍用機である機体を投入するのは慎重でなければならないのかな、と、つまり他に手段が無くなった場合以外は、と。ここに政府専用機の意義はあるようにも。

Img_6332  さてさて、邦人救出も一口にいうのではなく、現行の自衛隊法では危険な地域に展開は出来ない事になっているのですが、それを置いても非戦闘地域という戦闘地域と非戦闘地域の境界がある地域への出動か、全く危険は無いが予防的措置による輸送任務、その区分はあっていいのかもしれません。

Img_6430  最も危険な状況では、例えば空港が閉鎖されていて航空管制が途絶し、飛行場に自衛隊輸送機を派遣して周囲に空挺団なり中即連なりを張り付けなければならない状況、または空港に邦人が集合出来ない状況で沖合の輸送艦や護衛艦からヘリコプターを飛行させなければならない状況。

Img_6469  他には、民間航空路線が機能付随に陥っているのだけれども、旅客機さえ派遣すれば空港に邦人が集合できる状態で、そのまま輸送することが出来るというかなり安全性が確立している状態、こういう風に分けて考えるべきだと思うのですよね。そうすれば携行する装備も区分が出来る。

Img_9520  もちろん、この種の任務は二者択一である必要はないのです、とか思ったり。まあ、要するに邦人救出で人数が大きくなる場合には、自衛隊だけで対応できるものでもないのですし、民間空港の滑走路が起きている間に政府専用機B-747を即日投入してその間に民間チャーター機を派遣。

Img_9552  民間チャーター機が政府専用機とともに頑張っている間に情勢が沈静化すればそれでよしとしましょう。駄目ならばC-130Hや輸送艦、護衛艦の出番ですが航続距離や進出速度の観点から遠隔地では時間が掛かりますので並行して派遣準備する。途中で鎮定したのなら、引き返しても税金の無駄だ、という人たちはいないでしょう。

Img_4582  第一に、北アフリカ情勢、中東情勢に充分な注意を払い、国内のエアラインより可能な限りの長距離機を集めるためのチャーター契約を念頭に政府は全日空や日本航空を始めとする交渉の開始、政府専用機の待機態勢への移行と輸送機の派遣準備やジブチ等への前方展開、始めても良いでしょう。

HARUNA

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コメント (2)
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